西川和久の不定期コラム

片手で持てる8型約315gのWindowsタブレット、マウス「WN803」

WN803(スタンドは付属しない)

 マウスは2日、8型のWindowsタブレットを発表した。約315gと軽くどこへでも運べ、片手で持てるサイズが特徴だ。

 編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

ベーシックな8型Windows 10タブレット

 過去、本連載では7~8型のタブレットを比較的多く扱ってるので、この前のWindowsタブレットは……と思い見直すと、じつは2016年5月の「Diginnos DG-D08IW2」まで遡る。Windows搭載機としてはこれだけで、ほかはすべてAndroid搭載機だったのだ。

 当時、Bay TrailからCherry Trailへの移行時期であり、今回ご紹介するマウス「WN803」とほぼ同じスペック。そう考えると、Cherry TrailのAtomプロセッサはロングランとも言える。

 そのほかのスペックはメモリ2GB、ストレージはeMMCで32GB。Windows 10を動かすには最小限となる。おもな仕様は以下のとおり。

マウス「WN803」の仕様
プロセッサAtom x5-Z8350(4コア4スレッド/1.44GHz~1.92GHz/キャッシュ2MB/SDP 2W)
メモリ2GB/PC3-8500 DDR3L SDRAM(オンボード)
ストレージeMMC 32GB
OSWindows 10 Home(32bit)
ディスプレイ8型1,280×800ドット(WXGA)、光沢あり、10点タッチ対応
グラフィックスIntel HD Graphics 400/Micro HDMI
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.0
インターフェイスMicro USB 2.0×1、microSDXCカードリーダ、前面192万画素/背面192万画素Webカメラ、音声入出力、スピーカー/マイク(ともにモノラル)
バッテリ駆動時間約6.1時間
サイズ/重量210×122×10mm(幅×奥行き×高さ)/約315g
税別価格24,800円

 プロセッサはAtom x5-Z8350。4コア4スレッドで、クロックは1.44GHzから最大1.92GHz。キャッシュは2MBでSDPは2W。x5-Z83系としては最上位だ。

 Atom X5は先に書いたように、過去何度となく登場した息の長いSKUで、出荷は2016年第1四半期。2年半ほど前のものとなる。メモリはPC3-8500 DDR3Lで、2GBがオンボード。ストレージはeMMC 32GB。どちらもカスタマイズによる追加はできない。OSは32bit版のWindows 10。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel HD Graphics 400、外部出力用にMicro HDMIを装備している。ディスプレイは光沢ありの8型1,280×800ドット(WXGA)、10点タッチ対応だ。また液晶保護シート貼付済みの状態で出荷される。

 ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.0。そのほかのインターフェイスは、Micro USB 2.0×1、microSDXCカードリーダ、前面192万画素/背面192万画素Webカメラ、音声入出力、スピーカー/マイク(ともにモノラル)。またMicro USB-USB変換ケーブルも付属する。

 サイズは210×122×10mm(幅×奥行き×高さ)、重量約315g。バッテリ駆動時間は約6.1時間で、税別価格は24,800円。

 サイトでのカスタマイズは本体に関するものはなく、外部ディスプレイやプリンタなどの選択となる。

前面パネル中央上に192万画素Webカメラ。フチはブラック。液晶保護シート貼付済みの状態で出荷される(掲載した写真はすべて液晶保護シートあり)
背面左上に192万画素Webカメラ。背面はホワイト
左/上。上側面左からWindowsボタン、microSDカードリーダ、音声入出力、Micro HDMI、Micro USB。手前にあるスリットがスピーカー。左側面にはなにもない
右/下。右側面には電源ボタンと音量±ボタン。下側面にはなにもない
付属のACアダプタなど。USB式ACアダプタ、USBケーブル、Micro USB-USB変換ケーブル
重量は実測で313g
片手で持てる。筆者の手は小さいのだが、それでも収まるサイズ

 筐体はすべてプラスチック製で、とくに高級感はない。フチは(縦位置で)左右がせまく、上下はそれなりに広い。裏はホワイト。写真からもわかるように、8型で厚み10mmなので、片手で持つことが可能。重さも実測313gとサイズ相応だ。

 前面は、パネル中央上に192万画素Webカメラ。液晶保護シート貼付済みの状態で出荷されている。背面は左上に192万画素Webカメラ。上側面左からWindowsボタン、microSDXCリーダ、音声入出力、Micro HDMI、Micro USB、そしてスリットにスピーカー。右側面には電源ボタンと音量±ボタンを配置。左側面と下側面にはなにもない。

 最近のモデルとしてはWindowsボタンがあるのはめずらしいかもしれない。

 カメラは前面/背面ともに192万画素で同じ画素数。少しめずらしい構成だ。顔認識は機能するものの、FFなので基本ビデオ用となる。何枚か試し撮りしたところ、画質は写真としては使えないレベルで、メモ用途程度に割り切っておくべきだろう。

 Micro USB-USB変換ケーブルが付属し、これを使ってUSB機器を簡単に接続可能だ。実際USB HUB経由でキーボードとマウスを接続(もちろんBluetooth接続でもいいのだが)して試用した。

 ディスプレイは、液晶保護シートを外せば少し見え方が違うと思うが、貼ったままでも、明るさ、コントラスト、発色、視野角などは価格を考えると良好。気にならないレベルだ。

 ただし輝度0%は暗く、実質50%以上で使うことになるだろう。10点タッチもスムーズに反応する。Micro HDMIがあるので、外部ディスプレイを接続し、プレゼンなどを行なうことも可能だ。

 振動やノイズはとくになし。発熱は、ベンチマークテストなど負荷をかけると、背面のカメラ周辺が熱を持つ。

 サウンドは上のスリットにモノラルスピーカー。パワーもなく、とりあえず鳴るレベルだ。イヤフォンで視聴しても傾向は同じだが、かと言って酷い鳴り方ではなかった。

性能は期待できずライトな用途向き

 OSは32bit版のWindows 10。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は約2画面。ユーザーサポート・グループに若干アプリやPDFが追加されている。

 デスクトップはショートカットなどの追加はない。作動速度はAtom/2GB/eMMC 32GBということもあり、Windows 10がなんとか動くレベルだ。

 とはいえ、ひさびさにこのクラスの8型Windowsタブレットをさわったが、ネット中心の使い方なら、まぁ悪くない。FacebookやInstagram、Twitter、Office Mobileなど、主要なストア(UWP)アプリもそれなりにあり、AndroidやiOSっぽく使うこともできる。

 ストレージはeMMC 32GBのSanDisk「DF4032」。Cドライブのみの1パーティションで約28GBが割り当てられ、空きは15.7GB。またBitLockerで暗号化されている。Wi-FiとBluetoothはBroadcom製だ。

スタート画面1/2(タブレットモード)
スタート画面2/2(タブレットモード)
起動時のデスクトップ
デバイスマネージャ/主要なデバイス
ストレージのパーティション

 プリインストールのアプリは「McAfee Security」と同社おなじみ「Windows 10ユーザーガイド」、「ハードウェアマニュアル」のPDFが2つ入っているだけ。ストレージの空きも少なく、それを考慮してのことだろう。

 ベンチマークテストは、PCMark 8、3DMark、CrystalDiskMark、BBench。通常測定しているPCMark 10は非対応、PCMark 8のStorageは3回実行したもののエラーで完走せず、CINEBENCH R15は32bit版がないため、今回は記載していない。結果は以下のとおり。

ベンチマークテスト
PCMark 10 v1.0.1457
PCMark 10 Scoren/a
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.01,328
Creative Accelarated 3.01,376
Work Accelarated 2.01,150
Storagen/a
3DMark v2.4.4264
Time Spyn/a
Fire Strike Ultran/a
Fire Strike Extremen/a
Fire Strike171
Sky Diver759
Cloud Gate1,366
Ice Storm Extreme10,392
Ice Storm14,592
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード165.716 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト98.286 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード34.280 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト15.025 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード34.392 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト15.416 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード11.228 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト14.402 MB/s
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリ節約機能)
バッテリ残量2%まで6時間48分55秒

 各ベンチマークの結果は、あらかじめ予想はできたが、総じて低いスコアだ。画面がWXGA、そして32bitということもあり、作動しないものもあった。

 参考までに、EdgeでのGoogle Octane 2.0スコアは約5,000。Surface Go(8GB/128GB)が約11,000(店頭デモ機で確認)ほどだったので、およそ半分足らず。これでも良いかどうかは、用途によるだろう。

 バッテリは7時間近く動くものの、輝度0%は暗いため、実用レベルの50%以上にすると、もう少し短くなると思われる。

 余談であるが、少し前に山田祥平氏のRe:config.sysで、「4GBのメモリ空間でPCは使いものになるのか」というコラムが載った。この内容からすれば、メモリ2GBな本機は論外となってしまう(笑)。

 筆者のメイン環境は、macOS(Core i5/16GB/SSD)にParallels Desktopをインストールし、その上でWindows 10も併用している。VMのメモリは4GBだ。基本テキスト処理中心だが、Photoshopなども動かし、とくにストレスなく扱えている。Chromeもいくつかタブがある程度なら重くない(拡張機能はほぼ入れていない)。

 つまり、4GBで足りるかどうかは使い方による。同様に、メモリ2GBでもEdge、Office Mobile、Facebookなどソーシャル系アプリなどをコンテンツ消費用として使う分にはなんとかなるレベルだ。

 もちろん大満足の性能を得るには、それなりのコストをかける必要があり、価格並みの性能になるのは仕方ないところだ。

 逆に、本機の強みはサイズと重量。どちらを優先するかは用途次第で、このサイズと重量、そして価格で、もっとハイパワーであることに越したことはないのだが、それが実現するにはもう少し時間が必要だ。


 以上のように、マウス「WN803」は、8型WXGA/Atom x5-Z8350/2GBメモリ/eMMC 32GBのWindows 10タブレットで、約315gの重量で片手で楽々持てるのが魅力的だ。

 反面、Windowsマシンとしてはプロセッサ、メモリ、ストレージすべてが最小限であり、その分、性能もギリギリライン。向かない用途も多々あるだろう。

 仕様上、とくに気になる部分もなく、いつでもどこでも片手でWindowsマシンを持ち歩きたいユーザーにおすすめできる1台だ。