西川和久の不定期コラム
FeliCaや防水など日本のニーズに応えたスマホ「OPPO R15 Pro」
2018年9月21日 11:00
前回は下位モデルの「R15 Neo」をご紹介したが(3万円を切るデュアルレンズ搭載のスマホ「OPPO R15 Neo」参照)、今回は上位モデル「R15 Pro」の登場だ。同じR15シリーズとは言え、内容はまったく別物と言っていいほどのスマートフォンに仕上がっている。仕様、ハードウェア、カメラ、ソフトウェアと、順追って解説したい。
Android搭載SIMロックフリー機としてはめずらしいFeliCa対応
今回ご紹介する「R15 Pro」は、同社国内第1弾の「R11s」の後継機に相当する。もともと中国では今年(2018年)の4月発表と少しタイミングが早いのだが、この時期に国内投入となったのは、おもにFeliCa対応など、日本の事情に合わせて機能追加したためだ。現在、Android搭載機のSIMロックフリー機でFeliCa対応なのは数えるほどもなく、同社の意気込みが感じられる。
また、下位モデルの「R15 Neo」は同じR15シリーズなので似ている部分がありそうなのだが、対応バンドが同じ程度でハードウェア的にはいい意味で別物となる。おもな仕様は以下のとおり。
OPPO「R15 Pro」の仕様 | |
---|---|
SoC | Snapdragon 660(A73 2.2GHz×4コア+A53 1.8GHz×4コア、Aderno 512) |
メモリ | 6GB |
ストレージ | 128GB |
OS | ColorOS5.1(Android 8.1ベース) |
ディスプレイ | 6.28型有機EL2,280×1,080ドット(19:9) |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
SIM | Nano SIMカードスロット×2(DSDV対応、microSDスロットと排他) |
対応バンド | GSM 850/900/1,800/1,900MHz WCDMA Bands 1/2/4/5/6/8/19 FDD-LTE Bands 1/2/3/4/5/7/8/18/19/20/26/28 TD-LTE Bands 38/39/40/41 |
インターフェイス | Micro USB、ステレオミニジャック、microSDスロット |
カメラ | 前面 2,000万画素(F2.0) 背面1,600万画素+2,000万画素デュアルレンズ(F1.75) |
サイズ/重量 | 約75.2×156.5×8.0mm(幅×奥行き×高さ)/約180g |
バッテリ | 3,430mAh |
カラーバリエーション | パープル、レッド |
そのほか | IPX7準拠の防水機能、FeliCa搭載によるおサイフケータイ対応 |
税別価格 | 69,980円 |
SoCはSnapdragon 660。A73 2.2GHz×4コア+A53 1.8GHz×4コアでGPUにAderno 512を内包する。SKUからもわかるように、SoC自体はハイエンドではなく、ミドルハイといったところだろうか。メモリは6GB、ストレージは128GBと、どちらも大容量だ。OSはAndroid 8.1ベースのColorOS5.1。
ディスプレイは6.28型有機ELで、解像度は2,280×1,080ドット(19:9)。R15 Neoと比較して、液晶から有機ELへ、サイズが若干アップ、解像度はHD系からフルHD系へと変わっている。
ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0、Nano SIM×2。ただしR15 Neoとは異なり、SIM2はmicroSDとの排他となる。対応バンドは表のとおりで、R15 Neoと同じ。VoLTE対応のDSDVで、国内3キャリアのVoLTEを利用可能だ。
インターフェイスは、Micro USB、ステレオミニジャック、microSDスロット。Micro USBなのが今のトレンドから少し外れているところだろうか。30分で60%の充電が行なえる急速充電機能に対応している(別の表現では5分の充電で2時間の通話が可能)。
カメラは前面2,000万画素(F2.0)、背面1,600万画素+2,000万画素デュアルレンズ(F1.75)。センサーは前面にソニー製「IMX476」、背面にソニー製「IMX519」を搭載。このデュアルレンズの構成はR11sと同じで、通常は1,600万画素側を使い、低照度時は2,000万画素側でかつ4ピクセルを1つにまとめ輝度を稼ぐパターンだ。もちろん背景ぼけ用にも利用されている。
そして冒頭に書いたようにFeliCa搭載によるおサイフケータイ対応が本機最大の特徴の1つだ。これだけでグッとくる人も多いのではないだろうか。
サイズは約75.2×156.5×8.0mm(幅×奥行き×高さ)、重量約180g。3,430mAhのバッテリを内蔵し、カラーバリエーションはパープルとレッドの2種類。IPX7準拠の防水機能を備えている。税別価格は69,980円。これについては最後の余談でふれてみたい。
今回届いたのはパープル。筐体はガラス素材が用いられなかなか綺麗だ。サイズはR15 Neoと比較してパネルが6.28型か6.2型かの違いだけでほぼ同じ。厚みも0.2mm違いでほぼ同じだ。ただ周囲の仕上げとデザインが異なるため、R15 Proのほうが持ったとき、手に馴染む。ただ重量は実測でR15 Neo(171g)より14gほど重い。
前面は今風の狭額縁。パネル中央上に前面2,000万画素カメラ。ナビゲーションバーは、本来ソフトウェア式で画面内にあるのだが、設定でiOS(iPhone X系)風にして消している。リアは、上左側に背面1,600万画素+2,000万画素デュアルレンズ。中央少し上に指紋センサー。ほぼ中央にNFCマークがある。
左側面に音量±ボタン。下側面にモノラルスピーカー、Micro USB、ステレオミニジャック。上側面はなにもなく、右側面にNano SIM/microSDカードスロットと電源ボタンを配置。Nano SIM/microSDカードスロットは写真からわかるようにSIM2とmicroSDカードが排他だ。この点はすべて使えたR15 Neoより劣っている。
付属品は、イヤフォン、mucroUSB/USBケーブル、ACアダプタ、イジェクトピン、ケース。ACアダプタの出力は5V/4A。
ディスプレイは、写真からもわかるように、R15 Neo単体で見たときは普通に思えたが、比較するとその差歴然。発色、明るさ、コントラスト、視野角……すべて別次元の品質だ。有機ELの良さが十分出ている。またR15 Neoで指摘した明度が低い点も、R15 Proでは問題なかった。
発熱は残念ながら負荷をかけると結構ある。とくに後述するYouTube連続再生時にはアッチッチになった。これもほとんど熱を持たなかったR15 Neoに劣る部分だ。また、サウンドは悪い意味でR15 Neoに似てしまった。スピーカー出力、イヤフォン出力ともに、パワーはうるさいほどあるのだが、レンジがせまく音が荒い。なおBluetoothのオーディオコーディックは、R15 Neo同様、SBC/AAC/aptX(HD)/LDAC対応となる。
総合的にR15 Neoよりはハイクオリティだが、SIM2がmicroSDカードと排他、発熱、音が荒いといった惜しい部分がある。とは言え、SIM1/2とmicroSDカードすべて同時に使うにはその分、内部に空きスペースが必要、熱はSoCの特性と考えると、この筐体に収めるには難しいところなのだろう。
機能豊富なA.I対応デュアルレンズ
先に書いたとおり、カメラは前面2,000万画素(F2.0)、背面1,600万画素+2,000万画素デュアルレンズ(F1.75)。センサーは前面にソニー製「IMX476」、背面にソニー製「IMX519」を搭載している。焦点距離は4mm(Exifから。35mm換算は不明)。
デュアルレンズは、iPhoneのように標準/x2、Huawei/Xperiaのカラーとモノクロと言った構成があるものの、本機は変わっていて、カラーで1,600万画素と2,000万画素。後者の2,000万画素は背景ぼかしの測距用に加え、低照度時4つのピクセルを1つとして扱い感度を上げている。掲載した作例では、ISO742と787でシャッタースピード1/17秒の暗いシーンもあるが(カフェ2点)、なかなかうまく撮れている。
カメラのモードは、タイムラプス、スローモーション、動画、写真、ポートレート、ステッカー(SNOW的なもの)、パノラマ、エキスパート。設定的な画面はない。
写真では6レベルのAIビューティーモードと10種類のカラーフィルタを設定できる。なお、R15 Neoのときにも書いたが、AIビューティーモードは2.0となり、性別、年齢、肌の色、肌の質などを解析して、より自然に肌のスムージングが行なえるようになった。前面カメラで試したがR15 Neoのときと同様、なかなかうまく処理できている。加えて、風景、食べ物、ペットといった被写体と、120のシチュエーションを自動で判断するA.I機能を搭載している。
ポートレートモードは、ボケ具合は変えれないものの、自然光、フィルム(明)、トーン(明)、輪郭光、2色(明)と、光源を変えられる3Dライティングを搭載している。作例にあるモノクロ1点は、トーン(明)を使って撮影した。なお、R15 Neoのときは自動的にデジタルズームがかかってしまったが、R15 Proでは標準のままでポートレートモードが利用できる。
エキスパートは、WB:2000~8000K、EV:±2、ISO:22~3200、シャッタースピード:16-1/8,000秒、フォーカスの設定が可能だ。
作例を20点掲載したので参考にしてほしい。使用感は、カメラアプリの起動やAFなどは問題ないが、気になったのは、シャッターを押してデータを書き込んでいる間の1秒あるかないかの時間、次のシャッターが切れないこと。加えてこのタイミングではサクッと画像の確認もできない。
筆者の場合、オートでのスナップは、とりあえず撮って、大丈夫かの確認、だめならもう1枚。もしくは構図を変えて数枚……的な撮り方をするのだが、それがサクサクできず少しストレスだった。
写り自体はA.Iによるシチュエーション認識の有無に関わらず、無難な感じだ。派手でも地味でも特徴的でも印象的でもない。悪くはないのだが、グッとこない。なにか一味ほしいところか。
セットアップ
初期設定は、Wi-Fを使いGoogleアカウントやパスコード/顔認証設定などすべてスキップして行なった。全10画面と、R15 Neoとまったく同じでかつ画面も少ない。もしR15 Proへ機種変しても後述するホーム画面構成も含めわかりやすそうだ。
R15 Proは、パスコードと顔認証に加え、指紋センサーを搭載しているので、指紋認証が使用できる。顔認証は外光の状態で使えないことも多く、指紋認証のほうが一発でかつ確実だ。どちらもパスコード設定後、設定が可能。
また顔認証使用時は、設定で「持ち上げて画面オン」にすると、たとえば机から持ち上げたときに電源ボタンを押さずに、画面がオンになり、そのまま顔認証となるため便利だ。
DSDV対応のSIM管理は一般的なもので、プリセットのアクセスポイントを選びさえすれば即使用可能となる。
おサイフケータイ対応が魅力的!
初期起動時のホーム画面は3画面。非常にスッキリした構成でわかりやすい。おサイフケータイのアイコンが最大のポイントだ。Androidのバージョンは8.1.0、初期起動時のストレージは105GB使用可能とかなり余裕がある。
またR15 Neoのときに、タスク一覧と戻るの位置が逆と指摘したナビゲーションバーは、設定のナビゲーションキーで入れ替え=Android標準にできるだけでなく、iOS/iPhone X(S/R)系と同様、ボタンなし、下からのスワイプでホームに戻る操作もできる。これはR15 Neoでも同様だ。
アプリは、ドックに「電話」、「メッセージ」、「ブラウザ」、「カメラ」。ホーム画面に「カレンダー」、「時計」、「天気」、「設定」、「写真」、「Playストア」、「音楽」、「ファイル管理」、「フォンマネージャー」、「テーマストア」、「使用のヒント」、「動画」、「Facebook」、「おサイフケータイ」。Googleフォルダに「Google」、「Chrome」、「Gmail」、「マップ」、「YouTube」、「ドライブ」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「Duo」、「フォト」。ツールフォルダに「連絡先」、「レコーダー」、「コンパス」、「電卓」、「電話のクローニング」、「Keep」。
ほぼR15 Neoと同じだが、「ゲームスペース」がアプリとしてでなく、設定に「ゲーム加速機能」として入っているのが違いだ。またAnTuTu Benchmarkはこのリストに入らず、その差を確認するとこができなかった。
「おサイフケータイ」はプリインストールされているが、「Google Pay」もPlayストアからダウンロードして使用できる。
ウィジェットは、「時計」、「Chrome(2)」、「カレンダー(2)」、「Gmail」、「Google(2)」、「Keep(2)」、「ドライブ」、「Google Play Music(2)」、「Google Sound Search」。効果は、「初期モード」、「キューブスライド」、「反転スライド」、「カードの効果」、「傾斜モード」。
R15 Neoと比べほぼ倍の性能だが、バッテリ駆動は短め
ベンチマークテストは簡易式だが「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octaneは10,135、AnTuTu Benchmarkは145,115でランキングは46位だった。Google Octane、AnTuTu BenchmarkともにR15 Neoのほぼ倍のスコアが出ており、さすがになにをしてもR15 Neoより快適に作動する。とは言え、昨今、ハイエンドだとAnTuTu Benchmarkは20万を超えるので、少し物足らない感じもある。
バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさ50%でYuTubeを全画面連続再生したところ、約10時間で電源が落ちた。バッテリ3,430mAhで、Snapdragon 6系なら一般的なところだろうか。
さて以降余談になるが、少し気になるのは価格だ。9月13日までなら、税別69,980円でよかったが、ご存知のようにこの日iPhoneの新型が発表され、それに伴い、iPhone 7(Plus)とiPhone 8(Plus)の価格が下がり50,800円(税別)からとなった(デュアルレンズを考えると7 Plusの64,800円/税別からだろうか)。
パネルが狭額縁か、液晶か有機ELか、またストレージ容量の違いはあるものの、SoCの性能、ソフトウェア/ハードウェアが一体となった完成度とOSアップデート対応年数、FeliCa/防水対応、カメラの写り、本機で気になったサウンド、そして日本での人気や知名度と、microSDカード必須とか、Apple/iPhoneが嫌いというユーザー以外は、この性能でこの価格クラスのAndroid搭載機をあえて積極的に選ぶ理由がない印象だ。
R15 Neoのように、下のレンジならまだまだ需要も考えられるが、6万円以上のAndroid搭載スマートフォンは、これから(筆者がiPhone Xから乗り換えたHuawei P20 Proのように)なにかに特化して、「これならiPhoneに負けない!」的なものを搭載しないと厳しい戦いになりそうだ。
以上のようにOPPO「R15 Pro」は、6.28型有機EL、Snapdragon 660、6GB/128GB、DSDV、A.I対応デュアルレンズ、IPX7準拠の防水機能、そしてFeliCa搭載によるおサイフケータイ対応と、利便性の高い機能すべてを盛り込んだスマートフォンだ。
少し盛り込み過ぎな一方で、サウンドやカメラの写りなど、あと一歩なにかがほしいところではある。しかし、Android搭載SIMロックフリー機で、FeliCaや防水機能つきを求めているユーザーには、おすすめできるモデルだと言えるだろう。