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デスクトップ版Ryzenで高性能! 税別109,800円のクリエイター向けノート「DAIV 5D-R5」

マウスコンピューターから登場した「DAIV 5D-R5」は、デスクトップパソコン版のRyzen 5 3500を搭載したクリエイター向けパソコンだ

 マウスコンピューターのクリエイター向けブランド「DAIV」から登場した「DAIV 5D-R5」は、ちょっとユニークな仕様と税別109,800円(税込120,780円)から買えるリーズナブルな価格が特徴のクリエイター向けのパソコンだ。標準構成ベースの評価機を入手したのでレビューしよう。

ノートパソコンなのにデスクトップ版のRyzen 5 3500を搭載

【表1】DAIV 5D-R5のスペック
CPURyzen 5 3500
CPU周波数4.6GHz(最大4.1GHz)
メモリ8GB(8GB×1)
ストレージ512GB SSD(PCIe/NVMe)
グラフィックス機能GeForce GTX1660 Ti(6GB)
ディスプレイ15.6型液晶ディスプレイ、非光沢
表示解像度1,920×1,080ドット
カメラ100万画素
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(ディスプレイ出力対応)、USB 3.1 Type-A×2、ヘッドフォン/ヘッドセット兼用、マイク、microSDカードスロット(SDXC、UHS-I対応)、セキュリティロックスロット
通信機能Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6(最大2.4Gbps)、Bluetooth 5
その他指紋センサー(Windows Hello対応)
バッテリ駆動時間約1.5時間
サイズ361×258×33mm(幅×奥行き×高さ)
重量約2.62kg
OSWindows 10 Home(64bit)
税別価格109,800円

 DAIV 5D-R5が搭載するRyzen 5 3500は、第3世代Ryzenのデスクトップパソコン向けラインナップのミドルレンジモデル。6コア6スレッドで周波数が3.6GHz、ブースト周波数4.1GHz、TDP 65Wというスペックだ。

 一般にデスクトップ版CPUは、物理的なサイズが大きく、消費電力/発熱も大きいためにノートパソコンの小さな筐体には収めにくいが、第3世代Ryzenは、CPUダイが7nmプロセスルールで製造されているため電力効率にも優れている。

 なかでもRyzen 5 3500は、SMT(Simultaneous Multithreading Technology=1コアあたり2スレッドを実行する技術)に非対応で、TDPが65Wと低めなので、比較的小さな筐体にも搭載しやすいCPUではある。

CPUにはRyzen 5 3500を搭載6コア6スレッド、最大周波数4.1GHz、TDP 65Wという仕様だ
ブースト機能のリミットであるPPTは標準の88Wだ。冷却さえ問題なければデスクトップパソコンと同じ性能が期待できる

クリエイティブで実績十分のNVIDIA GPUを搭載

 GPUとしてはGeForce GTX 1660 Ti(6GB)を搭載する。クリエイティブアプリの多くはCUDAによるアクセラレーションや内蔵ハードウェアエンコーダ「NVENC」が使えるため、スムースにクリエイティブ作業ができる。

 近年、NVIDIAがクリエイティブ方面に力を入れてきていることもあり、最近はGPUを活用できるクリエイティブアプリは増えている。たとえば、定番のビデオ編集アプリであるAdobe Premiere Pro CCも2020年5月のアップデートからNVENCに対応したハードウェアエンコードが可能となっている。

GPUはGeForce GTX 1660 Ti(6GB)を搭載する。こちらはノートパソコン向けのモデルで、多少だがデスクトップパソコン向けモデルよりは標準/ブースト時とも周波数が低めに設定されている

ストレージのデュアル搭載も可能な拡張性

 標準構成のメモリは8GB(SO-DIMM)、ストレージはM.2タイプのSSD(PCI Express/NVMe対応)を512GB搭載する。クリエイター向けのスペックとしては必要最小限だが、BTOに対応しているのでカスタマイズが可能だ。

 BTOではメモリは最大64GBまで増設ができ、ストレージは、M.2 SSDのほかに、2.5インチのSSD/HDDも搭載できる。M.2 SSDが最大1TB、2.5インチは最大2TBのSSD/HDDを搭載できる。

評価機のSSDは、ADATA SX6000PNPが搭載されていた。システムメモリをDRAMキャッシュ代わりに使うHMB(Host Memory Buffer)に対応したDRAMレスの普及価格帯モデルだ
CrystalDiskMark 7.0.0(ひよひよ氏・作)の結果。PCI Express/NVMe対応SSDとしては並だが、SATA SSDと比べれば格段に高速ではある。BTOではより高速なSamusung PM981aも指定できる

クリエイティブ水準を満たす広色域液晶ディスプレイ

 クリエイティブ用途では画面の表示品質も重要だ。安価な製品ではおろそかにされがちな部分だが、本製品はその点でも水準以上だ。NTSC比72%(sRGB約102%相当)カバーする液晶ディスプレイを搭載する。

 IPSパネルであるかどうかの記載はないが、上下左右とも視野角は広く、IPSまたはそれに準じた性能を持つパネルと思われる。

 X-Riteのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」を使った計測では、色温度が8900K、輝度は300cd/平方m、コントラスト比2,063:1だった。

 標準の色温度が高いので何らかの方法でキャリブレーションは行なったほうが良いが、十分クリエイティブ用途に使える性能だ。もっとも、本格的にクリエイティブな作業をするならば、カラーキャリブレーションを行なうのは本製品にかぎらず当然のことではある。

NTSC比72%(sRGB約102%相当)をカバーする液晶ディスプレイを搭載する。画面サイズは15.6型、表示解像度は1,920×1,080ドット、表面は映り込みが少ない非光沢仕様だ
X-Riteのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」による計測結果
X-Riteのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」を用いて作成したICCプロファイルをPhonon氏制作の色度図作成ソフト「Color AC」で表示した。実線が本製品、点線がsRGBの色域だ

厚みはあるがコンパクトな筐体

 デスクトップ版CPUを搭載するだけあって筐体は厚みがあるが、圧迫感などは感じない。今風のナローベゼルデザインを採用するためにフットプリントは大きくなく、むしろコンパクトな印象も受ける。重量も約2.62kgとそれほど重くはない。

 バッテリ駆動時間は約1.5時間。デスクトップ版CPUを搭載するだけに短い。しかし、停電や瞬電のとき、誤ってケーブルを抜いてしまうなどのミスなどがあってもバッテリで動作し続けることでシステムクラッシュやデータの消失を防ぐことができるので、これくらいの時間であってもバッテリ駆動できる点は大きい。

 キーボードはテンキーつき。カラーを変えることができるRGB LEDバックライトを搭載している。パームレストも含めて全体に剛性感が高く、安定したタイピングができる。スイッチの感触も悪くない。

筐体のサイズは、361×258×33mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約2.62kgだ
ACアダプタは180W仕様。スリムなフォルムで、実測のサイズは75×144×23mm(同)
筐体カラーはブラック。ごくシンプルなデザインだ
底部はたくさんの放熱スリットが空いている。スリットの先に冷却機構が見える
着脱式バッテリの容量は62Wh。駆動時間は約1.5時間だ
テンキーつきのキーボードを搭載する。キーピッチは横19mm、キーストロークは約1.8mm。実測した縦のキーピッチは約18mmだ
ユーティリティでカラーを変えることができるRGB LEDバックライトを搭載している

Wi-Fi 6対応、ディスプレイ出力可能なType-Cも搭載

 通信機能は、Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0を標準で装備する。安価な製品ではコストダウンされがちな部分だが、きっちり標準でWi-Fi 6に対応している点は評価できる。

 筐体の背面には、ディスプレイ出力にも対応したUSB 3.1 Type-Cポートを装備。ディスプレイ出力としてはHDMI、MiniDisplayPortも装備し、さまざまなディスプレイに対応できる。3系統の同時出力も可能だ。

 USBポートは、背面のUSB 3.1 Type-Cのほかに、Type-AのUSB 3.1が2基、USB 2.0が1基、合計で4基が使える。microSDカードスロット(UHS-I対応)も搭載するが、個人的にはこれだけ大きな筐体ならば、多くのデジタルカメラで利用されているフルサイズのSDカードスロットを搭載してほしかったところではある。

 画面の上にはビデオ会議に便利なWebカメラ、タッチパッド部にはWindows Hello対応の指紋センサーも備えている。指紋を登録しておくとパスワード入力なしにログインできて便利だ。

前面。電源状態を示すインジケータ以外はとくに何もない
背面は、ACアダプタ用端子とディスプレイ出力端子がある。ディスプレイ端子は、MiniDisplayPort、HDMI、USB 3.1 Type-C(DisplayPort Alt Mode)と3系統を備える。USB Type-Cはデータ転送にも使える
左側面の端子。奥からセキュリティロック・スロット、有線LAN、USB 3.1×2、microSDカードスロット(SDXC、UHS-I対応)
右側面の端子。手前からマイク入力、ヘッドフォン出力/ヘッドセット兼用、USB 2.0
画面の上に100万画素のWebカメラを搭載している。
タッチパッド内側の左上部分にWindows Hello対応指紋センサーがある

メモリ増設時の性能も検証

 デスクトップ版Ryzen 5 3500を搭載しているということで、気になるのは性能や動作音だ。ただ、今回借用したDAIV 5D-R5は標準構成モデルのため、メモリ容量が8GBであった。クリエイティブな製作を楽しむのにこれでは少々物足りない。32GB以上でオーダーする方が多いのではないかと思い、今回は32GBに増設した場合の性能も検証している。

 なお、今回はマウスコンピューターの許可を得て底面カバーを外してメモリモジュールを交換しているが、本来ユーザーによるこのような行為はメーカー保証の対象外となってしまうので注意したい。BTOで32GBや64GBの構成が選べるので、大容量メモリがほしい方はそちらを検討するとよいだろう。

 ちなみに、本製品の外装はシンプルな構造で、メモリやストレージへのアクセスはじつに容易。メーカー保証期間が過ぎた後など、自己責任においてメモリやストレージを交換して延命を図るなどの場合にはこのシンプルな構造が重宝すると思われる。

底部のカバーは5カ所のネジを外し、奥側へスライドさせると簡単に外れる。カバーを外すだけでM.2ソケット、2.5インチベイ、メモリソケット(2基)に簡単にアクセスできる。いかにも冷えそうな冷却機構も目につく
標準の8GBモジュールを取り外し、16GBのSO-DIMMを2枚取りつけた。今回はマウスコンピューターの許可を得ているが、本来カバーを開ける行為はメーカー保証の対象外となるので注意してほしい

Ryzen 5 3500の性能をフルに引き出す

 さっそく性能を見ていこう。今回は比較対象として、筆者が2018年末に購入したThinkPad X1 Extremeの結果も掲載している。

【表2】テスト環境
DAIV 5D-R5(32GB)DAIV 5D-R5ThinkPad X1 Extreme
CPURyzen 5 3500
(6コア6スレッド)
Ryzen 5 3500
(6コア6スレッド)
Core i7-8750H
(6コア12スレッド)
メモリDDR4-2666 32GB(16GB×2)DDR4-2666 8GB(8GB×1)DDR4-2666 32GB(16GB×2)
ストレージADATA SX6000PNP
(512GB、PCIe 3.0x4)
ADATA SX6000PNP
(512GB、PCIe 3.0x4)
SAMSUNG PM981
(512GB、PCIe 3.0x4)
グラフィックス機能GeForce GTX1660 Ti(6GB)GeForce GTX1660 Ti(6GB)GeForce GTX 1050 Ti with Max-Q Design(4GB)
OSWindows 10 Home(2004)Windows 10 Home(2004)Windows 10 Pro 64bit(1909)
【表3】ベンチ結果
DAIV 5D-R5(32GB)DAIV 5D-R5(8GB)ThinkPad X1 Extreme
CINEBENCH R15
CPU(cb)9889901,077
CPUシングルコア(cb)172171173
CINEBENCH R20
CPU(cb)2,4632,4892,352
CPUシングルコア(cb)433438420
PCMark 10
PCMark 105,6205,1734,211
Essential8,7478,2868,852
Productivity7,8016,4697,027
Digital Content Creation7,0617,0073,259
PCMark 10 MODERN OFFICE BATTERY LIFE
SCORE1時間7分
Battery Life Performance5,656
3DMark
FireStrike12,94712,8356,000
Graphics15,20115,0666,943
Physics12,17611,8947,774
Combined6,4196,4442,542
TimeSpy5,6245,5382,282
Graphics5,7965,8122,149
CPU4,8164,3713,516
FINAL FANTASY XIV : 漆黒のヴィランズベンチマーク
1,920×1,080/ノートPC標準/フル12,51011,3457,341
ローディングタイム(秒)16.18116.89119.345
Lightroom Classic CC (4,240万画素RAW 100枚)
1:1プレビュー作成(秒)243276273
JPEG書き出し(秒)177220232
Adobe Premiere Pro CC(S-Log3×8本、合計約5分)
プロジェクト書き出し(H.264、秒)249330349
プロジェクト書き出し(H.265、秒)244336347
動作音(環境音 : 35.9dB、正面から10cm)
アイドル時36.436.4
中負荷時(Web動画再生)37.437.1
高負荷時(JPEG書き出し)52.352.4

 まずは定番のCINEBENCHから。マルチスレッドでレンダリングを行なうCPUのスコアは、比較的負荷が軽くAVX非対応のCINEBENCH R15、高負荷でAVXにも対応するCINEBENCH R20、どちらのスコアもデスクトップパソコンと変わらない水準。CPUの本来の性能を引き出していると思われる。

 R15でThinkPad X1 Extremeに少し劣っているのにR20では逆に上回っている点にも注目。CPUのフルパワーでは6コア12スレッドのCore i7-8750Hのほうが上回っていると思われるが、ThinkPad X1 Extremeは薄型のフォームファクタだけに、負荷が大きなCINEBENCH R20では多少ブーストが制限されたのだと思われる。DAIV DR-R5の放熱設計の優秀さがうかがえる現象だ。

 PCMark 10ではメモリ容量の差でスコアの差がついている。とくにEssentialsやProductivityでは差が大きい。容量というよりはモジュールが2枚となってデュアルチャネルに対応したことが大きいのかもしれない。

 3DMark、FINAL FANTASY XIV : 漆黒のヴィランズベンチマークのスコアはご覧のとおり。RTXシリーズではないためリアルタイムレイトレーシングなどは実質的に利用できないが、たいていのゲームはフルHD解像度、標準的な画質で楽しめるだろう。

 Lightroom Classic CC、Premiere Pro CCのテストもメモリ容量で結構差がついている。メモリが8GBだとThinkPad X1 Extremeとあまり差がないが、32GBにするとはっきりとぶっちぎっている。CINEBENCH R20でもほぼ互角だったのにこれだけ違ってくるのは、搭載GPUの差、そしてCPUにもGPUにも長く負荷がかる処理だけに放熱設計の影響がより大きく出ている可能性もあるだろう。

 動作音については、高負荷時はさすがに大きな音になるが、アイドル時や軽い負荷のときは目立たない音しかしない。GeForce GTX 1660 TiクラスのGPUを搭載したゲーミングノートパソコンやクリエイティブノートパソコンとして、特別うるさいという感じはない。発熱も同様で、よく手が触れる部分までが高温になることはない。

Premiere Pro CCのプロジェクト書き出し(H.264)終了直前にFLIR ONEで撮影したサーモグラフィ

高コスパ省スペースのクリエイティブパソコンとしておすすめ

 デスクトップ版のRyzen 5 3500を搭載するというユニークな個性が目立つが、実際に試してみると、安価な製品ではコストダウンの対象となりやすい液晶ディスプレイの品質や通信機能、インターフェイスといった部分まで死角がなく、クリエイター向けノートパソコンとしての実力をしっかりと兼ね備えた誠実な製品という印象だ。

 デスクトップ版CPUを搭載しているためにバッテリ駆動時間は短いが、ディスプレイ、キーボード一体型で移動や収納も容易な「省スペースなクリエイター向けパソコン」として見るとまた違った価値を感じるだろう。

 それでいて税別109,800円という価格に収めているのは評価できる。標準のメモリ容量8GBはやはり少ないが、BTOで32GBにしても税別130,300円で、消費税と送料を加えた総額で15万円以下に収まる。これからクリエイティブな制作に取り組みたい方、コストパフォーマンスが高く省スペースなクリエイター向けパソコンを探している方におすすめしたい製品だ。