Hothotレビュー
3万円切りで驚きの質感を実現したスマホ、Moto G6
~3大キャリアをサポートするSIMロックフリー機
2018年7月2日 06:00
モトローラ・モビリティ・ジャパン株式会社は、5.7型ディスプレイを備えたSIMロックフリースマートフォン「Moto G6」を発売した。Amazon.co.jpでの価格は28,000円前後だ。今回1台お借りしたので、レビューをお届けしたい。
安価ながら高いデザイン性と質感を実現
Moto G6は6月8日より発売されたのSIMロックフリースマートフォンである。3万円前後の価格帯はスイートスポットであり、ここにいかに良いバランスの製品を持って来れるか、メーカーの手腕が問われる分野である。
もともとこの価格帯の先駆者は2014年にASUSが投入した「ZenFone 5」をはじめとするZenFoneシリーズであったのだが、2016年にファーウェイが投入した「P9 lite」の比較的高性能なSoCと高いカメラ性能が評価され、2017年は後継の「P10 lite」、そして2018年は「P20 lite」がベストセラーとなった。
moto gシリーズは、この厳しい競争が行なわれている価格帯に投入される製品である。そのため、なにか他社より優れている特長がなければ勝ち残ることは難しい。そして、モトローラが選んだ手段は高いデザイン性と質感のようだ。
背面は、旧機種のMoto G5までは金属製であったのだが、g6ではガラス製となった。一見黒いように見えるのだが、光の当たり方によっては濃い紺色となり、独特の曲線のようなテクスチャも浮かび上がる。本体中央にモトローラのロゴだけをプリントし、それ以外の文字やマークは一切ない、非常にエレガントなデザインと質感を実現している。
また、背面も手に握ったときにフィットするよう、左右両辺がしぼむようカーブしている。仕様上の重量は162.5gと、エントリーモデルとしては重めの部類に入るし、厚さは最薄部で8.3mmで厚い部類に入るが、実際に手にしたときはその印象を感じさせない作りとなっている。本体の上辺と下辺も緩やかなカーブとなっており、横持ちもしっくりくる。
そして特徴的なのが本体中央上部のカメラユニット。Motoシリーズは従来から大きな円形のカメラユニットを採用しているのだが、本機はMoto X4シリーズのデザインを踏襲するものとなっており、腕時計のベゼルや文字盤を意識したようなものとなっている。周囲にギザギザのおうとつパターンを、中心部に同心円状のヘアライン加工を施しており、光の当たり方によって見え具合が刻々と変化する。背面カバーの独特なテクスチャと合わせて、いつまでもじっくりと眺めていたい、所有する喜びをもたらすデザインとなっている。
その一方で、ガラスであるがゆえに滑りやすくなってしまっている点は否定できない。素のままのほうが美しく見えるので、できればそのまま手にしたいところだが、滑って落としては元も子もない。カバーをつけるかつけないかは、本当に悩ましいところだが、本製品はカバーが別売りで、せっかくの安さがスポイルされてしまうので、神経質になるよりもそのままにして使いたいところだ。
近年のミドルレンジクラスのスマートフォンは、ある程度汎用部品が採用されている以上、筐体デザインはどれも似たり寄ったりな印象だが、Moto G6に関しては独創性があり、他社と最大限の差別化を実現している。この点、筆者は高く評価したい。
18:9のディスプレイで持ちやすい大きさ
Moto g6はディスプレイに2,160×1,080ドット表示対応の5.7型液晶を採用している。数値上、従来モデルのMoto G5からは0.7インチも大型化されているのだが、これは純粋に縦方向に240ドット分広がっただけであり、本体の幅はMoto G5の約73mmに対して72.3mmと、むしろ狭まっている。従来の5型クラスのスマートフォンを片手で操作できるユーザーにとって、ホールド感はまったく変わらないと言っていい。
高さは約144mmから約153.8mmと、約1cm伸びている。とは言え、Moto G5からディスプレイの占有率が向上しており、その分情報量も増えているわけで、ここは歓迎してよいのではないだろうか。
ディスプレイの色は非常に鮮やかで、このクラスとしては文句なしの品質。標準では若干寒色よりという印象を受けたが、設定→ディスプレイ→カラーモードで「暖色」に設定することもできるので、好みに合わせて設定するとよい。また、Motoエクスペリエンスのユーティリティでは、日没後にブルーライトを軽減するモードに設定することも可能なので、こちらも併用するとよいだろう。
気になるのは、ディスプレイの輝度の調節範囲がせまく、明るい環境下では問題ないが、暗い環境下では眩しく感じられる点。また、自動で調節される輝度範囲も若干せまいような印象だ。Xiaomiをはじめとする多くのモデルではかなり輝度を下げられるので、このあたりは次モデルで改善を望みたい。
本機は3.5mmミニジャックが残されており、充電しながらゲームプレイでイヤフォンを使うことは可能だ。音はクリアだが若干高音に乏しい印象である。Dolby Audioもあるが、イヤフォン時のイコライザーは+3dBに制限されるため、高域を持ち上げてもイマイチ機能しない。
前面カメラによる顔認証を実装
ディスプレイの大型化に伴い、従来と比較して指紋センサーの面積が減っている。このあたりは賛否両論だろうが、Moto G6に搭載された指紋センサーの反応は比較的よく、小型化によるデメリットはあまり感じられなかった。
新たに前面カメラによる顔認証がサポートされたので、こちらを使えば前面の指紋センサーの出番も減る。手を洗った直後など指先が濡れている状態では、(どの機種もそうだが)指紋センサーがうまく反応しないことが多く、こういったシーンでも顔認証は活用できる。
ただ、本機の顔認証はIRカメラなどを用いたものではないため、セキュリティ性が高いものではないとされる。また、顔認証が有効なのはディスプレイが復帰してから3秒以内で、その時間内にうまく認識されなければ指紋となる(おそらく電力節約のため)。
さらに、認識してからロックが解除されるまで1秒近く待たされることもあるため、OnePlus 6のように「使い出したらもうやめられない」と思えるほどの顔認証にはなっておらず、「電源ボタン押して待つぐらいなら指紋センサーをタッチしたほうが速い」と思わせるようなこともしばしばだ。
指紋センサーが背面にあるモデルは、ディスプレイを上にして机の上に置く場合、使おうと思ったときに1度端末を持ち上げなければならず、ならば顔認証という手段も取れるのだが、本機はそもそも指紋センサーが前面にあるため、顔認証がなくとも不便を感じることはない。よって指紋を常用し、顔認証は併用というスタイルが良いだろう。
気が利くMotoアクション
本機はピュアAndroid環境に近いのだが、利便性を高めるMotoエクスペリエンスユーティリティが入っている。製品発表会でも毎回ふれているのであえて詳しく説明しないが、本体の加速度センサーによって、本体を2回すばやくひねるとカメラを起動、2回すばやく振るとフラッシュライトを起動するといった機能はとても便利だ。試用中、これらの機能をオンにしたままでも誤操作が発生したことは一度もなかった。
加えて、オプションで画面を縮小して片手で操作できるようにするモードや、持ち上げて着信音停止、下向きで着信音や通知音を無効化といった気の利く機能も用意されている。
「ワンボタンナビ」は、画面下部に表示されるナビゲーションボタンを排除するもので、これを有効にすると指紋センサーでさまざまな操作が行なえるようになる。具体的には、「ホームボタン」が軽くタップ、「戻る」が右から左、「タスク切り替え」が左から右、「ディスプレイオフ」がちょっと長め押し、「Googleアシスタント呼び出し」がさらに長め押しだ。ちなみに、指紋認証用の指でなくてもこれらの操作が可能である。
ワンボタンナビをオンにするとナビゲーションボタンがなくなるので、もともと縦長の画面をさらに広く使えるようになる。このあたりはユーザーの好みに合わせて選択したい。
ただ筆者の環境で若干うまく動かなかったのが「Motoディスプレイ」。この機能はデフォルトでオンになっており、アプリケーションの通知などがあったさいは、ディスプレイをフェードイン/アウトさせる。おそらく本機に通知LEDが実装されていないゆえの配慮だろう。
これ自体はまったく問題ないのだが、デフォルトでは「手を伸ばして起動する」という項目もオンとなっており、なにかか近づくとディスプレイがフェードインする。使用しているセンサーは不明だが、感度が過剰なほど良く、本機の横方向でも反応してしまい、スマートフォンを見る気がないのに、近くに手を近づけただけでちょくちょく復帰してしまった。
ちょっと時計や通知を見たいと思ったときに、とても便利な機能なのは間違いないのだが、手が届く場所だと何度も復帰してしまいバッテリが心配になるし、手が届かない場所に置いてしまうとせっかくの利便性も本末転倒だ。このあたりできることならソフトウェアのアップデートでチューニングを図ってもらいたいところである。
屋外ではいい絵が出てくるカメラ
Moto G6の背面には1,200万画素/F2.0+500万画素/F2.2のデュアルカメラを搭載しており、深度を検出して、背景をぼかしたような写真、背景をモノクロにする写真などを撮影できる。このあたりはもはや中国製の1万円台のスマートフォンでも実現できているので、特筆すべき点はない。強いて言うなら、低価格ながら台形補正するテキストキャプチャ、スローモーション(フレームレートは不明)、タイムラプス撮影機能などは評価できる。
背面カメラの写真画質に関しては、オールマイティーなシーンに対応できるほどの期待はできない。動体があると露出がコロコロ変わるし、ダイナミックレンジもせまく、すぐに白飛びしたりする。よって、HDRが自動だとかなりの確率でオンになるようだ。室内ではホワイトバランスも青に転がりがちで、食事を美味しそうに撮ったりするのは苦手である。
レンズはごくわずかな陣笠収差が見られる。ボケは2線ボケの傾向があるし、コントラストが高いシーンにおいてはパープルフリンジの発生が認められるが、スナップ程度なら問題ないだろう。
若干輝度ノイズや不自然なジャギーが気になる場面もあるし、すぐにHDRがオンになってしまうが、よく晴れた昼間の屋外ではそこそこ高い描写能力を見せ、なんとなく一昔前のコンパクトデジタルカメラを彷彿とさせる絵が出てくる。色味は独特な爽快感のあるもので、じっくり向き合えば味のある作品作りも不可能ではない。
本製品で特筆すべきなのは前面カメラで、1,600万画素/F2.2というより高スペックなものになっている。美顔補正の調整やHDRモードに加え、シャッタースピードやISO感度、露出などはマニュアルで設定可能だ。加えて、前面にもフラッシュを搭載しており、暗所でもセルフィー撮影が可能となっている。ただ、前面のカメラのピントは無限遠にできず、近距離に特化している。
このあたりの仕様はライバルのP20 liteにも共通して言えるが、P20 liteは前面フラッシュがない分、本製品のほうに軍配が上がる。背面カメラも決して悪いわけではないが、どちらかと言えば若年層向けに前面カメラに特化したものだと言える。
ちなみに本機は国内向けに投入されたモデルとしてはめずらしくシャッター音をオフにできる。そもそもシャッター音自体も上品で、オンにしたままでもさほど気にならないが、静かな場所で撮影するさいには重宝するだろう。
普段遣いには十分な性能
本製品はSoCにSnapdragon 450、メモリ3GB、ストレージ32GBを搭載した仕様となっている。Snapdragon 400番台と聞くとローエンドを想像してしまうのだが、Cortex-A53を8コア内蔵し、最大1.8GHzで動作。GPUはAdreno 506などとなっており、このスペックはメインストリーム向けのSnapdragon 625に肉薄するものだ(625は2GHz動作でGPUは同じ)。
ある程度性能に期待が持てるプロセッサだが、今回はAntutu Benchmark V7と3DMarkを実施してその性能を計測してみたところ、Antutuで70,647、3DMarkのIce Storm Extremeで7,780という結果になった。
これはライバルとなるP20 liteより劣るスコアだが、普段使いにおいて差を感じることはほとんどないはずだ。実際、「どうぶつの森 ポケットキャンプ」や「ドラゴンボールレジェンド」といったカジュアルな3Dゲームでは、ストレスを感じることはなかった。「PUBG MOBILE」なども画質を落とせばプレイ可能なレベルである。3万円を切るスマートフォンとしては十分だろう。
バッテリは3,000mAhのものが搭載されている。エントリー向けとしては比較的大容量なもので、1日の使用はほぼ問題のないレベルだ。このクラスとしてはめずらしく、5V/3Aまたは9V/1.6A、12V/1.2Aの出力が可能な「15Wターボパワー充電器」も同梱されているが、肝心な本体は高速充電に対応しているかどうか謳われておらず、実際の充電時間も標準的であった。
なお、対応バンドは、4Gが1/2/3/5/7/8/18/19/26/28/38/40/41、3Gが1/2/5/8/19、2Gが850/900/1,800/1,900MHzとひととおり網羅しており、国内の3大キャリアのバンドをカバーし、VoLTEにも対応。国内で使う分にはまったく問題ないだろう。また、SIMトレーはNano SIM×2に加えて、microSDも同時に装着可能で、デュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)は実用的だ。
最大のライバルは前モデル? 玄人好みの仕様は好感が持てる
以上、Moto G6を概観してきたが、シンプルで美しいデザイン、ピュアAndroidに近い仕様や便利なMotoアクションなど、どちらかと言えば玄人好みの端末に仕上がっている製品と言える。
本製品は3万円台という激戦区に投入されるモデルとして備わるべき機能や性能を実現しており、死角は比較的少ないのだが、唯一気になるのは、前モデルの「Moto G5S Plus」がほぼ同等かそれより安い価格で販売されていることだ。
こちらは金属筐体で、液晶もフルHD対応の5.5型となっているが、SoCはSnapdragon 625とより高速で、メモリも4GBと多い。機能もほぼ同等となっており、Android 8.0へのアップデートも保証されていることから、デザインや質感よりも性能を重視するユーザーは、こちらを選ぶ可能性も出てくる(筆者はやはりデザインでMoto G6推しだが)。
また、ひとまわり大きいディスプレイや、1万円の上乗せを許容できるなら、上位の「Moto G6 Plus」も視野に入れておきたい。こちらは確実に競合よりもワンランク上の仕様となっており、価格があと3,000~4,000円ほど安ければ、新たな定番となる可能性を秘めていると感じた。
だが、極端に高度な3Dグラフィックスゲームをプレイせず、とりあえず手頃なSIMロックフリー機を探しているのであれば、本機は強力な選択肢となるだろう。au回線をサポートしているのも特徴の1つで、MVNOとしては通信速度に実績のあるUQ Mobileの回線が使えるのも魅力。安価にスマートフォンを運用したいユーザーにおすすめしたい。