福田昭のセミコン業界最前線

1週間で1名が入社するペース。ASMLジャパン、2030年度に向けて人員1.4倍へ

ASMLの生い立ち。2026年9月3日に東京で開催された記者説明会の配布資料から(以下同じ)

 オランダで31名から始まった会社は、いまや4万4,000名。半導体露光システム最大手ASMLが、次に人を増やす場所として日本を選んだ。半導体露光システム最大手ASMLの日本法人ASMLジャパン(エーエスエムエル・ジャパン)株式会社は、2026年9月3日に東京で報道関係者向け記者説明会を開催し、ASMLグループの事業概要と日本の半導体産業におけるASMLジャパンの活動と展望、EUV露光技術のロードマップなどを解説した。

 初めにASMLジャパンの代表取締役社長を務める藤原祥二郎氏が、ASMLグループおよびASMLジャパンの事業活動を報告した。それから、ASMLジャパンのテクニカルマーケティングディレクターを務める永原誠司氏が、EUV露光システムとEUVリソグラフィ技術のロードマップを説明した。

1984年に31名で創業したASML、2025年には約4万4,000名の世界企業に

 ASMLは1984年、オランダの大手総合家電メーカー(当時)であるフィリップスと半導体製造装置メーカーであるASMインターナショナル(ASMI: Advanced Semiconductor Materials International)の合弁会社「ASM Lithography(ASMリソグラフィ)」としてオランダに設立されたのが始まりだ。

 フィリップスは1970年代前半からリソグラフィ装置の研究開発を手掛けており、この研究開発部門が分離してASMリソグラフィとなった。当初の従業員数はわずか31名である。

 その後の紆余曲折を経て1988年にASMリソグラフィは名称を改め「ASML」となり、1995年には独立して上場を果たす。

 現在のASMLは全世界で約4万4,000名の従業員を雇用するグローバルな大企業である。2025年の売上高は前年比15.5%増の327億ユーロ(約5兆9,000億円)に達する。同年の研究開発費は47億ユーロ(約8,500億円)で、売上高の14.4%を占める。

 なおASMLは売上高の15%前後を研究開発費に充てることを基本方針としている。

ASMLグループの現在。背景はオランダのフェルトホーヘン(Veldhoven)にある本社と工場

 2026年上半期の売上高は181億ユーロ(約3兆3,000億円)。2026年通年では前年比31%増~同38%増の430億~450億ユーロ(約7兆8,000億~8兆1,000億円)に増加する見通しだ。

 売上はシステム(EUV露光、DUV露光、計測・検査)と設置したシステムのサービス(保守作業や追加品販売などのアフターサービス)で構成される。

ASMLの年別および分野別売上高推移(2022年から2026年)。2026年は上半期(第1四半期と第2四半期の合計)実績と通年見通し
2025年のシステム販売実績比率(EUVシステム、計測・検査システム、DUVシステム)。左からシステム販売台数、システム販売金額、世界地域別の販売金額比率。EUVシステムは台数では9%と少ないものの、金額では48%と半分近くを占める

ASMLの日本進出は1992年、日本法人ASMLジャパンの設立は2001年

 日本におけるASMLの事業展開は、1992年に始まった。同年に日本事務所を設立し、代理店経由で販売とサービスを展開した。約10年を経て2001年12月1日に、日本法人ASMLジャパンを設立した。2026年には日本法人設立25周年を迎える。

 現在のASMLジャパンは日本国内に8カ所の拠点を有する。従業員数は約500名。露光システムの納入と設置、アフターサポートが2010年代の主要な業務だった。

 最近ではEUV露光システムに代表される最先端システムの導入が始まったことで、最先端の半導体製造に対応すべく体制を強化している。

ASMLジャパンの概要と国内拠点。サポート対象の装置導入拠点数は24カ所。全国各地に配置した8カ所の拠点から、顧客サポートを実施している
ASMLジャパンの歩み。2020年代半ば以降は、最先端露光システム(EUV露光システム)の納品とサポートを拡充しつつある
ASMLジャパンの今後。熊本オフィスの拡張をはじめとする近くて早いサポート体制の構築、現在の500名から2030年度に向けて従業員数を約700名に増員、材料・装置メーカーおよび研究機関との連携強化といった施策を予定する

 興味深いのはASMLジャパンの従業員数を現在の約500名から、2030年度に向けて約700名と1.4倍に増員すると述べていることだ。約4年間で200名強を新規に採用する。単純に4年で割ると、1年で50名、1週間で1名が入社することになる。

ASMLはEUVシステムとEUVリソグラフィ技術を2033年まで展望

 EUVシステムとEUVリソグラフィ技術に関しては、藤原氏の説明パートでまず、ASMLの技術革新を牽引してきたリソグラフィ装置(露光システム)の歴史を述べていた。

 ASMLにおけるリソグラフィ装置(露光システム)の歴史はG線から始まり、EUVにいたる。1984年に商品化した最初の製品はG線のステッパ(縮小投影型露光システム)だった。EUVシステムでは2010年に最初の量産用プロトタイプ「NXE:3100」を出荷した。

リソグラフィ装置(露光システム)と光波長(光源)の変遷。解像度(RあるいはCD)は波長に比例し、光学系の開口数(NA)に反比例する。波長436nmのG線から、波長193nmのArFレーザーまでは光学系をレンズ(ガラス)で構成していた。波長13.5nmのEUVレーザーではレンズ(ガラス)が使えず、多層膜の反射鏡をレンズにする

 永原氏の説明パートでは、EUVシステムとEUVリソグラフィ技術のロードマップを示していた。現在(2026年)のEUV露光システムには、2つの製品ラインが存在する。

 1つは光学系のNA(開口数)が0.33で解像度が13nmの「NXEシリーズ」、もう1つはNAが0.55で解像度を8nmに高めた「EXEシリーズ」である。いずれもロジック半導体では2nm世代、メモリ半導体では1C/1D世代に対応する。

微細化を支えるEUVシステム製品のロードマップ(2023年から2033年)

 EUVリソグラフィ技術では要素技術の仕様数値とEUVリソグラフィ向けレジストのロードマップを、メモリとロジックに分けて示していた。

次世代高NA EUV露光システム向けレジストと将来のロジック/メモリ技術ノード(2025年から2033年の目標仕様)。なおレジストはCARが化学増幅型レジスト、MORが金属酸化物型レジストのこと。メモリの「コンデンサ」はDRAMセルのキャパシタを意味する。k1はレイリー則のk1ファクタ。ロジックの「メタル」は金属配線を意味する。ロジックのk1は平行配線での値(DRAMキャパシタは深い孔加工なのでk1が高い)