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iPhone 14 Pro Maxはプロの道具として妥協を許さない人が選ぶべきスマホだ
2022年10月7日 06:35
Appleは9月16日、iPhone 14シリーズを発売した。最上位のiPhone 14 Pro Maxおよび無印のProを含めた新要素としては、小型化されたパンチホール「Dynamic Island」、常時表示ディスプレイ、4,800万画素メインカメラ、2倍望遠カメラ(クアッドピクセルセンサーを活用)、Apple ProRAW、ProResビデオ、マクロ撮影、LiDARスキャナなどが挙げられる。ここでは「iPhone 14 Pro Max」の実機レビューをお届けしよう。
外観上の最大の変化は小型化されたパンチホール「Dynamic Island」
iPhone 14 Pro MaxはOSに「iOS 16」、SoCに「A16 Bionicチップ」を採用。ストレージは128GB、256GB、512GB、1TBが用意。メモリ容量についてはいつも通り非公表だが、複数のベンチマークソフトのシステム情報で1TBモデルが6GBのメモリを搭載していることを確認した。
ディスプレイは「Super Retina XDRディスプレイ」と呼ばれる6.7型OLED(2,796×1,290ドット)。ディスプレイにおける今回最大のトピックは、小型化されたパンチホール「Dynamic Island」と、常時表示ディスプレイだ。この2つについては章を分けてレビューしていこう。
カメラは、メインカメラ(4,800万画素)、超広角カメラ(1,200万画素)、2倍望遠カメラ(1,200万画素)、3倍望遠カメラ(1,200万画素)、フロントカメラ(1,200万画素)という構成。メインカメラはiPhone 13 Pro/Pro Maxと比べて、解像度が1,200万画素から4,800万画素、センサーサイズが65%大型化。またメインカメラの中央部分をクロップすることで、「2倍望遠カメラ」というモードを新設している。
通信機能は5G(Sub6)、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3に対応。インターフェイスはLightning(USB 2.0)を引き続き採用している。
筆者自身は充電には「MagSafe充電器」を使用しており、撮影した写真、動画はAirDropでMacBookに転送しているが、メインのデスクトップPCに写真、動画を高速に直接転送できないことを非常に不便に感じている。有線インターフェイスを高速な規格に変更するなり、Windows用にAirDropを用意するなり、何らかの改善がなされることを望みたい。
防水防塵性能は引き続きIP68。安全のための機能として緊急SOS、衝突事故検出が新たに追加された。衛星経由での緊急SOSは米国とカナダより提供を開始し、日本での対応は未定。早期に対応することを期待したい。
本体サイズは160.7×7.85×77.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は240g。バッテリ容量は非公開だが、バッテリ駆動時間はビデオ再生で最大29時間、ビデオ再生(ストリーミング)で最大25時間、オーディオ再生で最大95時間とされている。
今回どうしても触れておかなければならないのは価格。128GB版で16万4,800円、256GB版で17万9,800円、512GB版で20万9,800円、1TB版で23万9,800円とさらに高価なスマートフォンとなってしまった。個人的には、15万円を超えるスマートフォンは使っていて緊張を強いられる。
今回の高価格は原材料費の高騰、円安などが原因ではあるが、フラグシップスマートフォンと言えどももう少し気楽に扱える価格帯まで下がってほしいものだ。
【表1】「iPhone 14 Pro Max」と「iPhone 13 Pro Max」のスペック | ||
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製品名 | iPhone 14 Pro Max | iPhone 13 Pro Max |
OS | iOS 16 | iOS 15 |
CPU | A16 Bionicチップ (高性能コア×2+高効率コア×4を搭載した6コアCPU、5コアGPU、16コアNeural Engine) | A15 Bionicチップ (高性能コア×2+高効率コア×4を搭載した6コアCPU、5コアGPU、16コアNeural Engine) |
メモリ | 6GB(※ストレージ1TBモデルで確認) | 6GB(※ストレージ1TBモデルで確認) |
ストレージ | 128GB、256GB、512GB、1TB | 128GB、256GB、512GB、1TB |
ディスプレイ | Super Retina XDRディスプレイ 6.7型OLED、2,796×1,290ドット、460ppi、最大120Hz ProMotionテクノロジー、最大輝度(標準)1,000cd/平方m、ピーク輝度(HDR)1,600cd/平方m、ピーク輝度(屋外)2,000cd/平方m、P3、コントラスト比2,000,000:1、耐指紋性撥油コーティング、Dynamic Island、常時表示ディスプレイ | Super Retina XDRディスプレイ 6.7型OLED、2,778×1,284ドット、458ppi、最大120Hz ProMotionテクノロジー、最大輝度(標準)1,000cd/平方m、ピーク輝度(HDR)1,200cd/m²、P3、コントラスト比2,000,000:1、耐指紋性撥油コーティング |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 |
WWAN | 5G(Sub6) | 5G(Sub6) |
インターフェイス | Lightning(USB 2.0) | Lightning(USB 2.0) |
カメラ | 【メインカメラ】(4,800万画素、F1.78、24mm、第2世代センサーシフト光学式手ぶれ補正、7枚構成レンズ、100%Focus Pixels) 【超広角カメラ】(1,200万画素、F2.2、13mm、6枚構成レンズ、100%Focus Pixels) 【2倍望遠カメラ】(クアッドピクセルセンサーを活用、1,200万画素、F1.78、48mm、第2世代センサーシフト光学式手ぶれ補正、7枚構成レンズ、100%Focus Pixels) 【3倍望遠カメラ】(1,200万画素、F2.8、77mm、光学式手ぶれ補正、6枚構成レンズ) 【フロントカメラ】(1,200万画素、F1.9、6枚構成レンズ、Focus Pixelsを使ったオートフォーカス) | 【メインカメラ】(1,200万画素、F1.5、26mm、センサーシフト光学式手ぶれ補正、7枚構成レンズ) 【超広角カメラ】(1,200万画素、F1.8、13mm、6枚構成レンズ) 【3倍望遠カメラ】(1,200万画素、F2.8、77mm、光学式手ぶれ補正、6枚構成レンズ) 【フロントカメラ】(1,200万画素、F2.2) |
バッテリ容量 | 非公表 | 非公表 |
バッテリ駆動時間 | ビデオ再生:最大29時間 ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間 オーディオ再生:最大95時間 | ビデオ再生:最大28時間 ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間 オーディオ再生:最大95時間 |
バッテリ充電時間 | 約30分で最大50% (別売りの20W以上のUSB ACアダプタを使用) | 約30分で最大50% (別売りの20W以上のUSB ACアダプタを使用) |
本体サイズ (幅×奥行き×高さ) | 160.7×7.85×77.6mm | 160.8×7.65×78.1mm |
重量 | 240g | 238g |
防水防塵性能 | IP68 | IP68 |
センサー | Face ID、LiDARスキャナ、気圧計、ハイダイナミックレンジジャイロ、高重力加速度センサー、近接センサー、デュアル環境光センサー | Face ID、LiDARスキャナ、気圧計、3軸ジャイロ、加速度センサー、近接センサー、環境光センサー |
安全のための機能 | 緊急SOS、衝突事故検出 | - |
セキュリティ | Face ID(顔認証) | Face ID(顔認証) |
カラー | スペースブラック、シルバー、ゴールド、ディープパープル | グラファイト、ゴールド、シルバー、シエラブルー、アルパイングリーン |
発売時価格 | 128GB版 : 16万4,800円 256GB版 : 17万9,800円 512GB版 : 20万9,800円 1TB版 : 23万9,800円 | 128GB版 : 13万4,800円 256GB版 : 14万6,800円 512GB版 : 17万800円 1TB版 : 19万4,800円 |
現在価格 | 同上 | 128GB版 : 15万9,800円 256GB版 : 17万4,800円 512GB版 : 20万4,800円 1TB版 : 23万4,800円 |
「Dynamic Island」はUIのマジックだ
今回iPhone 14 Pro Maxを試用していてもっとも驚かされたのが「Dynamic Island」のUIの巧みな処理だ。例えばiPhone 14 Pro Maxを机の上などに置いておいて、上スワイプしてから手に持って顔認証を行なった際には、「Dynamic Island」がいったん大きくなり、その後ロック解除とともに小さくなる。
ほかにも通知などの際に「Dynamic Island」はサイズを変えるが、そのおかげで普段は小さく感じられるのだから不思議だ。
また「Dynamic Island」周囲の黒地にアイコンや画像、アニメーションなどを表示することで、あたかも2つ目のディスプレイのように演出している。
赤外線カメラ、投光イルミネーター、ドットプロジェクタ、フロントカメラなどで構成されている前面カメラ部は、小さくすることや、アンダーディスプレイカメラ化は難しいのだと思われる。しかし、それを逆手にとって新機能として位置づけているのはUIのマジックと言えよう。
「常時表示ディスプレイ」は過去のOLED搭載機にも提供されるべきだ
一方「常時表示ディスプレイ」は、Androidスマートフォンに有機ELディスプレイが搭載されたのとほぼ同時に実現しており、目新しさはないというのが正直なところだ。
また、iPhone 14/14 Plusや、過去の有機ELディスプレイ搭載iPhoneに「常時表示ディスプレイ」が提供されない明確な理由が分からない。環境への負荷を軽減するのであればスマートフォンは可能なかぎり長く利用できるべき。そのためには、OSの新機能は実現可能であれば過去の機種にも遡って提供されるべきだと強く思う。
CPU性能は例年通り着実に進化
それでは恒例のベンチマークを実施してみよう。今回は下記のベンチマークを実行した。比較対象機種は「A15 Bionicチップ」を搭載する「iPhone 13 Pro Max」だ。
- 総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V9.1.2」
- CPU/GPUベンチマーク「Geekbench 5.4.4」
- マシンラーニングベンチマーク「Geekbench ML 0.5.2」
- 3Dベンチマーク「3DMark Wild Life Extreme」
- ストレージベンチマーク「Jazz Disk」
- ミュージックビデオを連続再生(輝度100%、音量25%)
まずCPU性能を単独で見てみると、iPhone 14 Pro MaxはiPhone 13 Pro Maxに対して、「AnTuTu Benchmark V9.1.2」のCPUで約115%、「Geekbench 5.4.4」のMulti-Core Scoreで約114%のスコアを記録している。
ちなみに過去記事によれば「iPhone 12 Pro Max」から「iPhone 13 Pro Max」のCPU性能の向上も113~114%相当だった。順当な結果と言えるだろう。
一方、「Geekbench ML 0.5.2」は約112%、「3DMark」は約109~112%相当のスコアを記録している。「A14 Bionicチップ」から「A15 Bionicチップ」に変更された際にはGPUが4コアから5コアに増やされたので、GPU性能が最大で150%相当のスコアを記録していたが、今回は比較的小幅のスコア増に留まっている。
バッテリベンチマークについては、ディスプレイ輝度100%、音量25%という条件で端末内のミュージックビデオを連続再生したところ、iPhone 14 Pro Maxが19時間53分13秒、iPhone 13 Pro Maxが17時間53分13秒動作した。
ただし、iPhone 13 Pro Maxは「バッテリーの状態」が「最大100%」と表示されていたが、1年間使っていた端末だ。あくまでも参考値として捉えてほしい。ちなみに過去記事で新品のiPhone 13 Pro Maxで計測した際には、20時間10分46秒動作している。
ProRAW解像度の4,800万画素はよほどの絶景に出会ったときのモード
最後にカメラテストを実施しよう。iPhone 14 Pro Maxと同じカメラを搭載したiPhone 14 Proのカメラ性能を引き出した作例は別記事をご覧いただきたい。
筆者はiPhone 14 Pro MaxとiPhone 13 Pro Maxのカメラ任せで、Apple ProRAWで撮影し、DNGファイルをJPG画像に変換して下記に掲載している。ホワイトバランスや露出などの補正はいっさい行なっていない。
さて両機種の写真を比べてみた感想だが、4,800万画素イメージセンサーを搭載したメインカメラ、そしてその中央部分をクロップする2倍望遠カメラの精細さは間違いなく高い。
ただ、その差は相当拡大して初めて違いに気がつくレベルで、例えば48型TVなどで全画面表示しても容易には分からない。となるとProRAW解像度の4,800万画素モードを常用するかどうかは微妙だ。現像するのは面倒だし、ファイルサイズも画像によっては90MBを超えてしまう。よほどの絶景に出会ったときに活用するモードだと思う。
さて、ちょっと驚かされたのが動画の手ぶれ補正機能「アクションモード」。iPhone 14 Pro MaxとiPhone 13 Pro Maxを器具に固定して、同じ条件で歩いたり、走ったり、階段を上ったりしてみたが、iPhone 14 Pro Maxは揺れや回転を大幅に低減してくれる。
しかし、iPhone 13 Pro Maxにも光学式手ぶれ補正がメインカメラと望遠カメラに入っており、電子式手ぶれ補正を強力にかけるだけの処理性能も備えている。まったく同じとは言わないが、従来モデルにも同様の機能を提供してほしいと思う。
プロの道具として一切の妥協を許さない方こそが選ぶべき端末
iPhone 14 Pro Maxが現時点で最高峰のiPhoneであることは間違いない。個人的にはパンチホールを逆手に取った「Dynamic Island」を非常に気に入っており、多くのアプリが対応することを楽しみにしている。
性能的に大きく進化したのはカメラだが、そのスペックを必要とする方がどのくらいいるのかという点には疑問を感じる。そういう意味では、プロの道具として一切の妥協を許さない方こそが選ぶべき端末と言えるだろう。