西川和久の不定期コラム
デュアルレンズでSnapdragon 630搭載のスマホ、「モトローラ Moto G6 Plus」
2018年7月23日 12:39
モトローラ・モビリティ・ジャパン株式会社は6月7日、5.93型「Moto G6 Plus」、5.7型「Moto G6」、5.7型「Moto E5」のSIMロックフリースマートフォンを発表、6月8日より販売を開始した。編集部から最上位機種、「Moto G6 Plus」が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
5.93型液晶にデュアルレンズ、Snapdragon 630、4GB/64GB
冒頭に挙げた3機種中、「Moto G6 Plus」と「Moto G6」は、ネーミングのとおりMoto Gシリーズの6世代目となる。
この2機種は画面サイズ以外に、SoC、メモリ/ストレージ、背面カメラ、バッテリ容量、IEEE 802.11acの有無、Bluetoothのバージョン……など、細かい部分の仕様が異なる。なかでもSoCがSnapdragon 630か450なので、作動速度もそれなりに差がある。税別価格は38,800円と28,800円と、1万円の差だ。
ただし、対応バンドやDSDS対応のNano SIMカード×2など、モバイル通信系は同じ。この点は安心してどちらにするかを考えることができる。また後述するが、一般的にNano SIMカード×2/排他式でmicroSDカード併用がほとんどのなか、この2機種は排他ではなく、同時にすべて利用することが可能。ちょっと変わった機種でもある。おもな仕様は以下のとおり。
【表】モトローラ「Moto G6 Plus」の仕様 | |
---|---|
SoC | Snapdragon 630(8コア/2.2GHz、Adreno 508 GPU) |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 64GB |
OS | Android 8.0 |
ディスプレイ | 5.93型IPS式/2,160×1,080ドット(18:9、FHD+) |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5 |
SIM | Nano SIMカードスロット×2(DSDS対応、microSDスロットと排他ではない) |
対応バンド | 4G:B1/B2/B3/B5/B7/B8/B18/B19/B26/B28/B38/B40/B41 3G: B1/B2/B5/B8/B19(B6含む) 2G:850MHz/900MHz/1,800MHz/1,900MHz |
インターフェイス | USB Type-C、ステレオミニジャック、microSDスロット(最大128GB)、NFC |
カメラ | 前面:1,600万画素(f/2.2)、LEDフラッシュ 背面 1,200万画素(f/1.7)+500万画素(f/2.2) デュアル相関色温度LEDフラッシュ |
センサー | 指紋認証、加速度計、ジャイロスコープ、コンパス、近接、環境照度 |
サイズ/重量 | 約75.5×159.9×8.1mm(幅×奥行き×高さ)/約165g |
バッテリ | 3,200mAh |
本体色 | ディープインディゴ |
税別価格 | 38,800円 |
SoCはSnapdragon 630。8コア/2.2GHzで、Adreno 508 GPUを内包している。SKU的にはミドルレンジ相当だ。メモリは4GB、ストレージは64GB。OSはAndroid 8.0。ある意味、ミドルレンジスマートフォンとしては、標準的な構成だろう。
ディスプレイは、5.93型IPS式2,160×1,080ドット(FHD+)。アスペクト比は流行りの18:9だ。ノッチはなく、普通のフチありデザインとなっている。
ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5。この点はMoto G6のIEEE 802.11n、Bluetooth 4.2と仕様が異なる。対応バンドは表のとおり。日本国内すべての通信キャリアで利用できるのが特徴だと言える。
インターフェイスは、USB Type-C、ステレオミニジャック、microSDスロット(最大128GB)、NFC。SIMはDSDS対応でNano SIMカードスロット×2。先に書いたとおり、microSDとNano SIMカード2つ、すべて同時に使用できる。センサーは、指紋認証、加速度計、ジャイロスコープ、コンパス、近接、環境照度。
カメラは前面1,600万画素(f/2.2)でLEDフラッシュ。顔認証にも対応する。背面は1,200万画素(f/1.7)+500万画素(f/2.2)でデュアル相関色温度LEDフラッシュを搭載。画素数の少ない方はポートレートモードなどで必要な深度計測用だ。
サイズは約75.5×159.9×8.1mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約165g。3,200mAhのバッテリを内蔵している。カラーバリエーションはディープインディゴのみ。税別価格は38,800円。ミドルレンジとしては平均的なところだろうか。
筐体は5.93型のパネルなのでそれなりのサイズ感だが、カーブを採用した手に馴染むデザインで持った感じは悪くない。背面は3Dガラスを採用し価格以上の高級感を醸し出す。重量実測171gはサイズ的に妥当なところか。
前面はパネル上に前面1,600万画素カメラとスピーカー、下に指紋センサー。背面は上に背面1,200万画素+500万画素カメラ。左側面は何もなく、右側面に音量±ボタンと電源ボタン。下側面にType-Cとステレオミニジャック、上側面にNano SIM/microSDカードスロットを配置。付属のUSB式ACアダプタの出力は、5V/3A、9V/1.6A、12V/1.2A。
本機の特徴である、2つのNano SIMと、microSDカードを同時に使えるスロットは、予想はしていたが、実際引き出すとご覧のようにかなり長細い。内部にそれなりの空間が必要なのは容易に想像でき、今後も他社/他機種ではあまり対応しそうもないが、この点に魅力を感じる人も多いだろう。
5.93型IPS式2,160×1,080ドットのディスプレイはiPhone Xの比較からも分かるようにそれなりに大きい。明るさ、発色、コントラスト、視野角すべて良好。価格を考えると十分以上のクオリティだ。18:9の縦横比も慣れてしまえばこちらの方が見やすい。フチはそれなりに幅があり、狭額縁ではないものの、と言ってカッコ悪いほどでもない。また、設定/カラーモードで色温度などパネルの特性を変更可能なのもポイントが高い。
サウンドはDolby Audio対応。好みの音色にも調整できる。スピーカーがモノラルなので横位置時は一方に音が寄ってしまうものの、パワーがあり、カマボコレンジとは言え、上も下もそれなりに出ている。ながらで聴くには十分。イヤフォン接続時はパワーはそこそこだが、大味(大雑把、繊細ではない)な鳴りっぷり。聴くジャンルを選ぶかも知れない。
デュアルレンズで背景をぼかすことは可能だが写りは普通のミドルレンジ
カメラは前面1,600万画素(f/2.2)、背面1,200万画素(f/1.7)+500万画素(f/2.2)。前面カメラは画素数も多くまたLEDフラッシュも搭載しているので自撮りには強そうだ。背面デュアルレンズの500万画素側は主に背景をぼかすための演算用。最大出力サイズは3,024×4,032ピクセルとなる。Exifによると物理的な焦点距離は4mm。
カメラの写真/撮影モードは、オート、マニュアルに加え、ポートレート、カットアウト、スポットカラー、パノラマ、テキストスキャナ、フェイスフィルター。ポートレートは背景をぼかすモード、スポットカラーは選択した色のみ残すモードだ。動画/撮影モードは、スローモーション、タイムラプス、YouTubeライブ、フェイスフィルター。
マニュアル時、焦点距離、WBはAutoを含む5種類(数値による指定はできない)、ISO感度はAuto/100から3200、露出補正は-2から+2。シャッタースピードや絞りをコントロールする機能はなく、オートの機能拡張版的な位置づけだ。ただし、HDRのAuto/ON/OFFはオート時のみの機能となる。
設定は、背面/前面の写真サイズ(背面:12MP, 9.1MP, 8MP, 6MP)/ビデオサイズ(背面:4KウルトラHD/30fps, フルHD/60fps, フルHD/30fps, HD 720p/30fps, VGA 480p/30fps)、自撮り写真をミラー表示、ストレージ、位置情報を保存、クイックキャプチャー、任意の場所のタップで撮影、シャッター音、補助グリッド、チュートリアルの再生。クイックキャプチャーは、本体を2回すばやくひねるとカメラを起動するなどMoto固有のアクションとなる。
背面カメラで撮影した作例を14点掲載する。連日の猛暑と言うこともあり、先に夕方以降、後日、日中の撮影を行なったので、並びがいつもの逆になっている。基本オートで撮影。一部ポートレートやスポットカラー(右上がハートの看板)も混じっている。各写真のファイル名の後ろに_LL(低照度)、_HDR(HDR ON)、_PORTRAIT(ポートレートモード)が追加されているので、撮影時の状態が分かりやすい。
起動やAFなどは爆速ではないものの普通に扱える速度。ただ右下にあるプレビューだけは完全に描画するまで少し時間がかかる(はじめは荒く出て徐々に綺麗になる方式)。
写真のあがり自体はごく普通。良くも悪くもない。AWBもそれなり。クラス相当と言ったところか。ポートレートモードもあるので、背景をぼかすことができ、写真の表現に幅ができるのはうれしいポイントだ。
セットアップ
初期設定は、Wi-iFを使いGoogleアカウントや指紋認証設定などすべてスキップして行なった。合計12画面。標準的な画面数だが、最後の“アカウントの追加(Outlook)”は余分だと思った。必要に応じて後から設定でいいのではないだろか。
指紋登録は、パターン、PIN、パスワードいずれかの設定後行なえる。センサーが長細く登録しにくい以外はとくに問題なく作動する。スリープ時、指紋センサー長押しでロック解除する機能は、電源ボタンを押す手間がなく、一気にロック解除できるのでお勧めだ。
顔登録はメガネをかけたまま行なった。認証はメガネの有無とは無関係に可能だが、周りの状況や明るさの加減でうまくロック解除できないケースが結構ある。指紋認証をおもに使ったほうが無難だろう。
デュアルSIM管理は、DSDS対応の一般的なものだ。APNも有名どころは登録されており、選ぶだけで完了する。
Androidピュアでスムーズな動作が売りの1台
ホーム画面は3画面。1画面目はGoogle。2画面目はLinkedIn、Outlook、Googleフォルダ、Duo、Moto、カレンダー、Playストア。3画面目は設定と連絡先。ドックに電話、メッセージ、Chrome、フォト、カメラを配置。上から下へスワイプで通知パネル、壁紙長押しでウィジェット設定など、操作はAndroid標準そのままなので、戸惑うこともないだろう。
Androidのバージョンは8.0.0。初期起動直後のストレージは64GB中19%に相当する12.77GBを使用(若干の画面キャプチャを含む)。
アプリは、「カメラ」、「カレンダー」、「スプレッドシート」、「ドキュメント」、「ドライブ」、「ファイルマネージャ」、「フォト」、「ヘルプ」、「マップ」、「メッセージ」、「時計」、「設定」、「電卓」、「電話」、「壁紙」、「連絡先」、「Chrome」、「Dolby Audio」、「Duo」、「FMラジオ」、「Gmail」、「Google」、「LinkedIn」、「Moto」、「Outlook」、「Playストア」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「YouTube」。
ほぼAndroid標準に、若干のアプリを加えた構成だ。同社の製品サイトにも「Androidピュアで、スムーズな動作 - スマートフォンの動作を鈍らせる余計なソフトウェアは非搭載。最新AndroidとMotoエクスペリエンス用アプリだけをプリインストール」とあり、なかなか的を得ている。LinkedInやOutlookがあるところなどは、少しビジネス用途も意識しているのだろうか。
Motoアプリは本機独自のアプリだ。Motoキー(指紋によるサイトやアプリのコントロール)、Motoアクション(ジェスチャーによる操作)、Motoディスプレイ(通知と夜間表示)、Motoボイス(音声コマンド)といった、独自の機能拡張部分を設定する。先にご紹介した、本体を2回すばやくひねるとカメラを起動=クイックキャプチャーは、Motoアクションの1つとなる。
ウィジェットは、「カレンダー」、「スプレッドシート」、「スライド」、「ドキュメント」、「ドライブ」、「マップ」、「メッセージ」、「時計」、「時刻と天気」、「設定」、「連絡先」、「Chrome」、「Gmail」、「Google」、「Google Play Music」、「Outlook」。
可もなく不可もなく、ミドルレンジでは普通の性能
ベンチマークテストは「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octaneは5,073、AnTuTu Benchmarkは90,251でランキングは51位だった。どちらもミドルレンジを痛感するスコアだ。速いか遅いかは用途にもよるだろうが、Webブラウジングやソーシャル系が中心なら普通に扱える性能と言える。
バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさ50%でYuTubeを全画面連続再生したところ、約9時間で電源が落ちた。このクラスとしては一般的な駆動時間だろう。
以上のようにモトローラ「Moto G6 Plus」は、Snapdragon 630、メモリ4GB、ストレージ64GB、5.93型IPS式/2,160×1,080ドットパネル、ポートレートモードに対応するデュアルレンズ……などを搭載したSIMロックフリースマートフォンだ。
2つのNano SIMと、microSDカードを同時に使えるスロットは必要な人にとってポイントが高い。またこのクラスの割に背面3Dガラスを採用、筐体も高品質に仕上げられている。Androidピュアでスムーズな動作が売りなのも共感できる。
本機を構成するそれぞれのパーツはクラス相当なのだが、それらすべてをそつなく仕上げ、トータルで魅力的にまとめている1台。ミドルレンジで何か1つが突き出ているのではなく、オールラウンドなスマートフォンを探しているユーザーにお勧めできる製品だと言えよう。