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IntelミドルレンジGPUのお手並み拝見!発売前のArc 770とA750をベンチマークテスト

 Intelは10月12日より、自社のディスクリートGPUを搭載した純正ビデオカード「Intel Arc A770 Limited Edition」と「Intel Arc A750 Limited Edition」をグローバルで発売する。

 これに先立って、両ビデオカードのサンプルをテストする機会が得られた。Intel Arc Aシリーズでもっとも高性能なA700系の実力をベンチマークテストでチェックしてみよう。

第1世代Intel Arcの最上位「Intel Arc A700シリーズ」

 今回テストするIntelのArc A770およびArc A750は、「Alchemist」の名で開発されてきた第1世代Intel Arcの中でもっとも高性能な「Intel Arc A700シリーズ」に属するGPU。いずれもXe-HPGアーキテクチャに基づいて、TSMC N6プロセスで製造されている。

 上位モデルであるArc A770には、VRAM容量16GB版と8GB版が存在しているが、今回テストする純正ビデオカードは16GB版だ。16GB版Arc A770のGPUコアでは、32基のXe Coreとレイ・トレーシング・ユニット(RTU)、512基のXeベクトルエンジンとXe Matrix eXtensions(XMX)が有効化されている。16GBのVRAMは17.5Gbps動作のGDDR6メモリで、GPUコアと256bitのメモリインターフェイスで接続している。バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16で、TBPは225W。

 下位モデルとなるArc A750のGPUコアでは、Xe CoreとRTUが28基、XeベクトルエンジンとXMXが448基有効化されている。VRAMには16Gbps動作のGDDR6メモリを8GB搭載しており、メモリインターフェイスは256bit。バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16で、TBPは225W。

【表1】Intel Arc A770/A750の主な仕様
GPUArc A770 (16GB)Arc A770 (8GB)Arc A750Arc A380
アーキテクチャXe-HPGXe-HPGXe-HPGXe-HPG
製造プロセスTSMC N6TSMC N6TSMC N6TSMC N6
Xe Core32基32基28基8基
Xeベクトルエンジン512基512基448基128基
レイ・トレーシング・ユニット32基32基28基8基
Xe Matrix eXtensions512基512基448基128基
最大クロック2,100MHz2,100MHz2,050MHz2,000MHz
メモリ容量16GB (GDDR6)8GB (GDDR6)8GB (GDDR6)6GB (GDDR6)
メモリスピード17.5Gbps16.0Gbps16.0Gbps15.5Gbps
メモリインターフェイス256bit256bit256bit96bit
メモリ帯域幅560GB/s512GB/s512GB/s186GB/s
バスインターフェイスPCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x8
消費電力 (TBP)225W225W225W75W

Intel純正ビデオカード「Limited Edition」

 ここからは、Intel純正ビデオカードである「Intel Arc A770 Limited Edition」と「Intel Arc A750 Limited Edition」について紹介しよう。

 Intel Arc A770 Limited Editionは、2スロットを占有するGPUクーラーを搭載したビデオカード。GPUのArc A770は、最大GPUクロックがリファレンスよりも高い2,400MHzに設定されている。補助電源コネクタはPCIe 8ピンとPCIe 6ピンの2系統で、画面出力端子はDisplayPort(3基)とHDMI(1基)。

 GPUクーラーやバックプレートは、マットブラックとダークグレーでカラーリングされており、冷却ファンやGPUクーラーの外周部などにRGB LEDライティングバーを搭載。補助電源コネクタ付近に用意された専用コネクタとUSB 2.0ヘッダーを付属のケーブルで接続すると、専用のソフトウェアからLEDを制御できる。

Intel Arc A770 Limited Edition。本体はマットブラックとダークグレーでカラーリングされている
裏面はバックプレートで覆われており、カード後部付近にはLEDライティングバーを備えている
GPUクーラーの占有スロットは2スロット
画面出力端子。HDMI(1基)とDisplayPort(3基)
補助電源コネクタはPCIe 8ピンとPCIe 6ピン。近くに配置されているのはLED制御用のコネクタ
LED制御用のコネクタは、同梱のケーブルでUSB 2.0ヘッダーと接続する
Intel Arc A770 Limited Edition専用のLEDコントロールソフト
Intel Arc A770 Limited EditionのGPU-Z実行画面

 下位モデルであるIntel Arc A750 Limited Editionの外観は、ほぼIntel Arc A770 Limited Editionと同等ながら、上位モデルに搭載されているRGB LEDは省略されており、LED制御用の専用コネクタも搭載していない。

 GPUのArc A750は、最大クロックが2,400MHzに設定されており、助電源コネクタはPCIe 8ピンとPCIe 6ピンの2系統。画面出力端子はDisplayPort(3基)とHDMI(1基)。

Intel Arc A750 Limited Edition。見た目は上位のモデルとほとんど変わらないが、RGB LEDは省略されている
裏面はバックプレートで覆われている
GPUクーラーの占有スロットは2スロット
画面出力端子。HDMI(1基)とDisplayPort(3基)
補助電源コネクタはPCIe 8ピンとPCIe 6ピン
Intel Arc A750 Limited EditionのGPU-Z実行画面

比較用GPUとテスト環境

 Intel Arc A700シリーズの比較対象として、同じく第1世代Intel Arcの「Arc A380」と、NVIDIAのミドルレンジGPU「GeForce RTX 3060」を用意した。

 各ビデオカードの動作時仕様は以下の表の通り。

【表2】各ビデオカードの動作仕様
GPUArc A770 (16GB)Arc A750Arc A380GeForce RTX 3060
ビデオカードベンダーIntelIntelGUNNIRZOTAC
製品型番A770 Limited EditionA750 Limited EditionIntel Arc A380 Photon 6G OCZT-A30600H-10M
ベースクロック1,320MHz
ブーストクロック2,400MHz2,400MHz2,450MHz1,807MHz
メモリ容量16GB (GDDR6)8GB (GDDR6)6GB (GDDR6)12GB (GDDR6)
メモリスピード17.5Gbps16.0Gbps15.5Gbps15.0Gbps
メモリインターフェイス256bit256bit96bit192bit
メモリ帯域幅560GB/s512GB/s186GB/s360GB/s
PCI ExpressPCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x16PCIe 4.0 x8PCIe 4.0 x16
電力リミットPL1=PL2=190WPL1=PL2=190WPL1=PL2=65WPowerLimit=170W
Arc A380を搭載する「GUNNIR Intel Arc A380 Photon 6G OC」
GUNNIR Intel Arc A380 Photon 6G OCのGPU-Z実行画面
GeForce RTX 3060を搭載する「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」。
ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OCのGPU-Z実行画面

 ビデオカードをテストするベース機材には、Core i9-12900Kを搭載したIntel Z690環境を用意した。今回はIntel Arc AシリーズとCPUの内蔵GPUコアを連携することでエンコード速度を向上させるハイパーエンコードをテストするため、Core i9-12900KのiGPU「UHD Graphics 770」を有効化している。

 グラフィックスドライバについては、Intel製GPUについてはレビュアー向けの「31.0.101.3433」、GeForce RTX 3060には「Game Ready Driver 517.48」を適用している。そのほかの機材や条件については以下の通り。

【表3】テスト機材一覧
GPUArc A770 (16GB)/Arc A750/Arc A380GeForce RTX 3060
dGPUドライバ31.0.101.3433、Resizable BAR=有効GRD 517.48 (31.0.15.1748)、Resizable BAR=有効
CPUCore i9-12900K (8P+8Eコア/24スレッド)
CPUパワーリミットPL1=PL2=241W、Tau=56秒
CPUクーラーADATA XPG LEVANTE 360 ARGB (ファンスピード=100%)
マザーボードASUS ROG STRIX Z690-F GAMING WIFI [UEFI=2004]
メモリDDR5-4800 16GB×2 (2ch、40-39-39-76、1.1V)
iGPUUHD Graphics 770
iGPUドライバ31.0.101.3433、Resizable BAR=非対応
システム用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSDCFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
電源Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum (1050W/80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro (Ver 22H2、build 22000.556、VBS有効)
電源プランバランス
モニタリングソフトHWiNFO64 Pro v7.30
ワットチェッカーラトックシステム RS-BTWATTCH2
室温約26℃

ベンチマーク結果

 今回実施したベンチマークテストは、「3DMark」、「VRMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Hitman 3」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」、「Forza Horizon 5」、「DIRT 5」、「エーペックスレジェンズ」、「アサシン クリード ヴァルハラ」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」、「エルデンリング」、「Microsoft Flight Simulator」、「Blender Benchmark」、「Topaz Video Enhance AI」、「Topaz Gigapixel AI」、「DaVinci Resolve Studio」。

3DMark

 3DMarkでは、DirectX12テスト「Time Spy」、DirectX11テスト「Fire Strike」、Vulkanテスト「Wild Life」、DXR(DirectX Raytracing)テストの「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」、「PCI Express feature test」を実行した。

 PCI Express feature testを除いた、3D描画性能を計測するテストの全てでArc A770が全体ベストのスコアを記録しており、Arc A750を4~10%、GeForce RTX 3060を40~77%上回っている。Arc A770とArc A750がともにGeForce RTX 3060を大きく上回った3DMarkでの結果は、Arc A700シリーズのGPUコア性能の高さを示している。

【グラフ01】3DMark v2.22.7359「Time Spy」
【グラフ02】3DMark v2.22.7359「Time Spy Extreme」
【グラフ03】3DMark v2.22.7359「Fire Strike」
【グラフ04】3DMark v2.22.7359「Fire Strike Extreme」
【グラフ05】3DMark v2.22.7359「Fire Strike Ultra」
【グラフ06】3DMark v2.22.7359「Wild Life/Wild Life Extreme」
【グラフ07】3DMark v2.22.7359「Port Royal」
【グラフ08】3DMark v2.22.7359「DirectX Raytracing feature test」
【グラフ09】3DMark v2.22.7359「PCI Express feature test」

3DMark「Intel XeSS feature test」

 先に紹介した3DMarkの基本テストとは別に、レビュアー向けに先行配信された「バージョン2.23.7408」にて、Intelの超解像技術「XeSS」をテストする「Intel XeSS feature test」を実行した。なお、このテストのみIntelのGPUドライバは「31.0.101.3435」を適用している。

 Intel XeSSは、Arc Aシリーズが搭載するXMXなどを活用する超解像技術なのだが、NVIDIAやAMDのGPUでも実行することができる。このため、GeForce RTX 3060でもテストを実行できたのだが、XeSSの利用によって50%ほどフレームレートが向上するIntel Arc A700シリーズに対し、GeForce RTX 3060ではXeSSの効果は約35%ほどのフレームレート向上となっている。

【グラフ10】3DMark v2.23.7408「Intel XeSS feature test」
【グラフ11】3DMark v2.23.7408「Intel XeSS feature test」(Performance Difference)

VRMark

 VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」を実行した。なお、Intel製GPUではCyan Roomで垂直同期をオフにできず正常なスコアが得られないため、カスタムモードでフルスクリーンにてテストを実施した。このため、Intel製GPUはCyan Roomのスコアを取得できておらず、フレームレートのみで比較を行なった。

 Arc A770はここでも全ての条件でベストのスコアとフレームレートを記録しているが、GeForce RTX 3060を31%も上回ったCyan Roomのフレームレートに比べ、グラフィックスAPIにDirectX 11を用いるテストの結果は伸び悩んでおり、Orange Roomで約1%、Blue Roomで約12%上回るに留まった。

【グラフ12】VRMark v1.3.2020「ベンチマークスコア」
【グラフ13】VRMark v1.3.2020「平均フレームレート」

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度をテストした。

 Arc A770のスコアは、フルHDでGeForce RTX 3060と並んでいるものの、WQHDで約14%、4Kでは約21%上回り、全体ベストの結果を記録した。下位モデルであるArc A750との差は4~6%程度で、そのArc A750は、WQHD以上の画面解像度でGeForce RTX 3060を上回った。

【グラフ14】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」
【グラフ15】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「平均フレームレート」

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、画質プリセットを「高品質」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度をテストした。

 Arc A770は、全ての解像度でベストスコアを記録したGeForce RTX 3060を9~35%も下回った。メモリ帯域幅の広いArc A770とArc A750は、高解像度になるほどGeForce RTX 3060との差を縮めてはいるが、DirectX 11タイトルで最適化の優先度も低いであろうFINAL FANTASY XVでは、GeForceに大差をつけられた格好だ。

【グラフ16】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.3

Hitman 3 (XeSSテスト)

 Hitman 3では、レビュアー向けに先行配信されたXeSS対応版「v3.130.0」を使ってテストを行なった。

 テストでは、グラフィックス設定を可能な限り高く設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度でベンチマークモードを実行。テストシーンは「ドバイ」で、XeSS無効時とXeSSを「パフォーマンス」で有効化したさいの平均フレームレートを比較した。なお、参考までにGeForce RTX 3060ではNVIDIAの超解像技術「DLSS」をパフォーマンスで有効にした際のデータも取得している。

 XeSS無効時のA770は、A750を6~15%、GeForce RTX 3060を28~34%上回って全体ベストを記録している。ただ、フルHDでも平均フレームレートは約51.6fpsで、60fpsを下回っている。

【グラフ17】Hitman 3 (v3.130.0)「XeSS/DLSS無効」

 XeSSをパフォーマンス設定で有効にすると、A770の平均フレームレートはフルHDで約88.7fps、WQHDでも約70.4fpsまで上昇した。これは、同じくXeSSを有効化したArc A750を6~28%、GeForce RTX 3060を22~39%上回り、DLSSをパフォーマンス設定で有効化したGeForce RTX 3060を16~30%上回っている。

 異なる超解像技術であるXeSSとDLSSをフレームレートだけで評価することはできない点に注意が必要だが、GPU負荷の高いシーンでのフレームレートを上昇させる効果がXeSSには確かにあるようだ。

【グラフ18】Hitman 3 (v3.130.0)「XeSS/DLSS有効」

シャドウ オブ ザ トゥームレイダー (XeSSテスト)

 シャドウ オブ ザ トゥームレイダーは既にXeSSに対応しているタイトルの一つで、NVIDIAのDLSSにも対応している。今回は描画設定プリセット「最高」をベースに、レイトレーシングによる影の描画品質を最高に設定。XeSSおよびDLSS無効時と有効時でそれぞれベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIはDirectX 12。

 XeSS無効時は、Arc A770がArc A750を18~33%、GeForce RTX 3060を4~12%上回ってトップに立っている。

【グラフ19】シャドウ オブ ザ トゥームレイダー (v1.0/build 488.0_64)「XeSS/DLSS無効」

 XeSSを「パフォーマンス」設定で有効にした場合、Arc A770はArc A750を29~38%上回り、GeForce RTX 3060とはフルHDで同等、WQHD以上では9~23%上回った。ただ、フルHDとWQHDについては、DLSSを「パフォーマンス」設定で有効化したGeForce RTX 3060がもっとも高いフレームレートを記録している。

【グラフ20】シャドウ オブ ザ トゥームレイダー (v1.0/build 488.0_64)「XeSS/DLSS有効」

Forza Horizon 5

 Forza Horizon 5では、画質プリセットを「最高」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。

 全ての画面解像度でもっとも高いフレームレートを記録したのはArc A770で、Arc A750を8~11%、GeForce RTX 3060を20~24%上回った。

【グラフ21】Forza Horizon 5 (v1.507.426.0.HV)

DIRT 5

 DIRT 5では、画質プリセットを「Ultra High」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。全ての条件でレイトレーシング(Raytraced Vehicle Shadows)を有効にしている。

 ここでのArc A770は全体2番手の結果となっており、Arc A750を2~4%上回った一方、GeForce RTX 3060を3~4%下回った。

【グラフ22】DIRT 5 (v1.0.276742.503)

エーペックスレジェンズ

 エーペックスレジェンズでは、描画設定を可能な限り高く設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは300fps。

 もっとも高いパフォーマンスを発揮したGPUはArc A770で、Arc A750を9~11%、GeForce RTX 3060を47~51%も上回った。平均フレームレート自体も全ての画面解像度で60fpsを上回り、WQHD以下では120fps以上に達している。

【グラフ23】エーペックスレジェンズ (v3.0.13.29)

アサシン クリード ヴァルハラ

 アサシン クリード ヴァルハラでは、画質プリセットを「最高」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。

 Arc A770はここでも比較製品中最高のパフォーマンスを発揮しており、Arc A750を31~116%、GeForce RTX 3060を7~28%上回った。

【グラフ24】アサシンクリード ヴァルハラ (v1.6.1)

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、画質プリセットを「高」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。

 Arc A770は全ての画面解像度で比較製品中もっとも高い平均フレームレートを記録しており、Arc A750を6~7%、GeForce RTX 3060を6~12%上回った。

【グラフ25】モンスターハンターライズ:サンブレイク (v12.0.0.0)

エルデンリング

 エルデンリングでは、画質プリセットを「最高」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度で平均フレームレートを計測した。ゲームの上限フレームレートは60fpsで、自動描画調整は無効にしている。

 Arc A770とArc A750は、WQHD以下でフレームレート上限の60fpsを記録しており、WQHDで58.4fpsを記録したGeForce RTX 3060を約3%上回った。4Kでは約48.0fpsを記録したArc A770がトップで、約41.6fpsのArc A750を約15%、約37.2fpsのGeForce RTX 3060を約29%上回った。

【グラフ26】エルデンリング (v1.06)

Microsoft Flight Simulator

 Microsoft Flight Simulatorでは、画質プリセットを「ウルトラ」に設定し、グラフィックスAPIを「DirectX 11」と「DirectX 12」にした場合でそれぞれ、フルHD~4Kまでの画面解像度での平均フレームレートを計測した。テストでは、羽田空港から関西国際空港へのルートをエアバスA320neoでAIに飛行させ、離陸から3分間の平均フレームレートを計測している。

 DirectX 11で最高の平均フレームレートを記録したのはGeForce RTX 3060で、Arc A770はGeForce RTX 3060を5~29%下回った。

【グラフ27】Microsoft Flight Simulator (v1.27.21.0)「DirectX 11」

 DirectX 12では、Arc A770がDirectX 11よりも明らかに高いフレームレートを記録し、逆に若干フレームレートが低下したGeForce RTX 3060を23~28%も上回ってトップに立った。

【グラフ28】Microsoft Flight Simulator (v1.27.21.0)「DirectX 12」

Blender Benchmark 3.1.0

 Blender Benchmark 3.1.0では、標準で用意されている3つのシーン(monster、Junkshop、classroom)をテストした。テストに用いたBlenderのバージョンは「3.3.0」。Arc A380はエラーによりテストを完了できなかったため、ノースコアとしている。

 Arc A770のスコアはGeForce RTX 3060を26~37%下回っており、全体では2番手のスコアとなっている。Arc A750はmonsterとclassroomではArc A770とそん色ないスコアを記録しているが、なぜかJunkshopでは著しく低いスコアとなっている。両GPUのスペック的にこれほどの差がつく理由は思い当たらないので、原因は不明ではあるが不具合が生じた結果であって、GPU性能の差を正確に反映したものではないだろう。

【グラフ29】Blender Benchmark 3.1.0 (Blender v3.3.0)

Topaz Video Enhance AI

 Topaz Video Enhance AIでは、フルHD解像度の動画(15秒、900フレーム)を4K解像度にアップスケーリングするのに要した時間を比較する。テストでは、各GPU単体でテストを実行したさいと、CPU内蔵GPUを含めて処理を行なう「All GPUs」で実行した際の時間をそれぞれ計測した。

 最速を記録したのは269.1秒を記録したArc A770単体で、2番手は283.1秒のArc A750単体。385.8秒を要したGeForce RTX 3060に比べ、Intel Arc A700シリーズは100秒以上も短い時間で処理を完了している。

 なお、All GPUsを選択した場合、Arc A380以外のGPUは処理時間が増えてしまっている。Arc A380については、単体で実行しようとした際はなぜかGPUが動作せずにCPUのみで処理を実行していたため「結果なし」としているが、All GPUsを選択するとArc A380でも処理が実行されるという不可解な動作が発生した。おそらく、ソフト側かGPUドライバの不具合によるものだろう。

【グラフ30】Topaz Video Enhance AI (v2.6.4)

Topaz Gigapixel AI

 Topaz Gigapixel AIでは、2K解像度の写真(1,920×1,280ドット)を50枚まとめて8K解像度(7,680×5,120ドット)にアップスケーリングするのに要した時間を比較する。ここでも、各GPU単体と「All GPUs」でテストを実行した際の時間を計測した。

 最速は233.7秒のArc A770単体で、2番手は240.9秒のArc A750単体。GeForce RTX 3060単体の処理時間は259.9秒であり、AI処理においてはGeForce RTX 3060を凌ぐパフォーマンスを発揮している。

 All GPUsを選択した際、Arc A700シリーズは処理時間が増えてしまっているが、Arc A380については多少だが処理時間が短縮している。これもドライバやソフト側の不具合によるものである可能性はあるが、あまりに性能差が大きいGPUを連携させても逆効果になるが、ある程度までならプラスに働くこともあるということかもしれない。

【グラフ31】Topaz Gigapixel AI (v6.2.0)

DaVinci Resolve Studio 18 (v18.0.4)

 DaVinci Resolve Studio 18は、Arc Aシリーズで導入された「ハイパーエンコード」に対応している。ハイパーエンコードはArc AシリーズとCPU内蔵GPU(iGPU)のハードウェアエンコーダを連携させることで処理速度を高速化する技術で、DaVinci Resolve Studio 18では対応GPUが揃っていれば、自動的にハイパーエンコードが実行される。

 そこで今回は、iGPUを無効にした「dGPUのみ」と、iGPUを有効にした「Hyper Encode」の2条件で、4K解像度の動画(60秒、3,600フレーム)をH.264形式とH.265形式にエンコードするのに掛かった時間を比較してみた。なお、ビデオエンジンの仕様が異なるGeForce RTX 3060は比較から除外した。

 Arc Aシリーズが備えるハードウェアエンコーダの性能は、Arc A770でもArc A380でも大差ないようで、dGPUのみでエンコードした場合は、H.264でもH.265でも40秒前後でエンコードを完了している。

 iGPUを加えたハイパーエンコードでは、Arc A700シリーズのエンコード時間は22秒前後まで大幅に短縮されており、dGPUとiGPUでハードウェアエンコーダを連携させることの効果が非常に大きいことが伺える。ただ、dGPU単体ではArc A700シリーズと遜色なかったArc A380については、ハイパーエンコードが有効になる条件で、なぜか処理時間が大幅に増加してしまっている。これも何らかの不具合によるものだろうが、このような現象が極力生じなくなるまでArc Aシリーズが成熟することを期待したい。

【グラフ32】DaVinci Resolve Studio 18 (v18.0.4)「H.264形式」
【グラフ33】DaVinci Resolve Studio 18 (v18.0.4)「H.265形式」

システムの消費電力

 ワットチェッカーを使ってシステムの消費電力を測定し、アイドル時の最小消費電力と、ベンチマーク実行中の平均消費電力および最大消費電力をグラフ化した。

 Arc A770とArc A750のアイドル時消費電力は110W前後を記録しており、これはArc A380やGeForce RTX 3060が記録した65W弱のアイドル時消費電力より40W以上も高いものとなっている。この理由はArc A770とArc A750がGPU負荷のない状態でも40W前後の電力を消費しているためだ。さすがに無負荷で40W前後の電力を消費するというのは大きすぎるので、GPUドライバやVBIOSなどの不具合で省電力機能が正常に動作していないものであると信じたい。

 一方、ベンチマーク実行中の平均消費電力については、Arc A770が比較製品の中でもっとも高く、Arc A750もスコアで大敗しているFINAL FANTASY XV以外は、GeForce RTX 3060より高い数値を記録している。

【グラフ34】ベンチマーク実行中とアイドル時のシステムの消費電力 (平均/最大)

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを4K最高品質で実行した際のスコアをシステムの平均消費電力で割った「1Wあたりのスコア」は以下の通り。

 数値が高いほど電力効率が高いと言えるこの条件で、Arc A770は「24.1」、Arc A750は「23.4」で、GeForce RTX 3060の「25.2」と比較的近い数値を記録している。先進的なTSMC N6プロセスで製造されているだけあって、電力効率そのものはGeForce RTX 30シリーズと比べても悪くないレベルにあるようだ。

【グラフ35】システムの平均消費電力1WあたりのファイナルファンタジーXIVベンチマークスコア(4K/最高品質)

ベンチマーク実行中のモニタリングデータ

 モニタリングソフトのHWiNFO64 Pro v7.30を使って取得した、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(4K最高品質)実行中のモニタリングデータから、GPU温度などをまとめてみた。

 Arc A770の平均GPU温度は71.2℃で、平均GPUクロックは2,268MHzだった。最大GPUクロックから多少低下しているが、これは温度要因ではなく電力リミットの190Wに到達したことによるスロットリングが生じているためだ。

 Arc A750の平均GPU温度は70.8℃で、平均GPUクロックは2,386MHzだった。平均GPU消費電力は185.2Wで、電力リミットの190Wをほぼ使い切ってはいるもののスロットリングの発生は軽微だった。Arc A770よりGPUコア自体の消費電力が少ない分、電力リミットのマージンを使って高クロック動作を実現できたということだ。

 なお、Arc A770はシステム消費電力の最大値で唯一500W台という突出した数値を記録しているのだが、これはCPUのCore i9-12900Kが瞬間的に大きな電力を消費したために記録された数値であることが消費電力のグラフからみてとれる。

【グラフ36】ファイナルファンタジーXIVベンチマーク「4K/最高品質」実行中のGPU温度 (平均/最大)
【グラフ37】ファイナルファンタジーXIVベンチマーク「4K/最高品質」実行中の消費電力 (平均/最大)
【グラフ38】ファイナルファンタジーXIVベンチマーク「4K/最高品質」実行中の動作クロック (平均/最大)
【グラフ39】Arc A770のモニタリングデータ
【グラフ40】Arc A750のモニタリングデータ
【グラフ41】Arc A380のモニタリングデータ
【グラフ42】GeForce RTX 3060のモニタリングデータ

一部のゲームではGeForce RTX 3060を大きく上回るArc A700シリーズ

 以前、国内未発売のArc A380をテストした時は、Intel Arc AシリーズがNVIDIA GeForceやAMD Radeonに次ぐ第3の選択肢になるのは厳しいように感じたが、Arc A770やArc A750は少なくないゲームでGeForce RTX 3060を上回るパフォーマンスを発揮しており、これだけの性能が得られるなら価格次第では面白い選択肢となるだろう。

 製品発売前のサンプルとベータ版ドライバで検証したことを考慮しても、異常に高いアイドル時消費電力や最適化されていないゲームでのパフォーマンスなどに熟成不足を感じるが、逆に最適化されている3DMarkでの素晴らしいパフォーマンスを見ると、多くのゲームでそのポテンシャルを発揮できる日が来ることを期待せずにはいられない。