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子供向けプログラミング教材やマインクラフトは2万5千円のノートで快適に動くのか
2017年5月9日 06:00
特定用途において、コストパフォーマンスに優れたPCとはどのようなものか、そしてそれを取り巻く周辺機器の必要性を、専門家やライター、および実際にPCを製造するパソコン工房、PC Watchがともに検討。実際にPCを製品化していくとともに、周辺機器およびその活用を幅広く紹介するこのコーナー。第3回目のテーマは、子供のプログラミング教育に適したPCである。
小学校では既存の教科の中でプログラミング教育が実施される
ご存じの方も多いと思われるが、2020年から小学校でもプログラミング教育が必修化されることになり、注目を集めている。数年前から、子供向けのプログラミング教室が急増しているほか、子供のプログラミング教育に関する書籍や教材も続々と登場しており、ちょっとしたブームとなっているほどだ。
2人の子供を持つ親として、筆者も子供のプログラミング教育やSTEM教育には常々関心を持っており、いち早くプログラミング教育を取り入れた学校などの取材を行なってきたほか、2016年夏から、子供を対象としたプログラミング道場「CoderDojo守谷」のメンターとしての活動も行なっている。
まず、2020年から小学校で必修化されるプログラミング教育とはどのようなものなのか、簡単に解説したい。日本では、文部科学省が定めた「学習指導要領」に基づいて、小学校/中学校/高等学校の教育が行なわれている。学習指導要領は、だいたい10年ごとに改定が行なわれており、2017年3月に公示された新しい学習指導要領において、小学校でのプログラミング教育の必修化が盛り込まれた。この新しい学習指導要領の施行は、2020年からの予定であり、これが「2020年から小学校でのプログラミング教育が必修化される」という話の元となっているのだ。
現行の学習指導要領でも、中学校や高等学校では、プログラミングに関する授業が定められているのだが、その授業時間はごくわずかであり、あまり意味があるとは言えなかった。新しい学習指導要領では、中学校や高等学校でもプログラミングに関する授業内容がより強化されている。
小学校でのプログラミング教育だが、現在の国語や算数に加えて、新たにプログラミングに関する教科が追加されるわけではない。既存の国語や理科、算数などの枠組みの中で、プログラミング教育が行なわれることになる。このあたりは、各学校や教員の裁量にまかされており、当初は教える方にとっても手探りで進むことになりそうだ。
なお、現在でも、プログラミング教育とは別に、多くの小学校でPCを使う授業が取り入れられている。内容は学校によっても異なるが、例えば、低学年では、キーボードやマウスに慣れることから始まり、ローマ字かな変換の練習を行ない、高学年では、WordやPowerPointを使って文書を作成するといった具合だ。
小学校でのこうした授業は、PCを初めて触るという子供を前提として行なわれているが、自宅にPCに慣れている子供なら、もちろん学校でのPCの授業でつまづくようなことはない。今後、PCを使う授業はさらに増えてくることが予想されるので、小学生や中学生のお子さんをお持ちの方は、子供が自由に使えるPCを用意してあげることをお勧めする。
子供が1人で学べるプログラミング学習サイト
子供がプログラミングを学ぶ方法にはいろんな方法がある。書籍やムックを見ながら独学する方法もあれば、プログラミング教室に通う方法もある。ある程度プログラミングの経験がある子供なら、書籍を見ながらより深くプログラミングを学ぶこともできるだろうが、プログラミング経験が全くない子供が書籍だけを頼りに学んでいくというのはなかなか難しい。
そこでお勧めしたいのが、子供が1人でプログラミングを学べるように作られた子供向けのプログラミング学習サイトだ。用意された課題やパズルをクリアしていくことで、段階的にプログラミングを学習できる。子供向けのプログラミング学習サイトは、主に入門者・初級者を対象としており、プログラミング学習の第一歩としてはお勧めできる。
子供向けプログラミング学習サイトやプログラミング学習アプリにはさまざまなものがあるが、ここではその中から、「Code Studio」と「CodeMonkey」、「HackforPlay」の3つを紹介する。
マインクラフトやスター・ウォーズ、アナと雪の女王などの世界でプログラミングを学べるCode Studio
「Code Studio」は、非営利団体のCode.orgが運営している無料のプログラミング学習サイトであり、子供向けから大人向けまでさまざまなプログラミング学習コンテンツが用意されている。その中でも、プログラミングに取り組む子供に最適なのが「Hour of Code」と呼ばれるコンテンツだ。
Hour of Codeは、「マインクラフト」や「スター・ウォーズ」、「アナと雪の女王」、「モアナと伝説の海」といった、子供に人気のコンテンツを題材にした課題が用意されていることが特徴だ。
ここでは例として、「スター・ウォーズ」をモチーフにしたコンテンツを紹介する。スター・ウォーズでお馴染みのBB-8やR2-D2といったドロイドや反乱軍などのキャラクターが登場するだけでなく、BGMや効果音もスター・ウォーズのものが使われているので、スター・ウォーズ好きな子供なら、喜んで取り組んでくれるだろう。
Hour of Codeでは、いくつかのパズル(課題)をクリアしていくことで、段階的にプログラミングを学習できるようになっている。画面は大きく2つに分かれており、左側がゲームスペース、右側がワークスペースと呼ばれる。パズルの目的はワークスペースの上部に表示されており、中央にはパズルを解くのに必要な命令ブロックが並んでいるので、命令ブロックをマウス操作で右側のワークスペースに並べていくだけでプログラミングを行なえる。
命令ブロックはそれぞれのパズルを解くのに必要なもののみが表示されているので、初心者でも迷わずにパズルを解いていくことができる。クリアできなかった場合でも、ヒントが表示されるので、独学でプログラミングを学ぶことができる。スター・ウォーズの場合、全部で15種類のパズルが用意されており、すべてのパズルをクリアして自分の名前を入力すると、名前入りの修了証が表示されるのも嬉しい。
本格的なスクリプト言語を学べる「CodeMonkey」
Scratchなどのビジュアルプログラミング言語が一通り使えるようになり、次はJavaScriptなどのスクリプト言語に挑戦したいというお子さんにお勧めしたいのが、イスラエルのCodeMonkey Srudioが開発したプログラミング学習ゲーム「CodeMonkey」だ。日本では、ジャパン・トゥエンティワン株式会社が総代理店となり、販売を行なっている。
CodeMonkeyは、CoffeeScriptと呼ばれるスクリプト言語を利用していることが最大の特徴である。CoffeeScriptは、JavaScriptに似たスクリプト言語であり、JavaScriptへの変換も可能だが、構文がよりシンプルで分かりやすいため、スクリプト言語の学習用として最適である。CodeMonkeyはWebブラウザ上で動作するため、インストール作業は不要だ。製品版は有料のライセンス制(1年間6,480円、2年目以降は4,320円)となっているが、最初の30ステージ分を遊べる無料体験版が用意されているので、まずは体験版を試してみるとよいだろう。
CodeMonkeyの画面は2つに分かれており、左側が実行エリア、右側がコードエリアと呼ばれる。ゲームの目的はシンプルで、サルのモンタを操って画面内のバナナをすべて食べさせればクリアだ。モンタを操るには、「Step」や「Turn」などの命令を使う。ステージが進めば、モンタを助けてくれる仲間のカメや敵のキャラクターも登場し、繰り返し命令や条件分岐などのより高度な命令も使えるようになる。
命令はキーボードから入力するが、コードエリアの下に並んでいるアイコンをクリックすることでも入力できるので、タイピングに不慣れな子供でも気軽に遊べる。製品版では400以上ものステージが用意されており、かなりのボリュームとなる。クリアに失敗したらヒントがもらえるので、小学校高学年以上なら十分独学でプログラミングを学べるだろう。
RPGをハックしながらJavaScriptを学べる「HackforPlay」
ハックフォープレイ代表の寺本大輝氏が開発した「HackforPlay」は、子供達がゲーム感覚で楽しみながらプログラミングを学べる新しい形のオンライン教材であり、RPG仕立てになっていることが特徴だ。HackforPlayでは、その名の通り、ゲームのプログラムを自分で書き換える(ハックする)ことで、そのままでは倒せない強大な敵を倒すことができる。ゲームを攻略していく過程で、子供達は自然にプログラミングを学習できるのだ。
HackforPlayは、攻略の方法が1種類ではなく、さまざまな方法で攻略できることも特徴だ。例えば、ラスボスのドラゴンはそのままでは太刀打ちできないが、プレイヤーのHPを思いっきり増やせば勝てるようなる。それ以外にも、ドラゴンのHPを最低の1にしたり、ドラゴンの無防備な背中側に回り込んでも、ドラゴンを倒すことができるのだ。
ラスボスを倒した後は、ステージを自由に作り替えることや、一から新しいゲームを作ることが可能であり、作成したステージやゲームは広く公開できる仕組みになっている。すでに600以上のステージが公開されているが、そのほとんどは小学生が作成したものだという。HackforPlayで学ぶプログラミング言語は、実用性が高く人気のあるJavaScriptなので、子供だけでなく、プログラミングを学びたいと考えている大人にもお勧めだ。
通常、JavaScriptでプログラミングを行なう場合は、プログラムコードをゼロから書いていく必要があるが、HackforPlayでは、ゲームでよく使われるアイテムや敵などのコードのひな形(アセット)がアイコンとして用意されており、そのアイコンをクリックするだけで、そのコードがプログラムエリアに取り込まれる仕組みになっている。アセットを組み合わせることで、オリジナルゲームも比較的簡単に作成できることも特徴だ。
低価格なエントリーノートPCでもプログラミング学習には十分
こうしたプログラミング学習サイトやプログラミング学習アプリを利用するには、どのくらいのスペックのPCが必要なのだろうか。学習サイトはいわゆるWebアプリとして動作しており、それほど高いスペックは要求されない。CPUはCeleronかPentium、メモリは4GB程度あれば、とりあえずは十分だ。もちろん、本格的なMMORPGやFPSなどをプレイするには、もっと高性能なPCが必要になるが、あくまでプログラミング学習のためのPCという観点なら性能はそこそこでいいから、低価格であることが求められるだろう。
そこで今回は、ユニットコムのiiyama PCブランドから発売された、税別直販価格24,980円(税込26,978円)のエントリー向け14型ノートPC「Stl-14HP012-C-CDMM」を用意していただいた。
Stl-14HP012-C-CDMMは、4コアのCeleron N3450(1.1GHz)と4GBのメモリ、32GBのeMMCを搭載した14型ノートPCである。本体のサイズは、約340×243.5×22.2mm(幅×奥行き×高さ)で、重量も約1.8kgと、比較的スリムで軽いので、自宅だけでなく、CoderDojoやPC持参のワークショップなどに持って行くにも便利だ。
液晶解像度は1,366×768ドットで、表面は光沢仕上げとなっている。インターフェイスは充実しており、USB 3.0×1、USB 3.0 Type-C×1、USB 2.0×1、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、ヘッドフォン出力、マイク入力の各ポートを備えている。さらに、SDカードスロットも用意されている。
キーボードのキーピッチも広く、タイピングも快適に行なえる。また、IEEE 802.11ac対応の無線LAN機能も搭載しており、PCとしての基本機能をしっかり抑えた、非常にコストパフォーマンスの高い製品と言えるだろう。
デザインはオーソドックスだが、作りもしっかりしており、安っぽさは感じなかった。中学1年生の娘に使わせてみたところ、「シンプルでカッコイイね」と言っており、気に入ったようだ。
3つの学習サイトはどれも問題なく動作した
実際にStl-14HP012-C-CDMMを使って、前述した3つのプログラミング学習サイトを利用してみたが、動作は十分快適であった。Hour of Codeでは、一度に画面上で動くキャラクターが20個程度になることもあるのだが、特に動作が重くなるようなこともなかった。
WebブラウザはWindows 10標準のMicrosoft Edgeを利用した。画面解像度が1,366×768ドットとやや狭いが、タスクバーを自動的に隠す設定にしておけば、それほど狭いとは感じず、十分にプログラミング学習を進めることができた。
そこで今度は、プログラミング学習のために作られたビジュアルプログラミング言語「Scratch」を利用してみた。Scratchは、ブロックを並べてプログラミングを行なえることが特徴で、キーボード入力に慣れていない子供にも向いているため、多くのプログラミング教室で使われている。Scratchには作成したプログラムを広く一般に公開できる仕組みがあり、世界中の子供達が作ったゲームなどを自由にダウンロードすることができる。
Scratchでも、慣れてくるとかなり高度なゲームを作ることができるのだが、そうした大作ゲームはStl-14HP012-C-CDMMだとやや動作が重いことがあった。ただし、初心者がScratchを使って何か簡単なゲームを作るくらいなら、Stl-14HP012-C-CDMMでも十分快適であった。
Windows 10版のマインクラフトも予想以上に快適
さらに、子供達に大人気のサンドボックスゲーム「マインクラフト」もプレイしてみた。マインクラフトのPC版は、オリジナルのJava版と、ストアアプリとして販売されているWindows 10版がある。Windows 10版は、タブレット/スマートフォン向けのPE版をベースに作られており、オリジナルのJava版よりも動作が軽く、Windows 10のタッチ操作にも対応していることが特徴だ。
そこで、Windows 10版をダウンロードしてプレイしてみたが、これが予想以上に快適であった。動きは非常に滑らかであり、周りを見渡してみても、カクカクするようなことはない。マインクラフトが大好きな息子も大喜びであった。HDMI出力も備えているので、リビングの大画面TVに接続すれば、大画面でマインクラフトを楽しむことができる。
子供のプログラミング教育のためのPCとして、Stl-14HP012-C-CDMMは自信を持ってお勧めできる製品だ。ストレージ容量が32GBと少ないことが弱点だが、オンラインストレージやUSB接続のHDDなどを利用すればカバーできる。特に、子供に買い与えるPCとして2万円台半ばの価格は魅力的だと言えるだろう。