西川和久の不定期コラム

3万円台前半で超広角レンズが使えるファーウェイ製スマホ「P30 lite」

HUAWEI「P30 lite」

 ファーウェイ・ジャパンは5月に「P20 lite」の後継機に相当し、超広角カメラ搭載の「P30 lite」を発表した。諸問題で出荷が実質8月末あたりだったこともあり、少し遅めであるものの試用レポートをお届けしたい。

SoCやカメラなどほぼ総入れ替えの新モデル

 前モデルに相当する「P20 lite」は、液晶パネルが5.84型(ノッチ広め)、SoCがKirin 659、カメラが被写界深度用と合わせてデュアル、OSはAndroid 8ベースのEMUI 8.0。当時の標準的な構成だ。

 そして今回ご紹介する「P30 lite」は、パネルサイズが6.15型、SoCにKirin 710、カメラは超広角を加えてトリプル、OSはAndroid 9 ベースのEMUI 9.0、そしてバッテリ増量と、主要な部分を総入れ替えしての登場となった。

 国内での発表自体は5月21日だが、ご存知のように、米商務省が同社をエンティティリストに入れたことにより、8月末頃からの出荷になっている。この件については、いろいろ意見もあるだろうが、ここでは純粋にスマートフォンの使い勝手やカメラの写りなどについて書きたい。

 おもな仕様は以下のとおり。なお、手元に届いたのはワイモバイル版だった。

【表1】P30 liteのスペック
SoCKirin 710(2.2 GHz/4コア+1.7 GHz/4コア)
メモリ4GB
ストレージ64GB
OSEMUI 9.0(Android 9 ベース)
ディスプレイ6.15型フルHD+(2,312×1,080ピクセルドット)
ネットワークIEEE 802.11ac無線LAN、Bluetooth 4.2 with BLE
SIMNano SIM×2カードスロット
対応バンドFDD-LTE: B1/3/5/7/8/18/19/26/28
TD-LTE: B41
W-CDMA: B1/2/5/6/8/19
GSM/EDGE: 850/900/1,800/1,900 MHz ※キャリアアグリゲーション対応、auVoLTE対応
インターフェイスUSB Type-C、microSDカードスロット、3.5mmイヤフォンジャック
センサー指紋認証、コンパス、環境光、加速度、近接、ジャイロ、ホール
位置情報GPS、GLONASS、AGPS
カメラ背面 : 約2,400万画素(広角)+約800万画素(超広角)+約200万画素(被写界深度)
前面 : 約2,400万画素/FF
サイズ/重量72.7×152.9×7.4mm(幅×奥行き×高さ)/約159g
バッテリ約3,340mAh
カラーバリエーションピーコックブルー、パールホワイト、ミッドナイトブラック
税別店頭価格32,880円前後 ※発表時

 SoCはKirin 710。4コアのCortex-A73(2.2GHz)+4コアのA53(1.7GHz)の8コア。GPUにMali-G51 MP4を内包している。ハイエンド向けはKirin 9xx系なので、Kirin 710はミドルレンジ以下となる。メモリはLPDDR4Xの4GB、ストレージは64GB。OSはAndroid 9 ベースのEMUI 9.0を搭載する。ディスプレイは6.15型フルHD+(2,312×1,080ドット)。

 SIMはNano SIM×2カードスロットで1スロットはmicroSDカードと排他。対応バンドは上の表のとおり。ハイエンドクラスのものと比較すると少ないものの、国内であればとくに問題ないだろう。そのほか、ネットワーク機能にはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.2 with BLEがあるが、NFCは非搭載だ。

 インターフェイスはUSB Type-C、microSDカードスロット、3.5mmイヤフォンジャック。センサーは指紋認証、コンパス、環境光、加速度、近接、ジャイロ、ホール。位置情報はGPS、GLONASS、AGPSに対応する。

 カメラは背面、2,400万画素(広角)+800万画素(超広角)+約200万画素(被写界深度)のトリプル。前面は2,400万画素で固定焦点。前モデルより画素数も上がっている。少し前にご紹介したiPhone 11と比較して写りなどはさすがに劣るものの、このクラスで超広角対応はポイントが高い。

 本体サイズは、72.7×152.9×7.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量約159g。バッテリは約3,340mAh。カラーバリエーションは、 ピーコックブルー、パールホワイト、ミッドナイトブラックの3色。税別店頭価格は3万円台前半と、内容を考えると安価だ。

それなりに狭額縁。中央上にノッチがあるものの結構小さい。ナビゲーションバーはソフトウェア式
届いたのはピーコックブルー。左上に背面カメラ。上から順に被写界深度用、超広角、広角。中央少し上に指紋センサー
左側面にはなにもなく、下側面に3.5mmイヤフォンジャック、Type-C
右側面に音量±ボタン、電源ボタン。上側面にNano SIM/microSDカードスロット
奥がSIM1、手前がSIM2/microSD
付属品は、イヤフォン、USBケーブル、ACアダプタ(5V/2A、9V/2A)、イジェクトピン、ケース
重量は実測で163g
iPhone Xとの比較。iPhone Xは、サイズ的に11 Proとほぼ同じなので雰囲気はわかると思う

 手元に届いたのはピーコックブルー。ご覧のように非常に美しい筐体だ。6.15型なのでフットプリントはそれなりにあるものの、厚み7.4mm、重量は実測で163gと扱いやすく、スッと手に馴染む。

 前面はある程度狭額縁。中央上にノッチがある。ナビゲーションバーはソフトウェア式だ。背面は、左上に背面カメラ。上から順に被写界深度用、超広角、広角。中央少し上に指紋センサー。

 左側面には何もなく、下側面に3.5mmイヤフォンジャック、Type-C。右側面に音量±ボタン、電源ボタン。上側面にNano SIM/microSDカードスロットを配置。Nano SIM/microSDカードスロットは奥側がSIM1、手前がSIM2/microSDカードとなる。

 付属品は、イヤフォン、USBケーブル、ACアダプタ(5V/2Aおよび9V/2A)、イジェクトピン、ケース。ACアダプタは急速充電に対応する。

 6.15型のディスプレイは、価格を考えると明るさ、コントラスト、発色、視野角、どれもクラス以上だ。ノッチも小さいためさほど気にならず、フチも広過ぎず狭過ぎずちょうど良い。ブルーライトカットモードにも対応する。なお、パネルには工場出荷時より保護フィルムが貼られている。

 発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると少し暖かくなるものの、撮影も含め通常用途ではとくに気になることはなかった。サウンドはスピーカー出力はモノラルでパワーも不足。オマケ程度の鳴り方だ。イヤフォン出力はそこそこパワーがあり抜けもバランスも良い。なおBluetoothは、aptX(HD)、HWAなどに対応する。

 全体的に価格を考慮すると完成度は高い。おサイフケータイがない、スピーカーがモノラルといった、本機のマイナス面を理解した上で使用するなら十分満足できる内容だ。

出力画素数が異なる広角と超広角

 カメラは前面が約2,400万画素/FF。背面は約2,400万画素(広角、f/1.8、35mm換算27mm)+約800万画素(超広角、f/2.4、35mm換算17mm)+約200万画素(被写界深度)。EXIFから値を拾っているが、物理的な焦点距離はどちらも4mmと、間違いなのか意図的なのかわからない値が入っている。

 出力画素数は広角で4,224×5,632ピクセル、超広角で2,448×3,264ピクセル。デジタルズーム時は1倍から6倍までが前者、それ未満は後者だ。出力画素数が焦点距離によって変わるため、カメラとして見ると少し困った仕様であるものの、撮って加工してSNSなどへアップロードする程度であれば、どのみちリサイズされるため問題ない。

 カメラのモードは、ARレンズ、夜景、ポートレート、写真、ビデオ。その他に、プロ、スロー、パノラマ、アパーチャ、ライトペインティング、HDR、コマ抜き、フィルタ、3Dパノラマ、ステッカー、文書。AI Vision(被写体認識)は左上のアイコンで起動する。

 なお、ポートレートは顔認識しないと動作しない。照明とビューティーレベルという人専用のエフェクトが加わっているためだろう。アパーチャは画角が変わらず背景ボケに対応。撮影後にギャラリーでピントと絞り、フィルタを再調整可能だ。またどちらも写真モードで超広角になっていても広角へ自動的に戻される(ビデオは超広角対応)。

 設定には、解像度(写真広角 : 24MP/18MP/15MP、超広角 : 8MP/6MP/6MP、ビデオ : フルHD/60fps、フルHD、HD)、GPSタグ、ウォーターマークを自動追加、カメラグリッド、ミラー反射(前面のみ)、タイマー、音声シャッター、スマイルキャプチャ、オブジェクトトラッキング、ウルトラスナップショットがある。

写真 1x(広角)
写真 0.6x(超広角)
ポートレート/照明
ポートレート/ビューティーレベル
その他
プロ
AI Vision
シーン認識/青空
その他/アパーチャ
超広角(35mm換算17mm)
広角(35mm換算27mm)

 作例を20点掲載したので参考にしてほしい。使ったモードは写真(超広角/広角)、アパーチャ、夜景。超広角は青空抜けの建物、ハロウィンの飾りつけ、夜手前にテーブルのある建物。アパーチャは恐竜、バイク、Coca-Colaの看板。夜景はビル&駅と最後の岩&観葉植物。日中最後の青空はシーン認識で青空となった。

 起動、AF、書き込み速度などは結構速くストレスフリーで扱える。発色なども雰囲気が出ており悪くない。超広角も含め価格を考えれば十分なレベルだ。夜景モードは等倍で見ると墨絵のように溶けた感じになっているが、等倍で見ることはまずないので、とくに問題にはならないだろう。

 気になったのは2点。1つ目はスマートフォンのディスプレイで見ると、たとえば時計の上にある白い壁は白飛びしたように見えるが、実際PCで確認すると問題はなかった。写りと見え方に少し誤差があるようだ。

 2つ目は、縦位置で、画面中央少し右側の被写体へフォーカスを合わせた後、露出補正をしようとすると、指がズームの位置(画面右端)にふれるのか、ズームしてしまうケースが多発した(どちらも上下のスライド)。画面をピンチしてもズームできるので、この上下スライドによるズーミングはなしでいいような気がする。

 とはいえ、この価格帯で、超広角と広角、背景ボケが使え、写りもこれだけあればスマートフォン搭載カメラとしては十分楽しめる。

指紋認証と顔認証のセットアップ

 指紋認証と顔認証は、6桁のPINを設定後に登録可能になる。どちらも一般的なもので簡単だ。顔認証は、眼鏡あり/なしで登録、眼鏡あり/なしで確認したところ、どの組み合わせでも認証された。指紋認証も瞬時。SIMの設定はNano SIMを挿入、APNを設定すれば再起動なしでインターネットが利用できる。

指紋管理
新しい指紋
登録中
登録に成功しました
顔認証
顔を登録/顔の登録に成功しました
モバイルネットワーク
APN

Android 9 ベースのEMUI 9.0搭載

 初回起動時Home画面は一画面。「かんたん設定」、「Yahoo!」、「ギャラリー」、「Googleフォルダ」、「Playストア」。Dockに「電話」、「カメラ」、「Yahoo!モバイルメール」、「Chrome」を配置。Androidのバージョンは9、EMUIのバージョンは9.0.1。ストレージは64GB中12.82GBが使用中(若干の画面キャプチャを含む)だ。

 上から下にスワイプで通知パネル、壁紙をピンチインでホーム画面の管理。画面スプリット、設定/システムナビゲーションでナビゲーションバーなしにもできる。素のAndroidではないものの、使いやすいUIで操作性は良い。

Home
通知パネル
端末情報
ストレージ

 搭載アプリは、「あんしんフィルター」、「カメラ」、「カレンダー」、「かんたん設定」、「ギャラリー」、「コンパス」、「ダウンロード」、「テーマ」、「ドライブ」、「パーティーモード」、「バックアップ」、「ビデオ」、「ヒント」、「ファイル」、「フォト」、「ヘルスケア」、「マップ」、「ミラー」、「メール」、「メモ帳」、「音楽」、「音声レコーダー」、「緊急速報メール」、「災害伝言板」、「時計」、「設定」、「端末管理」、「天気」、「電卓」、「電話」、「連絡先」、「Chrome」、「Duo」、「Gmail」、「Google」、「PayPay」、「Phone Clone」、「Playストア」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「QR」、「Yahoo!」、「YouTube」。Y!mobile版なので、それらしいアプリが追加されている。

アプリ一覧

 ウィジェットは、「Y!mobileメール」、「Yahoo!検索」、「カレンダー」、「ギャラリー」、「連絡先」、「時計」、「ドライブx2」、「ヘルスケア」、「Google」、「メモ帳」、「マップ」、「音楽」、「画面ロック」、「高速化」、「設定のショートカット」、「天気」、「電源管理」、「Chrome」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Play Music」、「Musicプレイリスト」、「Sound Search」。

ホーム画面の管理(壁紙/ウィジェット/ホームを編集/ユーザー設定)
壁紙を設定
ウィジェット

普段使いには問題ない性能

 ベンチマークテストは簡易式だが「AnTuTu Benchmark」と「Google Octane 2.0」を使用した。AnTuTu Benchmarkは117,530(51位)、Google Octane 2.0は9,687。ハイエンド製品と比較するとかなり遅いものの、このクラスとしては普通だろうか。Google Octaneは筆者が合格ラインとしている1万に一歩およばなかった。

 筆者は日ごろハイエンドスマートフォンを使っているので、本機を操作するとやはり遅く感じるが、と言ってがまんできないほど遅いわけでもない。さすがにゲーム系は厳しいと思うが、一般的なネットやソーシャル系であれば問題ない性能だろう。

AnTuTu Benchmark「117,530」
AnTuTu Benchmark「51位」
Google Octane 2.0「9,687」
輝度/音量50%、Wi-Fi経由でフルHD動画を全画面連続再生。約9時間経過で残15%

 バッテリのベンチマークテストは、輝度/音量50%、Wi-Fi経由でフルHD動画の全画面連続再生を行なったところ、約10時間で電源が落ちた。バッテリ容量が約3,340mAhなので妥当なところか。


 以上のようにHUAWEI「P30 lite」は、Kirin 710/メモリ4GB/ストレージ64GB、6.15型フルHD+に加え、広角+超広角+被写界深度用とトリプルカメラを搭載したSIMロックフリースマートフォンだ。お財布ケータイこそないものの、税別店頭価格が3万円台前半と、この価格でこれだけ詰め込まれていれば十分だろう。なるべく安価で超広角対応のスマートフォンが欲しいユーザーに試してほしい1台だ。