やじうまミニレビュー
GeForce RTX 20でBattlefield Vのレイトレグラフィックを試す
2018年11月23日 06:00
レイトレーシング対応のBattlefield V発売
先だって、エレクトロニック・アーツの人気フランチャイズ最新作である「Battlefield V」が発売された。予約者は11月15日からプレイ可能となっていたが、20日に一般発売となり、現在ではより多くのプレイヤーがプレイしているであろう。
ゲームの細かい解説は僚誌GAME Watchの記事(「バトルフィールド V」レビュー)に譲るとして、本稿では、Battlefield Vの最大の特徴の1つであるレイトレーシングに焦点をあてた紹介を行ないたい。
レイトレーシングは、Ray(光線)+Trace(追跡)という言葉が意味するとおり、現実の世界とにおける光の反射を忠実に計算、描画することで、実写レベルのレンダリングを行なう技術だ。現実の世界では、たとえ光源(太陽や蛍光灯など)が、その場に1つしかなかったとしても、物体や壁などに複雑に反射し、陰影を作り出す。この計算は、非常に高度で計算量も多いため、これまでゲームなどでリアルタイムなレイトレーシングというのは、ほぼ不可能だった。
そこに登場したのが、レイトレーシングの専用コアを内蔵した、NVIDIAのGeForce RTX 20シリーズであり、その技術にはじめて対応するのがBattlefield Vだ。GeForce RTX 20がどのようにレイトレーシングを実現しているかも、後藤氏の記事(シェーダーの導入に匹敵する大変革となるNVIDIA Turingのハイブリッドレンダリング)を参照していただくこととし、ここでは、じっさいにゲームの見栄えがどう変わり、性能にどう影響するのかを簡単に紹介する。
検証環境
検証に際しては、ZOTACのゲーミングタワーPC「MEK Ultra」を利用させていただいた。本製品は欧米ではすでに発売されているが、日本では未発売のものだ。市場での反響をみて、日本での販売を検討中という。
おもな仕様は、Core i7-8700K、メモリ32GB、NVMe SSD 500GB、HDD 2TB、GeForce RTX 2080 Ti、Windows 10を搭載。米国のAmazonでは、2,899.99ドルで販売されている。ビデオカードはもちろんZOTAC製で、CPUの水冷ヘッドもオリジナルデザイン。各種冷却装置に内蔵されたRGB LEDが色を変えつつ光る、イマドキのゲーマー向け仕様となっている。ディスプレイは144Hz対応のAOC製24型フルHDゲーミング液晶「G2460PF」を使った。
まず最初に、レイトレーシングを利用するには、2つの条件がある。それは、GeForce RTX 20シリーズおよびその最新ドライバを利用し、OSもWindows 10 October 2018 Updateに更新する必要がある。つまり、GeForce GTX 10シリーズ以前やAMD製GPUではレイトレは利用できない。厳密には、ゲーム自体も最新版にアップデートする必要があるが、それは問題ないだろう。
この条件が揃っていると、ゲームメニューのその他→オプション→ビデオ→詳細設定にて、「DX12有効」と「DXR有効」をオンにできる。DXR有効をオンにすると、その品質も「DXRレイトレース・リフレクションのクオリティ」にて低、中、高、最高から選択できる。
もともと美麗なグラフィックがさらに上質のものに。よりリアルな反射を実現
さて、気になるBattlefield Vのグラフィックスだが、期待されていたとおり、最先端の技術を盛り込み、ひじょうに豊かな表現を実現しているのは一目瞭然だ。ただ、レイトレーシング部分については、有効にすることでさらに1段上の表現力を獲得するが、それが非レイトレーシングと雲泥の差があるかと言われると、そうでもない。と言うのも、レイトレーシングオフでも、Battlefield Vではある程度の鏡面反射が実現されているためだ。
たとえば下記の画像を見比べてもらうと、地面の水たまりには、レイトレーシングオフでも炎が反射しているのが見て取れる。両者でなにが違うのかというと、反射部分の解像度と、映り込み(反射)の範囲だ。
レイトレーシングがオンの場合でも、反射部分の解像度は、やや低めになっており、ブロックノイズのようなものが見えるのだが、非レイトレーシングではさらに簡易的な表現になっている。写真では差がわかりにくい部分もあるが、オン/オフを切り替えてプレイしてみると違いが出るのはわかる。
また、レイトレーシングがオフの場合は、従来のキューブマップやスクリーンスペースリフレクション技術を使っているため、映り込むのは画面内に表示されているオブジェクトに限定される。これがレイトレーシングの場合は、忠実に視線の先から反射した先に存在するものまで計算し、レンダリングするので、たとえばプレイヤーキャラクターなど、画面上に描かれていないものについても、水たまりや鏡などに反射する。
加えて、車のフロントガラスなど一部のオブジェクトに関して、非レイトレーシングでは反射表現がなされないものについても、レイトレーシングでは反射するようになる。
なお、レイトレーシングの最高と低の差はほとんど認識できなかった。気持ち、低だとレイトレーシング部分の解像度が低いかなという程度だ。
ただし、性能も低減
しかし、ここで1つ考慮すべきことがある。それは、レイトレーシングをオンにすると極端にフレームレートが落ちるということだ。
今回利用したマシンで、レイトレーシングがオフの場合、フレームレートは130~170fpsで推移した。ここからレイトレーシングを低設定でオンにすると、60~90fps、つまりは半分にまでフレームレートが下がった。さらに、レイトレーシング設定を最高にすると、50~60fps程度になった。
Battlefield Vで、レイトレーシングをオンにすることで、得られる表現力の向上と、失うフレームレートを天秤にかけると、レイトレーシングはオフでプレイするだろうというのが個人的な率直な感想だ。
ただし、この感想は144Hzディスプレイを使っている場合に限られる。一般的な60Hzのディスプレイを使っているのであれば、内部で144fpsで描画されようが、60fpsで描画されようが、じっさいに表示されるフレームレートは60fpsになる。であれば、レイトレーシング低設定で、60fpsを確保しつつ、より豊かなグラフィック表現を楽しんだ方がいい。
あるいは、144Hz程度のディスプレイを使っている場合でも、勝ち負けにこだわるマルチプレイヤーではレイトレーシングはオフにしてフレームレートを稼ぎ、まったりとプレイするシングルプレイヤーモードでは、オンにするというのもありだろう。一般的には60fpsがディスプレイの表示限界であり、60fpsを維持できるなら十分に滑らかなプレイが可能となる。
ただ、今回はGeForce RTX 20シリーズで最上位の2080 Tiを利用してこの結果だ。2080や2070では、何割かは性能が落ち込む。この場合、レイトレーシングをオンにすると60fpsを確保できなくなるだろう。そういう場合は、レイトレーシングオフでプレイすべきだ。
ちなみに、NVIDIAによると、現在のレイトレーシングの性能の落ち込みは想定以上のものらしい。おそらく2080 Tiであれば、レイトレーシング最高設定でもある程度スムーズに動作することを見込んでいたが、現時点では低設定でないと60fpsを維持できない。この点については、現在、最適化を進めている最中だという。
なお、このフレームレートはフルHD解像度でのもの。試しに4Kディスプレイでも動かしてみたが、フレームレートは20fps前後しか出なかったので、その時点で検証の対象から外した。
今回、CPUの負荷も見てみたが、6コア/12スレッドのCore i7-8700Kで、60~70%前後を推移していた。どのコア/スレッドもバランス良く使われており、ゲーム内のCPU AIや物理演算などをうまくマルチスレッド化しているようだ。コア数の少ないCPUでは、CPUがボトルネックになって、フレームレートが頭打ちとなるだろう。とくにゲームを配信しながらプレイする人であれば、4コアではきついだろう。
レイトレーシングへの早い最適化を望む
以上のように、Battlefield Vはひじょうにシステムへの要求が高いゲームであることがわかる。最高の品質で快適にプレイするには、6コア以上のCPUは必須と思われ、GPUもレイトレーシングを味わうなら最新のGeForce RTX 20が必要だ。それでいて、現時点では、レイトレーシングがもたらす視覚効果は少なめと言える。
しかし、これはゲームメーカーもNVIDIAもまだレイトレーシング関連のノウハウが蓄積されていないことによるものだろう。レイトレーシング自体が意味のない、あるいは効果が薄いものというわけではないことは強く述べておきたい。現在開発中の今後のゲームでは、よりレイトレーシングを効果的に扱うものも出てくるだろうし、Battlefield Vについても、適宜最適化が図られていくだろう。いち早くそうなることを望みたい。