特集
5万円以下のChromebookでAndroidタブレットの代わりに遊べるか?
~Chromebook活用術【エンタメ編】
2020年8月12日 06:55
前編の記事「5万円以下のChromebookは仕事に使えるのか?」では、Chromebookの利用を中心に紹介したが、Chromebookの魅力はビジネス用途だけでなく、電子書籍や動画、音楽といったエンタメを楽しむタブレットとしても利用できる点にある。後編ではChromebookをタブレットとして活用する方法を紹介する。
Chromebookをタブレットとして活用するときに理解しておきたいのは、ChromebookはあくまでChromebookであり、Androidタブレットとイコールではない、ということ。具体的には、Androidタブレットでは正常に動作するアプリもChromebookではうまく動作しない場合があるということだ。
また、実際の使用感は端末のスペックによるところも大きい。本稿では代表的なエンタメアプリを紹介していくが、いずれも今回試用するIdeaPad Duet Chromebookでの使用感であり、スペックの異なるほかの端末では使用感も異なることをあらかじめお断りしておく。
電子書籍は問題なく動作。一部アプリは見開きも対応
電子書籍アプリはKindleのほか、筆者が愛用しているBookLive!、hontoなどが問題なく動作。縦表示や横表示も問題なく、コミックの見開き表示にも対応している。一方、コミックアプリのジャンプ+は、表示は可能だが縦表示のみで見開きは非対応だった。
筆者は以前、10型サイズのWindows PC「Surface Go」を愛用していたが(Surface Goで電子書籍を読む参照)、電子書籍はKindleもBookLive!もアプリが提供されてはいるものの、Windows向けUIのためタッチ操作に向いておらず、コミックは横向きにしても見開きにならないなど、スマホアプリと比べると使い勝手は雲泥の差だった。
また、コミックアプリはWindows向けに提供されていないものも多く、一部ブラウザで表示できるサービスもあるものの、PCは基本的に閲覧の対象外だ。
その点、ChromebookならAndroidアプリを使うことでタブレットと同じ感覚で利用できる。Chromeブラウザでビジネスをこなしながら、空き時間やプライベートではタブレットとして電子書籍を堪能できるというのが、Chromebookならではの魅力と言えるだろう。
制限の多い動画配信サービス。端末の視聴環境は良好
ほぼAndroidタブレット感覚で使える電子書籍に比べて制限が多いのが動画配信サービスだ。IdeaPad Duet Chromebookで試したうち、Amazonプライム・ビデオは問題なく動作したものの、Huluは起動できるが動画が再生できなかった。
また、Netflixは動画自体は再生できるものの起動が非常に重く、ログインまでかなり待たされる。端末スペックが原因の可能性もあるが、すべての動画配信サービスが視聴できるわけではない可能性があることは注意が必要だ。
動画配信サービスはブラウザでも視聴できるが、HuluについてはChromebookのChromeが対象外となりブラウザからアクセスできない。一方、Netflixはブラウザからもアクセスが可能。アプリよりも動作が軽いので、Netflixはブラウザで視聴するのも手だ。
レコーダアプリではtorneがは非対応。パナソニックのDIGA対応アプリ「どこでもDIGA」は動作が重いものの視聴は可能だった。
このようにアプリやサービスによって利用可否が分かれる動画周りだが、対応さえしていれば視聴環境は良好。画質は十分視聴に耐えるもので、音質も本体上部左右にステレオスピーカーを搭載しており、イヤフォンなどを使わなくとも十分に動画を楽しめる。
Chromeならではの機能としてキャスト機能も備えているため、ChromecastやAndroid TVなどを利用して動画をTVで視聴することも可能。動画配信サービスはもちろんのこと、YouTubeで検索した動画をキャストしてTVで観ることもできる。
音楽はヘッドフォンの併用がおすすめ。ゲームはアプリ次第
音楽はYouTube MusicとSpotifyが問題なく動作。音質については本体スピーカーでも十分ではあるものの、動画に比べると音質が気になりやすく、スピーカー単体での聴取は低音にやや物足りなさを感じる。Bluetoothヘッドフォンやイヤフォンなどを併用すれば十分に楽しめるだろう。
なお、ラジオアプリのradikoに関してはアプリは起動できるものの番組を再生しようとするとアプリが終了してしまう。IdeaPad Duet ChromebookがGPSを搭載していないため位置情報を取得できてないという端末が原因の可能性もあるが、ラジオ放送をオフィシャルに楽しめるアプリとしては唯一無二の存在なだけに非対応は残念なところだ。
もっとも対応状況が厳しいのがゲーム。IdeaPad Duet Chromebookは前述のとおりGPSを搭載していないためPokémon Goは対象外でインストールできなかった。一方、同じ位置情報ゲームでも、ドラゴンクエストウォークは無線LANの位置情報のみでプレイが可能だった。ただし、ドラゴンクエストウォークはGPS非搭載機種やタブレットでの利用がそもそも動作保証の対象外であり、実際のプレイでは問題が起きる可能性があることも補足しておく。
Chromebookは全体的に端末のスペックがひかえめということもあり、ハイエンドスマートフォン向けのゲームは動作したとしても実用には厳しい。マリオカート ツアーやドクターマリオ ワールドなど比較的軽めのゲームは十分に動作したので、位置情報機能を必要としない軽めのゲームアプリを楽しむのがいいだろう。
いくつか代表的なアプリを中心にエンタメ系の機能を見てきたが、冒頭のとおりChromebookはあくまでAndroidタブレットとは別物だ。とは言え動画配信サービスは一部を除き十分視聴できることと、ブラウザで代替が難しい電子書籍サービスがひととおり使えることを考えると、実用上は十分だろう。
周辺機器の活用で利便性をさらに向上
単体でも十分に便利なChromebookだが、周辺機器を活用すると利便性はさらに高まる。ここでは筆者が仕事やプライベートに便利だと感じた周辺機器を紹介したい。
用意したい周辺機器の代表格がマウスだ。IdeaPad Duet Chromebookの場合、付属のキーボードにタッチパッドがあるため、操作だけであればマウスは不要なのだが、サイズが小さく移動面積も狭いためマウスほどの快適さはない。ビジネス用途であれば業務効率化のためにマウスを用意しておきたい。
また、キーボードについてもIdeaPad Duet Chromebook付属のキーボードは慣れれば十分に入力できるものの、快適なキーボードのサイズとしてはやや小さめだ。こちらも本体よりも幅の広いキーボードを使うと効率が高まる。
筆者の場合はロジクールのマウス「M350」、同じくロジクールのキーボード「K380」を組み合わせて使用したが、本体のみで使うよりも圧倒的に効率が高まり、PCとほぼ変わらない感覚で作業に集中できた。
IdeaPad Duet ChromebookのUSB Type-Cは外部ディスプレイ出力にも対応しているため、自宅やオフィスなどで使う場合はディスプレイに接続するとより視認性の高い環境で利用できる。最近流行のモバイルディスプレイなどを活用すれば外出先でもより効率のいい作業環境を実現できるだろう。
また、USB Type-C Hubはできればイヤフォンジャックのある製品を選びたい。というのもIdeaPad Duet ChromebookはUSB Type-C×1ポートしか外部出力がなく、イヤフォンを接続するにはUSB Type-C変換アダプタが必要になるからだ。リモートワークなどビデオ会議の機会が増えた今、イヤフォンやマイクは必須だが、ワイヤレスではバッテリ切れに不安がある。いざというときに備えて有線で接続できるHubがおすすめだ。
IdeaPad Duet Chromebookは別売ながらUSI(Universal Stylus Initiative)式のデジタルスタイラスペンにも対応。Lenovo公式のペンはまだ国内販売されていないが、他社メーカー製品ではあるものの「HP USIアクティブペン」はIdeaPad Duet Chromebookでも利用可能。国内でも対応製品が少ないため入手が難しいペンだが、手書きで活用したいユーザーにはおすすめのペンだ。
ロック解除やネット接続が便利になるスマートフォン連携
Chromebookを活用するためにはスマートフォンもAndroidを使いたい。Androidスマートフォンと連携することで、本体のロックをスマートフォンで解除できる機能、スマートフォンのテザリングをChromebook側からオンにできる機能、スマートフォンのSMSをChromebookで受ける機能が利用可能になり、使いやすさがさらに高まるからだ。
ロック解除については、スマートフォンのロックを解除する必要があるためやや手間ではあるものの、それでもPINを入力するよりは手軽。また、テザリングは外出先などでインターネット接続したいときにとても便利だ。
SMSについてはコミュニケーション要素はもちろん、二要素認証などセキュリティ面でも便利だ。わざわざスマートフォンを取り出さずChromebookだけで二要素認証を完結できるため、二要素認証を頻繁に使うユーザーは設定しておきたい。
使い方次第でビジネスもエンタメも1台でこなせるのが魅力
Androidアプリをインストールできる、という仕様だけを見ると、ChromebookはAndroidタブレットとして使えるように思えるかもしれないが、実際にアプリを試してみると必ずしもAndroidタブレットと同じようには使えるわけではない。
とは言え試した範囲ではあるものの電子書籍は問題なく楽しめるし、動画配信サービスも数はかぎられるが十分に使えるサービスもある。完全なAndroidタブレットではないという割り切りの上で使うのであれば十分に活用できるだろう。
PCとしてもAndroidタブレットとしても完全ではないものの、使い方次第では両方のいいとこ取りができるのがChromebookのおもしろさだと感じた。Chromebook特有のクセに慣れる必要はあるが、仕事もエンタメも1台の端末でこなせるのは、ほかのOSにはない魅力と言えるだろう。前後編にわたって紹介した本レビューがChromebookを活用するための手助けになれば幸いだ。