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2in1はかくあるべし、タブレット/クラムシェルを完璧に両立させた「VAIO A12」を使う

VAIO A12

 VAIO株式会社が11月13日に発表した「VAIO A12」は、単体で軽量なタブレットとして利用できるだけではなく、キーボードユニットに組み込むことで、一般的なノートPCとしても使えるようになる「2in1」タイプのPCだ。

 従来の2in1とは異なり、ノートPCスタイルでの安定性を高める「スタビライザーフラップ」という機構を組み込んだことが最大の特徴である。今回はこの新機構と、その使い勝手を中心に検証していこう。

安定性を高めるスタビライザーフラップ

 VAIO A12は、12.5型の液晶ディスプレイを搭載するタブレット部分と、19mmのキーピッチを採用するキーボードユニットを組み合わせた2in1タイプのPCだ。BTOに対応しており、CPUはCeleron 3965Y(1.5GHz)、メモリは4GB、ストレージは128GBのSSDといったローエンド構成で税別直販価格132,800円である。

 カスタマイズによってはキーボードユニットを外して購入することも可能だが(この場合は後述するクレードルユニットを購入する必要がある)、肝心の新機構はキーボードユニットに組み込まれていることを考えると、基本的にはキーボードユニットとまとめて購入するほうがよいだろう。

 タブレット部分は、選択した仕様によって607~622gと、12~13型クラスの液晶ディスプレイを搭載するタブレットのなかでは平均的な重さだ。キーボードユニットは、後述するワイヤレス機能を搭載するモデルで601g、非搭載モデルで429gなので、最軽量の組み合わせだと1,099gとなる。

 富士通の「LIFEBOOK UH-X/C3」のように、700gを切るような超軽量モデルではないにせよ、モバイルノートPCとしては及第点と言える。キーボードユニットをつけて閉じると、最厚分は21mm。底面のおうとつは少なく、ビジネス用のバッグにもスッキリと収納できる。

 VAIO A12ではこのキーボードユニットの底面に、スタビライザーフラップを組み込んでいる。タブレットとキーボードユニットを組み合わせて閉じた状態だと、まるっきり普通のノートPCにしか見えないのだが、タブレット部分を上に持ち上げていくと、底面のスタビライザーフラップが、ゆっくりと底面方向に膨らみ、キーボードに傾斜をつける。

これはタブレット部分をキーボードユニットに挿して閉じた状態
タブレット部分を開くと、このように底面のスタビライザーフラップが膨らむ
完全に開くと、スタビライザーフラップが底面を大きく持ち上げた状態になる

 このとき、スタビライザーフラップの背面部がタブレット部分よりもやや後ろで位置で接地しており、これがタブレット部分を支える支点となる。こうした構造により、多少タブレット部分を押しても後ろに倒れにくくなるのだ。

 タッチ機能を搭載する一般的な2in1タイプのPCでは、基本的にキーボードユニットよりもタブレット部分のほうが重いため、タッチ操作時に後ろに倒してしまうことがある。また膝の上などバランスの悪い場所では、倒して落としてしまったりすることもある。

 しかしVAIO A12では、液晶ディスプレイを多少後ろに押した程度では動かない。かなり意識して力を込めないと、揺らいだりすることもないのだ。また、タブレット部分を背面方向に倒そうとしても、もとの状態に戻ろうとする力が強いので安定している。今まで利用してきた2in1タイプのPCと比べても、格段に安定性が高いという印象だった。

液晶上部をタッチしても、簡単に後ろに倒れたりはしない

 このキーボードユニットには、タブレットを前後逆に取りつける機能もある。逆向きにタブレットを取り付ければ、キーボード部分をスタンドにした「ビューモード」や、キーボードユニットをつけたままタブレットのようにして使う「ビュークローズモード」などに変形できる。

タブレット部分をひっくり返して取りつけるビューモード

完全ファンレスで静かに動作、多彩なインターフェイスも魅力

 今回試用したモデルは、CPUはCore i7-8500Y(2コア、1.5GHz)、メモリは16GB、SSDは1TBのPCI Express接続モデルと、ほぼハイエンドに近い構成である。

 Windows 10の操作はキビキビとしており、画面表示もなめらかだ。ローエンド構成のCeleron 3965YもKaby Lake世代のCPUなので、ビジネスで利用する一般的なアプリなら使用感はさほど変わらないだろう。

 なお、比較対象として、12.3型2in1のSurface Pro LTE Advancedと、13型2in1のThinkPad X1 Tabletを参考値として加えた。それぞれ西川和久氏とジャイアン鈴木氏が計測されたデータを借用している。

【表】ベンチマーク結果
VAIO A12Surface Pro LTE AdvancedThinkPad X1 Tablet
CPUCore i7-8500Y(2コア/1.5GHz)Core i5-7300U(2コア/2.6GHz)Core i7-8550U(4コア/1.8GHz)
メモリ16GB8GB16GB
SSDNVMe 1TBSATA 256GBNVMe 256GB
OSWindows 10 HomeWindows 10 Pro
PCMark 10
PCMark 10 Score2,1103,0963,576
Essentials6,8096,5897,358
Productivity5,8085,3325,602
Digital Content Creation1,9542,2923,011
3DMark
Fire Strike8658111,132
Sky Diver3,1683,1944,689
CrystalDiskMark 6
Q32T1 シーケンシャルリード3,289.2 MB/s651.900 MB/s3,196.315 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2,227.3 MB/s236.251 MB/s1,247.883 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード624.3 MB/s143.965 MB/s740.162 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト546.7 MB/s53.564 MB/s336.162 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード324.7 MB/s142.997 MB/s259.953 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト255.7 MB/s52.629 MB/s389.744 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード46.6 MB/s13.175 MB/s40.159 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト137.1 MB/s36.955 MB/s107.023 MB/s

 そうした応答性のよさに加え、完全ファンレスで利用できる点にも注目したい。Core i7-8500Yは、IntelのCPUではコードネーム「Amber Lake-Y」と呼ばれる低消費電力モデルであり、発熱の目安となるTDPは5Wときわめて小さい。

 実際PCMark 10を動作させているときも、ファンレスながらもタブレットの背面右側がほんわりと暖かくなるくらいだった。ファンレスということは無音で利用できるわけで、静かな環境でじっくりと考えながら書類を作成したいユーザーにはピッタリだ。

 また、PCI Express接続のストレージをCrystalDiskMark 6.0.1で検証したところ、シーケンシャルリードは3.3GB/s弱、シーケンシャルリードは2.2GB/sだった。今回の試用機ではSamsung Electronicsの「PM981」の1TBモデルを搭載しており、スペックどおりの性能を示した。

 キーボードユニット部分には、通常サイズのHDMI、Gigabit Ethernet、SDカードスロット、ミニD-Sub15ピンのアナログ映像出力端子など、さまざまなインターフェイスを装備している。

 これらのインターフェイスは、最近の一般ユーザー向けノートPCだと削除される傾向が強い。また超薄型のモバイルノートPCではそもそも物理的に搭載できないということも多いのだ。

 しかし出先でプロジェクタにつないでプレゼンテーションしたり、古いデジタルカメラから写真データを取り出す機会が多いビジネスユーザーにとっては、いずれも外せない装備だ。

左側面には2基のUSB 2.0ポートと、SDカードスロットを搭載
右側面にはUSB 3.0ポート、HDMI、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernetを装備
タブレットの右側面には、電源ボタンや音量調整ボタン、SIMカードスロット、充電にも対応するUSB Type-Cコネクタを装備

 VAIO A12もタブレット本体は薄型だが、キーボードユニット側ではスタビライザーフラップを利用して底面を持ち上げるようになっており、こうしたスペースを利用してGigabit Ethernetのスペースを確保しているのもおもしろい。

 キーボードユニットが搭載するキーボードは、キーピッチ19mmのゆったりしたタイプだ。フルサイズキーボードに近いピッチを確保しており、実際に書類を作成しても、キーボードの違いによる打ち間違いはほぼ発生しなかった。

 パームレストなどキートップ以外の部分はアルミ製で、発熱するパーツはタブレット部分にあるため、つねにひんやりとして心地よい。スタビライザーフラップにより、キーボードを利用するときはつねに奥側が傾斜した状態なので、これも打ちやすさに影響しているのだろう。

 キーボードユニットには、タブレットとワイヤレスでも接続できるタイプが用意されており、このタイプならタブレット部分を分離した状態でもキーボードやタッチパッドによる操作が可能だ。要するにワイヤレスキーボードやマウスと同じ機能と考えてよい。

ファンクションキーや矢印キーは小さいが、メインキーのサイズは一般的なキーボードと変わらない
ひんやりとしたアルミ製のパームレスト

 入力デバイスとしては、デジタイザスタイラス(直販価格 : 6,500円、税別)も用意している。タブレットやスタイラスペンの老舗であるワコムのデバイスを採用しており、タブレットの画面に手書きでメモを入力できる。ペン先の移動はなめらかで、書いた線が表示される速度も非常に速く、紙にボールペンで書く時とほぼ同じ感覚でメモが残せるのは快適だ。

 付属するACアダプタからの充電は、原則的にはキーボードユニットにタブレット部分を組み込み、キーボードユニットが装備する充電コネクタから行なう。またタブレット本体が搭載するUSB Type-Cコネクタ経由で、モバイルバッテリから充電することも可能だ。家庭用のコンセントがない環境でも充電できるのは便利。

 バッテリ駆動時間は、タブレット部分単体では7.7、8.5時間、バッテリを内蔵するタイプのキーボードユニットと組み合わせると14.4~15時間。

 実際に後者の組み合わせを取材で持ち歩き、往復の移動で約4時間のスリープ、Webサイトのチェックや原稿書きなどで4時間程度の軽作業を試したところ、バッテリの残り容量は満充電状態から76%までしか減っていなかった。このレベルの使い方なら、まる1日持ち歩いてもおおむね問題ないだろう。

 ただしタブレット部分の天板や、キーボードユニットのパームレストには指紋が付きやすく、油染みなどがやや目立ちやすい印象だ。美しいデザインの筐体なので、なるべく注意して扱いたい。

2in1のあるべき姿を体現するモバイルノートPC

 タブレット部分は軽量なので、どこにでも持ち歩ける。またその軽量さに見合わないパワフルなスペックを活かす意味では、クレードルユニットを組み合わせて自宅とオフィスで同じPCを使うというのもおもしろいだろう。クレードルユニットにはキーボードユニットとほぼ同等のインターフェイスを搭載しており、周辺機器を一度に着脱できるのも便利だ。

タブレット部分を挿してインターフェイスを追加できるクレードルユニット(直販価格 : 19,000円、税別)

 軽量で情報閲覧ツールとして有効なタブレットと、情報入力ツールとしての利便性を高めたノートPCのよいところを両立する2in1のメリットはよくわかっている。しかしさまざまな場所で利用するので、安定感のないPCは利用しにくい。

 VAIO A12は、そんなユーザーにおすすめしたいPCだ。タブレット部分は単体できちんと使えるだけのスペックを実装し、キーボードをつけた状態ではまさに一般的なノートPCそのものの使い勝手だ。まさしく2in1タイプのあるべき姿であり、ビジネスでもホームユースでも、満足感は高いだろう。