福田昭のセミコン業界最前線
AI向け3次元DRAMやキャパシタレスDRAM技術などが目白押し。国際メモリワークショップ開催へ
2024年5月8日 06:11
韓国ソウルでの開催は2010年以来14年ぶり
半導体メモリ技術の研究開発に関する国際学会「国際メモリワークショップ(2024 IEEE 16th International Memory Workshop(IMW 2023))」が、2023年5月12日~15日に大韓民国(韓国)ソウル特別市で開催される。
「国際メモリワークショップ(IMW)」は半導体メモリとその関連技術の研究開発に特化した国際学会であり、毎年5月中旬~下旬に開催されてきた。開催地は隔年で米国(モントレー)、米国以外の年は欧州とアジアで交互開催というのが慣例となっている。最近では西暦の奇数年が米国、西暦の偶数年が欧州あるいはアジアで開催されてきた。欧州とアジアはそれぞれ4年ごとの開催となる。
ちなみに第1回(2009年)は米国のモントレー、第2回(2010年)は韓国のソウルで開催された。ソウル開催は14年ぶりのことだ。
2日半の技術講演会と前日イベントの1日チュートリアルを予定
IMW 2024は、5月13日~15日(15日は午前のみ)にメインイベントであるテクニカルカンファレンス(技術講演会)を開催する。技術講演会は口頭講演とポスター発表で構成されており、技術講演会初日の13日夕方にはポスター発表とレセプション(歓迎会)が同じ会場で実施される。
技術講演会の前日である5月12日には、プレイベントであるチュートリアル(技術講座)を予定する。なお参加登録料金は技術講演会とチュートリアル(技術講座)で別々なので、あらかじめ留意されたい。
技術講座のテーマは「先進メモリ」と「ニューロモルフィック用メモリ」
技術講演会前日の5月12日はすでに述べたように、プレイベントであるチュートリアル(技術講座)が開催される。1日間の技術講座は2つのテーマを扱っており、午前の「チュートリアル1」と、午後の「チュートリアル2」に分かれる。それぞれのチュートリアルは複数の講演で構成される。
「チュートリアル1」の共通テーマは「先進メモリ(Advanced Memory)」である。「AI向けの3次元DRAM技術」、「3D NANDフラッシュメモリ技術」、「キャパシタレスDRAM技術(次世代DRAMの候補技術の1つ)」の講演を予定する。
「チュートリアル2」の共通テーマは「ニューロモルフィックコンピューティング(Neuromorphic Computing)」である。「アナログメモリを利用したAIハードウェアアクセラレータ」、「エッジAI応用を想定した不揮発性メモリベースのアナログコンピューティングインメモリ(CiM)」、「抵抗変化メモリのニューロモルフィックコンピューティング応用」の講演がある。講演時間はいずれも50分となっている。
基調講演では次世代DRAMと次世代3D NANDの将来を展望
次は技術講演会の概要と注目講演を紹介していく。5月13日の技術講演会は、チェアパーソンによる開会挨拶の後、基調講演から始まる。今年(2024年)も昨年(2023年)と同様に、3件の基調講演を予定する。
始めに、超広帯域DRAMモジュール技術「HBM(High Bandwidth Memory)」の現状と将来をHBM大手のSK hynixが解説する(講演番号1.1)。続いてIGZOベースの次世代DRAMセル技術についてSamsung Electronicsが述べる(同1.2)。最後にフラッシュメモリの過去、現在、未来についてキオクシアが展望する(同1.3)。
3D NANDフラッシュの性能を向上させる要素技術群
13日は基調講演に続いて一般講演が始まる。一般講演はすべてシングルセッション(単一のセッション)であり、パラレルセッション(複数のセッションを同時進行すること)は1つもない。このため、すべての講演を聴講できる。
また13日の夕方(午後6時~午後8時30分)には、ポスター発表を予定する。ポスター発表はレセプション(歓迎会)を兼ねていることから、リラックスした雰囲気で発表者と質疑をやり取りできる。
以下は分野別に、注目講演と注目発表を紹介していく。分野の順番は「フラッシュメモリ」、「DRAM」、「強誘電体メモリ」、「抵抗変化メモリ/クロスポイント」である。
「フラッシュメモリ」の注目すべき発表は、当然ながらほとんどが3D NANDフラッシュメモリに関する研究開発成果である。
基調講演以外ではまず、imecが3D NANDフラッシュの信頼性を確保しつつ積層ピッチを30nmに縮める純金属ゲート技術を発表する(講演番号2.1)。続いてキオクシアがフラッシュメモリの高速ランダムアクセスを実現するマルチレベル符号化技術について述べる(同2.2)。Applied Materialsは、3D NANDのSiチャンネルを高速にエピタキシャル成長させる技術を開発した(同5.1)。
3D NAND以外では、GLOBALFOUNDRIESが28nmのHKMG CMOSロジックと互換のスプリットゲート型埋め込みフラッシュ技術を発表する(講演番号6.4)。34Mbitの埋め込みフラッシュマクロを試作してみせた。
サブ10nmノードに向けたDRAM技術が続出
「DRAM」分野では、3次元メモリ技術のベンチャー企業であるNEO Semiconductorが3D NANDと似た構造の3次元DRAM技術「3D X-DRAM」を解説する(講演番号4.1、招待講演)。
メモリベンダーのMacronix Internationalは、2本の水平ワード線と1本の垂直ビット線、ゲート制御サイリスタで構成する改良型の3D DRAM技術を発表する(講演番号8.1)。
半導体エネルギー研究所(SEL)は、酸化物半導体によるプレーナーFETと垂直チャンネルFETをモノリシック積層した1Mビットの3次元DRAMを試作した(同4.3、招待講演)。
高性能かつ長寿命の強誘電体メモリを実現へ
「強誘電体メモリ」分野では、高性能かつ長寿命の強誘電体メモリに向けた材料エンジニアリング技術をMicron Technologyが解説する(講演番号7.1、招待講演)。
Georgia Institute of Technologyは、強誘電体キャパシタの小信号非破壊読み出しを実現する不揮発性キャパシタの製造プロセスを述べる(同3.1、招待講演)。
それから、CMOSロジックへの埋め込みを想定した相補型FeFETメモリが抱える電荷捕獲という課題をGLOBALFOUNDRIESが論じる(同6.1、招待講演)。
「抵抗変化メモリ/クロスポイント」分野では、40nmの高電圧CMOS技術と互換の3.75Mbit埋め込み抵抗変化メモリマクロをTsinghua Universityが発表する(ポスター発表番号P12S)。また、クロスポイントメモリに使われるOTSセレクタの性能を最適化するAsSeGeSとGeNのヘテロ構造をMacronix Internationalが開発した(講演番号3.2)。
このほかにも興味深い発表が少なくない。詳細は現地取材によるレポートでお届けする予定である。ご期待されたい。