福田昭のセミコン業界最前線

国際メモリワークショップ、高密度化の限界に挑む3D NANDフラッシュ技術

IMW 2023の会場となる、「Hyatt Regency Monterey」ホテルの会議棟(カンファレンスセンター)。2019年5月に開催されたIMWで筆者が撮影したもの

4年ぶり、通算7回目の米国カリフォルニア州モントレー開催

 半導体メモリ技術の研究開発に関する国際学会「国際メモリワークショップ(2023 IEEE 15th International Memory Workshop(IMW 2023))」が、2023年5月21日~24日に米国カリフォルニア州モントレーで開催される。「国際メモリワークショップ(IMW)」は半導体メモリとその関連技術の研究開発に特化した国際学会であり、毎年5月中旬~下旬に開催されてきた。開催地は隔年で米国、米国以外の年は欧州とアジアで交互開催というのが慣例となっている。最近では西暦の奇数年が米国、西暦の偶数年が欧州あるいはアジアで開催されてきた。欧州とアジアはそれぞれ4年ごとの開催となる。

 ただし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行によって2020年と2021年はオンライン開催(バーチャルカンファレンス)となった。2020年は当初、欧州開催を予定していた。昨年(2022年)にようやく、欧州(ドイツ連邦共和国ドレスデン)のリアル開催が実現した。2022年はCOVID-19による海外渡航制限が無視できなかったため、オンデマンド視聴のバーチャル枠を残し、ハイブリッド開催とした。

 そして今年(2023年)はバーチャル枠を撤廃し、リアルイベントだけとなる。会場は前回(2019年)のモントレー開催と同様に「Hyatt Regency Monterey」ホテルであり、通算すると7回目の開催会場となる。常連の参加者にとっては4年ぶりであり、懐かしい場所だとも言える。

1日間のチュートリアルと3日間の技術講演会

 IMW 2023のスケジュールは、5月21日がチュートリアル(技術講座)、5月22日~24日がメインイベントの技術講演会(テクニカルカンファレンス)となっている。チュートリアルの参加料金はIEEEの正会員が400ドル、非会員が450ドル、技術講演会の参加料金はIEEEの正会員が850ドル、非会員が950ドルと、あまり安くはない。学生向けには割引料金が用意されている。

2023年国際メモリワークショップ(IMW 2023)の開催概要
2023年国際メモリワークショップ(IMW 2023)のスケジュール

TCADモデリングとDNAメモリを技術講座で学ぶ

 技術講演会前日の5月21日はすでにご説明したように、プレイベントであるチュートリアルが開催される。午前に「TCADとモデリング」(チュートリアル1)をテーマとする3件の講演、午後に「DNAメモリ」(チュートリアル2)をテーマとする2件の講演を予定する。チュートリアル1では抵抗変化メモリ(ReRAM)、強誘電体メモリ(FeRAM)、3D NANDフラッシュメモリをテーマに1件ずつの講演が用意される。チュートリアル2は1件がDNAメモリのストレージ応用、もう1件がデータストレージ向けDNAシーケンシングの講演となる。

 なおチュートリアル1と2の間で昼食が用意される。最近のチュートリアルでは、ランチはテーブルに着席してのコース料理となっていた。今年も同様の形式になると思われる。

チュートリアル1(TCADとモデリング)の予定と講演題目
チュートリアル2(DNAメモリ)の予定と講演題目

ReRAM、MRAM、3D NANDフラッシュをキーノートで展望

 5月22日の技術講演は、チェアパーソンによる開会挨拶の後、キーノート講演から始まる。今年は3件のキーノート講演を予定する。最初の1件はマイクロコントローラ大手のInfineon Technologyによる28nm世代のマイクロコントローラ用埋め込み不揮発性メモリ技術の発表である(発表番号1.1)。従来の埋め込み用フラッシュメモリを、埋め込み用抵抗変化メモリ(ReRAM)によって置き換える。

 次に、市場調査会社TechInsightsがスピン注入型磁気メモリ(STT MRAM)技術の現状と将来について述べる(発表番号1.2)。最後にSamsung Electronics(以降はSamsungと表記)が、3D NANDフラッシュメモリの動向と将来に向けての課題を展望する(発表番号1.3)

キーノート講演の予定と講演題目

スケーリングの限界に挑む3D NANDフラッシュ

 22日はキーノート講演に続いて一般講演が始まる。また22日の夕方にはポスター発表を予定する。以下はメモリの種類別に、22日~24日の注目発表を簡単に紹介しよう。

 3D NANDフラッシュメモリでは、Samsungが、第7世代の量産向け3D NANDフラッシュメモリ技術を解説する(発表番号2.2)。4bit/セル方式(QLC方式)の1Tbit 3D NANDフラッシュメモリを量産するための技術改良について述べる。

 Micron Technologyは、電荷捕獲式3D NANDアレイの書き換え寿命ばらつきをモデル化して品質評価テストを構築してみせた(発表番号2.3)。imecは、将来の微細化に適した溝型の3D NANDセル技術を公表する(同5.4)。キオクシアは、2個のセルに7bitあるいは9bitのデータを格納するNANDフラッシュメモリ技術を開発した(同P3)。

技術講演会の注目発表(その1)。3D NANDフラッシュメモリに関する発表をまとめた

 3D NANDフラッシュメモリに強誘電体技術を組み合わせることで、スケーリングの限界を延ばそうとする試みも目立つ。imecは強誘電性ゲートスタックで3D NANDフラッシュのデータ保持を最適化する技術を発表する(発表番号4.4)。KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)(同5.4)とGeorgia Institute of Technology(同P6)からもそれぞれ、3D NANDフラッシュメモリに強誘電体技術を組み合わせた技術の発表がある。

技術講演会の注目発表(その2)。強誘電体技術を3D NANDフラッシュ技術に導入する発表と、DRAMに関する発表をまとめた

 DRAMでは、中国のCXMT(ChangXin Memory Technologies)が2件の発表を予定する。最初の1件は、3次元積層可能な1T1CのDRAM技術だ(発表番号3.2)。アーキテクチャ、プロセス、統合化、回路シミュレーションを説明する。もう1件は、将来の4F2タイプDRAMセルアレイを想定した垂直チャンネルトランジスタ技術である(同3.3、レイトニュース)。垂直チャンネルトランジスタ(VCT:Vertical Channel Transistor)は、メモリセルの選択トランジスタとして機能する。

18nm技術のマイコンに埋め込むPCM技術

 相変化メモリ(PCM)技術では、18nm技術のマイクロコントローラで埋め込みフラッシュの換わりに埋め込みPCM(ePCM)を搭載する技術をSTMicroelectronicsが解説する(発表番号6.1、招待講演)。PCMセルの選択トランジスタにバイポーラ・トランジスタを採用し、メモリセル面積を縮小した。

 またMacronix Internationalは、クロスポイントメモリを想定した柱状のOTSセレクタ技術およびPCMメモリ技術を発表する(発表番号P7)。10nm以下の微細化にも対応する。

技術講演会の注目発表(その3)。相変化メモリ(PCM)、抵抗変化メモリ(ReRAM)、SSD(Solid State Drive)に関する発表をまとめた

 このほかにも興味深い発表が少なくない。詳細は現地取材によるレポートでお届けする予定である。ご期待されたい。