石井英男のデジタル探検隊

超小型Bluetoothリモコンロボットコアユニット「bCore」レビュー

~子どもの夏休み工作にもぴったりなロボットの素

 子どもたちの夏休みが始まってはや2週間が経過したが、今回は、子どもの夏休み工作にお勧めの、優れものデバイスを紹介したい。そのデバイスとは、Vagabond Works氏が開発したbCoreモジュール(以下bCore)と呼ばれる、超小型Bluetooth LE(以下BLE)リモコンロボットコアユニットである。

SDカードよりも小さく、気軽に利用できる

 bCoreは、2015年9月にVer.1.00の販売が開始されたが、2016年4月に設計を改良して、動作の安定性を向上させたVer.1.10が登場。さらに、2016年6月には後述するbCoreスターターキットが追加された。

 bCoreは、BLEモジュール「BLE113」とモータードライバなどの周辺回路を組み込んだ超小型基板に独自のファームウェアを書き込んだもので、BLE113は技適やFCC、CEに対応しているため、日本、アメリカ、EU各国での利用が可能だ。iOS用のアプリ「bDriver」を利用することで、電子回路やプログラミングの経験がない方でも、簡単にiPhoneからワイヤレスでコントロールできる超小型ロボットを製作できる(Android端末用として、@shohaga氏が開発した「bCore Driver for Android」が提供されている)。

 bCoreは、モジュール単体としても販売されているが、初めて使うのならbCore本体とスイッチ付き電池ボックス、電流制限抵抗内蔵LED、DCギヤドモーター×2、bCoreホルダーがセットになったbCoreスターターキットがお勧めだ。bCoreには、1.25mmピッチの小型コネクタが8個実装されており、そのうち4つはマイクロサーボモーター接続用の3ピンコネクタで、残りの4つはDCギヤドモーターや電源、LEDを接続するための2ピンコネクタである。bCoreスターターキットに含まれているスイッチ付き電池ボックスや電流制限抵抗内蔵LED、DCギヤドモーターは、あらかじめbCore接続用コネクタがハンダ付け済みなので、ハンダごて不要で、コネクタをbCoreに接続するだけで利用できる。

 bCoreのサイズは、27×18.6×6.3mm(縦×横×高さ)と非常にコンパクトで、SDカードよりも小さい。重量もわずか3gだ。電源電圧は1.8~5.5V対応であり、単3アルカリ電池3本などで動作する。

bCoreの表側。中央の銀色の部品が、BLEモジュールのBLE113である。周囲にはモーターやLEDなどを接続するための小型コネクタが8個実装されている
bCoreの裏側。テスト用パターンやブーストモードに変更するためのパターンが用意されている
SDカードとbCoreのサイズ比較。bCoreは、SDカードよりも一回り小さい
bCoreスターターキットに含まれるパーツ一式。bCore本体とスイッチ付き電池ボックス、電流制限抵抗内蔵LED、DCギヤドモーター×2、bCoreホルダーがセットになっており、bCore接続用コネクタがハンダ付け済みなので、ハンダごてを持ってない人でも、気軽にbCoreを利用できる
bCoreスターターキットに含まれているbCoreホルダー。ネジ留めできるので便利だ
bCoreスターターキットに含まれている電流制限抵抗内蔵LED
bCoreスターターキットに含まれているスイッチ付き電池ボックス
電池ボックスに単3アルカリ電池3本を入れて利用する

マイクロサーボモーター4個とDCモーター2個を同時に制御できる

 bCoreでは、DCモーター2個の回転速度と方向の制御と、マイクロサーボモーター4個の回転角度の制御が可能である。DCモーターは、マブチの模型用モーターの利用も可能だが、電源電圧などに注意する必要がある。bCoreスターターキットに付属するDCギヤドモーターは、減速比50分の1で、0.8kg・cmのトルクを持っているため、車の模型などに組み込みやすい。なお、今回は使っていないが、DCモーター用ドライバを2つ並列動作させることで、最大3Aまでの電流駆動が可能になるブーストモードも用意されている(当然ブーストモードでは制御できるDCモーターが1つになる)。ブーストモードへの切り替えは、基板裏面のパターンカットとショートが必要になる。

 bCore推奨のマイクロサーボモーターもいくつかあるが、ここでは、HobbyKingの「HK15318B」とTower Proの「SG-90」を利用した。なお、SG-90は、サーボコネクタが2.54mmピッチなので、bCoreに接続するにはbCore用ノーマルサーボ変換コネクタを利用する必要がある。

bCoreで利用できるマイクロサーボモーター。左が「HK15318B」で、右が「SG-90」
HobbyKingのマイクロサーボ「HK15318B」。トルクは0.11kg・cm、速度は0.08s/60度である
HK15318Bに付属するサーボホーン類
HK15318Bにサーボホーンを取り付けたところ(本来はネジで中央を固定する)
こちらはTower Proの「SG-90」。トルクは1.8kg・cm、速度は0.1s/60度である
SG-90のコネクタは2.54mmピッチなので、そのままではbCoreに接続できない。bCoreに接続するには、このbCore用ノーマルサーボ変換コネクタを利用する必要がある
SG-90にbCore用ノーマルサーボ変換コネクタを接続したところ
SG-90に付属するサーボホーン類
SG-90にサーボホーンを取り付けたところ

専用アプリ「bDriver」の操作も簡単

 bCoreは、専用アプリ「bDriver」(iOS用)または「bCore Driver for Android」(Android用)を利用して操作を行なう。アプリケーション自体はどちらも無償でダウンロードでき、使い方も非常に直感的なので、子どもでもすぐに操作できる。4つのサーボモーターの動きを同期させることや、トリム(初期位置)の設定も可能だ。

iOS用アプリ「bDriver」を起動すると、スキャン画面が表示されるので、bCoreの電源を入れて、「Start Scan」をタップする
検出されたbCoreの名前が表示されるので、その名前をタップする。bCoreには、個別にユニークな名称が付けられているので、複数のbCoreがあってもそれぞれを識別できる
制御画面は非常にシンプルで、6つのスライダーがそれぞれのDCモーターやサーボモーターに対応している。両端の赤いスライダーでDCモーターの制御が、内側の青いスライダーでサーボモーターの制御が可能。また、PO1をタップすると、LEDの点灯/消灯が可能
制御画面の「Edit」をタップすると、設定画面になる。設定画面では、スライダーの表示のオン/オフや回転方向の反転、サーボモーターの同期機能のオン/オフ、サーボモーターのトリム調整、bCoreの名前設定が可能
こちらはAndroid用の「bCore Driver for Android」。機能や画面デザインはiOS版とほぼ同じだ
「SCAN START」をタップすると、検出されたbCoreの名前が表示されるのでその名前をタップする
両端の赤いスライダーでDCモーターの制御が、内側の青いスライダーでサーボモーターの制御が可能。また、PO1をタップすると、LEDの点灯/消灯が可能
制御画面のスパナアイコンをタップすると、設定画面になる。設定画面では、スライダーの表示のオン/オフや回転方向の反転、サーボモーターの同期機能のオン/オフ、サーボモーターのトリム調整、bCoreの名前設定が可能

 bDriverやbCore Driver for Androidを用いて、bCoreを動かしてみた。その様子は以下の動画を見て欲しい。

【動画】スターターキットに含まれるパーツの動作の様子。DCギヤドモーターには手元にあったLaQのタイヤをつけてみた。操作はiPhoneの「bDriver」から行なっている。DCモーターは擬似的な速度制御が可能
【動画】スターターキットに含まれるパーツに加えて、2種類のマイクロサーボモーターを2個ずつ接続した様子。こんどはAndroid搭載スマートフォンを使って操作をしている

小学生の娘と息子に自由に作らせてみたところ……

 bCoreは、段ボール箱や木、プラスチック片、ブロックなどで作ったロボットや乗り物などに命を吹き込むことができるロボットの素だ。自分が子どもなら、「ドラえもんの秘密道具みたいだ!」と感動しただろう。

 特にbCoreスターターキットは、コネクタがハンダ付け済みのDCギヤドモーターやスイッチ付き電池ボックスなどがセットになっているので、ハンダ付けをしたことがない人でも、気軽に利用できる。主なターゲットとしては、子どもが想定されているのであろう。そこで、筆者の2人の子どもたち(11歳女子と8歳男子)に、bCoreの使い方を説明して自由に工作させてみた。

 bCoreおよびbDriverの使い方は非常に簡単なので、8歳の息子にもすぐに理解できたようだ。今回は、身の回りにある材料だけを使って作ったのと、時間も1時間弱しかかけてないのでかなり雑だが、遊園地を作ったらしい。アトラクションは全部で4つあり、観覧車と球体ジャングルジム、シーソーと振り子マシンだそうだ。観覧車と球体ジャングルジムは、bCoreスターターキットに含まれるDCギヤドモーターで動き、シーソーと振り子マシンは、追加した2個のマイクロサーボモーター「SG-90」で動いている。観覧車は速度がかなり速すぎてシュールなことになっているが、子どもたちだけでこうした工作を簡単に作れるのは、bCoreならではであろう。

小学生の娘と息子が作った遊園地「bCoreランド」。あり合わせの材料で1時間くらいで作ったものなのでかなり雑だが、こうした動く工作を簡単に作れるのが、bCoreの魅力だ
【動画】bCoreランドの動作の様子。bCoreスターターキットに、2つのマイクロサーボモーターを追加して作っており、全部で4つのアトラクションが動く。もちろん、複数を同時に動かすこともできる

夏休み工作にも最適、BLE機器を開発したい人向けの「bCoreNKD」も

 bCoreは、専門的な知識が一切不要で気軽に使えるため、子どもの夏休み工作にも最適だ。Vagabond Works氏のWebサイトには、ミニ四駆などをbCoreでスマートフォン対応に改造した例が紹介されている。サイズも小さいので、ちょっとしたスペースさえあれば、簡単に組み込める。腕に自信があるなら、プラモデルに組み込むのも面白そうだ。

 bCoreは、スイッチサイエンスやアールティなどのWebショップで販売されており、本体+2ピンコネクタケーブルASSY4本セットの価格は税込5,800円と、機能を考えるとなかなかリーズナブルだ。さらに、bCore本体にDCギヤドモーター×2とスイッチ付き電池ボックス、電流制限抵抗内蔵LEDが付属するbCoreスターターキットは税込7,400円で販売されている。子どもの夏休み工作に使うのなら、bCoreスターターキットがお勧めだ。

 また、姉妹製品として、bCoreで使われているBLEモジュールBLE113のブレイクアウトボード「bCoreNKD」も販売されている。こちらは、自分でBLE対応ガジェットを作ってみたい人向けの製品であり、プログラミングの知識が必要になるが、大人の自由研究や高専生、大学生などの教材用としても面白そうだ。

 なお、Vagabond Works氏は、2016年8月6日~7日に東京ビッグサイトで開催されるMaker Faire Tokyo 2016のkarakuri productsブース内でbCore関連商品の展示やデモ、販売を行なう予定である。旧ファームウェアのbCoreをお持ちの方への無料ファームウェアアップデートサービス(サーボモーターの可動範囲が拡大される)も行なわれる予定であり、bCoreの製作例も展示されるとのことなので、興味のある方は同氏のブースを訪れてみてはいかがだろうか。