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税別18万円切りクリエイターノート、マウス「DAIV 5N」。8コアCPU+RTX 2060搭載で価格以上の性能
2020年7月28日 06:55
マウスコンピューターはIntel第10世代の8コアCPUとNVIDIAのレイトレーシング対応ディスクリートGPUを搭載した15.6型ノートPC「DAIV 5N」を7月9日に発表、同日より販売を開始した。
Core i7-10875HとGeForce RTX 2060を、約1.77kgのマグネシウム合金製軽量筐体に搭載しており、携帯性の高いクリエイター向けノートPCに仕上げられている。
今回同社より実機を借用したので、詳細スペック、外観、使い勝手、AV品質、性能について徹底検証していこう。
ハード的に用意されているのは1モデル、メモリとSSDはカスタマイズ可能
DAIV 5Nに用意されているのは、Officeなし(税別179,800円)、Office Home & Businessつき(税別204,800円)の2モデル。ハードウェア的には1モデルのみだが、購入時にメモリ、ストレージをカスタマイズ可能だ。
おもなスペックは、CPUに第10世代(Comet Lake)の「Core i7-10875H」(8コア16スレッド、2.3~5.1GHz)、dGPUに「GeForce RTX 2060(6GB)」を採用。メモリは16GB(DDR4-2666 SDRAM)、ストレージは512GB(PCIe NVMe SSD)を搭載している。
ディスプレイは15.6型フルHD液晶(1,920×1,080ドット)、通信機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)とBluetooth 5.0、有線LAN(Gigabit Ethernet)をサポート。バッテリは62,320mWh(Battery reportコマンドで計測)を搭載しており、バッテリ駆動時間は約5.5時間が謳われている。
なお前述のとおり、購入時にメモリは16GB/32GB/64GB、ストレージは512GB(ブランド不明)/512GB(サムスン製PM981a)/1TB(ブランド不明)/1TB(サムスン製PM981a)/2TB(サムスン製PM981a)を選択可能だ。これ以外のスペックについては、下記の表を参照してほしい。
モデル名 | DAIV 5N |
---|---|
OS | Windows 10 Home(バージョン1909) |
CPU | Core i7-10875H(8コア16スレッド、2.3~5.1GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(350MHz~1.2GHz)、GeForce RTX 2060(6GB) |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 16GB |
ストレージ | 512GB PCIe NVMe SSD |
ディスプレイ | 15.6型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、141ppi、輝度非公表、sRGB比100%、非光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応) |
通信 | IEEE 802.11ax(最大2,400Mbps)、Bluetooth 5.0、Gigabit Ethernet |
WWAN | - |
インターフェイス | Thunderbolt 3(DisplayPort Alt Mode対応)、USB 3.1、USB 3.0×2、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドフォン出力、マイク入力 |
カメラ | 100万画素 |
バッテリ容量 | 62,320mWh(Battery reportコマンドで計測) |
バッテリ駆動時間 | 約5.5時間 |
バッテリ充電時間 | 非公表 |
本体サイズ | 355.5×236.7×19.9mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約1.77kg |
セキュリティ | Windows Hello対応顔認証カメラ、セキュリティロックスロット |
ビジネス統合アプリ | オプション |
同梱品 | ACアダプタ、電源ケーブル、マニュアル類(製品仕様書、ファーストステップガイド、マウスコンピューターサポートマニュアル、保証書) |
価格 | 179,800円 ※7月25日時点 |
マグネシウム合金製の強固な筐体、インターフェイスはThunderbolt 3対応
本製品のサイズは355.5×236.7×19.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.77kg。天面とパームレスト面にマグネシウム合金を採用し、ディスプレイ3辺を狭額縁化することで、2019年の従来モデルより約29%の軽量化、約33%の薄型化、約9%のフットプリントのコンパクト化を実現している。
インターフェイスは、Thunderbolt 3(DisplayPort Alt Mode対応)、USB 3.1、USB 3.0、microSDカードスロット、ヘッドフォン出力、マイク入力を搭載。Thunderbolt 3とHDMI端子には4Kディスプレイを接続可能で、本体と合わせてトリプルディスプレイ環境を構築可能だ。Thunderbolt 3端子は電力供給に対応しておりケーブル1本でモバイルディスプレイを接続可能だが、DAIV 5N自体を充電できない点には注意してほしい。
なお本体にはUHS-I対応のmicroSDカードスロットが搭載されているが、BTOオプションでUSB 3.0接続でUHS-II対応の「Kingston MobileLite Plus SD リーダー」(1,250円)が用意されている。デジタルカメラとひんぱんにデータをやりとりするのなら、同時購入をおすすめする。
さて本体自体は約1.77kgとモバイルノートPCとして活用できるぐらい軽量だが、ACアダプタは「Core i7-10875H」と「GeForce RTX 2060」の性能を最大限に引き出すため230Wタイプが組み合わされている。このACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測約841gとかなり重い。毎日持ち歩きたいのならACアダプタの重量も含めて検討してほしい。
キーピッチ約18.75mmながらタイピングしやすいキーボード
DAIV 5Nには15.6型の筐体にテンキーつきキーボードが搭載されている。キーピッチは約18.75mm、キーストロークは約1.4mmが確保され、またEnterキーも比較的大きめなので、個人的には文字入力しやすく感じた。キーボード全体の剛性も高く、かなり強く打鍵してもたわみは体感できない。ただしカーソルキーは少し窮屈だ。デザイン的にはスマートではないかもしれないが、カーソルキー上下の奥行きを広げて、手探りでも操作しやすくしてほしいと思う。
キーボードはカラー変更可能なRGBバックライト仕様。キー1つ1つの色を変更することはできないが、さまざまなカラーエフェクトを楽しめる。
タッチパッドは写真ではストロークが深く見えるが、実際にはクリックは浅い位置で発生する。クリック感自体も軽い。全体が沈み込むダイビングボード構造のタッチパッドとしては操作しやすい部類に入ると思う。
DAIV 5Nは、ディスプレイ下部に100万画素Webカメラ、Windows Hello対応顔認証カメラ、デュアルアレイマイク、カメラインジケータを内蔵することで3辺狭額縁を実現しているが、その代償としてWebカメラが下から見上げた不自然な構図となる。また、タイピングすると指が大きく映り込むのもマイナスポイント。自然な構図でビデオ会議したいのなら、外付けWebカメラを別途用意したほうがいい。
Webカメラを試用していて気になったのはカメラインジケータが小さく、また明るくないため、点灯していても気づきにくいこと。セキュリティ上、カメラインジケータはもっと目立ったほうがよいと思う。
ノートPCに搭載されるディスプレイとしては平均的な色域
本製品には、15.6型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、141ppi、輝度非公表、sRGB比100%、非光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応)が搭載されている。注意してほしいのは色域が「sRGB比」で記載されていること。
実際に、カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で色域を確認したところ、sRGBカバー率は96.8%、sRGB比は104.7%、Adobe RGBカバー率は75.0%、Adobe RGB比は77.6%、DCI-P3カバー率は76.9%、DCI-P3比は77.2%という結果になった。ノートPCに搭載されるディスプレイとしては平均的な色域だ。
一般的にディスプレイの色域は「比」ではなく「カバー率」で記載されている。それは色域に対する面積比が同じでも、色域がずれていたら意味がないからだ。しかし、マウスコンピューターにかぎらず、とくにノートPCメーカーでは「比」なのか「カバー率」なのか曖昧なことが多い。色域は重要なスペックなので業界全体で表記を統一してほしいと思う。
なお、マウスコンピューターのG-Tuneブランドから、リフレッシュレート144Hzの15.6型フルHD液晶ディスプレイを搭載して、それ以外は同じスペック、同じ筐体、そして同じ価格の「G-Tune E5-144」が発売されている(マウス、薄型/軽量化した144Hz液晶搭載の15.6型ゲーミングノート参照)。DAIV 5Nのリフレッシュレートは60Hzだ。色域は不明だが、リフレッシュレートを優先させるならG-Tune E5-144を選ぼう。
サウンドについては「THX Spatial Audio For PCs」のソフトウェア処理により、かなり高音質化に成功しているというのが正直な感想。ステレオスピーカー自体は底面に2つ搭載されているだけだが、音にメリハリがあり、最大ボリュームで筐体の共振がやや気になるものの大きな破綻はない。解像感や低音の迫力は少々物足りないが、十分ミュージックビデオや映画を楽しめる品質だと感じた。
CPU&GPUの性能を引き出しているものの発熱が高め
最後に性能をチェックする。今回は下記のベンチマークを実施した。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
- バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
- CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
- CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
- 3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
- Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
- Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
比較対象機種としては、CPUに「Core i7-10750H」(6コア12スレッド、2.6~5GHz)、dGPUに「GeForce GTX 1650 Ti (4GB)」を搭載した「XPS 15」を採用した。より上位のCPUとdGPUを搭載するDAIV 5Nが、どのぐらいの性能差を発揮するのか確認してみたい。下記が検証機の仕様と、その結果だ。
DAIV 5N | XPS 15 | |
---|---|---|
CPU | Core i7-10875H(8コア16スレッド、2.3~5.1GHz) | Core i7-10750H(6コア12スレッド、2.6~5GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(350MHz~1.2GHz)、GeForce RTX 2060(6GB) | Intel UHD Graphics(350MHz~1.15GHz)、GeForce GTX 1650 Ti (4GB) |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 16GB | DDR4-2933 SDRAM 16GB |
ストレ-ジ | 512GB PCIe NVMe SSD | 1TB PCIe NVMe SSD |
ディスプレイ | 15.6型、1,920×1,080ドット(141ppi) | 15.6型、3,840×2,160ドット(290ppi) |
TDP | 45W | |
OS | Windows 10 Home(バージョン1909) | Windows 10 Pro(バージョン1909) |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 355.5×236.7×19.9mm | 344.72×230.14×18mm |
重量 | 約1.77kg | 約2.05kg |
DAIV 5N | XPS 15 | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.0.2165 | ||
PCMark 10 Score | 5,290 | 4,547 |
Essentials | 9,270 | 8,852 |
App Start-up Score | 10,888 | 11,363 |
Video Conferencing Score | 8,385 | 8,054 |
Web Browsing Score | 8,728 | 7,580 |
Productivity | 8,301 | 7,042 |
Spreadsheets Score | 10,297 | 8,537 |
Writing Score | 6,693 | 5,809 |
Digital Content Creation | 5,221 | 4,093 |
Photo Editing Score | 10,691 | 7,119 |
Rendering and Visualization Score | 3,336 | 2,562 |
Video Editting Score | 3,992 | 3,760 |
PCMark 10 Modern Office Battery Life | 5時間34分 | 8時間13分 |
3DMark v2.11.6866 | ||
Time Spy | 6,487 | 3,809 |
Fire Strike Ultra | 3,938 | 2,110 |
Fire Strike Extreme | 7,795 | 4,401 |
Fire Strike | 15,624 | 8,899 |
Night Raid | 39,152 | 15,196 |
Sky Diver | 41,275 | 19,504 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL | 141.04 fps | 114.55 fps |
CPU | 1,762 cb | 1,293 cb |
CPU(Single Core) | 202 cb | 191 cb |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 4,024 pts | 2,806 pts |
CPU(Single Core) | 482 pts | 458 pts |
FINAL FANTASY XV BENCHMARK | ||
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 12,969(非常に快適) | 7,742(快適) |
1,920×1,080ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 8,881(快適) | 5,144(やや快適) |
3,840×2,160ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 3,269(普通) | 1,813(動作困難) |
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 1,862.294 MB/s | 3,444.105 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 1,561.895 MB/s | 2,439.532 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 1,651.753 MB/s | 1,446.864 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 1,478.169 MB/s | 2,009.352 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 370.363 MB/s | 636.244 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 957.897 MB/s | 402.552 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 31.268 MB/s | 41.499 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 126.634 MB/s | 120.757 MB/s |
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像 | ||
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然 | 4分27秒25 | 4分51秒19 |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し | ||
3,840×2,160ドット、30fps | 1分18秒31 | 1分27秒52 |
まずCPUベンチマークのスコア差が圧倒的。DAIV 5NはXPS 15に対して、CINEBENCH R15.0のCPUスコアで1.36倍、CINEBENCH R20.060のCPUスコアで1.43倍のスコアを記録している。とくに後者ではコア数の差以上のスコアを叩き出していると言える。
また3Dグラフィックス性能も格上のdGPUを搭載しているDAIV 5Nが、3DMarkで最大2.58倍、FINAL FANTASY XV BENCHMARKで最大1.8倍のスコアを記録した。XPS 15にも一刻も早くGeForce RTX 2060搭載モデルがリリースされることを期待したいところだ。
ただし、実アプリの「Lightroom Classic」、「Premiere Pro」では、ベンチマークソフトほどの処理時間短縮は見られなかった。実アプリの性能については、Adobe側のdGPUに対するさらなる最適化が必要な可能性がある。
一方、バッテリ駆動時間については、DAIV 5Nが5時間34分、XPS 15が8時間13分と後者に軍配が上がった。これはXPS 15が86Whと大容量のバッテリを搭載しているため。DAIV 5Nは約1.77kgという軽量筐体が売りだが、個人的には重量が増えたとしてももっと大容量のバッテリを搭載してほしかった。
本体の発熱については、キーボード面で56.8度、底面で65.7度とかなり高かった(室温26.0℃で測定)。とくにキーボード面については手に触れる場所の温度がもっとも高くなってしまっている。高負荷な処理をひんぱんに行なうのなら、ノートPC用クーラーを購入することをおすすめする。
高負荷時の動作音については、通常時35dBA前後の部屋で計測したところ、最大50.8dBAを記録した。今回、動作音については他機種と比較していないが、音量的には耳障りな大きさであることは間違いない。高負荷処理を実行しながら集中して作業したいなら、ヘッドフォンをつけて音楽を聴くなり、ノイズキャンセリング機能を利用したほうがよい。
約1.77kgの軽量筐体にふさわしいACアダプタがほしい!
バッテリ駆動時間がやや物足りない、USB PD(Power Delivery)に対応していないなど不満点はいくつかあるものの、DAIV 5Nは税別18万円を切るノートPCとは思えないほどの性能を備えたマシンだ。
ぜひ窒化ガリウム(GaN)を採用するなどして、230W ACアダプタのさらなる軽量化を強く望みたい。そうすれば毎日携帯して、どこででもフルパワーを発揮できるハイパフォーマンスノートPCとしてさらに魅力的なマシンとなるはずだ。