石井英男のデジタル探検隊
小5の息子に富士通の“じぶんパソコン”を半年間使わせてみた
~こどもに人気のマイクラやオンラインTCGゲームも快適に動作
2019年4月4日 11:00
富士通クライアントコンピューティング株式会社(FCCL)が2018年7月に発売した「LIFEBOOK LH55/C2」は、小学生が親にはじめて買ってもらう「じぶん」パソコンというコンセプトで開発された製品だ。LIFEBOOK LH55/C2のハードウェアについては、以前、発売前の製品を試用してレビューを書いたので、そちらをご覧いただきたい(はじめての「じぶん」パソコン、富士通「LIFEBOOK LH55/C2」を小5の子どもに使わせてみた)。
2019年3月からFMVまなびナビのサービスが一部変更
LIFEBOOK LH55/C2のウリの1つとして、富士通が提供している「FMVまなびナビ」と呼ばれる小/中学生向けオンライン学習サービスの申し込み特典が付属していることが挙げられる。
FMVまなびナビ自体は、LIFEBOOK LH55/C2専用のサービスというわけではないのだが、LIFEBOOK LH55/C2(下位モデルのLIFEBOOK LH35/C2も同じ)の購入者がFMVまなびナビを申し込むと、月額利用料金が一定期間無料になったり、リアルのプログラミング教室の優待割引が受けられるという特典が得られる。
FMVまなびナビは、全部で6つのコースが用意されている。利用できる学習サービスは、タイピング、学校教科、オンライン英会話、プログラミング2種類の合計5種類。それぞれ単独で申し込めるほか(タイピング以外のコースを選ぶと、タイピングも利用可能)、すべてのサービスを利用できる「総合パックforキッズ」というコースもある。
総合パックforキッズの料金は月額8,480円だが、5つのコースの価格をすべて合計すると月額11,120円になるので、毎月2,640円お得になる計算だ。
2019年度から変更されたのは、学校教科についてだ。2019年3月31日までは、学研プラスの「学研スマートドリル」を利用していたのだが、学研スマートドリル自体のサービスが2018年3月に終了したため、代わりに城南進学研究社が提供する「デキタス」へと変更された。
総合パックforキッズに加入し、それぞれのサービスを実際に約半年間、小学校5年生の息子に使わせてみたので、息子の感想も含めて紹介していこう。
「ふくまろタイピング」で息子のタイピング速度が大きく向上
ふくまろタイピングは、FMVのアシスタントキャラクター「ふくまろ」と一緒にタイピングを学ぶタイピング練習ソフトだ。トップメニュー画面には、「きほん」、「腕試し」、「練習広場」の3つのメニューがあるが、きほんをひととおりクリアしないと、ほかの2つのメニューを選べない。きほんでは、ホームポジションやローマ字を段階的に練習可能。画面にタイピングに使う指が表示されるので、それにしたがってタイピングすることで、正しいタッチタイピングを学べる。
中2の娘は、いつのまにかタッチタイピングを習得しており、私よりもタイピングが速いくらいなのだが(私も決して特別速くはないが)、小5の息子は、タッチタイピングどころか、ローマ字もろくに覚えておらず、スマートフォンでなにか検索するときには、音声認識を使っている。
ふくまろタイピングのきほんをひととおりやらせてから、腕試しをやらせてみたところ、最初のスコアは33と、全国平均スコア140.4の3分の1にも満たなかった。キーを1個ずつ探して入力している状態なので、まあこんなものだろう。
しかし、毎日ちょっとずつふくまろタイピングで練習させたところ、2カ月後には74、半年後には273までスコアが上昇し、平均の約2倍の速度でタイピングできるようになった。
タッチタイピングを小さいときから身につけておくと、なにかと役に立つので、ぜひおすすめしたいサービスだ。もちろん、無料で利用できるタイピング練習サイトはたくさんあるので、とくにふくまろタイピングの優位性があるというわけではないだろうが。息子に感想をきいたところ、「ふくまろがかわいいので、楽しくできた」とのことだ。
学校教科学習サービスの使い勝手は新サービスで大きく改善
「デキタス」は、算数や国語、理科といった学校で習う教科の学習サービスである。前述したように、FMVまなびナビでは当初、学研プラスの「学研スマートナビ」が使われていたが、2019年3月から城南進学研究社の「デキタス」に変更された。
学研スマートナビは、答えの入力をペンで手書きさせることが多く、手書き認識がうまくいかずに、息子がイライラすることがあったが、デキタスはキーボードで入力するため、誤認識にイライラさせられることはない。
デキタスは、授業→基本問題→チャレンジ問題という3つのステップで学習を行なう。対応学年は、小学1~6年、中学1~3年で、小学1~2年は国語/算数/英語/生活の4科目、小学3~6年は国語/算数/英語/理科/社会の5科目、中学1~3年は国語/数学/英語/理科/地理/歴史/公民/国文法の8科目が用意されている。
また、算数や理科、社会、生活などの教科は複数の教科書から内容を選択できるようになっている(国語と英語は共通内容)。
授業は動画で行なわれるが、1つあたり数分なので、長い動画を見るのが苦手な子どもでも飽きずに見ていられるようだ。レベル的にはどの教科も教科書レベルで、息子もほとんど正解していた。学校で習う内容の予習や復習をしたいという用途ならよさそうだ。
息子の感想は、「前(学研スマートナビ)のは文字をうまく認識してくれないことがあって辛かったけど、デキタスはキーボードで入力できるので楽だった。問題はあまり難しくはなかった」とのことだ。
ブロックを組み合わせて本格的なプログラミングを学べる「QUREO」
プログラミング教材は、「QUREO」と「マイクラッチ」の2種類が用意されている。
まずは、キュレオが運営する「QUREO」である。QUREOは、Scratchなどと同じようにブロックを並べてプログラミングを行なう教材である。全部で480ものレッスンが用意されており、内容的にはかなり盛りだくさんだ。
レッスンは、ストーリー仕立てになっており、ゲームを作りながら、プログラミングを学べる。もちろん、レッスンに従わずとも、新しいプロジェクトをつくって、自由にプログラムを作ることもできる。Webブラウザ上で動作するため、設定などが不要で、すぐに使いはじめられることも評価できる。
息子は、Scratchを少しさわったことがある程度だが、QUREOはレッスンの目的の説明もわかりやすく、自分でどんどん進めていた。キャラクターもいろいろ登場するので、楽しいようだ。レッスンのボリュームがあり、自学に向いた教材といえる。
スモールステップでプログラミングを学習していく教材であり、内容的にも充実している。ただ、子どもによっては、ある程度覚えたら、自分で自由にプログラムを作りたくなってくることもありそうだ。ずっとレッスンを進めるのではなく、ときどき新しいプロジェクトを作って自由に遊ばせるのもいいだろう。
息子の感想は、「かわいいキャラクターがいっぱいあってよかった。レッスンもときどきわかりにくいのがあったけど、楽しかった」とのことだ。
子どもに大人気のマインクラフトの世界でプログラミングができる「マイクラッチ」
もう1つのプログラミング教材が「マイクラッチ」だ。
こちらは、エデュケーショナル・デザイン株式会社が運営しているD-SCHOOLのコンテンツとなるが、子どもたちに大人気のサンドボックスゲーム「マインクラフト」の世界でプログラミングを学べるというものだ。
マインクラフトは、普通にプレイしても教育効果が高いゲームであり、欧米では学校の授業でマインクラフトを活用しているところも増えている。マイクラッチは、このマインクラフトの世界を、ブロックによるプログラミングで自由にプログラミングできるという教材であり、マインクラフトを普段からプレイしている子どもならやりたがる子が多いだろう。
息子も、毎日のようにSwitchやPS4、PCでマインクラフトを遊んでおり、YouTubeのマイクラ実況も延々とみている、筋金入りのマイクラ好きだ。
マイクラッチは、利用する前にいくつかのアプリケーションをインストールしたり、設定を行なう作業が必要になる。現在、マインクラフトは、統合版と呼ばれるWindows 10専用版と、従来からのJava版があるのだが、マイクラッチで利用するのは後者となる。
マイクラッチでは、基本的に動画の説明を見ながらプログラミングを行なっていくが、環境設定のための動画も用意されている。その動画を見ながら、順に必要なアプリケーションをインストールしていけばよい。必要なアプリケーションは、Java版マインクラフトを含めて4つとなる。PCに慣れていない人だとここがちょっとたいへんかもしれないが、動画をよく見ればわかるだろう。
マイクラッチには全部で9つのミッションが用意されており、好きなところからはじめられる。
PCの画面を2つに分割して、左側にマイクラッチのウィンドウ(ブラウザ)、右側にマインクラフトのウィンドウを開いて、プログラミングを行なうことになるが、LIFEBOOK LH55/C2の液晶の解像度は1,366×768ドットしかないので、正直それぞれのウィンドウがせまいと感じた。
最初のほうのミッションは、使うブロックの数もそれほど多くないのでまだなんとかなるが、後半はかなり複雑なプログラミングを行なうので、やはりフルHD解像度以上のディスプレイのほうが快適だ。
ただ、マイクラッチの画面で、ブロックを並べて、実行ボタンをクリックするだけで、右側のマインクラフトの世界にその結果が反映されるのはおもしろい。息子も喜んで、いろんなオブジェクトを発生させていた。
ミッションが進むと、マインクラフトのなかでゲームを作って遊ぶこともできる。もちろん、自由にプログラミングを行なうこともできるので、マインクラフトの世界を自由にプログラミングで操りたいというお子さんには、ぴったりの教材だ。
息子の感想は、「マイクラ好きなので、いろいろ出したりできるのが楽しかった」とのことだ。
マンツーマンで英会話ができる「Kimini」
最後に紹介するサービスが、オンライン英会話の「Kimini」だ。
Kiminiは、学研が運営するオンライン英会話で、講師やカリキュラムが充実していることで定評がある。FMVまなびナビでは、月4回のレッスンを受講できるライトコース(月額2,980円)と毎日1回のレッスンを受講できるスタンダードコース(月額5,980円)の2種類のコースが用意されているが、総合パックforキッズに含まれているのはライトコースである。
1レッスンは25分間であり、子どもでも集中力が切れることなくレッスンを受けられる。また、ネイティブスピーカーとの英会話のほか、予習と復習用の動画教材も用意されているので、内容の定着が図れる。
Kiminiでは、まずコースを選択し、そのコースのレッスンを順に学んでいく。コースは総合英語から英検対策、ビジネス英会話、小学生向け、中学生向けなど、全部で50近くが用意されている。コースを決めたら、日にちと時刻を選んで、レッスンを予約する。なお、コースは途中で変更したり、複数のコースのレッスンを順番に受けることも可能だ。習う先生は、顔写真から選ぶことができる。
ひっかかったのはWebブラウザの選択だ。Kiminiは、ChromeまたはFirefox以外のWebブラウザには対応していないのだが、メニューからオンライン英会話を開くと、Edgeで開かれるので、予約は問題なくできるが、いざレッスンを受けようとしても受けられない。Chromeをインストールして、そちらでFMVまなびナビにアクセスして、入り直す必要がある。
また、Chromeのデフォルトの設定では、LIFEBOOK LH55/C2の背面カメラが選択されていたので、ビデオチャットでオンライン英会話をするには、Chromeのカメラ設定を前面カメラに変更する必要がある。このあたりも、PCに慣れていない人だと戸惑いそうだ。
レッスンは、挨拶や自己紹介からはじまり、そのレッスンの教材に沿って先生と対話しながら進めていく。
左側のスペースに表示される教材はおたがい書き込むことができるので、大事な部分に先生がアンダーラインを引いてくれたり、正解ならマルを書き込んでくれたりするので、実際に先生と一緒に英会話を学んでいる気分になれる。
息子は最初「総合英語コース1」をやってみたのだが、英語を学んだ経験がまったくない息子にはややハードルが高かったようだ。小学生向けとされている「小学生の英会話1」をやってみたところ、こちらのほうがレベル的にちょうどよかった。
小学生の英会話の教材では、果物などの絵とその影が表示されていて、対応するものを線で結ばせるといった問題もあり、楽しく英語を学べていたようだ。
オンライン英会話での学習を見るのは、私もはじめてだったのだが、空き時間を有効に活用できるので忙しい人にもおすすめでき、先生とマンツーマンで会話をすることになるので、英会話の実力もつきそうだという印象を持った。息子も、「優しい先生で、楽しく英語の勉強ができた」と語っていた。
Java版のマインクラフトも設定を変えれば十分遊べる
LIFEBOOK LH55/C2は、CPUがCeleron 3865U(1.8GHz)、メモリが4GB、SSDが128GBであり、スペック的には決して高いとはいえない。しかし、上で紹介してきた各種学習サービスを利用するには、十分な性能を持っている(マイクラッチは画面解像度的にやや厳しい部分もあるが……)。そこで、子どもが興味を持ちそうなアプリケーションが快適に動くか、試してみた。
まずは、マイクラッチでも登場したマインクラフトだ。前述したように、PC用マインクラフトはJava版とWindows 10専用版の2種類があり、基本的には後者のほうが動作が軽い。
そこで、Java版のマインクラフトを息子にプレイさせてみた。まず、デフォルト設定のまま、息子に渡したら「なんか、ラグい(重い)」という反応だった。確かに、奥の地形が順番に描かれているのが見えるほどだ。ビデオ設定をいくつか変更し、描画負荷を軽くしたところ、ほぼ問題なく遊べるレベルになった。
もちろん、動作が重くなるMODを導入するのは厳しいだろうが、素のJava版マインクラフトなら十分遊べる。念のため、Windows 10専用版のマインクラフトもインストールしてみたが、こちらはデフォルト設定でも問題なく遊べた。
息子がはまっているオンラインTCG「MTG:Arena」も問題なくプレイ可能
息子はPC、Switch、スマートフォン、PS4、3DSとコンピュータゲームをやりまくってるのだが、コンピュータゲームに負けず劣らず好きなのが、いわゆるTCG(Trading Card Game)だ。
娘は息子に輪をかけてTCGオタクなのだが、娘のことはここではおいておくとして、息子は、友達とよく「デュエルマスターズ」で対戦したり、デュエルマスターズの大会に出たりしている。
デュエルマスターズだけでなく、最近はまっているのが、デュエルマスターズの兄貴分ともいえる、「Magic: The Gathering」(以下MTG)だ。MTGは、25年を超える歴史を持つTCGの元祖であり、至高ともいえるゲームだ。このMTGのデジタル版が「Magic: The Gathering Arena」(以下Arena)である。
Arenaは、現在オープンβ中だが、日本語も最近実装され、事実上は正式にスタートしているといえる。このArenaも、息子は毎日のようにプレイして、変なデッキを作って遊んでいるのだが、試しにLIFEBOOK LH55/C2にもインストールしてプレイしてみた。グラフィックの項目の画質は自動的に一番下の「低」に設定されたが、プレイ自体にとくに遅さを感じることはなかった。
子どもがラフに使っても壊れにくい本体も魅力
LIFEBOOK LH55/C2は、天板に細かなおうとつがあるため、子どもが手に持ってもすべりにくい。塗装によるホワイトではないので、傷がついても目立たないことも利点だ。
単純にハードウェアスペックだけ見ると割高に感じる部分もあるが、ハードウェアスペック以外の魅力も大きい。お道具箱のような専用収納ケースが用意されていることもあわせて、子どもが自由に使える、最初のパソコンとしてはよく考えられた製品だといえる。
画面解像度が1,366×768ドットなのが残念だが、SSDを搭載していることもあり、Celeron+4GBメモリという決してパワフルとはいえない構成でも、意外と快適に動作する。今後、FCCLだけでなく、他社からもこうした製品が登場することを期待したい。