Hothotレビュー

6コアCore i7搭載で高コスパを実現するパソコン工房「STYLE∞ M-Class」

~コスパのよさを武器に1台目のPCやカスタムのベースに最適

ユニットコムのSTYLE∞シリーズ「M-Class STYLE-M037-i7-UH」

 株式会社ユニットコムがパソコン工房ブランドで展開するスタンダードデスクトップPC「STYLE∞」。そのなかでもミニタワー筐体を採用し、ミニマムかつコストパフォーマンスに優れたシリーズが「M-Class」だ。

 今回紹介する「STYLE-M037-i7-UH」は、第8世代Core i7プロセッサを搭載しつつ10万円以下に抑えたモデルである。

 「M-Class」は、共通の筐体を用いたバリエーションが非常に豊富で、Intel CPU搭載モデル、AMD CPU搭載モデル、さらにはビデオカードの有無などで99モデルほどあるようだ。

 豊富なバリエーションで、予算と性能、さまざまなニーズに応えられるシリーズだが、さすがに全モデルリストを眺めながら製品を選ぶのは難しいだろう。販売窓口の1つであるパソコン工房のサイトを例に挙げれば、製品リストの左にスペックを絞り込むためのセレクタが用意されているので、これでCPUやOS、ビデオカードなどをチェックしていくのがよいだろう。

 税別価格で見れば、安価なモデルでは43,980円から、高価なモデルでは206,980円と、価格の幅も広い。そのようななか、今回の「STYLE-M037-i7-UH」は86,980円と、第8世代のCore i7を搭載しつつも10万円以下に抑えられている。ポイントはビデオカードを搭載していないところで、CPU特化型の構成と言える。

 「M-Class」自身、かなりコストパフォーマンスを重視したシリーズである。ミニタワー筐体を採用し、マザーボードはmicroATXで、拡張性はATXミドルタワーモデルと比べてかぎられる。しかし昨今、拡張スロットに搭載するのはビデオカードがメイン、そのほかメインストリーム用途ではサウンドカードやTVチューナーカードといったところを想定すれば、ミニタワー筐体でも不足ないだろう。そうした用途で収まるならば、かなりお求めやすいモデルと言える。

「M-Class」はミニタワー筐体を採用しており、高さも奥行きも小さめのデスクトップPCだ
【表1】STYLE-M037-i7-UHのおもな仕様
CPUCore i7-8700(3.2GHz)
GPUIntel HD Graphics 630
メモリ4GB×2 DDR4-2400
SSDなし
HDD1TB 3.5インチSerial ATA
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
電源350W ATX(80PLUS Bronze)
OSWindows 10 Home 64bit
税別価格86,980円

【お詫びと訂正】初出時に表の価格を「税込み」としておりましたが「税別」の誤りです。お詫びして訂正させていただきます

 CPUはCore i7-8700を搭載している。ポイントは、従来のCore i7の4コア8スレッドを上回る6コア12スレッドに拡張されていることで、性能が大幅に向上している。

 定格クロックは3.2GHzと低めの設定であるが、Turbo Boost機能によってシングルスレッド時には最大4.6GHz駆動となるため、マルチスレッド処理からシングルスレッド処理まで、高い性能が得られる。ビジネスソフトの運用や、Webブラウジング、メールやSNSのような用途であれば、十分すぎる性能だろう。

 どちらかと言えば、それにとどまらないマルチタスク、映像編集などの処理や、あるいは本製品をベースにハードウェアを追加し、これといった使命を持たせてあげるのが理想だ。

 マザーボードのチップセットはIntel Z370を採用している。現時点で300シリーズチップセットはIntel Z370のみなので、これ以外に選択肢はないのだが、たとえばCPUを1つ上のCore i7-8700KにBTOカスタマイズした場合、オーバークロック(OC)を楽しむことができる。標準構成のCore i7-8700でOCはムリだが、チャレンジしたい方はここを変えてみるのもよいだろう。

チップセットはメインストリーム向けでは最上位のIntel Z370を採用している。

 ビデオカードを搭載しないモデルのため、GPU機能はCore i7-8700に統合されたIntel HD Graphics 630を利用する。3D性能は高くないものの、ここ数世代で高性能化しており、カジュアルなゲームであればそれなりに楽しむことができる。過度な期待はできないので、中段のベンチマーク結果を参考に、ビデオカードをBTOする、あるいは自身の手で組み込むことを検討していただきたい。

 なお、ゲーム以外では、ハードウェアエンコーダのIntek Quick Sync Videoを利用した高速なトランスコードや、ビデオ再生支援機能のIntel Clear Video HDを利用した高画質ビデオ再生などが利用可能だ。

CPU性能は前世代最上位を大きく上回る。3Dとストレージはコスパ重視の影響ありで、ここがBTOのポイント

 それではベンチマークソフトのスコアを見ていこう。

 今回テストしたのは、「PCMark 10 v1.0.1457」、「3DMark v2.4.4264」、「CINEBENCH R15」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト」、「Ultra Street Fighter VI」、「MHFベンチマーク【大討伐】」、「CrystalDiskMark 6.0.0」だ。

【表2】ベンチマーク結果1
PCMark 10 v1.0.1457
Extended Score2,875
Essentials7,284
App Start-up Score5,875
Video Conferencing Score8,258
Web Browsing Score7,969
Productivity5,947
Spreadsheets Score8,707
Writing Score4,063
Digital Content Creation3,843
Photo Editing Score4,127
Rendering and Visualization Score3,092
Video Editing Score4,448
Gaming1,109
Fire Strike Graphics Score1,435
Fire Strike Physics Score18,086
Fire Strike Combined Score453
3DMark v2.4.4264
3DMark - Fire Strike
Score1,346
Graphics score1,459
Physics score18,435
Combined score453
3DMark - Sky Diver
Score5,525
Graphics score4,918
Physics score15,892
Combined score5,255
3DMark - Cloud Gate
Score11,991
Graphics score11,889
Physics score12,363
3DMark - Ice Storm
Score86,587
Graphics score96,562
Physics score63,595
CINEBENCH R15
CPU1,390
CPU(Single Core)189

 PCMark 10のスコアは、OverallのExtendedスコアが2,875。Essentialsスコアが7,284、Productivityスコアが5,947、DigitalContentCreationが3,843、Gamingスコアが1,109となった。

 Extendedスコアが伸び悩むのは、DigitalContentCreationやGamingを見ればわかるようにビデオカードを搭載していない点が影響している。一方で、ブラウザベースの処理中心に普段使いを想定したEssentials、表計算・ワープロソフトやビデオ会議などビジネス用途を想定したProductivityについては十分に高いスコアだ。本製品そのままで利用するならば、ホームPCやビジネスPCといったところになる。

 PCMark 10でも特出していたCPU性能をCINEBENCH R15で明らかにしておくと、全スレッドを使い切るCPUでは1,390cbとかなり高い値が出ている。前世代のCore i7-7700Kと比べても4割アップに近い高スコアだ。CPU(Single Core)は189cbと、こちらも高スコアである。

 3DMarkは、統合GPUということでスコアは低めだ。とはいえGPU性能だけが3D性能の決め手というわけではなく、本製品の場合はCPU性能が高めなので、一般的なモバイルノートPCよりは高いスコアになる傾向である。ただし、ゲーム用途としては2Dタイトルがメイン、3Dタイトルは負荷の軽いものが中心となることがスコアからも読み取れる。

 3DMarkの結果を受け、比較的負荷の軽いタイトルを3つピックアップした。以下のとおりだ。

【表3】ベンチマーク結果
STYLE-M037-i7-UHドラゴンクエストX ベンチマークソフト 1,920×1,080ドット、最高品質6,273
Ultra Street Fighter VI、1,920×1,080ドット、アンチエイリアシングなし、フィルタリング4x、ほか最高77
Ultra Street Fighter VI、1,280×720ドット、アンチエイリアシング4x、フィルタリング4x、ほか最高83
MHFベンチマーク【大討伐】、1,920×1,080ドット3,253
MHFベンチマーク【大討伐】、1,280×720ドット7,302

 ドラゴンクエストX ベンチマークソフトは、1,920×1,080ドット、最高品質であってもスコアは6,273ポイントあり、「快適」評価が得られた。このクラスのタイトルであれば問題ない。

 やや古いタイトルとなるが、Ultra Street Fighter VIとMHFベンチマーク【大討伐】も見てみよう。Ultra Street Fighter VIは、アンチエイリアシングとフィルタリングをひかえ目に設定すれば、60fps以上をキープすることが可能だった。1,920×1,080ドットではアンチエイリアシングなし、フィルタリング4x程度で77.497fps、1,280×720ドットではアンチエイリアシング、フィルタリングともに4x程度で83.074fpsが得られた。8x程度に引き上げると、一気にフレームレートが落ちる。詳細な画質設定ができるタイトルでは、少しでもフレームレートを稼ぐために、アンチエイリアシングやフィルタリング(異方向性フィルタリング)を低く、あるいはオフとするのがよいだろう。

 一方、MHFベンチマーク【大討伐】は、1,920×1,080ドット時で3253、1,280×720ドットで7302。フレームレートが表示されないベンチマークだが、1,920×1,080ドットでも問題なく楽しめる。

 最後にHDDの性能をCrystalDiskMark 6.0.0 x64で評価しよう。

CrystalDiskMark

 HDDであるため、シーケンシャルリード/ライトのみ3桁MB/sでほかは1桁MB/s程度となる。シーケンシャルリードは206.3MB/s、同ライトは183.5MB/sと、ここはそれなりの転送速度が出ている。

 4Kについては、1.4MB/s~0.6MB/sあたりで、HDDであるからこのあたりに落ち着くのは当然だ。Windows 10ではOSやアプリケーションの起動を高速化する仕組みが導入されているが、それでも少し引っかかりを感じるのはこうしたHDDの4Kランダムアクセス性能が影響している。

 このことからも、HDDはあくまでデータの保存先として、価格重視ということでなければシステムドライブにSSDをBTOするのがベターだ。

コスパ重視ながら落ち着いた外観と意外と高い拡張性のほどよいバランス

 スタンダードで低価格重視のPCではあるが、スタイリッシュを追求する姿勢が感じられるデザインだ。前面は光沢を持たせてあり、写真からもわかるように周囲のものをきれいに映し出す。

 前面の最上段は光学ドライブベイで、DVDスーパーマルチドライブを搭載している。手動で開閉することなく、ドライブのトレーの開閉に合わせてパネルが開閉する仕組みだ。

 その下は空きの5インチベイ、もう1つ下はフロントアクセスパネルで、こちらは手動で開閉できる。フロントアクセスパネルには、ヘッドフォン、マイク端子と、USB 3.0×2基があり、その横は3.5インチベイとなっているので、別途ここにカードリーダやUSB 3.0端子を増やすことが可能だ。

カメラがバッチリ映り込むほどツヤのある前面パネル
最上段はDVDスーパーマルチドライブを搭載する光学ドライブベイ
中段カバー内に3.5インチベイと、USB 3.0×2&オーディオ入出力端子を搭載
天板の前面寄りに電源ボタンとHDDアクセスランプを設けている

 背面は上部に電源を搭載しているあたり、伝統的なPCのスタイルと言える。ミニタワー筐体であるため拡張スロットは4基で、マザーボードはmicroATXである。バックパネルには、PS/2、USB 2.0×2、DVI-D、DisplayPort、USB 3.0×4、Gigabit Ethernet、そして各種オーディオ入出力端子がある。DVI端子はデジタルのみ対応のDVI-Dだ。そしてDisplayPortを備えているがHDMIはない。HDMIディスプレイを組み合わせる場合には、変換アダプタが必要になる。

背面はやや古さを感じるデザイン。マザーボードのバックパネルも、端子の種類がやや特殊な印象だ

 側面パネルは、背面のネジ2つを外して取り外すことが可能だ。ミニタワーの小さな筐体だが、内部パーツも必要最小限であり、CPUクーラーも小ぶりであるため、そこまでつまっている印象はない。

 ただし、マザーボードのメモリソケットに、シャドウベイのHDDの後部が干渉しているので、メモリの交換・増設のときにはこれを外す必要がある。もっとも、シャドウベイ自体を取り外し可能な構造としているため、HDD本体やケーブルまで取り外す手間はない。

左側面板には吸気口を設けている
シンプルな構成のため内部スペースにはゆとりを感じる

 マザーボードはMSI製で、刻印には「Z370M-S01」とある。レイアウトを見るかぎりでは「Z370M MORTAR」に近いが、ヒートシンクが簡素化、拡張スロットを補強するSteel Armorが省かれるなどの違いがあり、OEMモデルであることがわかる。

 レイアウト的には、メモリスロットが4本、拡張スロットはPCI Exprss x16×2本とx1×2本となる。ほか、M.2 2280対応スロットも2基搭載している。

MSI Z370M MORTARをベースにしていると思われるOEMマザーボード「Z370M-S01」。細部は異なるが、スロットの数などは同じ

 コスパ重視モデルということで、標準構成のストレージはHDDを搭載している。Windows 10では、HDDでもまずまず高速に起動するが、アプリケーションを起動する、切り換えるような処理では、やはりSSDには敵わない。

 よってここも余裕があればBTOカスタマイズしたい点であるが、一方でHDDは大容量を手頃な価格で実現できる。標準搭載されているのは1TBのHDDで、映像データの保存先としても十分に活用できる容量である。

 ストレージのBTOオプションでは、M.2 SSD、Serial ATA SSD、HDDで、複数台搭載可能となっている。ニーズに合わせて選択しよう。

3.5インチシャドウベイに搭載されたSeagate Barracuda ST1000DM010-2EP102(Serial ATA 3.0、7,200rpm、1TB)は、後部がベイから大きくはみ出る
HDDの後部がメモリスロット上に被っているが、シャドウベイごと取り外せるので、ケーブルを着脱しなくてもメモリ交換ができる

 また、横幅がスリムである点も筐体の特徴だろう。バックパネル横の背面ファンは、9cm角ファンを採用している。12cm角ファンと比べると小さなファンだが、このファンの動作音については静かだった。本製品は高負荷時にはやや大きめの43dBAだったが、これは背面ファンではなくCPUクーラー側に要因があるようだった。Core i7-8700のようにやや発熱が大きいCPUを採用していることも影響しているが、できれば同じCooler Masterでも1つ上のクラスに換装したいところだ。

背面ファンは9cm角で小さいが、動作音はそれほど大きくはない
CPUクーラーはCooler Master製で「X Dream」シリーズのものと思われるが製品カタログには掲載されていないタイプ。低回転のうちは静かだが、負荷が上がり高回転になるとやや動作音が大きくなる
可能ならCPUクーラーを換装したいところだが、搭載可能なCPUクーラーの高さは15.5cm程度となる。安全をとって15cmとして考えると、大型のサイドフロー式CPUクーラーは搭載できない

 電源はBTO PCで採用例の多いAcBel製で80PLUS Bronze認証を受けた350Wモデルとなる。350Wという出力は、ATX電源のなかではかなり小さく、統合GPUを利用するさいには困らないが、ビデオカードを搭載する場合は不足する。

 ビデオカードを搭載したい場合は、同じ「M-Class」でも最初からビデオカードを搭載しているモデルを選ぶか、あとから追加する場合は、それを見越して電源を大出力のものにBTOカスタマイズしておくのがよいだろう。

AcBelの80PLUS Bronze認証ATX電源を採用。出力が350Wなのでビデオカードを搭載する場合は要交換
M-Classでは、GeForce GTX 1080 Tiを搭載するモデルもあるように、スペース的にはかなり大きなビデオカードを搭載できる
このクラスのPCに求められる、「買ってすぐ使える」のめにキーボードとマウスも付属する

高性能ビデオカードを搭載できる拡張性はある。コスパのよいベースモデルとしてアリだ

 M-Classはスタンダードモデルである。そのなかで「STYLE-M037-i7-UH」は、高性能CPUを搭載しつつ価格を抑えた、低コストで高性能PCを手に入れようという方のためのモデルである。標準構成のまま活用するとすれば、もっとも適しているのはコストを重視しつつCPU処理能力を求めるビジネス用途かもしれない。また、一般家庭向けならCPU性能を活かして映像や写真などの分野でクリエイティブ用途に活用するのがよい。

 本製品はビデオカードを搭載していない。そのため、今回のベンチマーク結果のとおり本格的にゲームを楽しみたいならば、同じM-Classでもビデオカード搭載モデルを検討するのがよいだろう。ベースがコスパ重視のモデルだけに、ビデオカードを搭載したとしても、ゲーミングPCモデルよりもコスパがよい。

 ビデオカードはあとから搭載すればよいという場合は、あらかじめBTOカスタマイズで電源の出力に余裕を持たせておくか、あるいはビデオカードと同時に交換する必要があるだろう。

 本モデルはあくまでシリーズ中のベースモデルと捉えるのがよいだろう。上には高性能ビデオカードを搭載するハイエンドモデルもあるように、ゲーミングPCに発展させられるだけの発展性を秘めたPCと言える。