Hothotレビュー

マウスの「DAIV Z7-QR4」はPremiereなどのクリエイティブアプリが気持ちよくなる超快適PCだった

~第10世代Core & Quadro RTXの水冷マシンを詳細検証

時代はタワー型デスクトップPC?

DAIV Z7-QR4」は、マウスコンピューターのクリエイターブランド「DAIV」シリーズから登場した最新モデル。第10世代CoreプロセッサとQuadro RTX 4000を搭載したプロユースにも耐えるスペックを持つ。税別直販価格は269,800円から

 新型コロナウイルスの影響で、身の回りにはさまざまな変化が起きている。緊急事態宣言は解除されたが、筆者自身も自宅でのテレワークを続けてきたなかで、いろいろと考え方が変わってきた。

 その1つが「デスクトップPCが欲しいな」ということである。最近使っているのはもっぱらノートPC。いまどきのノートPC向けCPUは性能向上も顕著だし、「大きいのは邪魔」、「めんどうくさい」というのがおもな理由でデスクトップPCは避けていた。

 しかし、テレワークでビデオ会議のために部屋を片付け、不用品を処分しながら仕事環境を整えているうちに、自分の部屋も意外にスペースがあることに気づく。そして、Zoomで打ち合わせができるようになり、今後もノートPCを持ち運ぶ機会はあまりないと思われる。

 「タワー型のデスクトップPCも余裕で置けるな」、「どうせ大きいPC置くなら速いほうがいい」などと思っていたところ、マウスコンピューターの最新クリエイターPC「DAIV Z7-QR4」を利用する機会に恵まれた。性能評価を中心にレビューしてみたい。

第10世代CoreプロセッサとQuadro RTX 4000を搭載

 DAIV Z7-QR4は、同社DAIVシリーズのラインナップのなかでも「プロフェッショナル向け」と位置づけられる製品だ。つい先日販売が解禁されたばかりのデスクトップPC向け第10世代CoreプロセッサとQuadro RTX 4000を搭載するのが特徴だ。

 デスクトップPC向け第10世代Coreプロセッサ(開発コードネーム=Comet Lake-S)は、基本的な構造を従来から継承しつつ、コア数を最大10コア(20スレッド)へ拡張。さらにTurbo Boost Max Technology 3.0やIntel Thermal Velocity Boost Technologyといった高度なブースト機能を導入し、マルチスレッド性能とシングルスレッド性能の両方を引き上げている。

 また、ビデオカードにQuadro RTX 4000を搭載しているのもポイント。コンシューマ向けのGeForceシリーズがDirectXに最適化されているのに対し、プロフェッショナル向けのQuadroシリーズは、CG制作ツールやCADツールで利用例の多いOpenGLに最適化されている。業務用であることから製造段階からより厳しい品質管理が行なわれているほか、互換性や描画の再現性を保証するISV(独立系ソフトウェアベンダー)認証を多数のメーカーから受けている利点もある。

 ビデオカード以外の基本スペックはBTOでのカスタマイズに対応しており、CPUは2種類から選択できるほか、メモリ、ストレージもBTOで柔軟なカスタマイズができるようになっている。

 DAIV-Z7 QR4の標準構成時の税別直販価格は269,800円だが、今回試用した評価機の内容は下表のとおりで、標準構成のCore i7-10700K(空冷クーラー)からCore i9-10900K(水冷クーラー)にアップグレードし、さらにメモリを強化した仕様となっており、税別直販価格は315,500円。かなり強力な性能が期待できそうだ。

【表1】DAIV-Z7 QR4(評価機)のスペック
CPUCore i9-10900(10コア/20スレッド、3.7~5.3GHz)
CPUクーラー水冷CPUクーラー
メモリDDR4-2666 32GB(16GB×2)
ストレージ512GB SSD(M.2 PCI Express/NVMe)
グラフィックス機能Quadro GPU RTX 4000(8GB)
グラフィックスカード端子DisplayPort×3、USB Type-C(DP→DVI、DP→HDMI、Type-C→DP変換ケーブル、各1本付属)
マザーボードIntel Z490チップセット(ATX)
前面端子USB 3.0×2、ヘッドフォン、マイク
背面端子USB 3.0×4、USB 3.1 Type-C、USB 3.1 Type-A、オーディオ×5、S/P DIF(光角型)、Gigabit Ethernet
電源700W(80PLUS BRONZE)
ケースDAIV-Dシリーズ(キャスター装着)
OSWindows 10 Home (64ビット)
本体サイズ幅×奥行き×高さ)190×490×490mm
重量約10.3kg
税別直販価格税別直販価格は315,500円
評価機は第10世代Coreプロセッサ最速のCore i9-10900Kを搭載。10コア20スレッドで、Turbo Boost Max Technology 3.0、さらにIntel Thermal Velocity Boost Technologyにより最大5.3GHzで動作する
HWiNFOの詳細画面。Turbo Boostの持続的なブーストリミットであるPL1はTDPと同じ125W、短時間のブーストリミットを示すPL2は250Wに設定されていることがわかる
CPU-Zの表示。レビュー時点でのバージョンではCore -Xシリーズのエンブレムが表示されており、最大周波数も5.1GHzと本来よりも低く表示されている
ビデオカードは、プロフェッショナル向けのQuadro RTX 4000搭載グラフィックスカードを搭載している。1スロット占有のシンプルなカードだ
Quadro RTX 4000のハードウェア構成は、GeForce RTX 2070に相当する。RTコアによる高速リアルタイムレイトレーシング、TensorコアによるAIを活用した高画質化機能などが利用できる
評価機のストレージは標準の512GB SSD。Western DigitalのPC SN520だった。BTOではより高速なSSD(SAMUSUNG PM981a)も搭載可能
CrystalDiskMark 7.0.0(ひよひよ氏・作)のスコア。NMVe SSDとしては廉価版のモデルではあるが、それでもSATA SSDよりは圧倒的に高速だ
NVMe SSDには効率的に放熱するために標準でヒートシンクが装着される。評価機は発売前試作機のため汎用品だが、製品版では専用ヒートシンクになるという

強力な性能を安定して動作させるための高品質筐体

 ハイスペックと同時に魅力を感じるのが、DAIV Z7-QR4の筐体だ。シンプルながら高級感があって、佇まいがとても良い。

DAIVオリジナルのケース。シンプルでありながらオリジナリティ、高級感も備えている
標準構成では足の部分にキャスターが装着されるが、評価機では省かれている(BTOで差額なしで有無を選択可能)

 上部にあるハンドルは裏の部分にクッション性のある素材が張られていて、とても持ちやすい。作りもしっかりしていて、実際にここを持って移動させることができるので、重さ(公称値約10.3kg)のわりに軽く感じるし、移動も面倒に感じなかった。

 内部を見ると、放熱にとても配慮していることがわかる。CPUの冷却は水冷クーラーを使用(Core i9-10900Kを選ぶ場合には必須)。発熱が高いCPUを強力かつ静音に冷却できるように配慮されている。

 さらに、側面のビデオカードの脇にも12cmファンを搭載。サイドパネルにもこのファンに直結する通気口が空けられており、ビデオカードも効果的に放熱できるようになっていることがわかる。

 クリエイティブではCPUやGPUに高負荷をかける処理が多いし、ときにはそれが長時間続く場合もあるため、放熱設計がギリギリだと不安がある。DAIVの筐体には、高負荷をかけて使って大丈夫、そういう安心感が感じられる。

第10世代Coreプロセッサは強力な性能ゆえに発熱も高いため、水冷CPUクーラーを導入し、強力な冷却性能と静音性の両立を図っている
ビデオカードの放熱を効果的に行なうため、サイドパネルには吸気口が空けられている
内部には水冷CPUクーラーのラジエータ用含めて12cmファンを2基搭載。CPUとビデオカードを効果的に冷却できる
筐体の具体的なサイズは、190×490×490mm(ハンドルの高さ含む)。うっすらとDAIVのロゴがプリントされている
上部のハンドルはしっかりした作りで、実際にここだけ持って移動できる。前面の金属製の円柱は電源ダイヤルで、右に回すとスイッチが入る
背面端子。Type-CとType-A両方のUSB 3.1ポートなどがある
変換ケーブルが3本同梱されている。それぞれ、DisplayPort→HDMI、DisplayPort→DVI、Type-C→DisplayPortという内容

定番ベンチマークでテスト

 まずは定番ベンチマークテストで基本性能を見よう。比較対象は、筆者所有のノートPC(ThinkPad X1 Extreme 2018)だ。おもなスペックは表にまとめたとおりだ。電源プランは双方とも「高パフォーマンス」に設定している。

 CPUの性能がわかるCINEBENCHでは、C15で2.42倍、より負荷が高いR20では2.65倍のスコアとどちらも比較対象を大きく引き離している。10コア20スレッドのCPUパワーをしっかり引き出していると言えるだろう。

 ほかのテストでも完全に比較対象を圧倒している。DAIV Z7-QR4はQuadro RTX 4000を搭載しているだけあって3D描画性能も強く、GPUの差はCPUの差以上に大きい印象だ。一世代前とは言え、ノートPCとしてはかなり高性能な製品だと思っていただけに個人的にはショックが大きい。

【表2】テストに利用したPCのスペック
DAIV-Z7 QR4(評価機)ThinkPad X1 Extreme
CPUCore i9-10900K(10コア20スレッド)Core i7-8750H(6コア12スレッド)
メモリDDR4-2666 32GB(16GB×2)DDR4-2666 32GB(16GB×2)
ストレージWDC PC SN520(512GB、PCIe 3.0x2)SAMSUNG PM981(512GB、PCIe 3.0x4)
グラフィックス機能Quadro RTX 4000(8GB)GeForce GTX 1050 Ti with Max-Q Design(4GB)
OSWindows 10 Home 64bit(1909)Windows 10 Pro 64bit(1909)
【表3】定番ベンチマークテストの結果
DAIV-Z7 QR4(評価機)ThinkPad X1 Extreme
CINEBENCH R15(cb)
CPU2,6131,077
CPUシングルコア220173
CINEBENCH R20
CPU(cb)6,2462,352
CPUシングルコア(cb)517420
PCMark 10
PCMark 107,7044,211
Essential10,8828,852
Productivity9,8157,027
Digital Content Creation11,6173,259
3DMark
FireStrike19,5596,000
Graphics21,1296,943
Physics29,4817,774
Combined9,4872,542
Time Spy8,4532,282
Graphics7,9502,149
CPU13,1933,516
Port Royal4,695実行不能
FINAL FANTASY XIV : 漆黒のヴィランズベンチマーク
1,920×1,080/最高品質/フル19,5147,341
ローディングタイム(秒)10.0719.345

高画素データの編集は? カラグレのパフォーマンスはどれくらい速い?

ソニーが同社デジタルカメラユーザー向けに配布しているImaging Edge。当日撮影した全161枚のデータからピクセルシフトマルチ撮影を行なった76枚のRAWデータ(ARW)を抽出して、19枚の高精細RAWデータ(ARQ)を生成する作業と現像作業を行なってみた

 クリエイターPCということで、実際のクリエイティブツールを使った性能比較も見ていきたい。まずは写真編集からだ。

 筆者が所有しているソニーのデジタルカメラ「α7RIII」には、「ピクセルシフトマルチ撮影」という機能がある。イメージセンサーを1画素分ずつずらして計4枚撮影し、約1億6,960万画素ぶんの情報から解像感に優れた1枚の高精細画像を生成するというものだ。この生成にはソニーが配布する画像管理ツール「Imaging Edge」が必要。ここでは、この高精細画像の生成と現像出力にかかる時間を比較してみた。

 最初の処理は、超高精細データの生成だ。全撮影画像161枚からピクセルシフトマルチ撮影を行なった76枚のRAWデータ(ARW)を抽出して、19枚の高精細RAWデータ(ARQ)を生成する作業。さらにその19枚の高精細RAWデータに現像処理を行ない、JPEGデータとして出力する時間も計測した。

 結果は少し微妙。高精細データの生成は78%、現像出力はほとんど変わらない。原因としては、ソフトがメニーコアに最適化されていないということが考えられるが、前者は少し高速化されているが、処理自体もこの程度ならばノートPCでも十分な作業なのかもしれない。

【表4】Imaging Edgeのテスト結果
DAIV-Z7 QR4(評価機)ThinkPad X1 Imaging Edge(秒)
ピクセルシフトマルチ合成(161枚→19枚)8.6311.01
現像出力(19枚、ARW→JPEG)330336

Lightroom Classic CC(プレビュー生成、現像出力)

Lightroom Classic CCでは、1:1プレビューの生成と、現像出力の作業を行なった

 Lightroom Classic CCでは、1:1プレビューの生成と、現像出力の作業を行なった。データは、Imaging Edgeで生成した高精細データ19枚をこちらでも利用した。

 現像パラメータとしては、Imaging Edgeでは簡易的に全画像に対して同じパラメータを適用したが、こちらは筆者が普段行なっているのと同じように、画像1つ1つにそれぞれ異なるパラメータを指定して現像出力している(同系統の写真は共通)。

 出力ファイルの設定についても、長辺3,000ピクセルのデータへの解像度変換、「スクリーン(弱)」のシャープネス、メタデータは「著作権情報と問い合わせのみ」、著作権透かし挿入と、こちらも実際によく利用する設定を再現している。

 結果としては1:1プレビューの作成は約半分の時間で終わったが、現像出力は約18%の高速化。速くはなっているが、こちらも決定的な差というわけでもないかもしれない。

【表5】Lightroom Classic CCのテスト結果
DAIV-Z7 QR4(評価機)ThinkPad X1 Lightroom Classic CC(秒)
1:1プレビュー作成61115
現像出力(19枚、ARW→JPEG)93.3113

DaVinci Resolve 16(カラーグレーディング)

DaVinci Resolve 16では、8本のビデオクリップ(合計約6分)にカラーグレーディングを行ない、同じ形式で保存する処理を行なった。

 Blackmagic DesignのDaVinci Resolve 16では、8本のビデオクリップにカラーグレーディングを行ない、元データと同じ形式で保存する処理にかかった時間を計測した。

 具体的には、ソニーのα7RIIIで撮影した4K解像度のS-Log3データ(合計約6分)に対し、プリセットの3D LUTを適用、トーンカーブ調整、カラーホイール調整といった処理をそれぞれシリアルノードで行ない、同解像度のMP4ファイルへデリバー(出力)するという内容だ。

 結果だが、これは大きな差がついた。DAIV Z7-QR4は、比較対象の約25%の時間で終了。つまり、4倍高速だった。比較対象PCでは30分近くかかった作業が7分半ですんでおり、速さがダイレクトに実感できる結果になっている。

【表6】DaVinci Resolve 16のテスト結果
DAIV-Z7 QR4(評価機)ThinkPad X1 DaVinci Resolve 16(秒)
カラーグレーディング(4K/MP4)4511,789

Premiere Pro CC(4Kプロジェクト書き出し)

Premiere Pro CCでは4Kクリップにカラーグレーディング、カット編集にキーフレームで動くテロップを入れるなど、筆者としてはかなり凝った編集をしたプロジェクトを出力する時間を計測した。

 Premiere Pro CCでは、4Kプロジェクトの書き出し時間を計測した。プロジェクトの内容はビデオ編集のひととおりの要素を含む。8本のビデオクリップと8本のオーディオクリップ(BGM用)をそれぞれ適切な長さにカットしてタイムラインに挿入し、ビデオクリップにはカラーグレーディング(プリセット3D LUTの適用)を行ない、各ビデオクリップの先頭にテロップも挿入する内容。ビデオクリップとオーディオクリップはそれぞれトランジションエフェクトを使ってつなげている。

 5分弱のプロジェクトをH.264/H.265エンコードで出力するのにかかった時間をそれぞれ計測した。H.264、H.265どちらも似たような傾向で、DAIV Z7-QR4は、比較対象よりも約2.5倍ほど比較対象より高速だった。

 なお、Premiere Pro CCは直近のアップデートでNVIDIA GPUへの最適化が強化され、H.264/H.265のエンコードが格段に高速にできるようになっているが、今回のテストではその最新バージョンを利用している。

【表7】Premiere Pro CCのテスト結果
DAIV-Z7 QR4(評価機)ThinkPad X1 Adobe Premiere Pro CC(秒)
4Kプロジェクト書き出し(HW、H.264)129332
4Kプロジェクト書き出し(HW、H.265)134321

Blender Benchmark 2.0.4

Blender Benchmark 2.0.4では、実際のBlenderのプログラムを使ってデモファイルをレンダリングする

 Blender Benchmarkは、オープンソースで開発され、プロのクリエイターにも愛用者が多い3DCG制作ツール「Blender」をベースにしたベンチマークテストだ。

 2020年になって更新され、テストに利用するBlenderのバージョン、レンダリングに使うデモファイルが選べるようになり、より実践的な性能がわかるようになっている。

 ここではこれを使ってGPUレンダリングの性能を比較した。結果はご覧のとおり一目瞭然で、すべてのデモファイルのレンダリングでDAIV Z7-QR4のほうが圧倒的に高速だ。最小で3.7倍、最大で4.6倍の差がついている。

【表8】Blender Benchmark 2.0.4のテスト結果
DAIV-Z7 QR4(評価機)ThinkPad X1 blender benchmark(GPU、秒)
bmw2754247
classroom205744
fishy_cat123528
koro195878
pavillion_barcelona3371,295
victor596エラーで続行不可

完成度の高いクリエイターPC

 ベンチマークの結果が示すように、やはり最新のデスクトップPCはすごかった。まだまだ現役バリバリだと思っていたノートPCとの実力差をまざまざと見せつけられてしまった。クリエイティブツールのテストに利用した素材もこのDAIV Z7-QR4を使って作業したが、どの作業においてもまったくストレスなく作業することができた。

 懸念していた動作音についても十分許容範囲内。足元に置いてしまえばアイドル時は意識しないとわからない程度だし、高負荷時には音が大きくなるものの爆音というほどではなく、我が家のエアコン(2014年製)の通常動作音と同じくらいのレベルだ。

 さらに、しっかりしたハンドルがついているおかげでちょっとした移動は楽にすることができ、大きくても扱いにくさを感じないのはとてもいい。クリエイター向けとして高い実績のあるブランドだけはあって、完成度は高いと感じた。

 気になる価格は、評価機の構成で税別315,500円。単体販売で7万円以上するCPUを搭載し、プロフェッショナル向けのQuadro RTX 4000を搭載していることを考えると、かなりリーズナブルに感じる快適なマシンだ。