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新ドライバでDX9ゲーム性能は本当に改善されたのか?Intel Arc A750を再テスト

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Arc A750の純正ビデオカード「Intel Arc A750 Limited Edition」

 昨年(2022年)10月にIntel Arc A700シリーズが発売されてから間もなく半年が経過する。発売以来IntelはArc A700シリーズ向けグラフィックスドライバを改良し続けており、今年2月に当初は最適化不足であることをIntel自身が認めていたDirectX 9タイトルで大幅にパフォーマンスを改善したことを報告している。

 今回は、Arc A750を搭載する純正ビデオカード「Intel Arc A750 Limited Edition」を使って、グラフィックスドライバの改良がどれだけ性能を改善したのか確かめてみよう。

最新ドライバと初期ドライバでArc A750のパフォーマンスを比較

 今回用意したビデオカード「Intel Arc A750 Limited Edition」は、Arc A700シリーズの下位モデルであるArc A750を搭載したIntel純正カード。GPUコアのArc A750はDirectX 12 Ultimateに対応しており、28基のXe Coreとレイ・トレーシング・ユニット(RTU)を搭載。また、VRAMとして8GBのGDDR6メモリを備えている。

Intel Arc A750 Limited EditionのGPU-Z実行画面

 グラフィックスドライバ改良の効果を確認する今回のテストでは、2023年3月に公開された最新ドライバである「31.0.101.4146」と、発売と同時に公開された初期ドライバである「31.0.101.3490」で、Arc A750のパフォーマンスがどのように変化するのかを比較する。

 ビデオカードを搭載するテスト環境には、Core i9-13900Kを搭載したIntel Z790環境を用意した。そのほかの機材については以下の表のとおり。

【表1】テスト機材
GPUIntel Arc A750 Limited Edition (8GB)
グラフィックスドライバ (最新)31.0.101.4146
グラフィックスドライバ (初期)31.0.101.3490
CPUCore i9-13900K (8P+16Eコア/32スレッド)
CPU動作リミットPL1=PL2=Unlimited、TjMax=100℃
CPUクーラーADATA XPG LEVANTE 360 ARGB (ファンスピード=100%)
マザーボードGIGABYTE Z790 AORUS ELITE AX [UEFI=F3]
メモリDDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-89、1.1V)
システム用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSDCFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps)
電源玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1200W/80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro 22H2 (build 22621.1265、VBS有効)
室温約24℃

定番ベンチマーク「3DMark」のスコアを比較

 まずは、定番のベンチマークテストである3DMarkで、「Speed Way」、「Port Royal」、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」、「DirectX Raytracing feature test」、「PCI Express feature test」を実行した結果だ。

 ゲーム性能を計測するテストでは、最新ドライバが初期ドライバを3%前後上回るスコアを記録している。また、バスインターフェイスの帯域幅を計測するPCI Express feature testでも約2%の性能向上が記録されており、小幅ではあるものの、初期ドライバからArc A750の動作が改善している様子が確認できる。

【グラフ01】3DMark v2.25.8056「Speed Way」
【グラフ02】3DMark v2.25.8056「Port Royal」
【グラフ03】3DMark v2.25.8056「Time Spy」
【グラフ04】3DMark v2.25.8056「Fire Strike」
【グラフ05】3DMark v2.25.8056「Wild Life/Wild Life Extreme」
【グラフ06】3DMark v2.25.8056「DirectX Raytracing feature test」
【グラフ07】3DMark v2.25.8056「PCI Express feature test」

DirectX 9タイトルで新旧ドライバを比較。CSGOでは最大4割弱の性能向上を確認

 2023年2月、Intelがグラフィックスドライバの改善で大幅に性能が向上したと主張していたのがDirectX 9タイトルだ。今回は、「リーグ・オブ・レジェンド」、「Counter-Strike: Global Offensive (CSGO)」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」の3本で比較を行なった。

 今回測定した条件では、最新ドライバの導入によるリーグ・オブ・レジェンドでの性能向上は2~3%と小幅だったものの、Counter-Strike: Global Offensiveでは13~37%、ドラゴンクエストX ベンチマークソフトでも13~26%という大幅な性能向上が確認できた。

【グラフ08】リーグ・オブ・レジェンド (v13.4.4941549/DirectX 9)
【グラフ09】Counter-Strike: Global Offensive (Build 10571632/DirectX 9)
【グラフ10】ドラゴンクエストX ベンチマークソフト (v1.6/DirectX 9)

DirectX 11タイトルで新旧ドライバを比較。テストした4タイトル全てで性能向上を実現

 続けて紹介するのは、グラフィックスAPIにDirectX 11を採用したゲームやベンチマークでの比較結果だ。テストしたのは「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「フォートナイト」、「エーペックスレジェンズ」、「オーバーウォッチ 2」の4本。

 どのタイトルでも最新ドライバの導入によってパフォーマンスが向上しており、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは4~7%、フォートナイトでは7~11%、エーペックスレジェンズでは2~5%、オーバーウォッチ 2では4~7%、それぞれ最新ドライバが初期ドライバを上回った。

【グラフ11】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」 (DirectX 11)
【グラフ12】フォートナイト (v23.50/DirectX 11)
【グラフ13】エーペックスレジェンズ (v3.0.27.29/DirectX 11)
【グラフ14】オーバーウォッチ 2 (v2.3.0.1.110201/DirectX 11)

DirectX 12タイトルで新旧ドライバを比較。性能向上にとどまらず、不具合も解消

 最後に、最新のグラフィックスAPIであるDirectX 12を採用したゲームとベンチマークでのテスト結果を紹介しよう。テストしたのは、「フォートナイト」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」、「エルデンリング」、「Dirt 5」、「BLUE PROTOCOL Benchmark」の5本。

 DirectX 12の結果でもっとも特異なのはフォートナイトの結果で、初期ドライバではフォートナイトをDirectX 12モードで動作させることができなかった。これは初期ドライバとフォートナイトの組み合わせで生じた不具合で、最新ドライバではこれが解消したという訳だ。付け加えると、最新ドライバのフレームレートは同等の設定で計測したDirectX 11モードより13~20%も高い数値であり、不具合の解消によってフォートナイトをDirectX 12で動作可能となった恩恵は大きい。

 そのほかのテストでも、モンスターハンターライズ:サンブレイクで2~4%、エルデンリングの4Kで約7%、Dirt 5で7~9%、それぞれ最新ドライバが初期ドライバを上回っており、グラフィックスドライバの改善による性能向上が確認できた。

 なお、BLUE PROTOCOL Benchmarkについては、最新ドライバがわずかに高いスコアだったものの、新旧ドライバで大差ない結果となっている。BLUE PROTOCOL Benchmarkは3月1日に公開されたばかりであるため、最新ドライバでも最適化が行なわれてないためであると考えられる。

【グラフ15】フォートナイト (v23.50/DirectX 12)
【グラフ16】モンスターハンターライズ:サンブレイク (v14.0.0.0/DirectX 12)
【グラフ17】エルデンリング (v1.08.1/DirectX 12)
【グラフ18】Dirt 5 (v1.0.277037.506/DirectX 12)
【グラフ19】BLUE PROTOCOL Benchmark「スコア」 (v1.0.0/DirectX 12)

高すぎたアイドル時消費電力も多少は改善

 Arc A700シリーズの発売前に実施したテストでは、Arc A750とArc A770のアイドル時消費電力が高いことを指摘したのだが、グラフィックスドライバの改良によってこれが改善されたのか、ワットチェッカーで計測したシステムの消費電力を確認してみよう。

 アイドル時消費電力については、初期ドライバが90.9Wであったのに対し、最新ドライバは86.1Wとなっており、5W程度ではあるもののアイドル時消費電力が低下していた。ただ、モニタリングソフト(HWiNFO64 Pro)での計測によれば、アイドル時でもGPU消費電力は30W前後となっており、このクラスのGPUとしては依然として高い数値だ。

 ベンチマーク実行中の消費電力については、平均値でみれば最新ドライバが初期ドライバと同等以下となっている結果が多く、明確に最新ドライバが高い数値を記録したドラゴンクエストX ベンチマークソフトについては26%も高いスコアを記録しているため、性能相応の消費電力増加であると言える。

【グラフ20】アイドル時とベンチマーク実行中のシステム消費電力 (平均/最大)

ドライバの改良でより良いGPUになったArc A750。Intelには今後も継続したアップデートを期待したい

 Arc A750のグラフィックスドライバ改良による効果はゲームによりけりで、大幅な性能向上が確認できたゲームは限定的だが、ほとんどのゲームで数%程度の性能向上が見られ、フォートナイトのように不具合が解消されたものもある。Arc A750を所有しているユーザーにとって、ドライバをアップデートするメリットは確実にあると言える。

 このように、グラフィックスドライバの熟成と最適化は、ゲームをより快適にプレイするために重要な要素だ。今後もドライバ側でのチューニングが必要な新作ゲームやアプリケーションは登場し続けるので、IntelにはArc A700シリーズ向けドライバの継続したアップデートを期待したい。