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ペンにも対応する2in1モバイルPC、富士通「LIFEBOOK MH75/D2」

富士通クライアントコンピューティング「LIFEBOOK MH75/D2」

 富士通クライアントコンピューティングは7月、個人向けノートPC「LIFEBOOK」シリーズの新モデルとなる「LIFEBOOK MH」シリーズを発売した。CPUにIntelの超低電圧モデルとなるYシリーズプロセッサを採用するとともに、モダンスタンバイに対応し、スマートフォンのような使い勝手を実現する点が大きな特徴だ。

 今回は、このLIFEBOOK MHシリーズの上位モデルとなる、ペン対応のコンバーチブル型2in1モバイルPC「LIFEBOOK MH75/D2」を取り上げる。すでに発売中で、実売価格は183,000円前後。

LIFEBOOK UHシリーズに近いシンプルなデザイン

 LIFEBOOK MH75/D2(以下、MH75/D2)は、LIFEBOOK新シリーズとして登場した、真新しい製品だ。LIFEBOOKシリーズのモバイルノートは、どちらかというとビジネス利用をメインターゲットとした製品が中心だったが、このMH75/D2は、学生が使ったり、家庭で家族それぞれが好きなスタイルで使うというように、ファミリーユーザーをメインターゲットとしている。

 そういったこともあってか、本体色はブライトメタリックブルーを採用している。ブラックやシルバーといった一般的なカラーのモバイルPCと異なり、深みのあるブルーは存在感があり、それでいてフレッシュな印象も与えるため、なかなか好印象だ。

 天板はフラットで、底面や本体後方などに一部カーブを取り入れている。天板中央には、ほかのLIFEBOOKシリーズ同様に、富士通ロゴでもあるインフィニティマークを配置しているが、ロゴマークがとくに目立つということはなく、全体的にはかなりシンプルな印象のデザインとなっている。

 本体サイズは311.4×215.5×19.5mm(幅×奥行き×高さ)。LIFEBOOK UHシリーズと比べると、フットプリントはわずかに大きいものの、13.3型液晶搭載モバイルノートPCとして考えると十分にコンパクトだ。それに対して、高さは4mmほど高い。これはMH75/D2がディスプレイが360度開閉するコンバーチブル型2in1仕様となっている点が影響しているが、特別厚いと感じるほどではなく、こちらも納得できる範囲内だ。

 堅牢性に関しては、圧力や落下などへの耐性についてとくに言及はないものの、天板を押さえてみたり、ディスプレイ部をひねったりしてみても、筐体が大きく歪むことはなく、申し分ない強度が確保できていると感じる。これなら、普段から持ち歩いて利用する場合でも、不安を感じることはないだろう。

 重量は、公称値で約1.24kg、実測では1,240gだった。近年は、モバイルノートPCの軽量化が進んだこともあって、手にするとやや重く感じるのも事実で、できればもう少し軽さを追求してもらいたかったように思う。

ディスプレイを開いて正面から見た様子。シンプルなデザインでLIFEBOOK UHシリーズに似た印象だ
天板はフラットで、中央のロゴも控えめ。カラーはブライトメタリックブルーで、深みのあるブルーは存在感がある
本体正面
左側面。高さは19.5mmとモバイルPCとしてはやや厚いが、2in1仕様と考えるとまずまずの薄さだ
背面
右側面
底面。底面は側面付近にカーブを取り入れている
重量は実測で1,240gと公称どおりだった

フルHD表示対応の13.3型IGZO液晶はタッチおよびペン対応

 MH75/D2のディスプレイは、フルHD(1,920×1,080ドット)表示に対応する13.3型液晶を採用している。パネルの種類は非公開だが、シャープのIGZO液晶であることが公表されている。視野角は十分に広く、視点を大きく移動しても色合いや明るさの変化は非常に少ない。

 また、ディスプレイ表面は非光沢処理が施されており、外光の映り込みはほとんど感じられない。その上で発色は十分に鮮やかで、このクラスのモバイルノートPCとしては十分満足できる表示品質を備えていると感じる。

 また、MH75/D2はコンバーチブル型2in1仕様ということで、ディスプレイは360度開閉し、クラムシェル、テント、スタンド、タブレットの4形状で利用できるようになっている。ヒンジ部は適度なトルクが備わっており、大きな力を加えることなくスムーズに開閉できるだけでなく、クラムシェル形状でもディスプレイがグラつくことはほとんどない。

 ディスプレイ表面には10点マルチタッチ対応のタッチパネルを搭載しており、軽快なタッチ操作が行なえる。加えて、標準で付属するスタイラスペンを利用したペン入力にも対応している。

 このスタイラスペンはWindows Inkに準拠しており、ペン先への追従性も申し分なく軽快なペン入力が可能。また、タッチパネルは液晶パネルにダイレクトボンディングで装着されているため、ペン先と表示部の視差が少なく細かな文字も問題なく書ける印象だ。

 なお、ペンは本体に収納はできないため、本体と同時に持ち歩く場合には失くさないように注意が必要だ。

フルHD表示対応の13.3型IGZO液晶を採用。左右のベゼル幅が狭められている
パネルの種類は非公開だが、IGZO液晶らしく発色は鮮やか。表面は非光沢処理で外光の映り込みも気にならない
ディスプレイが360度開閉する2in1仕様ということで、2軸のヒンジを採用
スタンドモード
テントモード
タブレットモード。全部で4種類の形状で利用できる
標準でWindows Ink対応のスタイラスペンが付属し、ペン入力に対応
ペン先への追従性も申し分なく、軽快なペン入力が可能だ

キーボードは扱いやすいが、タッチパッドのクリックボタンがかなり堅い

 キーボードは、アイソレーションタイプの日本語キーボードを採用している。もともとLIFEBOOKシリーズのキーボードは、優れた打鍵感を追求したタイピングのしやすさが大きな特徴となっているが、その点はMH75/D2のキーボードも同様だ。

 主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保するとともに、ストロークも約1.7mmと深く、軽快かつ確実なタイピングが可能。キーの堅さは標準的で、しっかりとしたクリック感もあり、打鍵感も申し分ない。もちろんキー配列も無理のある部分は皆無で、確実なタイピングが行なえるという印象だ。

 ポインティングデバイスは、クリックボタンが独立したタッチパッドを採用している。タッチパッドは十分な面積が確保され、複数の指を利用したジェスチャー操作にも対応しており、こちらも十分快適に利用できる。

 ただ、物理クリックボタンがかなり堅く、強くボタンを押し込まなければ操作できない点は気になった。一般的なクリックボタン同等の感覚では、まったくクリック操作が行なえないため、もう少し軽めのスイッチを採用してもらいたかったように思う。

アイソレーションタイプのキーボードは無理な配列がなく非常に扱いやすい
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保
ストロークは約1.7mmと十分に深い。しっかりとしたクリック感もあり打鍵感も良好だ
タッチパッドは良好な使い勝手も、クリックボタンが堅い点はかなり気になる

モダンスタンバイ対応でスマホライクに使える

 MH75/D2は、冒頭でも紹介しているように、学生やファミリー層をメインターゲットとしている。そのため、これまでのLIFEBOOKシリーズとはやや異なる仕様を採用する点も特徴の1つとなっている。それがモダンスタンバイに対応する点だ。

 現在の学生やファミリーは、スマートフォンやタブレットの利用に慣れていることに注目し、ディスプレイを開くと瞬時に復帰して利用でき、使い終わったらディスプレイを閉じてスタンバイに移行してもネットワーク接続が継続し、メールなどを常時受信できる仕様を実現。

 また、スタンバイ時にマイクも有効となっており、Windows 10のアシスタント「Cortana」や、LIFEBOOKシリーズにプリインストールされているアシスタントアプリ「いつもアシスト ふくまろ」などの音声アシスタントも利用できるようになっている。

 スマートフォンなどに慣れているユーザー層からすると、PCはいちいち電源を入れて起動するまで待たなければ使えなかったり、利用時にファンがうるさく動作するため、使いにくいという印象を持っていると聞くことも少なくない。

 その点、スマートスタンバイ対応のMH75/D2なら、電源オン/オフを意識せず、使いたいときに瞬時に復帰させて利用できる。もちろん、ユーザーもPCの使い方を変える必要があるが、スマートフォン同等とは言わないものの、かなり近い感覚で利用できるはずで、慣れればかなり使いやすいと感じるはずだ。

スタンバイ状態でも音声アシスタントを呼び出すと瞬時に復帰して結果を表示する

CPUは超低電圧Yシリーズプロセッサ採用でファンレス仕様

 MH75/D2は、CPUとして超低電圧版CPUであるCore i5-8200Yを採用している。一般的なモバイルPCに採用されるUプロセッサに比べて動作電圧が低く設定されており、低発熱となっている。そういった特徴を活かし、MH75/D2はファンレス仕様を実現している。

 もちろん高負荷時にはかなり発熱するため、超低電圧CPUといえども熱対策はおろそかにできない。そこでMH75/D2では、大型のヒートパイプを利用してCPUの熱を筐体に効率良く逃がすように設計することでファンレス仕様を実現している。

 実際に、ベンチマークテストのような継続的に高負荷がかかる作業を行なってみると、本体底面がかなり熱を帯びることがわかる。ファン搭載PCと比べると、高負荷時の底面の発熱が気になるのは事実だが、これはCPUの熱を本体に逃がせている証拠でもある。

 もちろん、高負荷がかかっていない状態では発熱も少なく、ほぼ無音で利用できるという利点は、図書館など静かな場所で利用したい学生にとって大きな魅力となるだろう。

 このほかの仕様も、なかなか充実している。メモリはLPDDR3-1866を標準で8GB搭載する。メモリを増設できない点は残念だが、MH75/D2がターゲットとする学生やファミリー層が利用する場面では、容量8GBで大きな不満はないだろう。内蔵ストレージは、容量256GBのPCIe SSDを採用。こちらも、速度、容量とも必要十分だ。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LAN(2×2)とBluetooth 4.2を搭載。なお、モダンスタンバイに対応してはいるが、ワイヤレスWANは搭載しない。

 ポート類は、左側面に電源コネクタ、HDMI、USB 3.1 Gen1準拠USB Type-C、USB 3.0、オーディオジャックを、右側面にUSB 2.0とSDカードスロットをそれぞれ配置。また、2in1仕様ということもあり電源ボタンは右側面に配置している。

 このほかには、ディスプレイ上部に約92万画素のWebカメラを搭載。ただ、最近のPCでほぼ標準的に搭載されるようになってきている生体認証機能を搭載しない点は残念だ。

 付属ACアダプタは、LIFEBOOKシリーズのモバイルモデルで利用されているものと同等の、小型軽量のものが付属する。付属電源ケーブル込みの重量は実測で211gと軽く、本体との同時携帯も苦にならないだろう。

左側面には電源コネクタ、HDMI、USB 3.1 Gen1準拠USB Type-C、USB 3.0、オーディオジャックを配置
右側面にはUSB 2.0とSDカードスロットを配置する
電源ボタンは右側面に配置
ディスプレイ上部に約92万画素のWebカメラを搭載
ACアダプタは小型軽量のものが付属する
ACアダプタの重量は付属電源ケーブル込みで実測211gと軽い

ファンレスでもスペック相当の性能を発揮

 では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、ULの「PCMark 10 v2.0.2115」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.9.6631」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」と「CINEBENCH R20.060」の5種類。比較用として、レノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Carbon(2019)」の結果も加えてある。

モデルLIFEBOOK MH75/D2ThinkPad X1 Carbon(2019)
CPUCore i5-8200Y(1.30/3.90GHz)Core i7-8565U(1.80/4.60GHz)
チップセット
ビデオチップIntel UHD Graphics 615Intel UHD Graphics 620
メモリLPDDR3-1866 SDRAM 8GBLPDDR3-2133 SDRAM 16GB
ストレージ256GB SSD(PCIe)512GB SSD(PCIe)
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Pro 64bit
モデルLIFEBOOK MH75/D2ThinkPad X1 Carbon(2019)
PCMark 10v2.0.2115
PCMark 10 Score2,6414,167
Essentials6,2349,073
App Start-up Score7,98912,426
Video Conferencing Score5,1997,430
Web Browsing Score5,8348,090
Productivity4,9696,743
Spreadsheets Score5,8097,659
Writing Score4,2425,938
Digital Content Creation1,6173,210
Photo Editing Score2,1383,817
Rendering and Visualization Score8812,127
Video Editting Score2,2464,076
PCMark 8v2.8.704
Home Accelarated 3.02,4943,513
Creative accelarated 3.02,5253,725
Work accelarated 2.04,2054,852
Storage4,9735,041
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)37.656.57
CPU255702
CPU (Single Core)89176
CINEBENCH R20.060
CPU5051,602
CPU (Single Core)263433
3DMark Professional Editionv2.9.6631
Cloud Gate4,6849,609
Graphics Score6,40510,431
Physics Score2,4147,532
Night Raid2,9725,583
Graphics Score3,4175,577
CPU Score1,7125,618
Sky Diver2,4364,919
Graphics Score2,3694,543
Physics Score3,1358,542
Combined score2,1734,846

 結果を見ると、さすがに搭載CPUの性能差が大きいこともあって、ThinkPad X1 Carbonの結果には遠く及ばないものとなっている。とはいえ、CPUの性能差を考えると、MH75/D2の結果にも十分納得できるものだ。

 また、ファンレス仕様で熱への懸念がある中でも、十分なスコアが得られており、放熱の不安も少ないと言って良いだろう。もちろん、トップクラスの快適さとは言わないが、ターゲットとする用途では十分快適に利用できるはずだ。

 続いてバッテリ駆動時間だ。MH75/D2は容量32Whのリチウムイオンバッテリを内蔵し、公称で約13.8時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測したところ、約5時間24分を記録した。

 公称に比べて半分以下と、かなり短い結果となった。やや負荷の高いテストである点や、バックライト輝度を高めに設定していることなどを考えても、やや短いと感じる。バックライト輝度を落として低負荷の作業を行なうなら、より長時間の駆動が可能なはずだが、テストの結果から考えると、外出時に長時間の利用を考慮するならACアダプタも持ち歩いた方が良さそうだ。

 ちなみに、バッテリテストは、初回計測時にはわずか2時間42分だった。あまりにも短すぎるため動作状況をチェックしてみたところ、アシスタントアプリ「いつもアシスト ふくまろ」が比較的高い負荷をかけ続けていることがわかった。先ほど紹介した5時間24分という記録は、いつもアシスト ふくまろの動作を終了させて計測したものだ。

 音声アシスタントは便利に利用できるのも確かだが、バッテリへのインパクトも大きく、外出時の利用をメインに考えたいなら、利用を避けるなどの配慮が必要そうだ。

軽快に利用できる2in1モバイルPCとして魅力的な存在

 MH75/D2は、13.3型IGZO液晶採用で、比較的小型軽量な筐体を実現して軽快に持ち歩け、タッチ操作に加えてペン入力にも対応する、ほぼフル仕様の2in1モバイルPCとなっている。また、ワイヤレスWANには非対応ながらモダンスタンバイに対応していたり、超低電圧CPU採用でファンレス仕様を実現する点も、魅力の1つと言える。

 もちろん、性能的には上位CPU搭載の製品に敵わないし、モダンスタンバイに対応するならワイヤレスWANも搭載してもらいたかったように思うが、メインターゲットが学生やファミリー層ということで、価格を考えてもこの仕様は納得できる。

 気になる部分は、実測でのバッテリ駆動時間が公称よりもかなり短い点で、ここは残念に感じる部分だが、近年はカフェなど外出時に電源を確保できる場所も多く、我慢できるだろう。この点を考慮したとしても、ペンにも対応する2in1仕様は十分に魅力があり、モダンスタンバイ対応で軽快に利用できる2in1モバイルPCとしてオススメできる製品だ。