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性能向上と軽さの追求で魅力が向上した「ThinkPad X280」

~12.5型液晶搭載の本格ビジネスモバイル

ThinkPad X280

 レノボ・ジャパンは、12.5型液晶搭載のビジネスモバイル新モデル「ThinkPad X280」を発売した。直販価格は150,077円から。

 既報のとおり(Lenovo、第8世代Core搭載で1.16kgの「ThinkPad X280」参照)、ThinkPad X270の後継モデルとして、携帯性や長時間駆動を維持しつつ、さらなる軽さの追求と性能向上を実現している。

オーソドックスなThinkPadスタイル

 ThinkPad X280(以下、X280)の外観は、一目でThinkPadシリーズとわかるものとなっている。

 前方や底面付近は斜めに切り取られている部分があるものの、左右側面や背面はほぼ垂直に切り落とされた、いわゆる“弁当箱”スタイルとなっている。天板にThinkPadロゴがあるものの、非常に落ち着いたものとなっており、ビジネスモバイルとして安心して利用できるデザインと言える。

 筐体色も伝統のブラックを採用。表面はマット調の仕上げとなっており、手触りも滑らかだ。近年ThinkPadシリーズでは、シルバーカラーを採用するモデルも一部で存在しているが、X280ではブラックのみとなる。

 本体サイズは、307.7×209.8×17.4mm(幅×奥行き×高さ)となる。従来モデルのX270と比べると、フットプリントは幅が2.2mm増えた反面、奥行きは1.3mm短くなった。また、高さは2.9mm薄くなっている。

 従来よりも薄くなったことで、鞄などへの収納性は高まったと言える。ただ、12.5型液晶搭載ノートPCとしては、フットプリントはもう少しがんばってもらいたいという印象がある。

 確かにモバイルPCとして標準的なサイズではあるが、現在ではディスプレイのベゼル幅を極限まで狭めて、筐体サイズをコンパクトにした製品が増えつつある。なお、タッチ対応ディスプレイを搭載した場合には、高さが17.8mmとわずかに増えるが、違いはほぼ感じられないと考えていいだろう。

 重量は、搭載ディスプレイの種類によって変わるが、今回試用したフルHDのタッチ非対応ディスプレイ搭載時には、約1.13kgとなる。実測では1,193.5gだった。また、もっとも重くなるフルHDタッチ液晶搭載時でも約1.27kgだ。

 従来モデルのX270の重量が約1.43~1.49kgだったため、最低でも200g以上の軽量化が実現されていることになる。これによって、携帯時の負担が減り、より軽快に持ち運べるようになった。

 とはいえ、14型ディスプレイを搭載するThinkPad X1 Carbon(2018モデル)とほぼ同等の重量だ。しかも、現在では13.3型ディスプレイ搭載で、1kgを切る軽さのモバイルPCも増えている。X280でももう少し軽さを追求してもらいたかった。

 ThinkPadシリーズでおなじみの優れた堅牢性は、X280にも変わらず受け継がれている。ThinkPadシリーズでは、圧力や落下、振動などを加えて確認する、“拷問テスト”と呼ばれる過酷な堅牢性テストが実施され、優れた堅牢性が確認されているが、それはX280も同じだ。

 米国国防総省が定める調達基準「MIL-STD-810G」に準拠する堅牢性試験も、十数項目をクリアしているという。ThinkPadシリーズがビジネスモバイルユーザーから広く支持されている理由の1つが、この優れた堅牢性という特徴であり、X280も安心して持ち運べると言って良いだろう。

正面から見た様子。ディスプレイのベゼル幅はそれほどせまくはないが、まずまずコンパクトなサイズを実現している
天板部分。カラーはマット調のブラック。パッと見ただけでThinkPadとわかるデザインだ
本体正面。前方や底面付近の一部は斜めに切り取られている
左側面。高さは17.4mmと従来モデルより2.9mm薄くなり、鞄などへの収納性が高まっている
背面
右側面
底面
実測の重量は1,139.5gだった

12.5型ディスプレイは解像度の違いやタッチ有無で複数仕様を用意

 X280のディスプレイは、従来モデル同様に12.5型の液晶パネルを採用している。

 表示解像度は1,366×768ドット(HD)または1,920×1,080ドット(フルHD)から選択でき、あわせてタッチ対応の有無も選択可能で、具体的には、HD表示対応でタッチ非対応、フルHD表示でタッチ非対応、フルHD表示対応でタッチ対応、の3種類から選択できる。

 今回の試用機ではタッチ非対応のフルHD液晶が搭載されていた。パネルの種類はHD表示対応がTN、フルHD表示対応がIPSとなる。

 パネル表面はいずれも非光沢処理となる。外光の映り込みがほとんど気にならず、とくに文字入力の多いビジネス用途での利用は快適だ。反面、発色の鮮やかさは光沢液晶にやや劣るという印象。それでも、このクラスとして標準的な表示品質は確保されている。

 なお、TNパネルとなるHD表示液晶では、視野角がややせまくなるものと思われるため、見やすさを重視するならIPSパネルのフルHD表示対応液晶の選択がおすすめだ。

12.5型ディスプレイを搭載。ベゼル幅は極端に狭められておらず、フットプリントも標準的な大きさとなっている
試用機ではフルHD表示対応のIPS液晶を搭載。表面が非光沢処理のため外光の映り込みは気にならない。発色は光沢液晶に比べるとやや鮮やかさに劣る印象もあるが、表示品質は申し分ないレベルだ
ほかのThinkPadシリーズ同様、ディスプレイ部は水平まで開く

扱いやすいキーボードを搭載

 ThinkPadシリーズといえば、扱いやすいキーボードが大きな魅力。もちろんX280でも、その点は申し分ない。

 下辺がわずかにカーブしたキーを採用する、ThinkPadシリーズ独特のアイソレーションタイプキーボードを搭載。コンパクトな筐体のため、主要キーのキーピッチは横が約18.5mmとフルピッチに届いていない。また、縦は約18mmとわずかながらせまく、正方形とはなっていない。

 それでも、実際に扱ってみると縦の狭さを感じることなく扱え、配列も標準的なため、快適にタイピングできる。

 ただ、Enterキー付近の一部キーのピッチがせまくなっている点は少々残念。筐体サイズによる問題と思われるが、ThinkPadシリーズであるからには、やはりすべて同じピッチのキーを採用してもらいたかった。

 キーストロークは約1.8mmと、モバイルノートとしては十分に深い。キータッチはほかのThinkPadシリーズ同様にやや硬めだが、しっかりキーを押し込め、クリック感も優れるため、打鍵感は非常に良好だ。このあたりは、さすがThinkPadのキーボードという印象だ。

 また、試用機のキーボードではキーボードバックライトが搭載されていた。これにより、暗い場所でのタイピングも快適に行なえる。キーボードバックライトの有無は購入時に選択可能だが、ビジネスPCにはさまざまな環境で快適に利用できることが求められるため、よほど理由がないかぎり、キーボードバックライト搭載を基本としたい。

 ポインティングデバイスは、スティックタイプの「TrackPoint」と、クリックボタン一体型タッチパッドの「ThinkPadクリックパッド」双方を搭載。こちらもThinkPadシリーズとしておなじみだが、用途に応じてTrackPointとタッチパッドを使い分けられるため、非常に利便性に優れる。

 とくにTrackPointは、ホームポジションから手を大きく動かすことなくカーソル操作が可能となるため、慣れれば生産性を大きく高めてくれる。また、独立した3つのクリックボタンも用意され、確実なクリック操作が可能だ。

 このキーボードとポインティングデバイスの搭載によって、扱いやすさは競合製品を大きく凌駕する。これぞThinkPadシリーズの大きな魅力と言える。

キーボードはThinkPadおなじみの6列アイソレーションキーボードを採用。標準的な配列でタッチタイプも余裕だ
キーピッチは横約18.5mm、縦約18mmだが、窮屈さは感じない
ストロークは約1.8mmと深く、やや硬めのタッチと相まって、しっかりとタイピングできる
オプションでキーボードバックライトの搭載も可能
右Enterキー付近の一部キーでキーピッチがややせまくなっている点は残念
ポインティングデバイスは、スティックタイプの「TrackPoint」と、クリックボタン一体型タッチパッドの「ThinkPadクリックパッド」を搭載。独立した3つのクリックボタンも用意され、非常に扱いやすい

Thunderbolt 3/USB Type-C採用で拡張性も優れる

 X280は、直販モデルでスペックを自由にカスタマイズして購入できるため、今回は試用機を基準としてスペックを紹介する。

 CPUは、第8世代Core i5またはi7プロセッサを搭載する。試用機ではCore i7-8550Uを搭載していたが、より上位のCore i7-8650Uも選択可能だ。

 メモリはDDR4-2400 SDRAMを最大16GBまで搭載可能で、試用機では8GB搭載。内蔵ストレージはM.2仕様のSSDを採用し、SATA対応またはPCIe対応で、最大1TBまで搭載できる。試用機ではPCIe対応の256GB SSDを搭載していた。

 無線機能は、2×2対応IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LANとBluetooth 4.1を搭載。また、LTE対応の無線WAN機能も搭載可能となっており、2018年4月下旬頃の販売開始を予定している。試用機には無線WANは搭載していなかった。

 側面のポート類は、左側面にUSB 3.1 USB Type-C×1、Thunderbolt 3×1、Gigabit Ethernet専用ポート「イーサネット拡張コネクタ2」×1、USB 3.0×1、HDMI、オーディオジャック、背面にmicroSDカードスロット(ワイヤレスWAN用SIMカードスロット共用)、右側面にUSB 3.0×1の各ポートを備える。

 USB Type-CおよびThunderbolt 3ポートからは映像出力も可能。また右側面には、オプションでスマートカードリーダも搭載可能となっている。左側面のEthernet拡張ポート2用のアダプタも製品に付属しており、そちらを装着することで有線LANに接続可能となる。

 個人的には、標準サイズのSDカードスロットが用意されない点や、microSDカードもスロット式となっている点は残念に感じるが、法人利用ではこの点も大きな問題とはならないだろう。

 このほか、左側面のUSB Type-C、Thunderbolt 3、Ethernet拡張ポート2を同時利用する、オプションの「ThinkPadウルトラドッキングステーション」も利用可能だ。そちらを利用せずとも、Thunderbolt 3ポートが用意されていることで、優れた拡張性が確保されている。

 生体認証機能は、右パームレストに指紋認証センサー、ディスプレイ上部に顔認証用の赤外線カメラを搭載可能となっている。いずれか一方のみだけでなく、両方とも搭載可能で、試用機では双方とも搭載されていた。また、いずれも搭載しないという選択も可能。

 なお、顔認証用の赤外線カメラのかわりにWebカメラの搭載も可能だが、そのWebカメラにはカメラを物理的に覆えるシャッター「ThinkShutter」が装備される。

 付属ACアダプタはUSB PD準拠で、USB Type-CまたはThunderbolt 3ポートに接続して利用する。出力は最大45Wで、付属のACアダプタ以外にも汎用のUSB PD対応ACアダプタが利用できる。

 実際に試してみたところ、出力27WのUSB PD対応ACアダプタでも給電可能だった。ただ、低出力のACアダプタ利用時には、高負荷時に電力不足でバッテリが消費される可能性があるため、基本的には付属ACアダプタ同様に、45W以上の出力を備えるACアダプタの利用がおすすめだ。

左側面には、USB 3.1 USB Type-C×1、Thunderbolt 3×1、Gigabit Ethernet専用ポート「Ethernet拡張コネクタ2」×1、USB 3.0×1、HDMI、オーディオジャックを用意
右側面には、USB 3.0×1を用意
右側面前方には、オプションでスマートカードリーダを搭載可能
背面にはmicroSDカード/無線WAN用SIMカードの共用スロットを用意
スロットはトレイ式。試用機ではmicroSDカードのみ搭載可能だが、ワイヤレスWAN対応の場合はmicroSDカードとNano SIMカードを同時に搭載する
製品に付属するイーサネットアダプタ
イーサネットアダプタは、左側面のイーサネット拡張コネクタ2に接続して利用する
右パームレストに指紋認証センサーを搭載できる
ディスプレイ上部には顔認証機能用赤外線カメラを搭載できる。Webカメラのみの搭載の選択も可能だ
付属ACアダプタは出力45WのUSB PD対応。左側面のUSB Type-CまたはThunderbolt 3ポートに接続して利用する
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測233gだった

実測で15時間に迫る長時間のバッテリ駆動を記録

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。

 利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1457」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.4.4264」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。

 また、比較用として、LGエレクトロニクス・ジャパンの「LG gram 13Z980-GA56J」と、パナソニックの「レッツノート SV7 CF-SV7MFRQR」の結果も加えてある。

製品ThinkPad X280LG gram 13Z980-GA56JレッツノートSV7 CF-SV7MFRQR
CPUCore i7-8550U(1.80/4.00GHz)Core i5-8250U(1.60/3.40GHz)Core i7-8550U(1.80/4.00GHz)
チップセット
ビデオチップIntel UHD Graphics 620Intel UHD Graphics 620Intel UHD Graphics 620
メモリDDR4-2400 SDRAM 8GBDDR4-2400 SDRAM 8GBLPDDR3-2133 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(PCIe)256GB SSD(SATA)512GB SSD(SATA)
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Home 64bitWindows 10 Pro 64bit
ベンチマーク結果
PCMark 10 v1.0.1457
PCMark 10 Score3,9443,2063,891
Essentials7,8636,6827,782
App Start-up Score9,8497,4359,136
Video Conferencing Score6,8976,5007,402
Web Browsing Score7,1576,1746,969
Productivity6,7545,5846,670
Spreadsheets Score8,0756,6567,801
Writing Score5,6504,6865,704
Digital Content Creation3,1352,3983,080
Photo Editing Score3,7182,9023,772
Rendering and Visualization Score2,0981,6531,970
Video Editting Score3,9522,8783,934
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,5263,1653,628
Creative accelarated 3.03,7253,2893,764
Work accelarated 2.04,8074,5584,925
Storage5,0674,8574,959
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)42.6844.8754.66
CPU638531634
CPU (Single Core)170143166
3DMark Professional Editionv2.4.4264v2.4.4180
Cloud Gate9,2427,3108,742
Graphics Score10,2168,1089,676
Physics Score6,9305,4386,535
Sky Diver4,8744,0394,771
Graphics Score4,5463,7714,449
Physics Score8,3806,7357,858
Combined score4,4943,7924,568
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)3,1853,0114,294
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)2,1541,6652,378

 結果を見ると、Core i5-8250U搭載のLG gramの結果をほぼすべての項目で凌駕しているものの、同じCPUを搭載するレッツノートSV7との比較では、上回る部分と下回る部分が見られる。

 ただ、その差はそれほど大きなものではなく、ほぼ同等レベルの性能が発揮されていると考えて良いだろう。

 X280は、高負荷時にCPUクーラーの排気口から内部の熱が勢いよく排出されており、CPUの性能が十分に引き出されていると言える。高負荷時の空冷ファンの動作音は、シャーという軽い音風切り音が耳に届く程度。図書館などの静かな場所では少々気になるかもしれないが、それほどうるさいものではなく、動作音が問題となることはほぼないだろう。

 つづいてバッテリ駆動時間だ。X280では公称で最大15.8時間(JEITA2.0)の駆動時間となっている。Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリー)より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、「BBench」でキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約14時間49分の駆動時間を確認した。

 実際に利用する場面では、これより駆動時間が短くなる可能性が高いが、それでもベンチマークでこれだけの駆動時間があれば、1日の外出でACアダプタを携帯する必要はないと言える。軽さと合わせて、長時間駆動が可能な点はビジネスモバイルとして非常に大きな魅力となるだろう。

利便性重視のビジネスモバイルを探している人におすすめ

 X280のように、12~13型のディスプレイを搭載するモバイルノートは、ビジネスモバイルのなかでもっとも人気が高く、競合製品が多く非常に競争の激しい分野だ。

 薄さや軽さをきわめたもの、性能をきわめたものなど、さまざまな製品が存在する中、X280は非常にオーソドックスな仕様で、どちらかというと、競合製品に比べて飛び抜けた部分が少ないように見える。実際、重量やサイズについては、競合製品の方が優れているものも多く存在している。

 とはいえ、長年培われたThinkPadの魅力が多く詰め込まれている点は、競合製品に対する大きな優位点となる。

 たとえば、非常に優れた堅牢性や長時間のバッテリ駆動は、毎日モバイルノートを持ち運んでいる人にとって大きな安心感につながる。また、利便性に優れるキーボードとポインティングデバイスの搭載や、優れた拡張性なども、競合製品に対する優位点と言える。

 もちろん、よりコンパクトで軽いとうれしいのは事実だが、携帯性は必要十分で、大きな不満はない。安心して持ち運べる、利便性を重視したビジネスモバイルを探している人におすすめしたい。