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VAIO A12は着脱式の弱点を克服した新世代2in1

~新開発ヒンジで膝の上でも安定操作可能

VAIO A12

 VAIO株式会社は11月13日、都内にて経営方針説明会と合わせて新製品発表会を開催した。本日発表された着脱式12.5型2in1「VAIO A12」については、既報の記事(VAIO、新ヒンジ機構採用で約1kgの12.5型着脱式2in1)を参照されたい。

 ここではVAIO A12投入の狙いや、今後の同社の展開について紹介し、記事の後半ではVAIO A12の実機写真を掲載している。

構想3年、2in1の新機構「Stabilizer Flap」を開発

VAIO A12(法人向けはPro PA)

 VAIO A12の説明で登壇した同社執行役員の林薫氏は、構想に3年、開発に2年を費やした、これまでにない着脱式の2in1であると大きな自信を見せる。VAIOはおもにビジネス用途を意識してPC製品を展開しているが、今回のVAIO A12は2in1をビジネス用途で突き詰めた製品と言える。

 林氏は現行の着脱式2in1の問題点として、重量配分がタブレット側に寄ってしまう関係で、クラムシェルPCとして使う場合にタブレットを支えるキックスタンドを用意するなど、膝の上でのキーボード入力が困難であったり、キーボードの作りそのものが悪くタイピングにストレスがあることや、角度調整がしにくいこと、そして支点となるキーボード部分が重くなりすぎ、全体の重量が増してしまう問題などを指摘した。

現在の2in1のだめなところ
クラムシェルと着脱式2in1の違い

 同社商品企画担当の黒崎大輔氏によれば、その課題を解決するために多くの時間を割いたとのことだが、ゼロからの開発は困難を極め、一時はギブアップもよぎっていたという。そうした難産の末にうみだされたのが特許登録済みの独自ヒンジ「Stabilizer Flap」で、重心バランスの安定化が可能になったことにより、2in1ながらクラムシェルと同様の安定度や、軽量化(総重量約1.099kg、キーボードにセカンドバッテリを搭載させた場合は約1.209kg)が達成できるようになったという。

Stabilizer Flap
2in1でも安定して膝の上で使える
VAIO 執行役員の林薫氏
VAIO 商品企画担当の黒崎大輔氏

 林氏はVAIO A12をビジネスやプライベートもこなせる“オールラウンダー”と称したが、とくにビジネス用途での実装が光る。

 その1つが着脱機構で、基本的にロック機構を持つ2in1は表示面とキーボード面にロック解除機構を設けており、分離するさいには一度天板を開く必要がある。VAIO A12も内側にロック機構があるが、開発段階でその不便さに気づいたという。たとえば、電車などで2in1を取り出す必要に迫られたときに、タブレットだけで使うにせよ、その分離を行なわなければならない。そこでVAIO A12では、内側だけでなく外側にもロック解除機構を用意。しかも片手でロックスイッチをスライドさせるだけで、すぐにタブレット化できるため、カバンのなかに入れた状態でも着脱ができる点をアピールする。

ロック機構は内側と外側にある
着脱の接点となるコネクタ部は取り付け時に、コネクタが接点をこするセルフクーリング機構で、接点不良を防ぐ

 また、タブレット部にはPower Delivery対応のUSB Type-Cポートが用意されているが、モバイルデバイスでは一般的な5Vでの充電に対応。充電速度は遅いが、外出時にACアダプタを持ち歩いていない場合には、コンビニでも買えるスマートフォン用の充電器やモバイルバッテリを代用できる。

 タブレット部分のバッテリ駆動時間は最大8.5時間ほどで、キーボード接続時は最大8.1時間となるが、前述したようにキーボードにはオプションで予備バッテリを積むことができ、その場合は最大15時間で動作する。なお、キーボード部には従来のAC電源用の丸形コネクタが実装されている。

モバイルバッテリでも充電可能
バッテリ駆動時間

 キーボードにバッテリを搭載させている場合は、商談などにおいて相手に画面を見せながら、手元で操作という使い方ができ、即席のプレゼンテーションも行なえるとあって、ビジネスでの2in1としての使い勝手は確かに光るものがある。ワコムのデジタイザペンへの対応や、デスクトップPCのように使用するための専用クレードなども用意しており、ビジネスで想定されるあらゆる用途への対応が見て取れ、確かにオールラウンダーに恥じない実装と言える。

商談を想定した使い方。キーボードは切り離しても操作できる
ワコムペン対応
拡張クレードル
デスクトップ的に使用

 製品説明では、タブレット部の強化ガラス「Dragontrail Pro」の頑丈さを測るために、彫刻刀を持ち出して画面に何度も突き立てるというパフォーマンスも実践。もちろん傷はつかなかった。製品の修理/内部部品の交換をすぐに行なえるようにするために、タブレットのフタを外しやすくするなどの、顧客目線での配慮も多い。

強化ガラスDragontrail Pro
彫刻刀をでこすっても平気だった
柔軟に修理対応できる構造

 VAIO A12では、このほかにもWindows Hello対応の指紋認証または顔認証への対応、VAIO S13などと同じキーボードとキータッチ、最適な傾斜と謳うパームレスト、豊富な周辺機器インターフェイス、LTEモデムオプションといった特徴があるとした。

指紋認証および顔認証を選択できる
VAIO S13などと同じキーボードとタッチパッド
最適な傾斜を作るとうたうパームレスト
ミニD-Sub15ピンなど2in1ながら豊富にインターフェイスを用意
LTEモデム搭載モデルも用意されている

 黒崎氏はVAIOではセキュリティソリューションも高く評価されているとし、今回の製品でも遠隔データ消去機能の「TRUST DELETE Biz for VAIO PC」、安全なリモート通信を実現する「VAIO Secure SIM」、成りすまし防止の多要素認証機能などをアピールした。

PC事業を軸としながらも新事業も展開

VAIO A12を手に持つVAIO 代表取締役の吉田秀俊氏

 経営方針の説明では、VAIO 代表取締役の吉田秀俊氏が登壇した。

 現在のVAIOは、PC事業のほかに、EMS(製造受託)事業、VRといったソリューション事業の3つを展開しており、2017年度の売上高は214億8,800万円で前年比10.8%増、営業利益は13.9%増の6億4,800万円、経常利益は13.4%増の6億5,000万円、当期利益160.5%増の4億8,200万円と、2桁の増収増益となり、過去最高益を達成した。

 吉田氏はその要因として、PC事業での法人向けモバイルPCの販売が前年比で30%伸長したことや、キッティングなどの導入支援サービス、海外展開での対象国拡大などを挙げた。また、EMS事業では取引先企業が増え、出荷台数は昨年比で2.5倍に増加しているという。とくにロボティクス系を中心に伸びがめざましいとのこと。ソリューション事業についてはVR事業が始動しているが、現状ではまだ成長を模索している段階であるとした。

2017年度の決算結果
好調の要因
PC事業
EMS事業
EMS事業で手がけた商品
ソリューション事業

 吉田氏はVAIOの成長戦略として、PCブランドから“次世代ITブランド”への移行を標榜し、PC事業ではビジネス向けが中心だが、先日発表されたBenQとの業務提携といった周辺機器事業の展開(VAIOとBenQ、法人向け大型電子黒板「VAIO Liberta」を発表)やセキュリティ向けソリューションを展開。EMS事業はロボティクスを抜き出して事業として確立させ、ソリューション事業ではVRだけでなく、新たにIoTの分野を手がけていく。

 ただし、各事業においてVAIOのみで行なうわけではなく、BenQとの関係のように、各パートナーと協業して事業を展開するという。

農業向けドローンでナイルワークスと協業
IoT分野での進出。現状ではまだ大きな発表をできる段階ではないとのこと

 吉田氏は就任から1年と5カ月近くが経ち、この1年はこれからの成長戦略をどうするべきか、それを見極めるものだったと述べ、短期決戦は無事に乗り越えることができたとする。今後もPC事業が核になることは間違いないが、世のなかの変化に合わせる必要があり、強い事業構造をいかに早く用意するかが重要であるとの見解を示した。

これからの成長戦略
協業による事業展開を進める
業務提携するBenQ Asia Pacific Corporation Presidentのジェフリー・リアン氏も登場
BenQとはIFP(電子黒板)を協業して販売

 なお、PC事業については2019年早々にまた新しいPCを展開する予定であり、海外展開も広げ、ヨーロッパでの販売も行なっていくという。

VAIOの販売地域を拡大
2019年には新しいPCも

VAIO A12実機写真