Hothotレビュー
XPS 15はクリエイティブ向け15.6型ノートとして理想に近い存在だ!
2020年6月18日 06:55
デルは5月中旬、第10世代Intel CoreのHプロセッサーとNVIDIAのディスクリートGPUを組み合わせた15.6型ノートPC「XPS 15」の販売を開始した。
最新のCPUとディスクリートGPU(以下dGPU)に刷新するだけでなく、インターフェイスも含めて筐体をリニューアル。ぱっと見の印象はあまり変わらないが、ディスプレイ下部も含めてフレームレス化して、筐体サイズもコンパクトになり、15.6型ノートPCとして世界最小を謳っている。
今回は従来モデルからの変更点と、気になる性能に注目してレビューをお届けしよう。
最上位モデルは8コア16スレッドプロセッサーを搭載!
XPS 15は記事執筆時点(6月16日)で期間限定モデルも含めて10製品が販売されている。今後ラインナップは増減される可能性もあるので、下記の表では基本モデルの「XPS 15 プレミアム(シルバー)」、「XPS 15 プラチナ(シルバー)」、「XPS 15 プラチナプラス(シルバー)」のみ掲載している。
最新ラインナップについては、公式の製品ページで確認してほしい。
製品名 | XPS 15 プレミアム(シルバー) | XPS 15 プラチナ(シルバー) | XPS 15 プラチナプラス(シルバー) |
---|---|---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit | ||
CPU | Core i5-10300H(4コア/8スレッド、2.5~4.5GHz) | Core i7-10750H(6コア/12スレッド、2.6~5GHz) | Core i7-10875H(8コア/16スレッド、2.3~5.1GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(350MHz~1.05GHz) | Intel UHD Graphics(350MHz~1.15GHz)、GeForce GTX 1650 Ti (4GB) | Intel UHD Graphics(350MHz~1.20GHz)、GeForce GTX 1650 Ti (4GB) |
メモリ | DDR4-2933 SDRAM 8GB | DDR4-2933 SDRAM 32GB | |
ストレージ | 512GB PCIe NVMe SSD | 2TB PCIe NVMe SSD | |
ディスプレイ | 15.6型フルHD WVA液晶(1,920×1,200ドット、145ppi、輝度500cd/平方m、sRGBカバー率100%、非光沢、タッチ非対応、スタイラス非対応) | 15.6型UHD WVA液晶(3,840×2,400ドット、290ppi、輝度500cd/平方m、AdobeRGBカバー率100%、低反射、タッチ対応、スタイラス非対応) | |
通信 | IEEE 802.11ax(最大2,400Mbps)、Bluetooth 5.1 | ||
WWAN | - | ||
インターフェイス | Thunderbolt 3×2(USB PD、DisplayPort対応)、USB 3.1 Type-C(USB PD、DisplayPort対応)、SDカードスロット、3.5mmヘッドセットジャック、ウェッジシェイプロックスロット | ||
カメラ | 720p | ||
バッテリ容量 | 56Wh | 86Wh | |
バッテリ駆動時間 | 非公表 | ||
バッテリ充電時間 | 3時間(電源オフ時) | ||
本体サイズ | 344.72×230.14×18mm(幅×奥行き×高さ) | ||
重量 | 約1.83kg | 約2.05kg | |
セキュリティ | Windows Hello対応指紋認証センサー一体型電源ボタン | ||
ビジネス統合アプリ | オプション | ||
同梱品 | ACアダプタ、電源ケーブル、Dell Adapter USB-C to USB-A/HDMI-DA20、説明書(クイックスタートガイド、安全および認可機関に関する情報、Regulatory Information Sheet、デル お問い合わせ窓口のご案内) | ||
カラー | プラチナ シルバー&ブラック | ||
価格 | 199,980円 | 234,980円 | 349,980円 |
eクーポン適用価格 | 169,983円 | 199,733円 | 297,483円 |
モデルごとに異なるおもなスペックについて列挙していくと、以下のようになる。
【表2】モデルごとに選択できるスペック | |
---|---|
OS | Windows 10 Home Windows 10 Pro |
CPU | 第10世代(Comet Lake)のCore i5-10300H(4コア/8スレッド、2.5~4.5GHz) Core i7-10750H(6コア/8スレッド、2.6~5GHz) Core i7-10875H(8コア/16スレッド、2.3~5.1GHz) |
GPU | dGPUなし GeForce GTX 1650 Ti |
メモリ | DDR4-2933 8GB/16GB/32GB |
ストレージ | PCIe NVMe 512GB/1TB/2TB |
ディスプレイ | フルHD WVA(Wide viewing angle)液晶(1,920×1200ドット、タッチ非対応) 4K WVA液晶(3,840×2400ドット、タッチ対応) |
バッテリ | 56Wh/86Wh |
ACアダプタ | 90W/130W |
キーボード | US/日本語 |
Officeアプリ | なし Microsoft Office Professional 2019 Microsoft Office Personal 2019 Microsoft Office Home & Business 2019 |
購入時にカスタマイズできるのは、OS、キーボード、Officeアプリのみ。ただし、ハードウェア的には最大64GBのメモリを搭載し、ストレージも換装可能だ。
XPS 15を購入するにあたっての留意点は、プロセッサーに4コア、6コア、8コア版が存在すること。CPUに依存するアプリをおもに使うのなら当然多コア搭載マシンを選びたい。またもっとも安価な「XPS 15 プレミアム(シルバー)」にはdGPU(GeForce GTX 1650 Ti)が搭載されていない。クリエイティブ、ゲーム用途にはdGPU搭載モデルを選ぶべきだ。
従来モデルとの違いでは4K+の高解像度ディスプレイが有機ELからWVA液晶に変更された点が大きい。XPS 15は消費電力を理由にWVA液晶に変更されたと推察するが、有機ELディスプレイが必須なのであれば、並行販売されている旧XPS 15を早めに購入しよう。
【表3】XPS 15のWVA液晶と有機ELの違い | |
---|---|
WVA液晶 | 輝度500cd/平方m、色域DCI-P3 94%、コントラスト比1,600:1、応答速度35ms、リフレッシュレート60Hz、消費電力10.4W |
有機EL | 輝度400cd/平方m、色域DCI-P3 100%、コントラスト比100,000:1、応答速度1ms、リフレッシュレート60Hz、消費電力14.8W |
通信機能については、IEEE 802.11ax(最大2,400Mbps)、Bluetooth 5.1をサポートしている。有線LAN端子は搭載されていないので、有線LAN接続するさいには「Dell DA200アダプター」またはサードパーティー製LANアダプタが別途必要だ。
フットプリントがコンパクト化、インターフェイスを変更
本体サイズは344.72×230.14×18mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.83kg(56whバッテリ、タッチ非対応)または約2.05kg(86Whバッテリ、タッチ対応)。
本体天面と底面はCNC削り出しのアルミ素材、パームレストはカーボンファイバー製で、タッチパネルディスプレイはCorning Gorilla Glass 6でカバーされている。従来モデルが357×235×11~17mm(同)/約1.8~2kgだったので、幅が12.28mm、奥行きが4.86mm小さくなり、高さと重量がわずかに増えたことになる。
インターフェイスは、Thunderbolt 3×2(USB PD、DisplayPort対応)、USB 3.1 Type-C(USB PD、DisplayPort対応)、SDカードスロット、3.5mmヘッドセットジャック、ウェッジシェイプロックスロットという構成。
ついにUSB Type-A端子が廃止され、代わりにHDMIとUSB Type-A端子を増設する「Dell Adapter USB-C to USB-A/HDMI-DA20」が同梱されている。USB Type-A端子を排しているが、フルサイズのSDカードスロットが残されていることはクリエイティブワーク向けマシンとしてうれしい配慮だ。
同梱されている130W ACアダプタの型番は「HA130PM170」。仕様は、入力100-240V/1.8A、出力20V/6.5A、5V/1A、容量130Wだ。USB Power Deliveryで規定されている100W(20V 5A)を超えており、また対応出力も少ないので、基本的には専用品と考えておいたほうがいい。
一方、本体については最大90W出力に対応するUSB PD充電器「RP-PC128」で、「低速のUSB充電ケーブルが接続されています」という警告メッセージが表示されるものの給電できることは確認した。ただし、高負荷時に電力が足らなくなるので、サードパーティー製USB PD充電器を使うさいには注意してほしい。
キーボードの打鍵感は良好だがタッチパッドが大きすぎ?
キーボードのキーピッチはX方向が19.05mm、Y方向が18.05mm、キーストロークは実測1.5mm前後。日本語キーボードはUSキーボードの79キーより4キー多い83キー仕様だが、「¥」キーがわずかに狭いだけでほかのキーは等幅にそろえられている。打鍵感は良好で、打鍵音も比較的低め。入力しやすいキーボードと言える。
気になったのがタッチパッドの大きさ。前モデルが105×80mm(幅×奥行き)だったところ、今回のXPS 15は150×90mm(同)と大型化されている。母指球の広い面積でタッチパッドに触れたり、クリックしても反応しないようにソフトウェア制御されているが、タイピング時に手をしっかり預けるとどうしてもクリックしてしまう。
この点が個人的に非常に気になった。広いタッチパッドのほうがデザイン的にはよいのかもしれないが、操作性という点ではあまり恩恵がないように思う。ここまで大きくなくてよいのではないだろうか?
使い勝手におけるもう1つの不満が4Kディスプレイしかタッチ操作に対応していないこと。最大消費電力は4Kが10.4W、フルHDが4.41Wなので、低消費電力のフルHDディスプレイでタッチパネルを使いたいという人もいるはずだ。
スペックに近い色域を確認、サウンド品質もハイレベル
今回借用したXPS 15には、15.6型4K WVA液晶ディスプレイが搭載されていた。カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で色域を確認したところ、sRGBカバー率は100.0%、sRGB比は145.3%、Adobe RGBカバー率は99.0%、Adobe RGB比は107.7%、DCI-P3カバー率は91.4%、DCI-P3比は107.1%とほぼスペックどおりの色域を確認できた。
前モデルの有機ELディスプレイほどのコントラスト比は備えていないが、4K WVA液晶ディスプレイは「DisplayHDR 400」に対応しており、輝度は500cd/平方mと高いので、HDR対応コンテンツを階調豊かに楽しめるはずだ。
一方、サウンド面については、コントローラが「Realtek ALC3266-CG」から「Realtek ALC3281-CG」に変更され、スピーカー出力が2Wから4W(ピーク5W)に引き上げられている。またスピーカー位置も底面前面からキーボード左右の特等席に配置された。そのおかげで、解像感、伸びやかさ、低音の迫力が大きく向上している。Windows搭載ノートPCとしてはかなりレベルが高いサウンド品質だと思う。
第10世代CPUで着実に性能向上、4K動画書き出しが驚異のスピードで完了
最後に性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
- バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
- CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
- CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
- 3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
- Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像
- Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し
比較対象としては、第9世代の「Core i7-8750H」からどのぐらい性能が向上しているのか、dGPUによって3Dグラフィックス性能がどのぐらい向上するのかを確認するために、「LAVIE VEGA」のベンチマークスコアを流用している。
下記が検証機の仕様とその結果だ。
XPS 15 | LAVIE VEGA(PC-LV950RAL) | |
---|---|---|
CPU | Core i7-10750H(6コア/12スレッド、2.6~5GHz) | Core i7-8750H(6コア/12スレッド、2.6~4.5GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(350MHz~1.15GHz)、GeForce GTX 1650 Ti (4GB) | Intel UHD Graphics 630(350MHz~1.15GHz) |
メモリ | DDR4-2933 SDRAM 16GB | DDR4-2666 SDRAM 16GB |
ストレ-ジ | 1TB PCIe NVMe SSD | 1TB(Optane Memory H10) |
ディスプレイ | 15.6型/3,840×2,160ドット | 15.6型/3,840×2,160ドット |
TDP | 45W | |
OS | Windows 10 Pro 64bit バージョン1909 | |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 344.72×230.14×18mm | 359.8×243.9×18.3mm |
重量 | 約2.05kg | 約1.9kg |
XPS 15 | LAVIE VEGA(PC-LV950RAL) | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.0.2165 | ||
PCMark 10 Score | 4,547 | 4,162 |
Essentials | 8,852 | 8,722 |
App Start-up Score | 11,363 | - |
Video Conferencing Score | 8,054 | - |
Web Browsing Score | 7,580 | - |
Productivity | 7,042 | 6,720 |
Spreadsheets Score | 8,537 | - |
Writing Score | 5,809 | - |
Digital Content Creation | 4,093 | 3,339 |
Photo Editing Score | 7,119 | - |
Rendering and Visualization Score | 2,562 | - |
Video Editting Score | 3,760 | - |
PCMark 10 Modern Office Battery Life | 8時間13分 | 6時間57分 |
3DMark v2.11.6866 | ||
Time Spy | 3,809 | - |
Fire Strike Ultra | 2,110 | - |
Fire Strike Extreme | 4,401 | - |
Fire Strike | 8,899 | 1,184 |
Night Raid | 15,196 | - |
Sky Diver | 19,504 | 4,849 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL | 114.55 fps | - |
CPU | 1293 cb | 967 cb |
CPU(Single Core) | 191 cb | 179 cb |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 2,806 pts | 2,040 pts |
CPU(Single Core) | 458 pts | 418 pts |
FINAL FANTASY XV BENCHMARK | ||
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 7,742(快適) | - |
1,920×1,080ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 5,144(やや快適) | - |
3,840×2,160ドット、標準品質、フルスクリ-ン | 1,813(動作困難) | - |
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 3,444.105 MB/s | 2,023.11 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 2,439.532 MB/s | 540.68 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 1,446.864 MB/s | 1,404.45 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 2,009.352 MB/s | 504.79 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 636.244 MB/s | 576.76 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 402.552 MB/s | 329.71 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 41.499 MB/s | 129.94 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 120.757 MB/s | 108.03 MB/s |
Adobe Lightroom Classic CCで100枚のRAW画像を現像 | ||
7,952☓5,304ドット、カラ- - 自然 | 4分51秒19 | - |
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し | ||
3,840×2,160ドット、30fps | 1分27秒52 | - |
XPS 15が搭載する「Core i7-10750H」とLAVIE VEGAが搭載する「Core i7-8750H」はどちらも6コア12スレッドのプロセッサーだ。しかし、XPS 15がCINEBENCH R20.060で約1.37倍、CINEBENCH R15.0で約1.34倍のスコアを記録した。CPU性能が着実に向上していることは間違いない。
そして当然大きく差がついたのが3Dグラフィックス性能で、「GeForce GTX 1650 Ti」を搭載するXPS 15が3DMarkのFire Strikeで約7.52倍、Sky Diverで約4.02倍のスコアを叩き出した。
さらに、dGPUの恩恵を大きく受けられたのが、Adobe Premiere Pro CC。このテストはLAVIE VEGAと比較していないが、Adobe Premiere Pro CCが2020年5月に「ハードウェアアクセラレーション対応のH.264およびHEVCエンコーディング」というアップデートが提供されていることも相まって、4K動画の書き出しが大幅に高速化。5分の4K動画の書き出しが実時間の約29%に相当する1分27秒52で完了してしまった。今後、動画編集目的でマシンを購入するのなら、dGPU搭載が必須条件と考えるべきだ。
世界最小の15.6型と17.3型のどちらを選ぶ?
XPS 15は持ち運び可能なクリエイティブ向けノートPCとして理想に近いマシンだ。バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」で8時間13分動作するので、モバイル用途にも十分対応できる。
また、ACアダプタなしで動作させても性能がほとんど低下しない。電源を確保できない場所でクリエイティブワークをこなしたいという方にまさにもってこいのマシンだ。
悩みどころが「XPS 17」の存在。17.3型ディスプレイを搭載しつつ、374.45×248.05×19.5mm(同)/約2.11~2.51kgと、こちらもモバイル可能なサイズ/重量に収まっている。しかも近日、上位dGPU「GeForce RTX 2060」搭載モデルの販売が開始される予定だ。スペックが比較的近いだけに、世界最小の15.6型と17.3型のどちらを選ぶか、非常に難しい選択と言えよう。