福田昭のセミコン業界最前線

SSDの極端な不足と値上がりで大きく混乱するストレージ市場

SSDの記憶容量当たり単価の推移(2015年~2030年)。2025年までは実績、2026年以降は予測。2026年以降は青線が同年4月時点の予測、赤線が同年7月時点の予測。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が公表した予測値をまとめたもの

 データストレージ関連の業界団体であるIDEMAは、2026年7月24日に市場動向に関するセミナーをオンラインで開催した。正式名称は「2026年7月オンラインマーケットセミナー」である。市場調査会社TrendFOCUSと市場調査会社テクノ・システム・リサーチ(TSR)のアナリストがそれぞれストレージ市場の最新動向を解説した。

 中でも市場調査会社テクノ・システム・リサーチ(TSR)によるストレージ市場の激変状況を分析した講演「Updated Storage (HDD and SSD) Market Outlook」がとても参考になった。そこで本レポートでは、SSD市場を中心に講演の概要をご報告する。講演者はTSRで第1グループのアシスタントディレクターと務める太田健吾氏である。

 なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて録画や配布などが禁止されている。本レポートに掲載した画像(講演スライド)は、講演者である太田氏とIEDMAのご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。

2026年4月時点ではHDD市場とSSD市場ともに順当な成長を予想

 IDEMAは最近、四半期ごとに市場動向に関するセミナーを開催している。この4月21日にもオンラインでマーケットセミナーを開催しており、@@link|https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/2105141.html|TSRの太田氏が講演した|n@。

 4月21日の講演では、HDD市場とSSD市場はともに近年の傾向を反映した動きをしていた。2026年のHDD市場は前年と同様にニアライン製品が牽引する。出荷台数は微増(3.2%増)であるものの、ドライブ当たりの平均単価が上昇(19%増)することで出荷金額ベースの市場は20%を超える成長となる。そして記憶容量当たりの単価(GB単価)は変わらない。

 同じく4月21日の講演では、2026年のSSD市場は出荷台数が前年と比べて微減(0.9%減)にとどまるものの、ドライブ当たりの平均単価が50%増と大きく上昇することから、出荷金額は49%増と大きな成長を遂げると2026年4月時点で予想していた。ドライブ当たりの平均単価の上昇要因は、ドライブ当たりの記憶容量が35%増と大きく伸びるためだと予測されていた。記憶容量当たりの単価は12%増と上昇するものの、市場全体を大きく動かすほどではなかった。

わずか3カ月でストレージ市場の様相が激変

 ところが2026年7月の太田氏による講演では、2026年以降の市場予測が様変わりしていた。特に驚いたのはSSD価格の破壊的な急上昇により、2026年以降の予測値が想像をはるかに超えて伸びたことだ。

2024年~2026年のSSD世界市場(2025年までは実績。2026年は予測)。2026年の予測値は4月時点の数値と7月時点の数値(すなわち現時点の予測値)をならべた。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2026年4月と同年7月に公表した数値をまとめたもの

 2026年7月時点におけるSSD市場の予測値で4月時点と比べて修正が異常に大きいのは、記憶容量当たりの単価(前年比11.8%増を同156.5%増に修正)、出荷金額(前年比48.7%増を同304%に修正)、ドライブ1台当たりの平均価格(前年比50%増を同297%増)である。修正の結果、記憶容量当たりの単価は前年の2.56倍、出荷金額は前年の4.04倍、ドライブ1台当たりの平均価格は前年の3.97倍に急騰する。SSD市場では過去に例を見ない、極端な変化だ。

2026年のSSD出荷台数は微減から微増へ

 NANDフラッシュメモリの極端な供給不足に伴う急激な値上がりが、SSDの極端な供給不足と急激な値上がりを招いた。このことは、すでに知られている。ただし、出荷台数ベースでは大きな違いがない。4月時点の予測(4月予測)ではSSDの出荷台数は2026年に前年比0.9%減、すなわち「マイナス成長」と予測していた。ドライブ1台当たりの記憶容量は同34.9%増と予測しており、記憶容量の拡大が出荷容量ベースの市場を牽引するシナリオであった。

 修正版である7月時点の予測でもSSDの出荷台数は2026年に前年比1.8%増、台数にして約1,000万台の増加と修正の幅は小さい。ドライブ1台当たりの記憶容量は前年比50.1%増と上方修正されているものの、台数増と容量拡大のシナリオは基本的にはそのままで、小さな修正にとどまっていることが分かる。

SSD製品の分野別出荷台数推移(四半期推移: 2023年第1四半期~2026年第1四半期は実績、同年第2四半期~第4四半期は予測)。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2026年7月に公表したスライド

 そして製品分野別(「エンタープライズ」、「PC」、「アドオン」、「ゲームコンソール」、「産業その他」)に出荷台数を見ていくと、2026年に出荷台数が増加すると予測する分野は「エンタープライズ」(前年比30.3%増)と「産業その他」(同21.7%増)だけである。ほかの製品分野はすべて減少する(「PC」は同3.56%減、「アドオン」は同4.13%減、「ゲームコンソール」は同8.06%減)。

 興味深いのは、出荷台数の増加を予測する分野は記憶容量当たりの単価が高いことだ。2025年の実績で比較すると、5つの製品分野でGB単価が最も高いのが「産業その他」で0.905ドル、次が「エンタープライズ」で0.104ドルと続く。ほかの3分野は0.064~0.082ドルと低い。2026年の予測でもGB単価が最も高いのは「産業その他」で0.981ドル。「エンタープライズ」が0.286ドルと続く。

SSD製品の分野別市場規模推移(西暦年推移: 2018年~2025年は実績、2026年以降は予測)。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2026年7月に公表したスライドから

SSDのGB単価はわずか1年で8年前の高水準に逆戻り

 すでに述べたように、2026年のSSD市場の予測は4月からわずか3カ月後の7月に大幅な上方修正を余儀なくされた。特に酷かったのは記憶容量当たりの単価(GB単価)で、4月予測の0.104ドルを7月予測では0.247ドルに修正した。この結果、2023年まで「8年で5分の1」というペースで下げてきたGB単価は、わずか1年で8年前(2018年)の水準に戻ってしまった。しかも現在の予測では、2030年になっても2023年(過去最安年)の2倍近くにとどまる。

SSDの記憶容量当たり単価の推移(2015年~2030年)。2025年までは実績、2026年以降は予測。なお最初に掲載したグラフと異なり、縦軸は対数目盛りなので留意されたい。2026年以降は青線が同年4月時点の予測、赤線が同年7月時点の予測。TSRが公表した予測値をまとめたもの
HDDとSSDの出荷金額と総出荷記憶容量、GB当たり単価の推移(2018年~2030年)。2025年までは実績、2026年以降は予測。TSRが2026年7月に公表したスライドから

2025年以前のGB単価はSSDがHDDの6倍~9倍で推移

 SSDのGB単価低下トレンドが完全に壊れてしまったことで、SSDとHDDの記憶容量当たりの単価は、一気に広がってしまった。2015年~2025年までは、GB単価の差は6倍~9倍で推移しており、その差はほんのわずかだが、縮まる傾向にあった。2015年~2018年は8倍から9倍であったのが、2022年~2025年は6倍から7倍に縮まっていた。

 価格差の縮小は、SSDのカバー範囲の拡大を意味する。デスクトップPCのメインドライブに占めるSSDの比率は2018年に32.8%だったのが、2024年には90.4%に上昇した。ノートPCのメインドライブに占めるSSDの比率(eMMC/UFSを含む)は2018年に57.6%だったのが、2024年には96.2%に上昇した。PCではSSDとフラッシュストレージがメインドライブの標準になったといえよう。

PCのメインドライブにおけるHDDとSSDの搭載比率推移。SSDにはeMMCとUFSを含む。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2026年7月に公表したスライドから

SSDとHDDのGB単価比率は6倍~9倍から一気に18倍へ

 しかし2026年にSSDのGB単価が急上昇したことで、価格差は一気に広がってしまった。GB単価比率(SSD/HDD)の予測値は2026年が18.03倍、2027年は18.07倍である。

 救われないのは2030年になってもGB単価比率が18.06倍とほぼ変わらないことだ。SSDのGB単価自体は低下するものの、HDDのGB単価も下がり続けるので、両者の差は縮まらない。2023年以前はSSDのGB単価が低下するペースがHDDよりも速かったので、わずかながらも価格差が縮んだ。今後はどうなるのか、分からない。

SSDとHDDのGB単価比率(SSD/HDD)。TSRが2026年4月と7月に公表したスライドからまとめた

SSD不足と暴騰のしわ寄せでHDDを選ぶ顧客が増加

 SSDの供給不足と価格高騰は、HDDの需要拡大と価格上昇という副作用を生んだ。TSRによる2026年のHDD市場予測は、同年4月時点の数値がほぼすべて、同年7月に上方修正された。SSDはあまりにも価格が高く、さらには発注しても納品日が安定しない。相対的に価格の低いHDDを選ぶ顧客が増えてきたとみられる。

 HDDの出荷台数は3.2%成長(4月予測、以下同じ)から5.4%成長(7月予測、以下同じ)へ、出荷金額は22.9%成長から37.3%成長へ、ドライブ当たりの価格(平均単価)は19.1%増から30.7%増へ、GB当たりの単価は増減なしから9.49%増へと変わった。唯一、ドライブ1台当たりの平均記憶容量だけは、19.3%増から19.1%増とわずかに下方修正された。

2026年のHDD市場とSSD市場(4月時点と7月時点の予測)。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2026年4月と7月に公表したスライドからまとめた
HDD市場の製品分野別予測(2025年までは実績、2026年以降は予測)。テクノ・システム・リサーチ(TSR)が2026年7月に公表したスライドから

 SSD不足とNANDフラッシュメモリ不足はいつまで続くのか。NANDフラッシュメモリ大手6社の中で3社はDRAMメーカーでもあり、DRAM不足への対応を優先させている。NANDフラッシュメモリの増産には消極的だ。NANDフラッシュメモリ専業メーカー3社による増産が望まれる。