Hothotレビュー

上質な13型キックスタンド2in1「ThinkPad X1 Tablet」

~傾き検知対応のデジタイザペンも利用可能

レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Tablet」260,000円〜

 レノボ・ジャパン株式会社は、着脱式キーボードカバー、デジタイザペンを同梱した2in1 PC「ThinkPad X1 Tablet(以下X1 Tablet)」の2018年版を2月1日に発表、3月中旬に販売を開始した。

 本製品は無段階に調整可能なキックスタンドを装備した2in1 PC。キーボードカバーはキーピッチ19.05mmのフルサイズ仕様で、ThinkPadのアイデンティティーであるポインティングデバイス「TrackPoint」を搭載。また第8世代の4コア/8スレッドプロセッサ、3K(3,000×2,000ドット)の13型IPS液晶ディスプレイを搭載するなどスペックも充実している。

 今回同社より実機を借用したので、製品の詳細、使い勝手、性能などについてレビューしよう。

完全に新設計された着脱型2in1 PCのフラグシップ

 X1 Tabletの2018年モデルは中身だけでなく筐体も完全に新設計されたフルチェンジモデルだ。ディスプレイは12型フルHD+(2,160×1,440ドット)から、13型QHD+(3,000×2,000ドット)へと大型化・高精細化されているが、もっとも大きな違いはスタンドである。

 2016年、2017年モデルではヒンジが本体下部にあるスタンドが採用されていたが、2018年モデルでは「Surface Pro」シリーズのようなヒンジが本体中央にある「キックスタンド」を採用。実測4度から78度まで広い範囲で無段階に角度調整が可能になった。

 なお筐体を新設計したため、バッテリ駆動時間を約5時間延長する「ThinkPad X1 Tablet プロダクティビティーモジュール」やプロジェクタ機能などを追加する「ThinkPad X1 Tablet プレゼンターモジュール」は利用できない。

 本製品には直販モデルと販売代理店モデルが用意されており、直販モデルは、プロセッサ、メモリ、ストレージの構成を以下のなかから選べるようになっている。

  • プロセッサ
    Core i5-8250U(1.6~3.4GHz)、Core i5-8350U(1.7~3.6GHz)、Core i7-8550U(1.8~4GHz)、Core i7-8650U(1.9~4.2GHz)
  • メモリ
    8GB、16GB
  • ストレージ
    SATA SSD 256GB、NVMe SSD 256GB、NVMe SSD 512GB、NVMe SSD 1TB

 また、顔認証用のIRカメラ(赤外線カメラ)の有無、キーボード「ThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboard」の種類(日本語または英語)、デジタイザペン「ThinkPad Active Pen」の有無、NFCモジュールの有無、ACアダプタの種類(45Wまたは65W)、WWANの有無、変換アダプタの有無(USB Type-C/RJ45アダプタ、USB Type-C/HDMIアダプタ、USB Type-C/VGAアダプタ)、Officeアプリの有無、OSの種類(HomeまたはPro)などが選べる。

【表1】ThinkPad X1 Tabletの直販モデル一覧(※4月17日調べ)
ThinkPad X1 Tablet:パフォーマンスThinkPad X1 Tablet:プレミアムThinkPad X1 Tablet:ビジネス (Pro OS選択可能)
OSWindows 10 Home 64 bitWindows 10 Pro 64 bit
CPUCore i5-8250U(1.6~3.4GHz)Core i7-8550U(1.8~4GHz)Core i5-8250U(1.6~3.4GHz)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.1GHz)Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.1GHz)
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 8GBLPDDR3-2133 SDRAM 16GBLPDDR3-2133 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(SATA M.2)256GB SSD(PCIe NVMe M.2)256GB SSD(SATA M.2)
ディスプレイ13型QHD+ IPS液晶(3,000×2,000ドット、277ppi、輝度非公開、色域非公開、タッチ対応、光沢)
通信IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1、NFCIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1、NFC
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、microSDカードリーダ×1、ヘッドセットジャック×1、セキュリティキーホール×1
カメラ前面200万画素、背面800万画素前面200万画素、背面800万画素、IRカメラ前面200万画素、背面800万画素
指紋センサーあり
SIMカードスロットなし(カスタマイズ可能)
バッテリ容量42Wh
バッテリ駆動時間最大約10.6時間最大約11時間最大約10.6時間
バッテリ充電時間約2.5時間
本体サイズ/重量本体:304.1×226×8.9mm(幅×奥行き×高さ)、本体+キーボードカバー:304.1×226×15.1mm(同)/本体:890g、本体+キーボードカバー:1.27kg
キーボードカバーThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboard
ペンThinkPad Active Pen
Microsoft Officeなし(カスタマイズ可能)
カラーブラック
価格274,320円306,720円280,800円
キャンペーン価格219,456円245,376円
【表2】ThinkPad X1 Tabletの販売代理店モデル一覧(※4月17日調べ)
製品番号20KJ0012JP20KJ0013JP20KJ0014JP20KJ0015JP20KJ0016JP
OSWindows 10 Pro 64 bit
CPUCore i7-8550U(1.8~4GHz)Core i5-8350U(1.7~3.6GHz)Core i5-8250U(1.6~3.4GHz)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.1GHz)
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 16GBLPDDR3-2133 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(PCIe NVMe M.2)
ディスプレイ13型QHD+ IPS液晶(3,000×2,000ドット、277ppi、輝度非公開、色域非公開、タッチ対応、光沢)
通信IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1、WWANIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1、NFCIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1、WWAN、NFCIEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1、NFC
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、microSDカードリーダ×1、ヘッドセットジャック×1、セキュリティキーホール×1
カメラ前面200万画素、背面800万画素、IRカメラ前面200万画素、背面800万画素
指紋センサーあり
SIMカードスロットNano SIMなしNano SIMなし
バッテリ容量42Wh
バッテリ駆動時間最大約10.6時間最大約11時間
バッテリ充電時間約2.5時間
本体サイズ/重量本体:304.1×226×8.9mm(幅×奥行き×高さ)、本体+キーボードカバー:304.1×226×15.1mm(同)/本体:890g、本体+キーボードカバー:1.27kg
キーボードカバーThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboard
ペンThinkPad Active Pen
Microsoft Officeなし
カラーブラック
価格304,000円292,000円272,000円277,000円260,000円

 直販モデル購入にあたって注意いただきたいのは、記事執筆時点(2018年4月16日)で「Windows 10 Pro 64bit」がインストールされ、メモリを16GB搭載したモデルが存在しないこと。

 そして直販モデルは初期導入OS(Home版/Pro版)とメモリ容量を変更できない。もしWindows 10 Pro 64bitと16GBメモリが必須なら、Microsoft Storeで13,824円支払いアップグレードするしか方法はない。またIRカメラとNFCモジュールは排他選択となっており、同時搭載できない。

 悩ましいのはWWANの選択だ。WWANを搭載すると販売価格が14,688円上がり、またお届け予定日も2カ月ほど先になる(4月17日に注文した場合で6月29日お届け予定)。WWANは利便性を大きく左右する機能だが、お届け予定日が2カ月も先だと待ちきれないという方が多いことだろう。

大画面を搭載したぶんSurface Proよりひとまわり大きい筐体

 本体のサイズは304.1×226×8.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は890g。12.3型ディスプレイ(2,736×1,824ドット)を搭載するSurface Proがサイズは292×201×8.5mm(同)、重量は768~812gなので、ひとまわり大きく、そしてわずかながら重いことになる。

 ちなみにキーボードカバーを装着したときのサイズは304.1×226×15.1mm(同)、重量は1.27kg。クラムシェル型の軽量ノートPCと比べれば数値的には大きな差があるが、X1 Tabletもつねに携帯できる軽さだ。

 ディスプレイは13型QHD+ IPS液晶(3,000×2,000ドット、277ppi、輝度非公開、色域非公開、タッチ対応、光沢)を搭載。画面上部に200万画素前面カメラとIRカメラ(※対応モデルのみ)、画面右側に指紋認証センサー、背面に800万画素アウトカメラが搭載されている。

 インターフェイスは、USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、microSDカードリーダ×1、ヘッドセットジャック×1、セキュリティキーホール×1を装備。通信機能は、IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.1。WWAN、NFCは対応モデルのみが搭載する。WWANで使用するSIMカードはNano SIM。microSDカードとNano SIMカードはトレイに載せて装着する仕様だ。

 同梱品は、本体、キーボードカバー「ThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboard」、デジタイザペン「ThinkPad Active Pen」、ペンホルダー、Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタ、電源コード、マニュアル(セットアップ・ガイド、安全上の注意と保証についての手引き、サポートのしおり、Lenovo Active Pen(※表記ママ)のしおり、PCリサイクルマーク申し込みについての案内)。Surface Proにキーボードカバー、デジタイザペンが同梱していないことを考えると、標準アクセサリは充実している。

 なお、X1 Tabletの2018年モデルはデジタイザペンの傾き検知機能に対応しており、後日同機能を利用できる新型デジタイザペンが発売される予定だ。つまり現在同梱されているThinkPad Active Penは傾き検知機能をサポートしていない。

 ちなみに直販モデル購入時にThinkPad Active Penを省けば4,320円(クーポン適用時は3,456円)安くなる。直販モデルを購入するさいには、すぐに必要でなければ新型デジタイザペンの発売を待つのも1つの手だ。

本体前面。ディスプレイは13型QHD+ IPS液晶(3,000×2,000ドット、277ppi、輝度非公開、色域非公開、タッチ対応、光沢)。画面上部に200万画素前面カメラとIRカメラ(※対応モデルのみ)、画面右側に指紋認証センサーが内蔵されている
本体背面。上部やや右寄りに800万画素アウトカメラが配置されている。左上の「ThinkPad」の「i」の点はシステム状況インジケータで赤く点灯する
背面カメラの実写画像
前面カメラの実写画像
本体上面
本体底面。中央にはキーボードカバーと接続するための端子が用意されている。一見Surface Proと同じ端子のようだが、接点の大きさ、間隔、装着するためのおうとつ部の位置が異なるので、そもそもはめ合わせられない
本体左側面。左からNano SIMカードおよびmicroSDカードスロット、USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、セキュリティキーホール、ヘッドセットジャックが配置されている
本体右側面。左からボリュームボタン、冷却口、電源ボタンを配している
キーボードカバー「ThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboard」の表面。右下に「ThinkPad」のロゴが入っているが「i」の点は点灯しない
キーボードカバーの裏面。右下に「Lenovo」のロゴが入っている
X1 Tabletにキーボードカバーを装着すると厚みは15.1mmとなる(カタログ値)
キックスタンドはSurface Proと同様の構造。中央両脇にヒンジがあり、上側に跳ね上がる
認証情報などは本体背面内側に記載されている
Surface Proと異なりヒンジ部分が表面から見える
ヒンジ部分は金属製。耐久性は高そうだ
ディスプレイ上部アップ。赤外線カメラ、200万画素前面カメラ、カメラ状況インジケータ、周辺光センサーが並ぶ。NFCモジュール搭載モデルのタッチポイントもこの位置だ
奥にNano SIMカード、手前にmicroSDカードを装着し、トレイをスロットに収納する。SIMピンでトレイを出し入れするので、microSDカードスロットは基本的にストレージ増設用と捉えたほうがいい
同梱品一覧。左上から、本体、キーボードカバー「ThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboard」、Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタ、電源コード、デジタイザペン「ThinkPad Pen Pro」、ペンホルダー、マニュアル(セットアップ・ガイド、安全上の注意と保証についての手引き、サポートのしおり、Lenovo Active Penのしおり、PCリサイクルマーク申し込みについての案内)。変換アダプタ(USB Type-C/RJ45アダプタ、USB Type-C/HDMIアダプタ、USB Type-C/VGAアダプタ)は別売り
Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタ。電源コードは実測約90cm、ACアダプタのケーブル長は実測約180cm
Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタの仕様は、入力100-240V~1.3A、出力20V/2.25A、15V/3A、9V/2A、5V/2A
ThinkPad Active Pen。X1 Tabletの製品公式サイトには「ThinkPad Pen Pro」と記載されているが、今回の借用機にはThinkPad Active Penが同梱されていた。筆圧感知機能は2,048段階で、パームリジェクション機能を搭載。グリップ部にボタンが2つ用意されている。右下は本体に取りつけるためのペンホルダー
ThinkPad Active Penには単6形電池を使用する
X1 Tabletはデジタイザペンの傾き検知機能に対応しているが、ThinkPad Active Penでは利用できない。後日発売される新型デジタイザペンが必要だ
X1 Tablet本体とThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboardを合わせた重量は実測約1263.5g
X1 Tablet本体の実測重量は約891.5g
Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタと電源コードの実測重量は約232g
ThinkPad Active Penの実測重量は約18.5g(電池含む)
システム情報
主要なデバイス
初回起動時のディスク情報。空き容量は205.87GB
「powercfg /batteryreport」コマンドを実行したところ、DESIGN CAPACITYは42,000mWh、FULL CHARGE CAPACITYは39,620mWhと表示された
今回の借用機「20KJ0012JP」のストレージには、サムスン製「MZVLW256HEHP-000L7」が搭載されていた

2in1 PCとしては平均以上の色域、音量はかなり小さめ

 前述のとおりX1 Tabletは従来モデルより大画面&高解像度化されており、Surface Proよりも画面サイズ、解像度で上回る13型QHD+ IPS液晶(3,000×2,000ドット、277ppi、タッチ対応、光沢)を搭載している。

 輝度や色域は公表されていないが、X1 TabletのICCプロファイルをディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」で作成して、色度図を作る「ColorAC」で確認してみたところ、sRGBカバー率が99.3%、sRGB比が104.2%、Adobe RGBカバー率が75.5%、Adobe RGB比が77.2%と2in1 PCとしては平均以上の結果が出た。

 500cd/平方mの高輝度、Adobe RGBカバー率100%の色域がうたわれているDolby Vision HDR対応WQHDディスプレイを搭載する「ThinkPad X1 Carbon」にはおよばないが、キャリブレータで色調整を施せば写真現像などのクリエイティブワークにも十分活用できる。

 一方、サウンド面についてはThinkPad X1 Carbonと同様に、音量が小さいことが気になった。YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大66.7dBA(50cmの距離で測定)とかなり低い。

 音質自体は悪くはないが、筆者がレビューしたノートPCの多くが85dBAを超えていることを考えると正直物足りない。オーディオコンポ代わりに音楽を聴くPCではないのかもしれないが、音質を保ちつつ、もう少しボリュームを上げて設計してほしい。

13型QHD+ IPS液晶の解像度は3,000×2,000ドット(277ppi)。13型に十分な解像度を備えており、スケーリングは250%が推奨されている
発色は鮮やかだが、標準の設定ではやや暖色寄りの傾向が見られた。なお上の写真に写っているモアレは実際には見えない
X1 TabletのsRGBカバー率は99.3%、sRGB比は104.2%
Adobe RGBカバー率は75.5%、Adobe RGB比は77.2%
両側面の下部にスピーカーの開口部が設けられている
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大66.7dBA(50cmの距離で測定)とかなり低い

2in1 PCのなかで群を抜いた使い勝手の新開発キーボードカバー

 ThinkPadと言えばキーボードに期待せずにはいられないが、ThinkPad X1 Gen3 Thin Keyboardはいい意味でキーボードカバーらしからぬ打鍵感を実現している。

 キーピッチは19.05mmとフルサイズが確保されており、ストロークも十分な深さが感じられる。このキーボードカバーはX1 Tabletと一緒に新規開発されており、キートップにはUVコーティング、トラックポイントボタンには新コーティングが施され、広くなったクリックパッドの表面はなめらかなガラス材質を採用し、クリック時のノイズも低減されている。2in1 PCのキーボードカバーのなかでも群を抜いた使い勝手だ。

 唯一気になったのがスペースキーとエンターキーの打鍵音。ほかのキー、トラックポイントボタン、クリックパッドの打鍵音が抑えられているだけに、スペースキーとエンターキーの打鍵音が際立って大きく聞こえる。

 高速タイピングしているさいにスペースキーとエンターキーの打鍵音の違いは自分には気持ちいいが、喫茶店にいるときや、交通機関に乗っているさいには周囲に迷惑をかける恐れがある。耐久性を考慮してのやむを得ない仕様かもしれないが、個人的にはほかのキーと打鍵音を揃えてほしい。

 ThinkPad Active Penの書き味は硬めだ。滑りはいいが、摩擦感がほとんどないので、細かな文字を書きにくく感じた。筆圧感知機能は2,048段階でも個人的には十分だが、標準同梱されているデジタイザペンが傾き検知機能に対応していないのはやはり残念。X1 Tabletの発売に新型デジタイザペンを間に合わせてほしかった。

 ペンホルダーは便利なアイテムだが、つけっぱなしにしているのは邪魔だ。スペース的に難しいかもしれないが、やはり「ThinkPad X1 Yoga」のような本体内蔵式が理想だと思う。

 Windows Helloに対応した生体認証システムとして、顔認証と指紋認証の2つが搭載されているのは非常に便利。IRカメラを使った顔認証システムは、赤外線を含む直射日光下では正常に動作しないことが多いが、指紋認証システムはバックアップとして重宝する。IRカメラとNFCモジュールは排他選択となっているが、利便性を考えるとよほどの理由がないかぎりは前者を選ぶことを強くおすすめする。

キーピッチは19.05mmとフルサイズが確保されている
Surface Proのキーボードカバーと同様にマグネットが内蔵されており、タイピングに適した傾斜をつけられる
クリックパッドは従来モデルより大型化。Windows 10の高精度タッチパッドに対応しており、広々としたスペースで各種ジェスチャーを利用できる
キーボードバックライトを内蔵。AUTO、弱、強の3つから設定を選べる
2in1 PCということで、キーボードカバーを装着してノートPCスタイル、タブレットPCスタイルで利用できる。キーボードカバーをはずして、軽快にスタンドモード、タブレットPCスタイルでも活用できるのは着脱式2in1 PCならではだ
ThinkPadの伝統に倣い、ディスプレイを180度開いた状態でも利用可能
キックスタンドは4度から78度まで広い範囲で無段階に角度調整できる。キックスタンドを低くした、Surface Proで言うところの「Studioモード」に変更すれば、文字やイラストを書きやすい
ThinkPad Active Penの書き味は硬め。滑りはいいが、摩擦感がほとんどないので、細かな文字を書きにくく感じた
標準同梱されているデジタイザペンが傾き検知機能に対応していないのはやはり残念。X1 Tabletの発売に新型デジタイザペンを間に合わせてほしかったところだ
ペンホルダーはコンパクトに取りつけ可能だが、つけっぱなしにしておくとやはりジャマ。また装着したままでバッグから出し入れしているとなくしてしまいそうだ
IRカメラによる顔認証は、登録もロック解除も一瞬。ディスプレイを覗く感覚でロック解除できるので、普段は顔認証を利用することになる
直射日光下などIRカメラが正常に動作しづらい状況では指紋認証が重宝する

CPUスコアは順当な結果、連続動作時間は物足りない

 それでは最後に性能を見てみよう。

 今回は総合ベンチマーク「PCMark 10 v1.0.1493」、「PCMark 8 v2.8.704」、3Dベンチマーク「3DMark v2.4.4264」、CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15」、ゲーミングPCベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.0」、「Adobe Photoshop Lightroom Classic CC」RAW画像の現像時間を計測、「Adobe Premiere Pro CC」フルHD動画/4K動画の書き出し時間を計測、バッテリベンチマーク「BBench」を実施してみた。

 比較対象には2in1 PCのリファレンス機として、Surface Proのベンチマークスコアを平澤寿康氏の記事から流用した。下記が検証機の仕様と、ベンチマークの結果だ。

【表3】検証機の仕様
ThinkPad X1 TabletSurface Pro 2017年モデル
CPUCore i7-8550U(1.8~4GHz)Core i7-7660U(2.5~4GHz)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)Intel Iris Plus Graphics 640(300MHz~1.10GHz)
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 16GBLPDDR3-1866 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD(PCIe NVMe M.2)512GB SSD(PCIe NVMe M.2)
ディスプレイ13型、3,000×2,000ドット(277ppi)12.3型、2,736×1,824ドット(267dpi)
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Pro 64bit
【表4】ベンチマーク結果
ThinkPad X1 TabletSurface Pro 2017年モデル
PCMark 10 v1.0.1493
PCMark 10 Score3,5763,530
Essentials7,3586,715
App Start-up Score8,6509,160
Video Conferencing Score7,0125,298
Web Browsing Score6,5696,241
Productivity5,6026,210
Spreadsheets Score6,6947,591
Writing Score4,6895,081
Digital Content Creation3,0112,864
Photo Editing Score3,5323,541
Rendering and Visualization Score2,0221,741
Video Editing Score3,8263,811
3DMark v2.4.4264
Time Spy435502
Fire Strike Ultra278
Fire Strike Extreme533
Fire Strike1,132
Sky Diver4,6895,103
Cloud Gate8,5428,642
Ice Storm Extreme45,897
Ice Storm61,405
CINEBENCH R15
OpenGL52.66 fps65.46 fps
CPU612 cb417 cb
CPU(Single Core)166 cb157 cb
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)4,2424,466
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)2,3903,244
3,000×2,000ドット 標準品質(ノートPC)1,005
SSDをCrystalDiskMark 6.0.0で計測
Q32T1 シーケンシャルリード3,196.315 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1,247.883 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード740.162 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト336.162 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード259.953 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト389.744 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード40.159 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト107.023 MB/s
Adobe Photoshop Lightroom Classic CCで50枚のRAW画像を現像
4,912☓3,264ドット、自動階調1分36秒95
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し(H.264)
1,920×1,080ドット、30fps4分33秒36
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し(H.264)
3,840×2,160ドット、30fps9分5秒14
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%、電源モード:高パフォーマンス)
バッテリ残量5%まで6時間40分35秒

 X1 Tabletは第8世代(Kaby Lake R)の4コア/8スレッドプロセッサ「Core i7-8550U」、Surface Proは第7世代の2コア/4スレッドプロセッサ「Core i7-7660U」を搭載しているだけに、CINEBENCH R15のCPUではX1 TabletがSurface Proの約1.47倍のスコアを叩き出した。

 しかし3DMarkやCINEBENCH R15のOpenGL、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークのスコアを見てみるとSurface Proのほうが好成績を記録している。これはCPU内蔵グラフィックスの性能差が現われた結果と言える。

 X1 Tabletにとって残念な結果となったのが連続動作時間。平澤寿康氏がバックライトの輝度を50%に設定して計測を実施したさいにSurface Proは約10時間25分動作したとのことだが、X1 Tabletは6時間40分35秒にとどまっている。

 筆者が直近でレビューした「ThinkPad X1 Carbon」の11時間34分6秒、「New XPS 13」の9時間28分42秒、「HP Spectre x360」の13時間35分11秒、「HP EliteBook x360 1020」の9時間34分30秒と比べても、相当の差が開いている。最新モバイルPCには連続動作時間8時間以上を期待したいというのが正直なところだ。

 もう1つ気になったのが表面温度。CINEBENCH R15のCPUを連続で5回実行したさいの裏面の最大温度が53.1℃とかなり高かった。もちろん持てないほど熱いわけではない。しかし高負荷な処理を実行させたまま移動するさいには、本体上部を持つのは避けたほうがいい。

CINEBENCH R15のCPUを連続で5回実行したさいのディスプレイ面の最大温度は43.4℃
背面の最大温度は53.1℃。さわれないほどの熱さではないが、あえて最大温度部分を握る必要はない
ACアダプタの最大温度も51.7℃と高め

ThinkPad品質のキーボードカバーが最大の魅力

 2in1 PCと言えばSurface Proが代名詞的存在。しかしX1 Tabletはより大画面・高解像度のディスプレイを搭載し、筐体の作りもThinkPadブランドだけに質感が高い。そしてキーボード、トラックパッドの感触は、Surface Proより上質というのが正直な感想だ。

 唯一残念なのは連続動作時間の短さだが、実時間で6時間40分に達していれば実用上問題はない。それ以上長く運用したいのであれば、45W出力対応のUSB PDモバイルバッテリを組み合わせてもいい。

 着脱式2 in PCならではの多彩な利用スタイルと、ThinkPad品質の快適な入力インターフェイスを両取りしたいのなら、本製品のほかに選択肢はないと言える。