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9万円を切った時が狙い目だ!最新Ryzen 7 8845HS搭載ミニPC「GMKtec NucBox K8」
2024年7月9日 10:06
昨今はさまざまなメーカーが、小型のデスクトップPC「ミニPC」を発売している。GMKtecもその1つで、MINISFORUMやBeelinkと同じくAMDやIntelのノートPC向けCPUを搭載するミニPCを多数ラインナップする老舗だ。
今回はそのGMKtec製ミニPCの中から、AMDの最新CPU「Ryzen 7 8845HS」を搭載する「NucBox K8」を紹介していこう。薄型でスタイリッシュな筐体ながら、メモリやM.2 SSDの換装、メンテナンスが容易に行なえるユニークな備えており、使い勝手に優れる1台だ。
最新のRyzen 7 8845HSでは高性能NPU内蔵
今回紹介するNucBox K8では、前述の通りAMDのRyzen 7 8845HSを搭載する。CPUコアには「Zen 4」アーキテクチャ、GPUコアには「RDNA3」アーキテクチャを搭載し、8コア16スレッドに対応する。このZen 4+RDNA3という組み合わせには、聞き覚えがある、と思ったユーザーも多いだろう。
実はこれ、1つ世代が古いノートPC向けの「Ryzen 7040」シリーズに属する「Ryzen 7 7840HS」や「Ryzen 9 7940HS」と同じ組み合わせだ。またこれらのCPUもRyzen 7 8845HSと同様に8コア16スレッドに対応しているため、一般的なアプリやゲーミング性能は非常に近い。
違いはというとAI処理の演算性能で、スペック上ではRyzen 7 7840HSではCPU全体で最大10TOPSなのに対して、Ryzen 7 8845HSでは最大16TOPSの独立したNPU(Neuron Processing Unit)を搭載するほか、CPU全体だと最大38TOPSを発揮できるという。今後Windows 11でもAIを活用する機能が積極的に取り入れられていくとのことであり、重要性は高まっている。
【表】NucBox K8の主な仕様 | |
---|---|
メーカー | GMKtec |
製品名 | NucBox K8 |
OS | Windows 11 Pro |
CPU(最大動作クロック) | Ryzen 7 8845HS(8コア/16スレッド) |
搭載メモリ(空きスロット) | DDR5 SO-DIMM PC5-44800 16GB×2(0) |
ストレージ(インターフェイス) | 1TB(PCI Express 4.0) |
拡張ベイ | PCI Express 4.0対応M.2スロット×2 |
通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth v5.2 |
主なインターフェイス | 2.5Gigabit Ethernet×2、DisplayPort×1、HDMI×1、USB4×1、USB 3.1×2、USB 3.0×1、USB 2.0×1 |
本体サイズ | 130×127×53mm |
重量 | 570g |
実売価格 | 10万円前後 |
筐体はシルバーを基調としたシンプルなデザインで、メーカー名が記されたプラスチックの天板を採用する。幅は実測値で12.7cm、奥行きも同じく13cmと、上から見るとほぼ正方形。手の上に置くとちょうどつかめる程度のミニPCらしいサイズ感である。どこに置いてもジャマにはならないだろう。
付属のACアダプタの出力は19V/6.32Aで、最大120Wまでとなる。最近の120Wタイプとしては、標準的なサイズよりはちょっと大きめかなとは感じた。
両側面と背面はメッシュパネルになっており、吸排気口として機能する。PC内部はマザーボードで2つのエリアに分かれており、下半分のエリアにはCPUやCPUクーラーを組み込み、底面から給気して背面に排気するエアフローだ。底面には4つのゴム足が付けられており、底面とテーブルの間に吸気用のスペースを作っている。
上半分のエリアにはSSDやメモリが組み込まれており、後述するが天板カバーを外すと内部のプレートに小型ファンが付いている。天板自体はフラットで吸気口はないが、側面近くに吸気口が多数設けられており、この吸気口と内部プレートの小型ファンで外気を取り込み、SSDやメモリを冷却するというエアフローになっているようだ。
映像出力端子はDisplayPortとHDMI、前面に装備するUSB4という構成だ。USBポートは前面にUSB 3.1ポートを2基、背面にUSB 3.0ポートが1基とUSB 2.0が1基という構成で、特に背面のUSBポートが少なめ。メインPCとしてガンガン使いたいという場合は、USBハブなどを使って補ってやる必要があるかもしれない。
Intelの最新CPUとの比較では微差で勝利か
次に実際の性能を検証していこう。まずは「Ryzen 9 7940HS」を搭載するMINISFORUMの「Venus UM790 Pro」で同じテストを行なったところ、NucBox K8での検証結果とほとんど違いがなかった。
最初に紹介したように、Ryzen 9 7940HSとRyzen 7 8845HSではCPUコアとGPUコアの構成が同じな上に、クロック周波数もほぼ同じだ。そうしたことを考えれば妥当な結果と言える。
そこで先日検証した、Intelの最新ノートPC向けCPUを搭載するASUSの「ASUS NUC 14 Pro Kit」とも比較してみた。最新世代同士の対決ということで、興味のあるユーザーも多いだろう。
ASUS NUC 14 Pro KitはCPUとして「Core Ultra 7 165H」を搭載したベアボーンPCで、検証時は8GB×2(合計16GB)のメモリと1TBのSSDが組み込まれた状態だった。
Core Ultra 7 165Hは、高性能コア(Performanceコア、Pコア)を6基、高効率コア(Efficientコア、Eコア)を8基、低電力高効率コア(LowPower Efficientコア、LP-Eコア)を2基装備し、16コア22スレッドに対応するCPUである。
CPU | コア/スレッド数 | 内蔵GPU | |
---|---|---|---|
GMKtec NucBox K8 | Ryzen 7 8845HS | 8コア/16スレッド | RDNA3(12コア) |
ASUSTeK NUC 14 Pro | Core Ultra 7 165H | 16コア/22スレッド | Intel Arc graphics(8コア) |
総合性能を検証できるPCMark 10 Extended、3D描画性能を検証できる3DMarkの結果を比較したのが下のグラフだ。いずれもスコアが高いほど性能が高い。PCMark 10のスコアに関しては、NucBox K8のほうが全体的に高い。とはいえ、Windows 11や日常的に利用するアプリの操作感は、どちらも十分快適で不満はないレベルだった。
一方で3DMarkに関しては、DirectX 12ベースのTime SpyではASUS NUC 14 Pro Kitの勝利、DirectX 11ベースのFire Strikeと、ノートPC向けの描画負荷の低いNight RaidではNucBox K8が勝つ。普段からプレイするゲームが利用するDirectXの対応状況と合わせて考えるとよいだろう。
こうした3D描画性能の実際を検証するため、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」と「レインボーシックス シージ」のベンチマークテストモードも試してみた。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)、グラフィックス設定は、ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは[標準品質(デスクトップPC)]と[高品質(デスクトップPC)]、レインボーシックス シージでは[中]と[最高]に設定した。
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、比較的負荷が低い[標準品質(デスクトップPC)]ではASUS NUC 14 Pro Kitのほうがスコアが高く、描画設定が重くなる[高品質(デスクトップPC]設定ではNucBox K8のほうがスコアが高かった。また全体的に描画負荷が低めのレインボーシックス シージでは、NucBox K8のほうがFPSは高かった。
TMPGEnc Video Mastering Works 7によるエンコード速度の検証は、CPUコア部分の処理性能を見るためのものだ。こちらの結果では全体的にNucBox K8のほうが早い。Ryzen 7 8845HSは、Intel製CPUで言うところのPコアのみで構成されており、CPUコアをフルに活用するこうしたテストではこうした強みを生かしやすい。
IntelとAMD、双方とも最新世代のCPU同士の比較となったわけだが、内蔵GPUの性能ではASUS NUC 14 Pro Kitのほうが有利な場面もいくつかある。ただCPU性能なども含めて総合的に考えると、NucBox K8の勝利と考えてよいだろう。
内部へのアクセスは容易だが内部プレートの扱いに注意
次に内部にアクセスしてみよう。天板の隙間にツメなどをかけて上に引っ張ると、天板が外れる。結構力を入れなければならないが力任せに作業せず、天板全体をジワジワと浮かせていこう。するとメモリやSSDを冷却するファンを装備した内部プレートが見えるので、四隅の固定ネジを外す。内部プレートはネジのほかにツメで本体にロックされているため、このままスッと外すことはできない。
左右側面の中央近くにちょっとしたへこみがあるので、ここに小さくて平たいマイナスドライバなどを挿して「ほんのちょっとだけ」上に押し上げるようにすると、内部プレートのロックが外れて内部にアクセスできるようになる。内部プレートとマザーボードはファン用の電源ケーブルで接続されているので、ムリに引っ張って断線しないようにしたい。
底面や天板を外すだけというシンプルなタイプと比べると、やや面倒なところはある。とはいえ作業難易度は高くない。
内部にはメモリスロットとSSD用のM.2スロットを2基ずつ装備する。M.2スロットにはシステム用のSSDがすでに組み込まれており、あと1基のM.2 SSDを追加可能だった。機能的にはシンプルながら、高速なM.2 SSDを増設できるのはうれしい。
余分な機能を削ぎ落としたシンプルモデル
最近はデバイス監視用のモニターを搭載したり、ビデオカードを利用するためのOCuLinkを搭載するなど、機能面で差別化を図るミニPCも増えているが、本機はそうした付加機能は搭載していない。最新のCPUを搭載していれば余分な機能は必要ない、というユーザー向けのモデルと言ってもよいだろう。
本機だけに限ったことではないが、クーポンを利用すればかなり安く購入できる。Amazon.co.jpでの表示価格は10万円前後だが、7月上旬の検証時で1万3,000円のクーポンが配布されており、8万7,000円前後で購入できる。10万円前後の高性能なミニPCでは、こうした大幅値引きのクーポンが提供されることが多いので、購入を検討する場合はこうしたクーポンにも注目したい。