西川和久の不定期コラム

Zen 3+のRyzen 7000を搭載してリニューアル!「Pavilion Aero 13-be2000」

Pavilion Aero 13-be2000

 日本HPは4月4日、Pavilion Aero 13-beのプロセッサをRyzen 5 7535UとRyzen 7 7735Uへ変更した「Pavilion Aero 13-be2000」の販売を開始。以前のモデルは個人的に気に入っていたこともあり、ワクワクしながらの試用レポートをお届けしたい。

プロセッサをRyzen 5 7535U/Ryzen 7 7735Uへリニューアル

 2019年9月に原型となった「Pavilion Aero 13-be」を試用しているが、パネルが16:10の非光沢、1kg切り、キーボードバックライト、Ryzen 7 5800Uのパフォーマンスなど、個人的には結構気に入った機種だった。その後、2022年4月にRyzen 5 5625U/Ryzen 7 5825U搭載モデル(Pavilion Aero 13-be1000)が出ているものの、プロセッサのSKU的にある意味、マイナーチェンジ版となる。

 そして、今回ご紹介するPavilion Aero 13-be2000、つまり2023年版には、Ryzen 5 7535U/Ryzen 7 7735Uを搭載。旧モデルはZen 3アーキテクチャだったが、今回はZen 3+アーキテクチャとなり、パフォーマンスアップが期待できる。

 モデルは、スタンダードモデルG3、スタンダードプラスモデルG3、パフォーマンスモデルG3と3タイプあり、大きな違いはプロセッサ、メモリ、ストレージ。順に並べるとRyzen 5 7535U 8GB/256GB、Ryzen 5 7535U 16GB/512GB、Ryzen 7 7735U 16GB/512GBとなる。Ryzen 7は最上位のみの対応だ。手元に届いたのはその最上位モデル。主な仕様は以下の通り。

HP「Pavilion Aero 13-be2000」の仕様
プロセッサRyzen 7 7735U(8コア/16スレッド/クロック2.7~4.75GHz/キャッシュ L1 512KB、L2 4MB、L3 16MB/TDP 28W)
メモリ16GB/DDR5-6400MHz
ストレージPCIe NVMe M.2 SSD 512GB
OSWindows 11 Home/22H2
ディスプレイ13.3型IPS式1,920×1,200ドット(16:10)、非光沢
グラフィックスRadeon 680M/HDMI 2.1、Type-C
ネットワークWi-Fi 6E対応、Bluetooth 5.3
インターフェイスUSB 3.1 Type-C×1、USB 3.0×2、Webカメラ(Windows Hello対応)、指紋センサー、B&O Playデュアルスピーカー、バックライト付きキーボード、音声入出力
バッテリ3セル、最大12時間
カラーバリエーションセラミックホワイト、ピンクベージュ
サイズ/重量298×209×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約957g
税込価格14万4,000円(HP Direct調べ。Amazonでは13万7,800円)

 プロセッサはZen 3+アーキテクチャのRyzen 7 7735U。8コア/16スレッドで、クロック2.7から最大4.75GHz。キャッシュ L1 512KB/L2 4MB/L3 16MB、TDP 28W。以前の同系列SKUと比較してクロックは上がっているが、その分TDPも上がっている(15Wだった)。

 メモリは16GB/DDR5-6400MHz。これまではDDR4だったので、特にiGPUでは差が出そうだ。ストレージはPCIe NVMe M.2 SSD 512GB。OSはWindows 11 Home。22H2だったのでこの範囲内でWindows Update後評価している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵、Radeon 680M(Ryzen 5は660M)。Radeon Graphicsだったのでここもパワーアップしている。外部出力用にHDMI 2.1とType-Cを装備。ディスプレイは13.3型IPS式1,920×1,200ドット(16:10)、非光沢。以前は、輝度400cd/平方m、色域sRGB 100%と謳っていたものの、今回は仕様書に記述が無く、どうなっているかは不明だ。

 ネットワークはWi-Fi 6E対応、Bluetooth 5.3。インターフェイスは、USB 3.1 Type-C×1、USB 3.0×2、Webカメラ(Windows Hello対応)、指紋センサー、B&O Playデュアルスピーカー、バックライト付きキーボード、音声入出力。この辺りは同じとなる。なおUSB 3.1 Type-Cは、10Gbpsデータ転送、Power Delivery、DisplayPort 1.4、電源オフUSBチャージ機能に対応する。

 カラーバリエーションはセラミックホワイト、ピンクベージュの2色。3セル、最大12時間駆動のバッテリを内蔵し、サイズ298×209×16.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約957g。

 価格はHP Directplusだと144,000円であるが、Amazonでは13万7,800円@執筆時となっている(ピンクベージュはさらに安く11万9,800円)。同社の場合、キャンペーンだったり、タイミングで結構価格が変わるので購入する時は要注意。また当たり前だが、Microsoft Office搭載モデルはその分、高くなる。

前面。それなりに狭額縁。パネル中央上の狭い縁にWebカメラ
斜め後ろから。筐体はセラミックホワイト。G3モデルはこのHPのロゴ
左側面。HDMI、USB 3.0、USB 3.1 Type-C、3.5mmジャック
右側面。電源入力、USB 3.0。パネルはこの角度が最大
キーボードはJIS標準準拠89キー。タッチパッドは1枚プレート型。B&Oロゴの左に指紋センサー
キーピッチは実測で19mm。仕様上、キーピッチ:約18.7×18.4mm、キーストローク:約1.3mmとされている
横から。パネルの下が足になり、キーボードが少し傾く。USB 3.0の高さがギリギリなので、下が開くようになっている
裏。前後にバー式のゴム足と、手前左右にスピーカー
重量は実測で998g
ACアダプタのサイズ約48×85×25mm、重量205g、出力19.5V/3.33A/65W
キーボードバックライト。OFF+2段階。ただ日中オンにするとキートップが白なので逆に見辛くなる

 手元に届いたのはセラミックホワイト。パッケージから取り出した第一印象は「軽!」。やはりこのサイズ感で1kg(実測998g)を切ってるとかなり軽く感じる。質感やルックスはご覧の通り文句なし。初代での印象はこの3世代目でも健在だ。

 前面はパネル中央上の狭い縁にWebカメラ。下左右も含め縁は狭目。左側面にHDMI、USB 3.0、USB 3.1 Type-C、3.5mmジャック。右側面に電源入力、USB 3.0を配置。裏は前後にバー式のゴム足と、手前左右にスピーカー。横からの写真で分かるように結構薄く、USB 3.0の下の部分が高さが足らず開くようになっている。

 付属のACアダプタはサイズ約48×85×25mm、重量205g、出力19.5V/3.33A/65W。もちろんこれを使わくてもUSB Type-Cから給電可能となっている。

 キーボードは、JIS標準準拠89キー。B&Oロゴの左に指紋センサーを配置。タッチパッドは1枚プレート型。パームレスト部分も含めかなり広く扱いやすい。バックライトはOFF+2段階だ。ただし、明るい場所だとキートップが白いのでオンにすると見にくくなる。パネルの下が足になり、キーボードが少し傾くのもGood。

 仕様上、キーピッチ:約18.7×18.4mm、キーストローク:約1.3mm。クリック感があり、少し硬めな打鍵感で個人的には好みのタイプ。キーピッチは手前と右側が若干狭くなっているものの、これは許容範囲だろう。それより相変わらず[Enter]の外側にキーと、[BS]の上で、[DEL]の左に[電源]ボタンがあるのは痛い。

 またパネルを閉じた時、手前側面の部分が<の形になっており、開け閉めをスムーズに行える。この点、過去結構フラットになってる機種があり、開けにくかったノートPCがいくつもあった。細かいことではあるものの、この配慮は嬉しい限り。

閉じたところ。手前が口のように開いているのでパネルを開きやすい

 13.3型のディスプレイは、発色、明るさ、コントラスト、視野角全て文句なし。非光沢なので映り込みも少なく眼に優しい。

 i1 Display Proを使い特性を測ったところ、最大輝度423cd/平方m。“以前は、輝度400cd/平方m、色域sRGB 100%と謳っていた”件、数値と以下の画面キャプチャを見る限り、恐らく(全く同じかは不明であるものの)同クラスのものを搭載していると見て間違いなさそうだ。

 最大輝度から-5段階が141cd/m2、-6段階が99cd/m2。従って前者で計測。黒色輝度は0.091cd/平方mと気持ち浮いている。リニアリティは、直性的でかなり良く、単に元が141cd/平方mだった分、120cd/平方mになるよう抑えた感じだ。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 Webカメラは最大720p。画質は気持ち緑かぶりしてる感じだが普通。特に絵にこだわらない使い方なら問題ないレベルだろう。

 ノイズは試用した範囲では全く気にならず。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、パネルのヒンジ近辺が少し暖かくなる程度で、キーボードやパームレストなどに熱は降りてこない。サウンドはスピーカーが下向きなので、机など反射するもので音質が変わる。パワーは控えめ。もう少し欲しいところか。

CPUもiGPUもこのクラスとしてはハイパフォーマンス!

 初期起動時、壁紙の変更のみで、ショートカットなどデスクトップへの追加はない。スペック的にiGPUタイプのノートPCとしてはハイエンドなので何をしてもキビキビ動き全くストレスを感じない。

 ストレージはPCIe NVMe M.2 SSD 512GBの「WD PC SN740 SSDPNQD-512G」。この資料によると、 シーケンシャルリード 最大5,000MB/s、シーケンシャルライト 最大4,000MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約476GBが割り当てられ空き426GB。BitLockerで暗号化されている。Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 6E MT7992(RZ616)、BluetoothもMediaTek製だ。

起動時のデスクトップ、Windows 11標準。壁紙の変更のみ
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはPCIe NVMe M.2 SSD 512GBの「WD PC SN740 SSDPNQD-512G」。Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 6E MT7992(RZ616)、BluetoothもMediaTek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約476GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化
Software

 プリインストールのアプリケーションは、「B&O Audio Control」、「Express VPN」、「HP Command Center」、「HP Documentation」、「HP Enhanced Lighting」、「HP PC Hardware Diagnostics Windows」、「HP Privacy Settings」、「HP Quick Desktop」、「HP Smart、HP System Event Utility」、「HP サポートアシスタント」、「myHP」、「マカフィーリブセーフ」など。

 多くは以前からある同社ツール系だが、1点、HP Enhanced Lightingが不明だったので試しに起動してみたところ、思わず笑ってしまった。パネルをLEDライトにするアプリだったのだ。

 明るさはもちろん、色温度やライトの形状も変更可能。またカメラアプリの映像へオーバーレイする形式なので、ライト自体はそのまま使うことが可能(その分、映像は見にくい)。試したところかなり効果もある。これは最大輝度400cd/平方mあるためできる技だろう。暗めのパネルだとやったところでここまでの効果は得られない。

HP サポートアシスタント
B&O Audio Control / ノイズキャンセリング
HP Enhanced Lighting(1/2)
HP Enhanced Lighting(2/2)

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Officeを使用した。1kgを切るノートPCとしてはなかなかのスコアだ。特にグラフィックス系が速い。3DMarkに関しては、初代と比較してザックリ倍の値になっている。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは10時間39分(電源モード/バランス、明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上最大12時間なので、テスト内容を考慮すれば、こんなところだろうか。8時間以上動けば、おそらく一般的な使い方なら十分だ。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2600
PCMark 10 Score6,623
Essentials10,712
App Start-up Score17,097
Video Conferencing Score8,245
Web Browsing Score8,720
Productivity9,674
Spreadsheets Score11,787
Writing Score7,940
Digital Content Creation7,608
Photo Editing Score12,549
Rendering and Visualization Score7,790
Video Editting Score4,505
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,980
Creative Accelarated 3.0N/A
Work Accelarated 2.05,467
Storage5,006
3DMark v2.26.8092
Time Spy2,284
Fire Strike Ultra1,565
Fire Strike Extreme3,080
Fire Strike5.910
Sky Diver19,136
Cloud Gate28,920
Ice Storm Extreme137,110
Ice Storm161,702
Cinebench R23
CPU10,556 pts(4位)
CPU(Single Core)1,558 pts(1位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード5079.739 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト4003.504 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード844.031 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト379.230 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード455.073 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト430.455 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード53.849 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト115.748 MB/s

 以上のようにHP「Pavilion Aero 13-be2000」は、Ryzen 5 7535UまたはRyzen 7 7735U、メモリ8GBまたは16GB、ストレージ256GBまたは512GBを搭載し、13.3型1,920×1,200ドット(16:10)、非光沢のパネルを採用、そして重量1kgを切るモバイルノートPCだ。

 バッテリ駆動時間も10時間以上で問題なし。価格は下位モデルで11万9,000円、最上位で14万4,000円@HP Directplusと、昨今20万円前後するハイエンドノートPCと比較するとかなり安く、と言って欠点らしい欠点もない。

 唯一、[Enter]キーの外側にもキー、[電源]ボタンの位置と言った部分は気になるものの、これさえOKならお勧めできる1台だ。