Hothotレビュー

液晶改良で値下がりした「MacBook Air 2019」のお買い得感を検証する

13.3インチのTrue Toneテクノロジ対応Retinaディスプレイを備えた「MacBook Air」の2019年モデル。Apple Storeでは上位下位の2機種が用意されているが、差異はSSD容量だけにどとまる。筐体カラーはスペースグレー、シルバー、ゴールド(写真)の3種類

 ノート型Macが爆発的に浸透したきっかけを生んだモデルと言えば、2010年に登場した第2世代MacBook Airではないだろうか。インターフェイスを大胆に削り薄型軽量化したアルミ一体成形の美しさだけでなく、最安モデルで税別88,800円という安さが多いにウケた。

 そのMacBook Airもモデルチェンジを重ねたが、なんやかんやで価格も上がっていった。昨年(2018年)登場したMacBook Air 2018の価格は最安モデルで134,800円。現在と2010年当時では技術や経済情勢の違いが大きいとはいえ、かつてのMacBook Airを知っていると、近年は迷走気味ではないかと思えてしまうほどだ。

 だが、7月にリニューアルされたMacBook Airは、税別119,800円と139,800円の2モデル構成と、2018年モデルより15,000円〜17,000円値下げされている。内蔵ストレージにデータを極力置かず、iCloudやDropbox/OneDriveといったクラウドサービスにデータを置く人なら下位モデル、逆になるべくデータを手元に置いて置きたい人は上位モデルやCTOでSSD増量という棲み分けなのだろう。

 今回は2019年版MacBook Airの上位モデル(=下位モデルのSSD増量版)をテストする機会に恵まれた。外出先にもパワーを求める人には以前にレビューしたMacBook Proの記事を参照してほしいが(最大5GHzのCore i9搭載Mac最速ノート「MacBook Pro 2019 15インチ」“特盛モデル”を徹底検証)、MacBook Airはそれとは逆に、性能は最低限でも良いから、機動性や薄さ&軽さを重視したい人向けの味つけになっている。

 はたしてどの程度の性能を示しているのか、ベンチマークを交えつつテストしてみた。

【表】MacBook Air 2019年モデルのスペック
下位モデル上位モデル
ディスプレイ13.3インチ 2,560×1,600ドット(227ppi)、True Toneテクノロジ
CPUCore i5-8210Y(2コア/4スレッド、1.6〜3.6GHz)
メモリLPDDR3-2133 8GB
グラフィックHD Graphics 617
ストレージ128GB(NVMe SSD)256GB(NVMe SSD)
インターフェイスThunderbolt 3×2(Displayport/USB 3.1)
ネットワークIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2
バッテリ容量49.9Wh
バッテリ動作時間最大13時間
サイズ(幅×奥行き×高さ)304.1×212.4×1.56mm
重量1.25kg
OSmacOS Mojave
税別直販価格119,800円139,800円

 なお、本記事以外にも動画での検証も行なっているので、そちらも合わせてご覧いただきたい。

True Tone液晶追加で実質内容アップ?

 MacBook Air 2019年モデルの変更点は、液晶ディスプレイが「True Toneテクノロジ」対応になったという点だけである。それゆえに筐体デザインも据え置きだ。厚さ15.6mm、重さ約1.25kgの薄型軽量筐体となっている。

 搭載インターフェイスは筐体左側面にThunderbolt 3(USB Type-C)が2ポートと、右側面にオーディオ入出力端子が1つ搭載されているのみ。Appleらしい割り切りと言えるだろう。この割り切りには賛否の分かれるところだが、外へ持ち出すさいにMacBook Airだけで作業が完結してしまう人であれば、決定的なデメリットとは言えない。USB Type-C Hubを1つ常備しておけば、充電からディスプレイ出力、SDカードリーダやUSBデバイスへのアクセスなどが行なえるので、小さな机の上でも配線をスマートにまとめられるメリットもある。

 ちなみにACアダプタは純正の30W USB Type-C接続のものが同梱されているが、5V/2A程度のUSB充電器やモバイルバッテリでも給電できてしまう点は長所として挙げておきたいところだ。ただし保証外の行為であるし、充電速度はきわめて遅い。さらに動作中のバッテリ充電はほぼ期待できない点に留意しておきたい。

天板には鏡面仕上げのAppleのシンボルのみ、ハッチ1つない底板とデザインはきわめてシンプル。こういったデザインの好きな人にはたまらない
右側面にはヘッドフォン&マイク兼用のピンジャックだけを配置。4極プラグ対応なのでスマートフォンやゲーム機用のヘッドセットが直接挿せる
左側面にはThunderbolt 3を2ポート配置。USB Aケーブルを直接接続する周辺機器は、別途USB Type-Cハブを利用することで対応しよう。どちらのポートも充電やディスプレイ出力に対応している
前面や背面にはなにもない。薄型筐体だから当然と言えるが……
同梱されるUSB Type-CのACアダプタ。MacBook Pro 13インチモデル同梱のものは出力61Wなのに対し、MacBook Airのは出力30Wと非常に小さい。充電時間や発火などのリスクを気にしなければ、普通のUSB充電器でも代用可能
付属品一式。紙の説明書は最低限のことしか記述しないおなじみのスタイル

 キーボード周りは“バタフライ構造”を採用している。これはMacBook Proと同じものだが、構造的にゴミの侵入などで動作不良が起きやすいことなどの問題点が指摘されていた。今回のMacBook Airのキーボードはゴミ侵入防止用の素材が改良された最新版が採用されており、若干の進化が認められる。ただストロークが非常に短い点は同じであるため、キーを力任せに打鍵するスタイルの人は疲れる。撫でるように打鍵するスタイルを身につけたいところだ。

 また、MacBook Proと違いファンクションキー部分はTouch Barではなく物理キーとなっている。vim等ESCキーを多用するアプリを多用するなら、この物理キーの存在は非常に助かるだろう。ファンクションキー列の一番右には指紋認証(Touch ID)センサー機能も備えた電源ボタンが配置されている。

Taptic Engineを搭載した大型のトラックパッドに、アイソレーション式のキーボードというおなじみのスタイル。最上段には物理キーでESCキーやファンクションキーが設けられている
薄さを追求したがゆえのバタフライ構造のキーボードだが、好みが大きく分かれるところ。薄くてストロークも短いのだから、優しく打鍵するように意識すればよいのだ。キーボードだからと言って、すべて同じ感覚で扱うのは良くない
バタフライ構造の欠点であるゴミの侵入を防ぐための素材を改善。現行MacBook Proと同じものが使われている
一番右上のキーは電源ボタン兼Touch ID用のセンサーとなる
Touch IDはスリープ状態からのパスワードレス復帰(ただし長時間スリープ後はパスワード必須)のほか、iTunes/Mac App Storeでの決済、Safariのパスワード入力等をすばやく完了させることができる

 MacBook Airの液晶は初代から第2世代最後のモデル(2017年)まで、ドットピッチの粗い液晶を採用していたが、2018年にUSB Type-Cを採用するにあたってRetinaディスプレイに変更。そして2019年モデルではTrue Toneテクノロジ対応となった。環境光を分析してホワイトバランスを自動的に調整するというものだが、この機能は手動でオフにもできる。

 ディスプレイの解像度は2,560×1,600ドットだが、標準では1,440×900ドット相当の見た目になるようスケーリングされる(つまり旧世代MacBook Air 13インチモデルと同じ情報量)。最大1,680×1,050ドット相当まで情報量を増やすことが可能だが、ドット等倍表示のディスプレイが欲しい場合は、素直に外部ディスプレイを使ったほうが得策だ。

 また、発色については普通に写真や動画を鑑賞する上では過不足のないものが採用されているが、MacBook Proだと同じ13インチでも輝度500cd/平方mでDCI-P3の色域対応という違いがある。

ガラスカバーで覆われているため環境光が映り込むが、以前の“光沢液晶”時代に比べると反射は抑制されている。標準設定のままでも文字表示にジャギー感は認められない
True Toneテクノロジは見やすさという点では良いが、色温度が変わってしまうため、写真編集等に取り組むならシステム環境設定の「ディスプレイ」でオフにしておくとよいだろう
ディスプレイの解像度は1,024×640/1,280×800/1,440×900(標準)/1,650×1,050ドットの4段階から選択する。特別なツールを入れないかぎり、ドット等倍の解像度にすることはできない

CPUはCore i5-8210Y固定な点に注意

 外観を楽しんだところで内部に目を向けてみよう。前述のとおり今回の2019年モデルではCPUそのほかのコンポーネントに変更は加えられなかった。CPUは“Amber Lake”こと「Core i5-8210Y」であり、GPUは「UHD Graphics 617」、メモリやSSDも容量据え置きだ。

 このため、MacBook AirはCPU性能よりもバッテリの持続時間や本体の薄さ/軽さをなによりも重視する人のためのMacとして仕上がっている。CPUパワーをあまり使わないレベルの文書作成やコーディングであるとか、SNSのチェック、簡単な写真編集といった用途が主目的ならオススメだ。

 MacBook AirのメモリとSSDは基板に直接実装されているため、あとからスペック不足と気がついても入れ替えることはできない。とくにBoot Campを利用してWindows環境と切り替えて使いたい場合、SSDが最低容量の128GBだとWindows領域の確保も厳しい。Boot Campを利用するならSSDは最低でも256GB以上にしておきたい。

CTOではCPUの上位モデルは用意されず、メモリとSSDの容量だけ変更できる。作業内容にもよるが、SSDは256GB以上(=今回のテスト機)にするのが個人的にオススメだ
MacBook Airの内部。薄型&軽量化のためにSSDやメモリはすべてオンボード実装となる。筐体の大半はバッテリスペースで占められており、ロジックボード(自作PC界隈でいうマザーボード)は筐体の片隅に凝縮されている。Thunderbolt 3ポートが片方にしかないのはこのためだ
メモリはLPDDR3-2133のデュアルチャネル構成。最大16GBまで搭載できる。今回試すベンチマークもとくにメモリ不足は感じなかったが、写真や動画編集もがんばりたいなら16GBに増量しておこう
SSDはPCI Express 3.0のx4で接続されるNVMe SSDが標準搭載されている
グラフィックはCPUに内蔵されたHD Graphics 617。EU数は24機と非常に小規模なので、ゲームのような複雑かつ高速な描画処理は苦手だ
Thunderbolt 3は40Gbit/sが2系統。コントローラはMacBook Proと同じ“Titan Ridge”こと「JHL7540」だ

上位のMacBook Pro 13インチモデルにどこまで迫れるか?

 ではMacBook Air 2019年モデルの性能をチェックしよう。

 比較対象として筆者のMacBook Pro 13インチモデル(Four Thunderbolt 3)を準備した。MacBook Proはメモリ16GBに増量済みだが、SSDはどちらも256GBである。安価なMacBook Airにするか、それとも少し予算を追加してMacBook Pro 13インチモデルにするかの判断材料になれば幸いだ。

 まず「CINBENCH R20」でCPUの計算力を比較する。MacBook AirのCPUは2コア4スレッドなのに対し、MacBook Pro(Core i5-8259U)は4コア8スレッドであるため、パワーでMacBook Airが負けるのはやる前から見えている。だが安価なMacBook AirがMBPにどこまで迫れるかに注目したい。

「CINBENCH R20」実行中。MacBook AirのCPUは2コア/4スレッドなので、メニーコアCPUに向けてチューニングされたCINBENCH R20はかなり重荷だ
「CINBENCH R20」のスコア

 最大3.6GHz、2コア/4スレッドのCore i5-8210Yと、Core i5-8259Uの力量差は明らかだが、それはおもにコアの並列度の差からくるものである。おかげでマルチスレッド性能はMacの36%程度だが、シングルスレッド性能では75%程度のところで踏みとどまっている。Webブラウジングや文書作成程度なら十分有用なパワーであると言えるだろう。

 続いては「GeekBench4」でもスコアを計測してみる。CPUのシングル/マルチスレッド性能のほかに、GPUの演算性能(Compute)も評価される

「GeekBench4」でMacBook Airに搭載されているCPUの型番が確認できた
「GeekBench4」のスコア

 ここでもマルチスレッド性能(Multi-Core)はMacBook Proに大きく水をあけられているが、シングルスレッド性能はMacBook Proの89%程度と、CINBENCH R20よりもさらに肉薄している。GeekBench4のほうが負荷のかかる時間が短いため、発熱等の問題で本格的に性能がダレてくる前に評価が終わるためスコア差が小さいという見方ができるが、いずれにせよMacBook Airのターゲットとユーザーや使われ方を考えると、瞬発力的なパワーは十分あると言えるだろう。

 続いては内蔵GPUの性能を見るために「Unigine Valley」を利用する。グラフィック設定はプリセットの“Basic”を使用し、最後に表示されるフレームレートを採用した。

「Unigine Valley」は1,270×720ドット時のフレームレートを計測した
「Unigine Valley」のフレームレート

 MacBook Pro 13インチモデルのGPUはGT3eの「Iris Graphics 655」なのに対し、MacBook AirのGPUはGT2のHD Graphics 617なのだから、性能も相応に低い。ゲーム用というよりは、デスクトップの表示や動画鑑賞に過不足のない性能にとどめた、というべきものだ。

 ストレージ性能は「AmorphousDiskMark」を使用した。テストデータはWindowsの「CrystalDiskMark」にならい、1GiB×5とした。

「AmorphousDiskMark」によるSSDの読み書き性能。左がMacBook Air 2019モデル、右が比較用のMacBook Pro 13インチモデルのもの

 今回どちらのSSDも容量256GBで同じだったが、MacBook AirのSSDはMacBook Proよりだいぶ遅い。本体の価格設定に見合った性能のものを選択したとも言えるが、過去にも部材の供給元の違いでSSDの性能が違う機種があった例もあるので、MacBook Airすべてがこの性能である、とは断言できない。

 とはいえSATA接続のSSDに比べ、シーケンシャルリードは3倍程度速いのだから、エントリークラスのMacBook Airとしては十分な性能であると言えるだろう。

 実アプリベースのテストとして「Lightroom Classic CC」の性能も見てみよう。DNG形式でインポートしたRAW画像100枚(6,000×4,000ドット)に、色温度やレンズ補正等を加え、それを最高画質のJPEGに書き出す時間を計測した。書き出しのダイヤログ上でシャープネスも付与している。

「Lightroom Classic CC」ではDNG→JPEGに書き出す時間を計測したが、書き出し時にシャープネス処理も加えている
「Lightroom Classic CC」におけるRAW現像時間

 さすがに2コア/4スレッドのCore i5-8210Yだと、マルチスレッド処理が加わるシャープネス処理だとかなり重く感じる。ただ一気に100枚もJPEGに書き出すシーンはそうそうないので、まあCPUなりの性能に収まった、というべきだろう。

 続いては4K動画を「Handbrake」を利用してフルHD動画にエンコードし直す時間を計測する。動画の再生時間は約5分、プリセットの「SuperHQ 1080p30 Surround」を使用した時(グラフ中ではH.264と表記、以下同様)と、この設定をベースにコーデックをx265(medium)にしたもの(H.265)、さらに各々のコーデックにつき、macOSのハードウェアエンコード支援“VideoToolbox”を利用する設定(H.264-VTおよびH.265-VT)の4パターンをチェックする。

 VideoToolboxを使用した場合、GPUに内蔵されたQSVではなく、Apple T2セキュリティチップに内蔵されたハードウェアエンコーダで処理が実行される。

「Handbrake」では4KのMP4動画からフルHDのM4V形式に書き出す時間を計測した
「Handbrake」による4K動画→フルHD動画のエンコード時間

 当初はH.265もH.264と同じ「Very Slow」で作業を進めようとしたらMacBook Airでの処理時間が筆者の許容量を越えて伸びてしまったため、画質を抑えたmedium設定でエンコードしている。通常H.265のほうが処理時間が長くなるのに、ここではH.264のほうが処理時間が長いのはこのためだ。

 とはいえ、MacBook AirとMacBook Proの性能の違いは把握できる。CINBENCH R20と同様に、エンコードのような重い作業はMacBook Airにはやや荷が重い。VideoToolboxを使えばH.264の場合おおよそ4分の1、H.265で最悪でも6割程度の時間で処理できるが、MacBook Pro 13インチモデルのCPUだけの処理に勝てるだけの性能は得られなかった。動画編集をするにしても、画質を重視する人にはオススメはできない。

BootCampを利用したWindows 10の性能は?

 macOSよりもWindows 10で使いたいという人のために、Boot Campを利用して最新のWindows 10(バージョン1903)を導入し、そこでの性能をいくつか計測してみた。Windows 10には64GBを割り振り、Boot Campが提供するドライバーで運用した状態の性能をチェックする。

 まずは総合ベンチマークソフト「PCMark10」のスコアを見てみよう。PCMark10には用途別のテストグループが用意されているが、全テストグループを試す“Extended Test”を実行した。テスト終了後提示される総合スコア(グラフ中ではOverall)のほかに、各テストグループのスコアも比較する。

「PCMark10」のスコア

 CPUのスペック差があるので、MacBook Airの総合スコアはMacBook Pro 13インチモデルより低いのは明らかだが、テストグループ別にスコアを追ってみると、EssentialsやProductivityテストグループはMacBook Proとの差が小さい。すなわちWebブラウジングやアプリの起動時間、オフィス系アプリ等で見られる典型的処理においては、MacBook Pro 13インチモデルの7割程度の性能が得られる。

 その一方でCPU負荷の高いテストグループ(DCC:Digital Contents Creation)やGPU依存度の高いGamingテストグループでは、MacBook Proに大きく差をつけられている。ライトユース用であると割り切った運用が必要だ。

 ついでに「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」の公式ベンチで内蔵GPUの性能もチェックしよう。解像度は1,920×1,080ドットとし、画質はプリセットの一番上と下、すなわち“最高品質”“標準品質(ノートPC用)”とした。

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」のスコア

 一番下の画質でもスコアは2,000ポイントを下回る。ベンチ中の平均fpsは13fps未満であるため、3Dグラフィックを利用したゲーム用途にはかなり厳しいということがわかる。

発熱はそれなりにひかえめ

 コア数や動作クロックを絞った“Y”プロセッサを搭載している関係で、MacBook AirのCPU性能はライトユースなら十分使えるということがわかったが、発熱やバッテリの持続時間はどうなのだろうか?

 ここでは「Handbrake」テスト(H.264)の最中に「Intel Power Gadget」でCPUのクロックおよびパッケージ温度を約15分間追跡した。また、15分時点における筐体の表面温度をサーモグラフィカメラ「FLIR ONE」で撮影した。エアコン26℃設定の室内で計測している。

「Intel Power Gadget」のログ機能を利用して、エンコード処理中のCPUクロックや温度を計測した
エンコード処理中のCPUクロックとパッケージ温度
エンコード処理開始から約15分後の温度分布

 Turbo Boost時最大3.6GHzのCore i5-8210Yだが、全コアを動かしているため観測できた最大クロックは3GHzだった。CPU温度は開始30秒程度で99℃まで上昇したのを契機に、CPUのクロックは2.2G〜2.3GHzあたりまで下がる。筐体が薄いだけでなく、ヒートシンクの容積も非常にかぎられているため、この温度推移は仕方のないところだろう。

 最後にバッテリの持続時間計測だが、画面の輝度は最高輝度設定から4目盛り下に設定し、Automatorを利用し主要なWebサイトを繰り返し巡回した状態でどの程度動作し続けられるかをチェックした。下のグラフはバッテリ約99%充電時から強制電源オフになるまでの電力(mA)を“ioreg -n AppleSmartBattery”コマンドで追跡したものである。

Webブラウジングを延々と行なったさいのバッテリ残電力の推移。約9時間32分後に強制電源オフになった

 公称のバッテリ動作時間は“最大12時間のワイヤレスインターネット閲覧”となっているが、1分ごとにリロードするような動作パターンでは約9時間半が限界だった。薄型モバイルノートとしてはもう少し持ってほしいところだが、前述のとおりUSB充電器やモバイルバッテリで急場をしのげるので、それらをうまく活用するとよいだろう。

まとめ : 値下げは朗報だが、もう少しCPUパワーが欲しいところ

 以上でMacBook Airのレビューは終了だ。いま市場にある1〜1.2kg程度の薄型ノートがCore i5-8265U等の物理4コアCPUを搭載していることを考えると、MacBook Airの弱点はCPUパワーにある。ただその一方でTrue Toneテクノロジ対応の高精細なRetinaディスプレイの存在を考えると、フルHD液晶搭載モデルの多い他社製薄型ノートに対してはアドバンテージと言える(しかも、縦横比は16:10だ)。

 CPU性能をあまり必要とせず、さらにmacOSのエコシステムにメリットを感じるなら、値下がりした2019年モデルは魅力的な製品と言える。搭載インターフェイスの潔さと運用上内蔵ストレージ容量が弱点なりやすいので、積極的にワイヤレス接続のデバイスを利用する、クラウドストレージを活用するという運用スタイルに切り替えられれば、使いこなしも楽になるだろう。