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AMDが新CPU「Ryzen 7」を発売。続けて「Ryzen 5」と「Ryzen 3」も投入へ
2017年3月2日 23:00
新アーキテクチャを満載したRyzen 7
AMDは満を持して、Intelと正面から対決できる8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7」を投入した。Ryzenの新CPUコア「ZEN」は、フルスクラッチで新設計されており、シングルスレッド性能と、SMT(Simultaneous Multithreading)によるマルチスレッド性能、高い電力効率、低電圧駆動による幅広い性能レンジなど、あらゆる角度の性能と効率を追求した。シングルスレッド性能に問題があった従来のBulldozer系CPUコアとは異なる、全方位のCPUコアだ。
CPUコアのマイクロアーキテクチャでは、x86/x64の弱点である複雑な命令のデコードをバイパスするために、2K分の命令を保持できるOPキャッシュを搭載。デコードした内部命令マイクロOPをキャッシュすることで電力効率と性能を向上させた。OPキャッシュの採用に伴い、命令デコードの方式を変更して、x86/x64命令をほぼ1対1でマイクロOPに変換するようにした。
CPUを円滑に動作させるための分岐予測には、パーセプトロン方式のニューラルネットワーク分岐予測を採用。大量の予測テーブルとウエイトデータアレイを搭載することで、高い精度で複雑な分岐パターンまで予測可能とした。整数演算パイプは、従来のBulldozer系コアが2本だったのに対して、ZENでは4パイプとして命令並列度を向上させた。こうした仕組みにより、ZENでは従来のAMDコアよりも、クロックあたりの命令実行数「IPC(Instruction-per-Clock)」が52%も向上した。
また、CPUの回路設計やパッケージにも、電力効率を上げる仕組みを盛り込んだ。クロックディストリビューションネットワークの設計を一新、2レベルのクロックゲーティングによりゲーティング効率を上げた。CPUコアのダイ上に1,300以上のクリティカルパスモニタやパワーサプライモニタ、サーマルダイオード、ドループディテクタなどを配置。電圧の変動やダイ温度上昇、クリティカルパスのディレイなどを細かく検知。最適な動作周波数で動作できるようにした。
動作周波数と電圧の切り替え「DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)」では、25MHz単位の細粒度で周波数を切り替える。また、駆動電圧もCPUコア単位で個別に制御する。電圧レギュレータの実装は、デジタルLDO(Low Drop-Out)により入力電圧を落とす方式を採用。ダイの下に「RDL(ReDistribution Layer)」を導入し、電圧制御を行う。電力の制御のために、配線層に多数のキャパシタ「MIMCap」を埋め込んだ。
Summit RidgeはGLOBALFOUNDRIESの14nmプロセスで製造
AMDはパワフルなZENコアを、まずCPU製品「Ryzen 7」ファミリとして投入した。コードネーム「Summit Ridge(サミットリッヂ)」で、8コア/16スレッドで。上位の1800Xと1700XはIntelのBroadwell-E(ブロードウェル-E)に対抗する。Intelの8コア/16スレッドの「Core i7-6900K」に対しては、Ryzen 7 1800Xは価格で半分、TDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)で3分の2につける。
Ryzen 7 1800X | 8コア/16スレッド | 3.6GHz | 4.0GHz | 95W | 499ドル | 59,800円 |
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Ryzen 7 1700X | 8コア/16スレッド | 3.4GHz | 3.8GHz | 95W | 399ドル | 46,800円 |
Ryzen 7 1700 | 8コア/16スレッド | 3.0GHz | 3.7GHz | 65W | 329ドル | 38,800円 |
Summit Ridgeは、GLOBALFOUNDRIESの14nm FinFET 3Dトランジスタプロセス「14LPP」で製造され、8個のCPUコアを搭載する。ダイサイズは212.97平方mmと、従来のAMD APUやIntelのBroadwell-E(246平方mm)よりもコンパクトだ。これは、ZEN CPUコア自体がコンパクトに設計されているためだ。IntelのSkylake/Kaby Lake系と比べると、ZENの方がCPUコア自体が小さく、4 CPUコアで構成されるコンプレックスも小さい。
ZENコアのSummit RidgeはDRAMインターフェイスとPCI Express、SATAやUSBのI/Oを備えておりSoC(System on a Chip)的な設計となっている。PC向けではプラットフォームチップセットと組み合わせる。
DDR4メモリは2,667Mtpsまでの転送レートを標準でサポート
メモリはDDR4メモリで、デュアルチャネル(x128)で2,667Mtpsまでの転送レートをサポート。PCI Express Gen3 x16のほかにPCI Express Gen3とSATAまたはNVMeに使うことができるI/Oレーンを4つ備える。USBは3.1 Gen1を4ポート。そのほか、チップセットとの接続にPCI Express x4を備える。
Ryzen 7のDDR4インターフェイスはDRAMランクとDIMM枚数によってサポートする転送レートが変わる。デュアルチャネルでデュアルランクDIMMを各チャネルに2枚ずつ合計4 DIMMを挿した場合は、転送レートは1,866Mtpsに抑えられる。シングルランクDIMM 4枚で2,133Mtps、デュアルランクDIMM 2枚で2,400Mtps、シングルランクDIMM 2枚で2,667Mtpsとなる。
Ryzenではソケットは「AM4」となり、マザーボードプラットフォームも一新される。ソケットのAM4への変更に伴い、RyzenからシステムI/O回りも変わる。Ryzenファミリに対応するAM4向けチップセットはハイエンドが「X370」、メインストリームが「B350」、バリューレンジが「A320」となる。オーバークロックに対応するのはX370とB350だ。また、SFF(Small Form Factor)向けとしてX300とA300も投入される。システム的には、かなりI/Oリッチな構成となる。
チャネル市場にフォーカスするRyzen 7
AMDは、Ryzen 7についてはチャネル先行でマーケティングする。過去のAPUでは、メーカー先行のケースが多かったが、Ryzen 7は完全にチャネル市場フォーカスとなっている。高性能CPUを必要とするPCゲーマー、コンテンツクリエータ、オーバークロッカを初期のターゲットとする。オーバークロッキングも重視しており、トップツーボトムでのアンロックを謳う。また、Ryzen 7のオーバークロックコントロールのためのコンソールツール「AMD Ryzen Master Utility」も用意する。
チャネル重視であるため、マザーボードベンダパートナとAM4マザーボードのラインナップにも力を入れる。PCビルダーの開拓にも熱心だ。発表会でも、PCビルダーが強いヨーロッパなどのRyzen 7システムが多数展示されていた。
Ryzen 7に続いてRyzen 5と3も投入
AMDは次世代CPU/APU「Ryzen」ファミリを段階的にハイエンドから投入して行く。3月2日に発売となった最上位の「Ryzen 7」CPUに続いて、今年(2017年)第2四半期に「Ryzen 5」CPUが投入される。さらに、今年後半にはメインストリーム向け普及価格帯の「Ryzen 3」APUが登場する。Ryzen 7が8 CPUコアの高性能CPUであるのに対して、Ryzen 5は4~6 CPUコアのCPU。Intelに対抗したブランディングとなり、Ryzen 7でCore i7に、Ryzen 5でCore i5に、Ryzen 3でCore i3に対抗する。
Ryzenファミリは、いずれもZENコアベース。従来通り、CPUコアだけのCPU製品と、CPUコアとGPUコアを統合したAPU(Accelerated Processing Unit)製品の2系列がある。Ryzen 3やモバイル版RyzenはAPUになる見込みだ。Ryzen 5は現在発表されているものはCPUコアだけの製品。Core i5の占める300ドル以下の市場をターゲットとする。現在予定されているラインナップは2種類。Ryzen 5 1600Xが6コア/12スレッド、Ryzen 5 1500Xが4コア/8スレッドだ。
Ryzen 5 1600X | 6コア/12スレッド | 3.6GHz | 4.0GHz |
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Ryzen 5 1500X | 4コア/8スレッド | 3.5GHz | 3.7GHz |
Ryzen 5は今年第2四半期中に登場予定だ。CPUコア数はRyzen 7と異なり6~4コアと少ない。しかし、半導体のダイ自体は、Ryzen 7と同様にSummit Ridgeを使っている可能性が高い。そう想定する理由の1つは、現在の半導体プロセスでは、新しいダイを起こすことが非常にコストがかかることだ。また、CPUコア数を減らした派生品には、CPUコアの一部に不良またはスピードイールドがあり、Ryzen 7として出荷できないダイを、製品化できるという利点もある。
製品型番規則を一新したRyzenファミリ
AMDはRyzenでブランドと型番を一新した。AMDは今回、分かりやすい型番にすることを目指しており、法則性が非常に明瞭となっている。まず、Ryzenのすぐ後ろにつく奇数番号はIntelのCore iと同期したセグメントを示す。7がハイエンドのエンシュージアスト向け、5が高性能、3がメインストリームだ。
モデルナンバーは4桁の数字。最上位の4桁目は、現世代では1だけだが、これはおそらく世代を示すと見られる。モデルナンバーの3桁目の数字は性能レベルを示す。7と8がハイエンドでRyzen 7には1800と1700という8と7が使われている。4/5/6は高性能でRyzen 5が1600と1500になっているが、1400番台も登場すると見られる。モデルナンバの下2桁は現在は00のみで、今後のSKU(Stock Keeping Unit=アイテム)展開によって00以外の数字が登場すると見られる。
モデルナンバーの末尾についたアルファベットはパワーレンジを示す。今回のXは高性能、無印はスタンダードデスクトップを示す。デスクトップ版APUはGが付き、ローパワーデスクトップCPUはT、ローパワーデスクトップAPUはS、ハイパフォーマンスモバイルはH、スタンダードモバイルはU、ローパワーモバイルはMとなる。