大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」
「Surface 2はAppleも意識している」
~Microsoft製品担当者に進化のポイントを聞く
(2013/10/24 14:00)
日本マイクロソフトがいよいよ「Surface Pro 2」および「Surface 2」を日本で発売する。米MicrosoftのSurfaceセールス&マーケティング担当のRobin Seiler氏は、「11カ月間に渡るフィードバックをもとに進化を遂げたのが、新たなSurface。特にSurface Pro 2は、ノートPCの購入を検討しているのであれば、ぜひ候補に入れてほしい」とする。また、「日本はSurfaceにとっても大変重要な市場。ぜひ、日本の方々に進化した新たなSurfaceを使っていただきたい」と語る。Seiler氏にSurface 2およびSurface Pro 2の進化について聞いた。
Surfaceは、MicrosoftブランドのタブレットPCだ。第1号製品は、Windows 8が発売となった2012年10月26日にTegra 3を搭載した「Surface RT」を米国などで発売。Intel CPUを搭載した「Surface Pro」は、2013年2月9日に投入、2つのラインアップを取り揃えた。一方、日本では、2013年3月15日にSurface RTを、それから約3カ月後の6月7日にSurface Proを発売した。
今回のSurface 2およびSurface Pro 2は第2世代にあたる製品。Surface RTの後継機となるSurface 2は、CPUにTegra 4(1.7GHz)を、Surface Proの後継となるSurface Pro 2は、CPUにHaswellを搭載し、大幅な進化を遂げている。米国では、10月22日に発売となり、この日はAppleからも新たなiPadが発表された。「AppleがSurfaceを意識していることの証」と、Seiler氏は、むしろSurfaceの存在感が高まっているとこの動きを理解する。
今回、Surface RTをSurface 2とし、名称から「RT」を取ったのも興味深い。「Surface RTとSurface Proというように、型番が異なる別の製品として認識してもらうのではなく、タブレットとしての利便性が高いSurface 2と、ノートPCとして利用してもらうためのSurface Pro 2というように、1つのSurfaceという製品の中にそれぞれの役割を位置付けた」とする。
実際、Surfaceでは、RTというブランドの違いや、機能の違いがなかなか理解されなかったのも事実だ。Surface 2とSurface Pro 2という名称にすることで、2つの製品の位置付けが、より明確になったともいえる。
そして、新製品からは、背面に施されたロゴを、従来のWindowsのマークから、Surfaceの文字へと変更した。「初代製品では、Windowsプラットフォームであるということから、Windowsのマークとしたが、新製品では、Surfaceというブランドを強く訴求したいということから、Surfaceの文字を入れることにした。Surfaceの購入層は、トレンドセッターと呼ばれる層。そうした人たちが、Surfaceを使用しているということを訴求できるようなデザインにしている」(同氏)というわけだ。
Surface Proの後継となるSurface Pro 2は、「クラムシェルノートの代替となる製品へと進化。より多くの人に購入してもらえる製品になる」とSeiler氏は胸を張る。
CPUには、Haswellと呼ばれる第4世代CoreシリーズのCore i5-4200U(1.6GHz、ビデオ機能内蔵)を搭載。これにより、高性能化と低消費電力化を図ることに成功した。「特に、Surface Proではバッテリ駆動時間を長くして欲しいという要望が強かった。Surface Pro 2では75%もバッテリ寿命を伸ばすことに成功した。多くのユーザーの要望に応えることができた」とする。
同社では操作方法によって利用できる時間が異なるとして、具体的な連続駆動時間については触れていないが、Seiler氏によると、「これまでの使用時間が4~5時間だとすれば、Surface Pro 2では約7時間の駆動が可能になる。さらにバッテリを搭載したPower Coverを使用すれば、9~10時間の駆動が可能になる」とする。
Microsoftでは、Surfaceによるキーボード操作を可能にするオプションカバー製品として、「Touch Cover」と「Type Cover」の2つを用意していたが、新製品の発売にあわせて、これらをバックライト付きの「Touch Cover 2」と「Type Cover 2」へと進化させるとともに、新たにバッテリ内蔵の「Power Cover」を用意。Power Coverを使用することで、バッテリのさらなる長時間駆動を実現させた。Power Coverは、Type Coverに比べて2倍の厚さとなるが、その部分には30Whのバッテリを搭載。なお、Power Coverにはバックライトは付いていない。
また、Type Cover 2では、約1mm薄くする一方で、50%も強度を高めたことで、膝の上でタイプしてもより確実にキー入力が行なえるように進化させたという。「これもクラムシェルノートの代替として利用するのに適した強化点の1つ」とSeiler氏は述べる。
実は、膝の上でタイプするという使い方においては、キックスタンドにも工夫を凝らしている。Surfaceはキックスタンドによってキーボード入力時などに本体が自立できるようにしているが、新製品では、22度と44度という2段階の角度で設置できるようになった。とくに、新たに追加した22度という角度は、膝の上で入力する際に最適な角度として用意したものだという。
「机の上に設置した際にも、背の高い人は22度の角度が適しているだろう。設計チームは約168cm~178cmの人たちを想定して44度の角度を考えたが、それより背が高い約190cm以上の人に適した角度にもなりうる」とする。これはSurface 2でも同様で、2段階のキックスタンドを採用している。
また、ディスプレイの輝度を46%向上させ、赤はより赤く、緑はより緑に表示できるという。「デジタルアーティストやムービー制作者、フォトグラファーにも評価してもらえる画質を実現している」(同氏)。
Surface Pro 2では、64GBモデル、128GBモデルに加えて、Surface Proで日本で先行した256GBモデル、そして新たに512GBモデルを用意。ラインアップを大幅に拡張した。「米国でも企業ユーザーを中心に、256GBが欲しいという声が挙がっていた。512GBモデルも同様に企業ユーザーを中心に売れると期待している」としたほか、「Surface Proではビジネスユースだけでなく、ゲーマーからも高い評価を得た。こうしたユーザーにも人気が出るだろう」と予測する。つまり、ラインアップの拡大は、初代Surfaceを投入後のユーザーの反応を見て決定したものだといっていい。そして、クラムシェルノートPCからの代替ということを視野に入れた提案をするためにも、大容量モデルの提案が必要だったとする。
一方、Surface RTの後継となるSurface 2は、「より生産性が高いタブレットを目指して進化した製品」とし、「音楽やゲームをタブレットで楽しみたいという人、より長く使いたいというのであれば、これを選択して欲しい」と、Seiler氏は語る。
Tegra 4は、GPUのコア数を72基に拡大。USB 3.0を装備したほか、背面に500万画素と前面に350万画素のカメラ、フルHD(1,920×1,080ドット)の5点タッチ対応10.6型液晶ディスプレイを搭載している。前面カメラや、明るい輝度を持ったフルHD液晶ディスプレイは、Skypeの利用でも効果を発揮するという。
「これまでのSurfaceでは、暗い場所でやりとりをしていると、『電気をつけてくれないと見えない』といったことも起こっていたが、新たなSurfaceではかなり暗い場所でも映すことができる」と自信を見せる。
OSにはWindows RT 8.1を採用し、Office 2013 RTを標準搭載。「200GBのSkyDriveを2年間無償で提供すること、Office 2013 RTによってOutlook 2013を利用できること、長時間駆動を実現しているといった特徴がある」とする。
Seiler氏は、「Surface RTでは、主婦層の購入、学生の購入も多く見られた。Surface 2でも引き続き、そうした傾向が見られるのではないか」と予測する。
第2世代への進化に併せて、3種類のキーボードのほかに、ドッキングステーション、Surfaceのロゴが入ったアークタッチマウス、カーバッテリチャージャー、Bluetoothアダプタの4種類のオプションも新たに用意した。
これらもユーザーのさまざまな要求を反映して取り揃えたものだ。「我々が想像した以上にさまざまな利用シーンで、Surfaceが使われている。そうしたユーザーに対して、有用なオプションを取り揃えた」というわけだ。
そうした中でも、将来の取り組みとして注目されるのが、Touch Cover 2のカスタマイズ提案である。Touch Cover 2では、ボード全体に1,000以上のセンサーが埋め込まれているという。これは、従来のTouch Coverからの大きな変更点だ。きめ細かく配置されたこのセンサーを活用して、Touch Coverのキーボード部をカスタマイズし、アプリに合わせて操作性を高めた環境を用意できるようになる。
例えば、試作品として開発したのが「DJボード」である。操作面には、ボリュームやイコライザー操作をするための専用キーが用意され、バックライトでレベルを表示。さらに番号を押せば、鳴らしたい楽器やボーカルを加えることができる。「仕様を公開するのか、あるいはカスタマイズはどこが行なうのかといったことは、現時点では未定であるが、Surfaceの利用の幅を広げる提案になる」とする。
Surfaceの第2世代への進化は、初代Surfaceの成果やユーザーの声を反映したものであると言える。見た目には大きな変化が見られないだけに、直感的にはその進化が伝わりにくい。だが、CPUの強化をはじめ、細かい改良は利用シーンの広がりを期待させるものだと言っていい。
最後にSeiler氏に、Surface Pro 2でのLTE対応、あるいは7型液晶ディスプレイを搭載したような新たなフォームファクターの製品投入についても聞いてみた。それに対しては、「Surfaceは、ユーザーのフィードバックによって進化する。そうした要望があれば製品化の可能性はある」と、Seiler氏は答える。
Surfaceの今後の進化は、ユーザーからのフィードバック次第といえそうだ。