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6万円台で16コアRyzen 9搭載はズルい!Mini-ITXマザー「MINISFORUM BD790i SE」

 MINISFORUMの「BD790i SE」は、直販価格6万780円、Amazonでもクーポン利用で6万2,544円という価格で16コア/32スレッドのRyzen 9 7940HXを搭載したMini-ITXマザーボードだ。今回サンプル提供があったため、簡単に紹介したい。

 以前にPC Watchでは、下位モデルにあたるRyzen 7 7745HXを搭載した「BD770i」という製品を紹介した。このRyzen 7 7745HXは8コア/16スレッドのCPUであったのだが、マザーボードとしての価格は6万5,980円だった。その後上位モデルとなるRyzen 9 7945HX搭載モデルの「BD790i」が投入されたが、価格は8万円台半ばとスペック相応の価格だった。

 今回紹介するBD790i SEで搭載されているRyzen 9 7940HXは、Ryzen 9 7945HXと同じ16コア/32スレッドの仕様を維持しながら、クロックをわずかに下げたモデルとなっている。それであるにも関わらず、Ryzen 7 7745HX搭載のBD770iよりも安いという、驚異的なコストパフォーマンスを実現。その人気からか、発売から長らく品切れとなっている。

基板背面
背面インターフェイスは従来とほぼ共通

 Ryzen 9 7940HXの16コア/32スレッドという“物理的”な仕様は、実はデスクトップ(Socket AM5)向けのRyzen 7000シリーズでRyzen 9 7950Xと7950X3Dの2モデルだけが該当する。1ランク下のRyzen 9 7900/7900X/7900X3Dは12コアなのだ。そして11月13日時点でのRyzen 9 7950Xの実売価格は8万5,000円前後なので、BD790i SEは“破格の安さ”だとしか言いようがない。

【表】CPUの主な違い
CPURyzen 9 7940HXRyzen 9 7945HXRyzen 9 7950XRyzen 7 7745HX
コア数16コア/32スレッド8コア/16スレッド
ベースクロック2.4GHz2.5GHz4.5GHz3.6GHz
最大ブーストクロック5.2GHz5.4GHz5.7GHz5.1GHz
L1キャッシュ1,024KB512KB
L2キャッシュ16MB8MB
L3キャッシュ64MB32MB
デフォルトTDP55W170W55W
cTDP45~75W-45~75W
パッケージFL1Socket AM5FL1

 BD790iもそれ自体は安かったが、そこからさらに2万5,000円も安くなったのにはやっぱり何らかの理由があると考えるのが妥当だろう。というわけでその理由をピックアップすると……

  • CPUベースクロック 2.5GHz→2.4GHz
  • CPUターボクロック 5.4GHz→5.2GHz
  • M.2 SSDスロット PCIe 5.0→4.0
  • Wi-Fi 6E/Bluetooth 5.3モジュール あり→なし
  • SSDヒートシンク あり→なし

といった辺りだ。ちなみに、AMDが公式で発表しているcTDPの上限を超えて最大100Wまで回る仕様は共通だった。

 Ryzen 9 7945HXは2023年2月28日に発売されたが、Ryzen 9 7940HXは2024年1月17日に発売された比較的新しいモデルということで、AMDとしてよりはリーズナブルな価格を実現した16コア製品を後から投入したかったのだと思われる。

 M.2スロットのPCIe 4.0化だが、現在市場にあるPCIe 5.0対応SSDの数や価格を考慮すると、妥当なコストダウン策であるとも言えるだろう。ちなみにCPUとしてはPCIe 5.0対応のままで変更はないため、回路設計による差異だと考えられる。

 無線LANモジュールは省かれたが、M.2スロットやバックプレート側のアンテナホールは残されている。とはいえ、アンテナ端子を取り付けたり垂直に固定するためのブラケットが付属しないので、自分で使用するなら工夫する必要がある。

 また省略になったSSDヒートシンクは、もともとファン付きで大型タイプのため、一定のコスト削減効果はある。ファン用ピンも省略された。最近はサードパーティのSSDヒートシンクが豊富にあるし、PCIe 4.0であればヒートシンク付きも多数ラインナップされているので、必要に応じて選んでほしいということだろう。

BD770i(右)との比較。パッと見ただけでSSDヒートシンクが省かれていることが分かる
無線LANモジュールは非搭載に

 こうしたコスト削減とは逆に、実はBD790iより進化してしまった点もある。1つはPCIeスロットの金属パーツによる補強で、大型ビデオカード装着時の破損リスクが低減した。Ryzen 9 7940HXは比較的高性能なCPUなので、ハイエンドビデオカードも十分ドライブさせる能力があるわけだが、装着時の安心感が高まるのはうれしい。

 もう1つMINISFORUM自身挙げていない改善点だが、実機で比べると、CPUヒートシンクのフィン外側の4枚が、タブ折り曲げによる補強が入り、歪まなくなったのだ。

 実はBD790i/770iのヒートシンクは、コンパクトさを実現するために、U字型ヒートパイプの折り返し部をフィンに収まる設計としている。このため、外側のフィンの数枚がヒートパイプとろう付けされていない。加えて、フィンの薄さとくり抜き部の大きさが相まって、この数枚のフィンがとても細く脆弱となり、その部分が内側に歪み、くっついてしまう問題があった。これを今回、タブ追加と折り曲げで防ぐ改善がなされているのだ。ものすごく細かい改善点なのだが、しっかり対策をしてくる辺り、同社の製品に対する真面目さが垣間見える。

BD770iやBD790iではヒートシンクの外側のフィン数枚が歪みやすくなっていたが、BD770i SEで補強が入り歪みにくくなった
PCIeスロットも金属で補強されるようになった

 最後に簡単にベンチマークを載せてまとめたい。BD770iのスコアは前回の記事から流用であるため、参考程度にといったところだが、CPU回りの性能を示すCinebench R23ではスコアが76%程度高くなっており、格の違いを見せつけている。CPUコアを多数利用するアプリケーションでは、BD790i SEのほうが適しているだろう。

【表】テスト環境
マザーボードBD790i SEBD770i
CPURyzen 9 7940HXRyzen 7 7745HX
メモリCrucial CT16G56C46S5.M8G1×2(DDR5-5600動作)、合計32GBApacer AP45600008G3B-001×2(DDR5-5200動作)、合計16GB
SSDAcer SSD N7000 2TBSamsung PM981 512GB
電源Cooler Master V850 SFX GOLD - WHITE EDITION
OSWindows 11 Home 23H2Windows 11 Home 22H2
Cinebench R23
PCMark 10
3DMark

 既にRyzen 9000やCore Ultra 200Sがリリースされたりしているため、世代的には1つ古いのだが、性能はまだまだ一線級だと言える。ハイエンドでコンパクトなゲーミングPCを高いコスパで組みたいのなら、候補の筆頭に挙げておきたい。