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レイトレも妥協なく遊べるG-Tune製ゲーミングPC「NEXTGEAR-MICRO im620」

~RTX 2080 Ti搭載でBFVのレイトレも快適動作

NEXTGEAR-MICRO im620

 マウスコンピューターから発売されたG-TuneブランドのゲーミングPC「NEXTGEAR-MICRO im620」シリーズは、比較的コンパクトなタワー型ケースに、最新のハイエンドパーツを詰め込んだのが特徴。なかでも最上位の「NEXTGEAR-MICRO im620PA2-SP」では、CPUにCore i9-9900K、GPUにGeForce RTX 2080 Tiという妥協のない構成になっている。

 ゲーミングPCは一般用途のPCに比べて、CPUやGPUが高性能になる分だけ、それらが発する熱の処理も重要になる。そのためにはケース内の空気の通り道(エアフロー)をきちんと確保する必要があり、サイズに余裕のある大型のケースが好まれる傾向がある。またハイエンドなビデオカードは大型になりがちで、小さなケースには入りきらないこともある。それゆえ、高性能なゲーミングPCをコンパクトにするのは、意外と難しい。

 そのあたりの課題を「NEXTGEAR-MICRO im620」はどうクリアしたのか、また実際の性能や使用感はどうなのか。シリーズ内のハイエンドモデル「NEXTGEAR-MICRO im620PA2-SP」で検証していこう。

マイクロタワーでもハイエンド。別モデルやカスタマイズもあり

 「NEXTGEAR-MICRO im620PA2-SP」のスペックは下記のとおり。

【表1】NEXTGEAR-MICRO im620PA2-SPのスペック
CPUCore i9-9900K
チップセットIntel Z390
マザーボードmicroATX
GPUGeForce RTX 2080 Ti(11GB)
メモリ32GB DDR4-2400(8GB×4)
SSDADATA XPG SX8200 480GB(M.2 NVMe)
HDD2TB
光学ドライブなし
電源800W(80PLUS TITANIUM)
OSWindows 10 Home 64bit
税別価格339,800円

 「NEXTGEAR-MICRO」という名前のとおり、microATX規格のケースとマザーボードを採用している。最近はマザーボードが多機能化するとともに、拡張性も高速化したUSBなどで対応できることが増えていることから、ゲーミングPCであってもmicroATXで機能拡張に困ることはほぼなくなった。その点においてはマイクロタワーも合理的な選択と言える。

 CPUはCore i9-9900K、GPUはGeForce RTX 2080 Tiという文句なしのハイエンド構成に加えて、メインメモリは32GB、M.2 NVMeの480GB SSDに2TB HDD搭載と、あらゆるゲームに万全の体制を整えている。また電源が80PLUS Titanium品であり、ゲーミング性能に直接関わらない部分にも手を抜かないのが見て取れる。光学ドライブは非搭載だが、カスタマイズでスリムタイプの内蔵型光学ドライブを選択できる。

 端子部は、USB 3.1 Type-C×1、同Type-A×1、USB 3.0×6、Gigabit Ethernetなど。前面端子がユニークで、ヘッドフォン出力とマイク入力、USB 3.0×2に加えて、HDMI端子がある。ケースの背面にはHDMIケーブルが収納されており、このケーブルをビデオカードのHDMI端子に接続することで、前面のHDMI端子が使用できる。要はHDMIを延長して前面に持ってこられる機構で、VR用のヘッドマウントディスプレイを接続しやすいようにと配慮されたものだ。

VRヘッドマウントディスプレイの接続を考慮した前面HDMI端子。背面にあるHDMIケーブルを引っ張り出し(未使用時はケース内にほぼ収納されている)、ビデオカードのHDMI端子に接続することで前面の端子が機能する

 本体サイズは、188.8×396×400mm(幅×奥行き×高さ)で、突起部を含めると188.8×410.5×400mm(同)。microATXケースとしては標準的なサイズだと感じる。重量は約12.7kg。

 本機はシリーズ内のハイエンドモデルだが、最安モデルではCore i5-9600K、GeForce GTX 1060、8GBメモリ、1TB HDDなどの組み合わせで税別119,800円。最新世代のCPUとGPUを選びたいなら、Core i7-9700K、GeForce RTX 2070、16GBメモリ、1TB SSDなどの構成で税別199,800円というモデルもある。カスタマイズの幅も広く、好みのスペックを選べるのも魅力だ。

 このほか、本機は「Battlefield V」がバンドルされており(GeForce RTX 2000シリーズ搭載機にかぎる)、付属のシリアルコードを入力の上、ソフトをダウンロードすればプレイできるようになっている。

4Kで高画質設定のゲームも現実的な高性能

 それでは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていこう。利用したのは、「3DMark v2.6.6238」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R15」、「CrystalDiskMark 6.0.1」。

 「3DMark v2.6.6238」の「Time Spy」で、グラフィックステストのほとんどのシーンで60fpsを上回っており、見ていてまったく違和感のない映像になっていた。また「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」においても、4K・高品質設定でも「やや快適」という評価が出ており、実用的なレベルに達している。

 筆者が以前に試した、Core i7-8700KとGeForce GTX 1080 Tiという前世代のハイエンド構成と比較しても、およそ3割程度の性能向上が見て取れる。GPUの発熱でクロックが低下するようなシーンも見られず、冷却面での心配もなさそうだ。マイクロタワーであっても十分な性能を発揮できている。

【表2】ベンチマークスコア
3DMark v2.6.6238 - Time Spy」
Score13,114
Graphics score13,631
CPU test10,795
「3DMark v2.6.6238 - Fire Strike」
Score27,111
Graphics score34,226
Physics score24,423
Combined score11,325
「3DMark v2.6.6238 - Sky Diver」
Score60,297
Graphics score110,178
Physics score21,572
Combined score35,412
「3DMark v2.6.6238 - Night Raid」
Score61,662
Graphics score130,221
CPU score15,480
「3DMark v2.6.6238 - Cloud Gate」
Score61,671
Graphics score186,647
Physics score18,445
「3DMark v2.6.6238 - Ice Storm Extreme」
Score196,578
Graphics score425,954
Physics score68,144
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score11,735
Average frame rate255.82fps
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score13,635
Average frame rate297.23fps
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score4,471
Average frame rate97.46fps
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,160ドット5,664
1,920×1,080ドット12,663
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(最高品質)
3,840×2,160ドット10,771
1,920×1,080ドット20,500
「World of Tanks enCore」(超高)
1,920×1,080ドット42,283
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット139,484
「CINEBENCH R15」
OpenGL165.82fps
CPU2,013cb
CPU(Single Core)218cb

 ストレージは「CrystalDiskMark 6.0.1」で計測した。SSDは、スペックシートにあるとおりADATA製「XPG SX8200」の480GBを搭載。HDDはSeagate製HDD「ST2000DM008」が採用されていた。SSDはリードで3,000MB/sを超えるなど、非常に高い性能を発揮している。これなら大容量ゲームの読み込み待ちに困らされることも少なくなるだろう。

SSD(ADATA XPG SX8200 480GB)
HDD(ST2000DM008)

「Battlefield V」も“現在は”快適に動作

 先述のとおり、本機には「Battlefield V」がバンドルされているので、そちらも試してみることにする。「Battlefield V」については、GeForce RTX 2000シリーズにおける目玉要素であるレイトレーシングにいち早く対応し、従来とは一線を画した美しいグラフィックスでゲームを楽しめることが売りになっている。

 ところが弊誌でもお伝えしたとおり|(GeForce RTX 20でBattlefield Vのレイトレグラフィックを試す参照)、本作の発売当初はレイトレーシングをオンにすると、性能が大きく低下するという現象が見られた。この問題はNVIDIAも把握しており、「DXRレイトレース・リフレクションのクオリティーをLow(低)にする」、「4つのグラフィックス効果を無効にする」という2点を推奨していた。本機に搭載されているGeForce RTX 2080 Tiにおいてもだ。

 この点についてNVIDIAは、「性能に関する既知の問題」としていた。“問題”というからには解決するつもりであり、そもそもGeForce RTX 2000シリーズの目玉機能に悪評がついたままではNVIDIAの沽券に関わるわけで、販売元のEAや開発元のDICEとともに必死になって対応してくるだろうと思われていた。

 すると12月5日、本作のアップデート「Battlefield V: タイド オブ ウォー チャプター1: 序曲」に合わせて、レイトレーシング使用時の性能を大幅に改善したと発表された(と同時に大容量のアップデートが公開された)。その前日には、合わせてGeForce Game Ready Driverも更新されている(バージョン417.01 → 417.22)。

 筆者はその前後でフレームレートをチェックしてみた。設定はNVIDIAの推奨をあえて無視して(笑)、DXRレイトレース・リフレクションのクオリティーを最高、4つのグラフィックス効果も有効のままで、本作における最高画質設定を、フルHDで試している。プレイしたのは、シングルプレイの「ティライユール」のステージ1。序盤に木々が生い茂った場所での銃撃戦があり、フレームレートが低下しやすい。

 ゲーム・ドライバのアップデート前の時点では、フレームレートは45fps前後で、場所によっては30fps台に落ちることもあった。カクカクしてプレイに困るほどではないにしても、フレームレートの低下は感じられた。

 次に、先に公開されたドライバのみアップデートした状態では、フレームレートは35fps前後とさらに低下してしまった。ここまで来るとプレイに違和感が出てくる。ドライバの更新で快適になると思っていたので、4日の時点では先行き不安であった。この時点では、やむなくドライバをロールバック。

 翌5日、ゲームのアップデートを適用しつつ、ドライバはロールバックしたまま(最新ではない)でのプレイ。フレームレートは75fps前後となり、従来のおよそ倍にまで改善した。

 続いてドライバも再度アップデートして最新に。フレームレートは80fpsを超えるシーンが増えており、わずかながら性能が向上したと言ってもいい。

 どうやらゲーム側とドライバのアップデートを両方適用して、初めて最高の性能が発揮されるようだ。ゲーム側のアップデートはプレイするさいに自動で適用されるので忘れることはないが、ドライバも合わせてアップデートしておきたい。

 今回のアップデートにおいては、レイトレーシングの性能改善に加えて、葉や植物に対するレイトレーシング性能の改善という個別の項目もあり、今回調べたシーンは劇的な変化が見えやすい場所だったと思われる。逆に言えば、従来は劇的に性能が低下するシーンだったわけだが、少なくともフルHDの60fpsでプレイする上では最高画質設定で困ることはなくなった。

 ちなみにDXRレイトレース・リフレクションをオフにし、そのほかの設定は最高画質のままプレイすると、同様のシーンで140fps前後のフレームレートが出ている(アップデート前後でほぼ変化なし)。シーンにより負荷は大きく変化するし、より高解像度・高リフレッシュレートのディスプレイを使用する場合は適宜調整が必要になるが、「レイトレーシング使用時のフレームレートが場面によっては2倍程度まで改善する」という事実は、NVIDIAの名誉のためにも声を大にして言っておきたい。

「Battlefield V」のゲームとGeForceのドライバがアップデートされる前のシーン。レイトレーシングありの最高画質でプレイすると、フレームレートがおおむね40fps台になっていた
「Battlefield V」、GeForceのドライバの両方がアップデートされた後、同一設定で同じシーンをプレイしたところ、フレームレートは80fpsを超えるようになった。劇的に改善している

設計にもこだわりが見える、ハイエンド向けマイクロタワーPC

見た目の小ささに反して、かなりずっしりと重い

 次に使用感を見ていきたい。本機について最初に驚かされたのは、本機が筆者のもとに届けられたときのこと。宅配便のスタッフが大事に運んできてくれたのだが、手渡しで受け取ろうとすると「私がそのまま置きます」と言う。その場は任せた後、別の部屋へ運び入れようとすると、思いのほか重量がある。さらに箱を開けて本体を出そうとすると、これまた予想外に重い。

 先に本体重量を約12.6kgと何気なく書いたが、マイクロタワーで比較的小型のPCとしてはかなり重い。理由はいくつかあり、CPUの冷却に240mmの長型ラジエータを使っていることと、GeForce RTX 2080 Tiがかなり大型であることが影響しているのは間違いない。

 これに加えて、ケースにも目を引く点がある。サイドパネルを外してみると、厚みが結構あり、重さもある。本機は複数の大型のファンに加え、水冷用のラジエータも内蔵するが、それらの振動がケースに伝わってノイズが発生する可能性がある。サイドパネルを含むケースの外板を厚く重量のあるものにしておけば、振動によるノイズは発生しにくくなる。事実、試用したPCではそういったノイズは確認されていない。

 重量が増せば設置のさいの負担は大きくなるが、長い目で見れば一時の可搬性より常時の利便性を取るべきで、正しいアプローチだと思う。

左サイドパネルは1枚板。パネルを外すためのネジが側面についているのも特徴的
右サイドパネルはハニカム形状のスリットがある

 騒音については、電源投入時からノイズがはっきり聞こえる。水冷用のラジエータを内蔵しているので、空冷よりもアイドル時の音が大きく聞こえるのはやむを得ない。ただ音質は低めでファンの風切り音はなく、動作していることには気づいても、利用中に気になりにくい音という印象だ。

背面もシンプルながら、なるべく大きなファンを取り付けようという意図を感じる
天板は側面の斜めの切れ込み以外はフラットな形状
底面はハニカム形状の穴が開けられていて、吸気口となる。フィルタは取り外して洗える
左サイドパネルを開けると、内部は思いのほかすっきりとしている

 ベンチマークテストなどで高負荷にしてみると、ファンの騒音がじょじょに大きくなる。CPUが水冷のため、ファンの回転数が劇的に変化せず、注意して聞いていると大きくなってくるのがわかるという程度だ。また長時間の負荷をかけても、最終的にさほど大きな騒音にならずに済んでおり、長型ラジエータのメリットが感じられる。

 高負荷時にはビデオカードのファンの音も混じるのだが、それでも全体としての音質は低めで、耳障りな風切り音はほとんどない。動画や音楽を楽しみたいときには少々気になるかもしれないが(もっとも、そんなときには高負荷にならない)、ゲームプレイであればゲームの音が出てしまえばあまり気にならないし、ヘッドフォンをしてしまえばほぼ聞こえない。コンパクトケースにハイエンドパーツの組み合わせとして考えれば、騒音面はかなり優秀だと言える。

前方にはCPU水冷用のラジエータ。大きいのだがケースに馴染んでいて威圧感がない
GeForce RTX 2080 Ti。ラジエータとギリギリ干渉しないよう収まっている

 外観は黒で統一されており、右側面にはハニカム形状のスリットがある。派手なLEDなどの光り物はなく、角は取りつつも無駄のないフラットな形状で、色調もマットなので、かなり地味な印象だ。一昔前の「G-Tune」は、西洋甲冑を思わせる派手な装飾があっただけに、ずいぶんと落ち着いたものだと思う。

 ケース内部のレイアウトもおもしろい。電源ユニットの設置場所は、最近あまり見かけなくなったケース上側。暖かい空気を上部から排気すべく、電源ユニットの冷却ファンも使おうという発想はわかるが、電源ユニットの冷却性はその分低下する。それゆえに高効率、すなわち低発熱の電源を選んでいる意味が出てくる。

電源ユニットは後方上部。電源ファンをエアフローに含めた考え方になっている

 CPU用の水冷ユニットのラジエータは、ケース内の前側に取りつけられている。大型ファンを2つ取りつけたラジエータはかなり大型で、ケースに縦向きでギリギリのサイズで収まっている。さらにGeForce RTX 2080 Tiの巨大なビデオカードがケース下部にあり、ラジエータと1cmの隙間もないくらいに接近して収められている。よくこれだけの大きさのものをmicroATXケースに入れ込んだなと感心する。

 しかし場所を取るものはそのくらい。HDDを収める3.5インチベイは本体上部にあり、ラジエータやビデオカードの取り付けに干渉しない場所になっている。その上、CPUが水冷になったこともあり、CPUがあるケース中央付近は大きくスペースが空いている。裏面配線も徹底されており、表向きは驚くほどすっきりしている。

3.5インチベイは前方上部。HDDはここに収められている

 エアフローはおもに底面と左側面から吸気、背面と電源ファンから排気という流れ。底面からはすぐにビデオカードへ空気が送られる流れで、下から上へという方向性も理にかなっている。なお底面にはマグネット式のダストフィルタが装着されており、水洗いも可能という。

右サイドパネルを開いたところ。ラジエータの裏側が配線スペースになっている

 かなり多くの部分に言及してきたが、どこを見てもこだわりを感じられるほど、よく作りこまれている。水冷のラジエータとビデオカードの配置や、3.5インチベイの位置を見るに、「コンパクトなケースのなかにどう配置すれば収まるのか」を考えるなかでも「最適なエアフローはあきらめない」という意地が見える。

 「G-Tune」はいつも内部を見るたび機能美を感じるのだが、今回もその期待を裏切らない。自作PC歴が20年を超える筆者から見ると、microATXでハイエンドマシンを自作しようとしても、ここまではできないだろうとあきらめがつく。その完成度にこそ、本機の価値があると言いたい。

前面はロゴがある以外に飾り気はなく、形状もかなりシンプル