Hothotレビュー

HDR対応WQHD液晶のモバイルノート「ThinkPad X1 Carbon」

レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Carbon」242,000円〜

 レノボ・ジャパンは、14型クラムシェルノートPC「ThinkPad X1 Carbon」を2月9日より販売開始した。2018年モデル最大のトピックは、Dolby Vision HDR対応のWQHD(2,560×1,440ドット)ディスプレイを用意したこと。

 このディスプレイは500cd/平方mの高輝度、Adobe RGBカバー率100%の色域がうたわれており、クリエイティブ用途に活用できるディスプレイ品質を備えているとされる。今回同社よりDolby Vision HDR対応WQHDディスプレイを搭載した実機を借用したので、詳細レビューをお届けしよう。

第8世代Coreプロセッサ、LPDDR3-2133メモリ採用で高速化

 ThinkPad X1 Carbonには直販モデルと販売代理店モデルが存在する。直販モデルにはキャンペーン価格が適用されており、Core i5-8250U/8GBメモリ/128GB SSD/フルHDディスプレイという最小構成なら160,834円で購入可能だ(3月3日時点)。

【表1】ThinkPad X1 Carbonの直販モデル一覧 ※3月3日調べ
製品名ThinkPad X1 Carbon:<100台限定>パフォーマンスThinkPad X1 Carbon:パフォーマンス(Pro OS選択可能)ThinkPad X1 Carbon:<100台限定>プレミアムThinkPad X1 Carbon:<100台限定>プレミアム・WQHD HDR搭載<80台限定!>ThinkPad X1 Carbon:プレミアム・大容量SSD WQHD搭載
OSWindows 10 Home 64 bit
CPUCore i5-8250U(1.6~3.4GHz)Core i7-8550U(1.8~4GHz)Core i7-8650U(1.9~4.2GHz)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.10GHz)Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 8GBLPDDR3-2133 SDRAM 16GB
ストレージ128GB SSD(SATA M.2)256GB SSD(PCIe M.2)1TB SSD(PCIe NVMe M.2)
ディスプレイ14型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、輝度300cd/平方m、タッチ非対応、非光沢)14型HDR WQHD IPS液晶(2,560×1,440ドット、210ppi、輝度500cd/平方m、タッチ非対応、光沢)14型WQHD IPS液晶(2,560×1,440ドット、210ppi、輝度300cd/平方m、タッチ非対応、非光沢)
通信IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.1、Gigabit Ethernet(ネットワークアダプタにより)
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、USB 3.0 Type-A(Powered USB×1、電源オフUSBチャージ機能)×2、HDMI×1、イーサネット拡張コネクター2×1、microSDカードリーダ×1、ヘッドセットジャック×1、セキュリティキーホール×1
Webカメラ720p、ThinkShutter付き720p、IRカメラ720p、ThinkShutter付き
指紋センサーあり
SIMカードスロットなし
バッテリ容量57Wh
バッテリ駆動時間最大約20.9時間
バッテリ充電時間約2.6時間
本体サイズ/重量323.5×217.1×15.95mm(幅×奥行き×高さ)/約1.13kg
Microsoft Officeなし(カスタマイズ可能)
カラーブラック
価格235,520円261,360円288,360円334,800円421,200円
キャンペーン価格160,834円177,725円190,318円220,968円277,992円
【表2】ThinkPad X1 Carbonの販売代理店モデル一覧 ※3月3日調べ
カスタム・セレクトファースト・セレクトカスタム・セレクトファースト・セレクトカスタム・セレクトファースト・セレクト
製品番号20KH004JJP20KH004HJP20KH004LJP20KH004MJP20KH004PJP20KH004RJP20KH004TJP20KH004UJP
OSWindows 10 Pro 64 bit
CPUCore i7-8550U(1.8~4GHz)Core i5-8350U(1.7~3.6GHz)Core i5-8250U(1.6~3.4GHz)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)Intel UHD Graphics 620(300MHz~1.1GHz)
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 16GBLPDDR3-2133 SDRAM 8GBLPDDR3-2133 SDRAM 16GBLPDDR3-2133 SDRAM 8GB
ストレージ512GB SSD(PCIe NVMe M.2)256GB SSD(PCIe NVMe M.2)
ディスプレイ14型HDR WQHD IPS液晶(2,560×1,440ドット、210ppi、輝度500cd/平方m、タッチ非対応、光沢)14型フルHD IPS液晶(1,920×1.080ドット、157ppi、輝度300cd/平方m、タッチ非対応、非光沢)14型WQHD IPS液晶(2,560×1,440ドット、210ppi、輝度300cd/平方m、タッチ非対応、非光沢)14型フルHD IPS液晶(1,920×1.080ドット、157ppi、輝度300cd/平方m、タッチ対応、非光沢)14型フルHD IPS液晶(1,920×1.080ドット、157ppi、輝度300cd/平方m、タッチ非対応、非光沢)14型フルHD IPS液晶(1,920×1.080ドット、157ppi、輝度300cd/平方m、タッチ対応、非光沢)14型フルHD IPS液晶(1,920×1.080ドット、157ppi、輝度300cd/平方m、タッチ非対応、非光沢)
通信IEEE 802.11ac/a/b/g/n、Bluetooth 4.1、Gigabit Ethernet(ネットワークアダプタにより)
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、USB 3.0 Type-A(Powered USB×1、電源オフUSBチャージ機能)×2、HDMI×1、イーサネット拡張コネクター2×1、microSDカードリーダ×1、ヘッドセットジャック×1、セキュリティキーホール×1
Webカメラ720p、ThinkShutter付き720p、IRカメラ720p、ThinkShutter付き720p、IRカメラ720p、ThinkShutter付き720p、IRカメラ720p、ThinkShutter付き
指紋センサーあり
SIMカードスロットなし
バッテリ容量57Wh
バッテリ駆動時間約17.2時間後日発表約17.2時間
バッテリ充電時間約2.6時間
本体サイズ/重量323.5×217.1×15.95mm(幅×奥行き×高さ)/約1.13kg
Microsoft Officeなし
カラーブラック
価格311,000円257,000円294,000円279,000円277,000円264,000円255,000円242,000円

 直販モデルはOS、CPU、メモリ、ストレージ、ディスプレイ、内蔵カメラ、キーボード、MS Officeの有無などを選択できる。ただしCore i5モデルからCore i7を選べなかったり、ディスプレイをダウングレードできないなど細かな制限がある。

カスタマイズ可能なパーツの例

  • OS
    Windows 10 Home 64bit 日本語版/同英語版
  • CPU
    Core i5-8250U/Core i5-7300U/Core i5-8350U/Core i7-8550U/Core i7-8650U
  • メモリ
    8GB/16GB
  • ストレージ
    128GB(SATA)/256GB(SATA)/256GB(PCIe)/512GB(PCIe)/1TB(PCIe NVMe)
  • ディスプレイ
    14型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、非光沢、300cd/平方m、マルチタッチ非対応)
    14型フルHD IPS液晶(1,920×1,080ドット、非光沢、300cd/平方m、マルチタッチ対応)
    14型WQHD IPS液晶(2,560×1,440ドット、非光沢、300cd/平方m、マルチタッチ非対応)
    14型HDR WQHD IPS液晶(2,560×1,440ドット、光沢、500cd/平方m、マルチタッチ非対応)
  • 内蔵カメラ
    Webカメラ(720p、ThinkShutter付き)、Webカメラ(720p、IRカメラ付き)
  • キーボード
    日本語キーボード (バックライト、指紋センサー)
    日本語キーボード (バックライト、指紋センサー、NFC)
    英語キーボード (バックライト、指紋センサー)
    英語キーボード (バックライト、指紋センサー、NFC)
  • Microsoft Office
    なし/Microsoft Office Personal 2016/Microsoft Office Home and Business 2016

 2018年モデルには、第8世代の4コア8スレッドCPUであるCore i5-8250U、Core i5-8350U、Core i7-8550U、Core i7-8650Uが用意されているが、直販モデルを購入するさいには第7世代の2コア4スレッドCPUのCore i5-7300Uも選択可能だ。

 しかしCore i5-8250UからCore i5-7300Uに変更するとプラス5,400円かかるし、性能も低下する。特段の事情でCore i5-7300Uが必要でないかぎり、誤って選択しないように注意してほしい。なお、メモリにはLPDDR3-2133が採用されており、高速化に一役買っている。

新旧端子が混在するインターフェイス、Webカメラに物理シャッターを用意

 ThinkPad X1 Carbonの形状、サイズ、重量は2017年モデルから変更はない。本体サイズは約323.5×217.1×15.95mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.13kg。

 筐体は4層のカーボンファイバーで強化されたうえで、マグネシウム合金のロールケージが実装されており、MILスペックのテストをクリアするタフネス性能を備えているという。実際本製品のパームレスト部を握って上下に振っても、筐体がめげてしまうような不安感はない。

 カラーはブラックとシルバーの2色が予定されているが、執筆時点で発売されているのはブラックのみ。シルバーモデルは近日中に発売されるという。またLTE対応モデルの販売が開始されるのは4月上旬の予定だ。

 インターフェイスは、USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、USB 3.0 Type-A(Powered USB×1、電源オフUSBチャージ機能)×2、HDMI×1、イーサネット拡張コネクター2×1、microSDカードリーダ×1、ヘッドセットジャック×1、セキュリティキーホール×1と充実している。

 インターフェイスの数や種類は基本的には同じだが、後述の新型ドッキングステーションと接続するため、「イーサネット拡張コネクター」が「イーサネット拡張コネクター2」に変更され、USB 3.1 Type-C端子に隣接する位置に移動されている。従来のネットワークアダプタは端子形状が異なるため利用できない。

 さて、新型ThinkPad X1 Carbonには新たなドッキングステーションとして「ThinkPad Ultra Docking Station」(31,320円)が用意されている。ThinkPad Ultra Docking Stationは、2基のUSB 3.1 Type-C、イーサネット拡張コネクター2で接続される設計となっており、従来のドッキングステーションより優れた性能を実現しているとのこと。なぜか2018年モデルの製品公式サイトからリンクが張られていないので、ほしい方はこのページのリンクから直接購入してほしい。

製品公式サイトより転載。ThinkPad Ultra Docking Stationは、USB 3.1 Type-A(Gen2、10Gbps)×4(内Powered USB×1)、USB 3.1 Type-C(10Gbps、5V/3A)×2、Gigabit Ethernet×1、DisplayPort 1.4×2、HDMI 2.0×1、VGA×1、ヘッドセットジャック×1、セキュリティキーホール×1、セキュリティキーロック×1、電源端子×1(ThinkPad 135W ACアダプタが同梱)を装備している

 外観上の変更としては「ThinkShutter」が挙げられる。これはスライド式のシャッターで、Webカメラを使用しないさいに物理的にレンズを完全に遮断できる。セキュリティ上有用な機能だが、Windows Hello対応のIRカメラ(赤外線カメラ)を選択したさいには装備されないのが残念だ。

本体天面(下がヒンジ側)。右下のLenovoのロゴがなくなり新たに「X1」の文字が刻まれた。左上のThinkPadの「i」の点は電源オン時に赤く点灯する
本体底面(下がヒンジ側)。金属ヒンジがシルバーからブラックに変更され、全体の統一感が向上している。上部のゴム足の上にあるのはステレオスピーカー
本体前面
本体背面。中央右寄りにあるのは、Nano SIMカード、microSDカードスロット用のカバー
本体左側面。左からヘッドセットジャック×1、放熱口、USB 3.0 Type-A(Powered USB、電源オフUSBチャージ機能)×1、セキュリティキーホール×1
本体右側面。左から、USB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3対応、電源オフUSBチャージ機能、DC入力、DisplayPort)×2、イーサネット拡張コネクター2×1、USB 3.0 Type-A(電源オフUSBチャージ機能)×1、HDMI×1。2つ目のUSB 3.1 Type-Cが半分むき出しなのがちょっと不格好だ
ディスプレイ面。Webカメラ(720p)はディスプレイ上部に内蔵されている。その左右にあるのはマイク。360度方向の遠距離の音声もキャッチする
キーボード面。6列、89キーでJIS配列。中央にはTrackPoint、下にはThinkPadクリックパッドが配置されている
イーサネット拡張コネクター2にはゴム製のカバーが装着されている
Nano SIMカード、microSDカードスロット用のカバーを開けると、2つのスロットが見える。microSDカードは上側のスロットに挿し、Nano SIMカードはカバーのトレイに載せて装着する。今回の借用機はLTEモジュールを搭載していないので、Nano SIMカードを装着しても、もちろんなにも起こらなかった
上がThinkShutterを開けた状態、下が閉めた状態。スライドカバーはやや固めなので、爪で傷をつけそうで怖かった。Webカメラのすぐ右横にあるのは撮影時に白く光るステータスランプ
本体同梱品一覧。Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタ、電源コード、ネットワークアダプタ、X1 Carbon セットアップ・ガイド、サポートのしおり、PCリサイクルマークシールお申し込みについてのご案内、安全上の注意と保証についての手引きが同梱されている
Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタの仕様は、入力100-240V~1.8A、出力20V/3.25A、15V/3A、9V/2A、5V/2A。ACアダプタのケーブル長は実測約180cm、電源コードの長さは実測約90cm
ネットワークアダプタは、イーサネット拡張コネクター2の端子形状に合わせた新型だ。従来モデルに同梱されていたネットワークアダプタは使用できない
本体の実測重量は1,122g
Lenovo USB Type-C 45W ACアダプタと電源コードの合計重量は実測288g
システム情報
主要なデバイス
初回起動時のディスク情報。空き容量は448.95GB
「powercfg /batteryreport」コマンドを実行したところ、DESIGN CAPACITYは57,020mWh、FULL CHARGE CAPACITYは45,090mWhと表示された

クリエイティブワークに活用できる高画質ディスプレイ

 500cd/平方mの高輝度、Adobe RGBカバー率100%の色域がうたわれているDolby Vision HDR対応WQHDディスプレイの画質は相当高いレベルだ。500cd/平方mの輝度、P3(Display P3)の色域がうたわれている「MacBook Pro」(15inch, Late 2016)と比較してみると、実際の色より少々色味が強調されているように感じるが、液晶パネル自体の潜在能力が高いことは間違いない。

左がDolby Vision HDR対応WQHDディスプレイを搭載したThinkPad X1 Carbon、右がMacBook Pro(15inch, Late 2016)。うまく写らなかったが、実際にはThinkPad X1 Carbonでは花がピンクがかって見える

 また、ThinkPad X1 CarbonのICCプロファイルをディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」で作成して、色度図を作る「ColorAC」で確認してみたところ、sRGBカバー率が100.0%、sRGB比が146.8%、Adobe RGBカバー率が99.9%、Adobe RGB比が108.8%と非常に高い結果が出た。キャリブレータによる色調整さえ施せば、広告レベルのクリエイターワークにも活用できそうだ。

 なお今回ICCプロファイルをColor ACにインポートするさいに「注意:このICCプロファイルのLUT Green Blackにクリップ(値が飽和)の可能性がみられます」との警告メッセージが表示された。色域図を正確に作成できていない可能性があるので、今回実測した色域は参考に留めてほしい。

ThinkPad X1 Carbon のsRGBカバー率は100.0%、sRGB比は146.8%
Adobe RGBカバー率は99.9%、Adobe RGB比は108.8%

 さて、今回の借用機のディスプレイはDolby Vision HDRに対応しているが、Windows 10の設定で「HDRビデオのストリーミング」をオンにできず、また「設定→システム→ディスプレイ」に「HDRと高度な色設定」スイッチが表示されなかった。Chrome上のYouTubeや「Netflix」アプリでHDR対応コンテンツを選んでも、実際にHDR映像が再生されることはなかった。

 レノボ・ジャパンに問い合わせたところら「現段階では対応コンテンツはない」との回答が得られた。ThinkPad X1 CarbonでHDRコンテンツを楽しむためには、OSの対応と、Dolby Visionに対応したアプリケーションが必要になるようだ。

Windows 10の設定で「HDRビデオのストリーミング」をオンにできない
「設定→システム→ディスプレイ」に「HDRと高度な色設定」スイッチが表示されない
「DirectX 診断ツール」(dxdiag)を実行して作成される「DxDiag.txt」ファイルの「HDR Support」の項目には「Not Supported(サポートされていない)」と記載されている
Microsoftストアからダウンロードした「Netflix」アプリでHDR対応コンテンツを選択しても、再生時間の横に「Dolby Vision」のアイコンが表示されない

 一方、サウンドの音質は基本的に悪くないが、音量が小さいことが気になった。YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大72.2dBA(50cmの距離で測定)。

 直近で音圧を計測したノートPCやタブレットを例に挙げると、「HP Spectre x360」が86.3dBA、「HP EliteBook x360 1020 G2」が89.4dBA、「ASUS TransBook 3 T305CA」が84.1dBAだから、ThinkPad X1 Carbonのボリュームはかなり小さい。オーディオコンポ代わりに音楽を楽しみたいのなら外付けスピーカーを接続することをオススメする。

YouTubeで公開されている「前前前世 (movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大72.2dBA(50cmの距離で測定)
ステレオスピーカーは底面手前に内蔵されている。ビビリ音などの発生を避けるため、あえてボリュームを絞っているのかもしれない

入力インターフェイスはノートPC用として最高レベル

 キーボード、TrackPoint、ThinkPadクリックパッドの操作感などは2017年モデルと変わっていないようだが、ノートPC用の入力インターフェイスとして最高レベルであることは間違いない。底打ちしないキーストローク、絶妙な反発力、心地よい打鍵感、強く叩いても響かない打鍵音など非の打ちどころがない。しいて不満を挙げるとすれば、パームレストに手脂が目立つことぐらいだ。

記号も含めてすべて等幅に揃えられたキートップ。どのキーにも自然に指を伸ばせられる
キーボードだけでなく、ThinkPadクリックパッドも節度あるクリック感と静音性を備えている
指紋認証センサーはスリープ状態でもスタンバイしている。電源ボタンやキーなどを押さなくても、指紋認証センサーにふれるだけでロック解除可能だ
ディスプレイを180度開けるThinkPad伝統のヒンジ機構はもちろん健在

気になる性能は?

 それでは最後にベンチマークを実施しよう。

 今回は総合ベンチマーク「PCMark 10 v1.0.1457」、「PCMark 8 v2.8.704」、3Dベンチマーク「3DMark v2.4.4180」、CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15」、ゲーミングPCベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.0」、「Adobe Photoshop Lightroom Classic CC」RAW画像の現像時間を計測、「Adobe Premiere Pro CC」フルHD動画/4K動画の書き出し時間を計測、バッテリベンチマーク「BBench」を実施してみた。

 比較対象には同じ「Core i7-8550U」を搭載するノートPCとして、デル「New XPS 13」のスコアを筆者の過去記事から流用した。下記が検証機の仕様と、ベンチマークの結果だ。

【表3】検証機の仕様
ThinkPad X1 CarbonNew XPS 13
CPUCore i7-8550U(1.8~4GHz)
GPUIntel UHD Graphics 620(300MHz~1.15GHz)
メモリLPDDR3-2133 SDRAM 16GBLPDDR3-2133 SDRAM 8GB
ストレージ512GB SSD(PCIe NVMe M.2)256GB SSD(PCIe NVMe M.2)
ディスプレイ14型、2,560×1,440ドット(210ppi)13.3型、3,840×2,160ドット(331ppi)
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Home 64bit
【表4】ベンチマーク結果
ThinkPad X1 CarbonNew XPS 13
PCMark 10 v1.0.1457
PCMark 10 Score3,7293,520
Essentials7,6526,975
App Start-up Score8,8837,909
Video Conferencing Score7,1927,028
Web Browsing Score7,0146,106
Productivity6,0425,461
Spreadsheets Score7,4956,619
Writing Score4,8714,507
Digital Content Creation3,0443,109
Photo Editing Score3,6393,669
Rendering and Visualization Score2,0282,065
Video Editting Score3,8223,968
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,2733,364
Creative Accelarated 3.03,5644,873
Work Accelarated 2.04,4464,052
Storage5,0375,023
3DMark v2.4.4264
Time Spy426435
Fire Strike Ultra283286
Fire Strike Extreme534532
Fire Strike1,1281,131
Sky Diver4,6724,790
Cloud Gate9,0399,053
Ice Storm Extreme55,42149,726
Ice Storm76,13362,710
CINEBENCH R15
OpenGL55.54 fps52.60 fps
CPU607 cb637 cb
CPU(Single Core)164 cb167 cb
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)4,775(快適)4,522(快適)
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)2,195(普通)2,477(普通)
2,560×1,440ドット 標準品質(ノートPC)1,062(設定変更が必要)
SSDをCrystalDiskMark 6.0.0で計測
Q32T1 シーケンシャルリード3,375.746 MB/s3,389.496 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1,989.350 MB/s1,172.782 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード869.012 MB/s866.818 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト421.341 MB/s449.603 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード415.580 MB/s393.423 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト440.423 MB/s400.497 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード44.300 MB/s43.464 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト130.184 MB/s132.749 MB/s
Adobe Photoshop Lightroom Classic CCで50枚のRAW画像を現像
4,912☓3,264ドット、自動階調1分30秒68
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し(H.264)
1,920×1,080ドット、30fps4分3秒64
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分の4K動画を書き出し(H.264)
3,840×2,160ドット、30fps10分50秒82
BBenchにより連続動作時間を計測(ディスプレイの明るさ40%、電源モード:高パフォーマンス)
バッテリ残量5%まで11時間34分6秒9時間28分42秒

 おおむね横並びの結果だが、PCMark 8の「Creative Accelarated 3.0」でThinkPad X1 Carbonが3,564、New XPS 13が4,873と「1,309」ものスコア差がついている。念のためThinkPad X1 Carbonで再計測を実施したが、スコアはほとんど変わらなかった。

 計測結果の詳細を確認してみたところ、Creative Accelarated 3.0の「Video Editing part 2 v2」で異常に時間がかかっていることがわかった。そのためCreative Accelarated 3.0のスコアはあくまでも参考値としてほしい。

 実際のアプリケーションの実行速度は十分満足できる結果だ。4K動画の書き出しはちょっと荷が重いが、フルHD動画であれば実時間よりも約1分短く作業を終えている。RAW画像の現像も実用的な速度と言える。

 高輝度なDolby Vision HDR対応WQHDディスプレイを搭載していることでバッテリ駆動時間が短いのではと心配していたが、薄型ノートPCとしては平均点を超える11時間30分23秒を記録した。最大輝度が500cd/平方mと元々高いので、輝度をもっと下げればさらに長いバッテリ駆動時間も狙える。周囲の環境光にもよるが、個人的にはディスプレイの明るさを20%に設定しても利用できると感じた。

Creative Accelarated 3.0のVideo Editing part 2 v2で通常の6倍以上の時間がかかっている
「CINEBENCH R15」の「CPU」を連続で5回実行したさいのキーボード面の最大温度は47.3℃
底面の最大温度は46℃

悩ましいのはディスプレイの選択

 今回購入するにあたって悩ましいのはディスプレイの選択だ。画質は14型HDR WQHD IPS液晶が輝度500cd/平方m、Adobe RGBカバー率100%ともっとも優れているのは間違いない。ただ、テストでは及第点は超えていたものの、バッテリ駆動時間への影響は小さくないはずだ。またマルチタッチにも対応していないし、光沢ディスプレイが好みでない方もいるだろう。

 しかしそのような懸案事項が些細なことと思えるほど、ディスプレイ画質は圧倒的な美しさだ。HDR非対応ディスプレイとHDR対応ディスプレイの価格差はわずか7,560円。あとで交換できないパーツなのだから、用途を踏まえて慎重に選ぼう。