Hothotレビュー
5万円を切る10.1型2in1「IdeaPad Duet Chromebook」を仕事とエンタメに使ってみた
2020年6月24日 09:50
レノボ・ジャパン合同会社の「IdeaPad Duet Chromebook」は、同社が6月2日に国内販売を発表したChromebook新ラインナップの1つ。キーボード着脱型の2in1で、10.1型という小型サイズが特徴のモデルだ。
価格は税別で40,880円、税込でも5万円を切るという手頃な価格帯で専用キーボードやスタンドカバーを同梱。国内のChromebookラインナップではめずらしい10.1型の小型サイズかつ低価格でタッチ操作可能な着脱型2in1ということで注目を集め、6月5日に発売されるやいなやオンラインショップは軒並み完売状態という人気ぶりだ。
スペックは、プロセッサがMediaTek Helio P60T(2GHzオクタコア)、メモリが4GB、ストレージが128GB。なお、Amazon.co.jpではストレージ容量が64GBのモデルも販売されており、こちらも現在は入荷待ちの状況だ。
ディスプレイはサイズが10.1型、解像度がWUXGA(1,920×1,200ドット)のIPS液晶を搭載。カメラは背面のカメラが800万画素、前面のカメラが200万画素で、背面カメラはオートフォーカスにも対応する。
通信面ではIEEE 802.11ac準拠の無線LANとBluetooth 4.2を搭載。センサーはジャイロセンサー、加速度センサ-、光センサーを搭載し、GPSは非対応。
接続インターフェイスはUSB 2.0 Type-Cポートのみで、充電およびDisplayPort出力に対応。外部ストレージは非対応なほか、LTEにも対応していない。イヤフォンジャックも搭載されていないが、付属のUSB Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブルを使えば有線のイヤフォンやヘッドフォンも利用可能だ。
キーボードとスタンド装着でノートPCのような利用スタイルが可能に
IdeaPad Duet Chromebookの特徴とも言えるのが前述の専用キーボードと背面に装着するスタンドカバーだ。スタンドカバーは下部がスタンドとして開閉する機構となっており、約20度近くまで倒すことができる。キーボードと合わせて本体に装着することで、マイクロソフトのSurfaceシリーズのようなスタイルで操作が可能だ。
本体サイズは約239.8×159.8×7.35mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約450g。10型クラスのタブレットとしては標準的なサイズ感と重さだが、カバーおよびキーボードを装着した時の重量は約920gと1kg近くなってしまう。
また、装着部分がマグネットかつキーボードのジョイント部分が柔らかいため、クラムシェルのように折りたたんだ状態だと、持ち運ぼうと手に取ったときにキーボードがずれやすい。カバーについてもスタンドを開くつもりが指の位置を間違えてカバーそのものを外してしまう、ということも何度かあった。
全部を装着すると重くなることもあり、普段は本体のみでタブレットとして活用し、本格的に作業するタイミングでキーボードやカバーを装着する、という使い方がよさそうだ。
キーボードはキーピッチが18mm、キーストロークが1.3mm。トラックパッドも搭載しているためマウスを別途用意することなくカーソル操作が可能だ。上部のショートカットキーはファンクションキーとして入れ替えることもできるが、数字が書いていないため「どのキーがF10か」という割り当ては自分で覚えておく必要がある。
キーの大きさは場所や種類によって異なり、文字入力のキーは面積が大きく取られている一方、記号のキーは小さくなっている。キーの操作感は人によって異なるが、普段から10型クラスのSurface Goを愛用している筆者が操作した感覚では、Surface Goよりも若干窮屈に感じた。
Bluetoothに対応しているため標準キーボード以外のキーボードを利用可能なほか、マウスも利用できる。文字入力にこだわるのであればもう少しサイズの広いキーボードを別途持ち歩いたほうがいいかもしれない。
ただし、外部キーボードではスクリーンショットなど用意されているショートカットがうまく動作しないこともあったため、IdeaPad Duet Chromebookの機能をフルに活かしたいというのであれば標準キーボードがおすすめだ。
キーボードを装着すると自動でクラムシェルモードに
セットアップは非常にシンプルで、Googleアカウントでログインするだけ。Chromeを普段から利用しているユーザーであれば、ブックマークや保存したパスワードもそのまま移行できる。
本体のみで利用する場合はタブレットモードとなり、UIは多少異なるものの使い勝手はほぼAndroidタブレットに近い。ATOKなどのIMEアプリを利用すればフリック入力も可能だ。
操作はAndroid 10で搭載されたジェスチャーナビゲーションを採用。Androidでおなじみの戻るボタンやマルチタスクボタンなどは利用できず、すべてフリック操作のジェスチャーで行なう必要がある。Androidの場合は以前の操作方法に戻すこともできるのだが、IdeaPad Duet Chromebookはジェスチャーナビゲーションから変更することができないため、操作には慣れが必要だ。
キーボードを着脱するとクラムシェルモードとなり、画面の自動回転がオフになって横表示固定になるほか、文字入力も標準のみに限定され、ATOKやGoogle日本語入力などのIMEアプリは利用できない。
とは言え、キーボードではフリック入力の必要もなく、フリック入力では便利な推測変換がキーボード入力では邪魔になる、ということもあり、文字変換の癖が違うという細かな点を除けば、実際の使い勝手としてはさほど気にならない。
なお、ATOKを利用する場合、キーボードの脱着を繰り返すと文字入力画面でキーボードが立ち上がらないことがたちたびあった。その場合、ATOKの設定で「ハードキーボードを優先」をオンにすることで、操作が1タップ増えるものの確実にATOKのIMEを呼び出せるようになる。
ログインやテザリングが手軽になるAndroidスマートフォン連携
Chromebookの特徴である起動の速さは非常に快適で、ボタンを押して数秒で画面が表示される。ただしログインについてはGoogleアカウントのパスワードを入力するか、別途設定した6桁のPINコードを入力する必要があり、せっかく起動が速いのにもかかわらずログインにはやや手間がかかる。
なお、ログインを手軽にする機能としてSmart Lockという機能も用意されている。Androidスマートフォンを持っているユーザーであれば、あらかじめ登録しておいたスマートフォンのロックを解除しておくことで、Chromebookのログインも画面をタッチするだけでログインできる、という流れだ。
しかしこの機能もスマートフォンを取り出す必要があるほか、スマートフォンを認識してロックを解除するまで数秒待たされた上に認識がうまくいかず結局文字入力が必要になる、ということも多い。コストの面で難しいところではあるものの、指紋認証や顔認証などの機能が欲しいところだ。
また、スマートフォン連携機能としては、Chromebook側の操作でAndroidのテザリングをオンにできる「インスタント テザリング」という機能が用意されている。自動で接続するわけではなくタッチ操作は必要だが、スマートフォンを取り出さずにテザリングを開始できるという点では便利だ。冒頭でLTEには非対応と書いたが、対応のAndroidスマートフォンを持っていればある程度カバーはできそうだ。
Androidスマートフォン連携としてはSMSの連携機能も用意されており、スマートフォンで受け取ったSMSをChromebook側で送受信できる。ただし、この機能を利用する場合はスマートフォン側でGoogleのメッセージアプリを利用している必要があり、「+メッセージ」などのSMSアプリを利用している場合は連携できない
USB Type-Cで外部ディスプレイ出力やUSB Hubなど拡張も可能
ディスプレイの解像度は1,920×1,200ドットだが、標準では1,080×675ドットが100%表示のデフォルト設定になっている。画面サイズが10.1型と小型なため、元々の解像度である1,920×1,200ドットにすると非常に文字が小さくなってしまうのだが、デフォルト設定の場合拡大しすぎていて、Webサイトやアプリによっては画面のボタンが押せないということがあった。使い勝手を考えると80%か90%程度にズームを変更するのがおすすめだ。
USB Type-Cを利用して外部ディスプレイに接続することも可能。最大1,920×1,080ドット(フルHD)/30Hzの外部ディスプレイに対応しており、USB Type-C対応ディスプレイであればケーブル1本で接続できる。USB Hubを介してHDMIでも出力可能。
USB Hubを利用すればUSBドングル型のマウスやUSBメモリ、SDカードも利用できる。デジタルカメラで撮影した写真を取り込む、というのも可能なので、IdeaPad Duet Chromebookを活用するためにはUSB Type-C Hubも合わせて持っておきたい。
背面に800万画素、前面に200万画素のカメラを備えるが、カメラのスペックはさほど高くはない。オートフォーカスは精度が甘く、風景撮影ではピントが合いにくい上に、明るいところなどでは白飛びしやすい。画質にはこだわらず、文書の撮影やインカメラを使ったビデオ会議などで活用するのがいいだろう。
バッテリの駆動時間は公称で約10時間。フル充電、輝度50%の設定でYouTubeの動画をフルスクリーンで繰り返し再生したところ、約11時間でバッテリが空になった。ほぼほぼスペックどおりのバッテリ持ちだ。一般的な事務作業であれば1日は十分に持つだろう。
Chromeブラウザの操作感はPC並み。アプリはやや不安定
Google Octane 2.0で測定したベンチマークテストの結果は9,957。タブレットのベンチマークとしてはミドルレンジのAndroidスマートフォンやタブレットと同等程度の結果ではあるものの、本機はAndroidタブレットではなくあくまでChromebookであり、Androidタブレットとの単純比較は難しい。
そのため、以下は主観ではあるものの、小型PCやタブレットを好んでビジネス利用してきた筆者の感覚で使用感をお伝えしたい。
Chromebookの本質であるChromeブラウザの使用感は、ノートPCと比べても遜色ない。通信回線が遅い場所では、Gmailなどネット接続前提のアプリではもたつくものの、自宅やオフィス、カフェなどの無線LANに接続すればキビキビと動く。前述のとおり筆者はこれまでSurface Goを愛用してきたが、ブラウザの使用感はSurface Goよりも上だと感じた。
一方、アプリについてはAndroidアプリが使えるものの、Androidと完全に同じというわけではなく、非対応のアプリもあれば動作が不安定なアプリもある。前述のとおりATOKなどのIMEアプリはキーボード切り替え時に動作しないなどの挙動があるほか、使用していたアプリがとつぜん落ちる、ということもしばしば発生した。
また、Gmailはアプリがキーボードショートカットに対応していないなど、クラムシェル的に使うには機能が制限されている。ブラウザで利用する場合はPCとほぼ同等の機能が用意されているため、キーボードショートカットも問題なく利用可能だ。アプリはフリック操作に対応しているため、クラムシェルで使う時はブラウザ、タブレットで使う時はアプリ、という使い分けがおすすめだ。
Chromeブラウザが非常に使いやすいため、Webサービスは基本的にブラウザで利用しておき、通知が欲しい、アプリでしか使えないというサービスだけAndroidアプリで利用する、という住み分けが良いと感じた。筆者の場合、常時10近く開く必要があるSlackはブラウザのタブで開くのもたいへんなのでAndroidアプリで設定、FacebookなどのSNSはブラウザで利用する、というように住み分けることにしている。
また、在宅ワークのビデオ会議などで人気のZoomについては、AndroidアプリではGoogleアカウントでのサインインがChromebookでは利用できないが、代わりにChromeの拡張機能で参加、主催ともに利用できた。
実際にいくつかのミーティングをIdeaPad Duet Chromebookで参加してみたが、Zoomだけであれば問題ないものの、Googleドキュメントなどの資料を並行して開くとビデオチャットが止まることが多々あった。機能としてもスマートフォンアプリとほぼ変わらないため、ビデオ会議はスマートフォンでログインしておき、IdeaPad Duet Chromebookでは資料を見る、という使い分けが良さそうだ。
仕事もエンタメもこれ1台で完結できるコストパフォーマンスの高い1台
これまで何度も「10型クラスのタブレットで仕事ができるか」に挑戦してきた筆者だが、AndroidタブレットやiPadはアプリが充実しているものの、ブラウザや文字入力などビジネス利用では課題があり、Surface Goはビジネス利用には十分なもののアプリが少ない、という課題を感じていた。
IdeaPad Duet Chromebookの場合、ブラウザを使えばSurface Go同等かそれ以上に使いやすく、Androidアプリが使えるため電子書籍や動画といったエンタメ的な使い方もできる。価格もキーボードやスタンドカバー込みで5万円以下という手頃感で、人気が出るのも納得のコストパフォーマンスだ。
細かい点を挙げるならログインがやや面倒なほか、Androidアプリの動作がやや不安定ではあるものの、値段やそのほかの使いやすさを考えればさほど気にはならない。仕事もエンタメも1台で完結できる端末としては非常に魅力的な1台だ。