大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」
SurfaceがノートPC販売の2割を占める
~ヨドバシカメラ・御代川店長にSurface発売半年の成果を聞く
(2013/10/2 06:00)
「Surface RT」の国内販売が2013年3月15日に開始されてから約6カ月半、「Surface Pro」が6月7日に発売となってから約4カ月が経過した。この間、Surfaceは、業界の予測を上回る形で売れているようだ。東京・秋葉原のヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでは、「ノートPC全体の約2割を占めているのがSurface。発売当初から予想を上回る売れ行きを見せています」とする。指名買い比率も他のPCよりも高い傾向があるのが特徴だという。この半年間に渡るSurfaceの販売動向を、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの御代川店長に聞いた。
キーボードの装着率は130%
Surfaceは、日本マイクロソフトが発売した自社ブランドのタブレット端末。Intelのx86 CPUを搭載し、従来のデスクトップアプリケーションが動作する「Surface Pro」と、NVIDIAのARM SoCであるTegra 3を搭載した「Surface RT」の2機種を用意しており、タブレットとしての利用だけでなく、オプションのキーボードを取り付けることで、PCとしても利用できる点が特徴となっている。
「キーボードの装着率は130%に達しています」(御代川店長)という驚くべき数字となっているのは、購入者のほとんどがオプションのキーボードを同時に購入するだけでなく、Touch Coverのカラーバリエーションを揃えたり、Touch Coverとともに、タイピングしやすいType Coverを同時に所有するユーザーがいるなど、複数のキーボードを所有するユーザーが多いためだ。
その点でも、タブレットとしての利用だけでなく、PCとしても使えることをメリットとして購入しているユーザーが多いと言えそうだ。
全てのデバイスの「真ん中」の商品
ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの御代川忍店長は、Surfaceを「ちょうど真ん中に位置する製品」と表現する。「スマートフォンやタブレットに興味を持つユーザーや、タブレットの機能には物足りなさを感じるユーザー、また、新しいPCを買い換えたいと考えているユーザー。こうしたさまざまなユーザーに対して、真ん中の商品として提案できるのがSurface」だとする。
Surfaceが展示されているヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの1階フロアをみると、まさに御代川店長の言葉が裏付けられる。というのも、1階フロアのちょうど中央部にSurfaceの展示コーナーがあるからだ。Surfaceの展示コーナーの前にはスマートフォン売り場。また、左右にはApple製品売り場と、Androidを中心としたタブレットコーナー。そして、Surface売り場のすぐ後ろ側にはPC売り場という配置だ。
効率よく接客するためには、関連製品を近くに展示するというのが販売店のセオリー。それを発展させ、「真ん中」と位置付けるSurfaceを売り場の真ん中に置くことで、Surfaceを中心に用途にあわせて他の製品へと接客を展開したり、逆に他の製品からSurfaceへと誘導するといったことが行ないやすい展示としているのである。
「Surfaceは、勧めやすい製品の1つ。用途を聞くと、Surfaceが最適というお客様は少なくない。タブレットとしても、PCとしても使いたいというユーザーはもちろん、Windows PCを所有しており、2台目のPCとして購入するケース、あるいはPCが古くなったのでその買い換えとして購入する場合にも、Surfaceは適しています」とする。
そして、こうも語る。「もし、Surfaceが登場していなかったら、ちょうど『真ん中』となる領域の需要を顕在化できていなかったかもしれないですね」。
タブレットやスマートフォンは高い人気を誇る一方、PC市場の停滞が指摘されているのは周知の通りだ。だが、この中間となる領域は成長領域でもなく、停滞領域でもなく、これまで市場がなかった領域だ。そこに1つの回答を示したのが、Surfaceだったと言える。
Surfaceが単一機種では最大展示
御代川店長が、「真ん中」とする市場は、我々が思うよりもその規模は大きいようだ。それは、同店におけるSurfaceの実際の売れ行きからみても分かる。御代川店長によると、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaにおけるWindows搭載ノートPC全体の内、Surfaceが占める比率は約2割。A4ノートという領域で見れば、約3割がSurfaceだという。
「土日には多くの人がSurfaceを触ろうと展示機の前に並びます。当初は、ひとシマに4台を展示するという形でしたが、それではいくら順番を待っても触れることができないという人が増えます。Surface Proの発売にあわせて、展示スペースを2倍に拡張しました。単一機種で8台もの展示を行なっているのはWindows PCでは最大規模になります」という。
価格改定の影響は限定的か
Surafceは、これまでに2回の価格改定を行なっている。1回目は、6月14日からの1カ月間の期間限定でSurface RTを1万円引き下げ、期間終了後もその価格設定で販売を続けたというもの。そして、9月25日からSurface RTをさらに5,000円値下げし、Surface Proも1万円値下げした。また、8月9日からは1カ月間の限定で、iPad所有者を対象に、Surface RTを1万円引きで販売する乗り換えキャンペーンも実施。積極的な販売施策にも取り組んできた。
こうした価格改定やキャンペーンの効果は、売れ行きにどう影響しているのだろうか。これについては、「正直なところ、大きな起爆剤にはなっていない」と、御代川店長は語る。
「価格が下がったから瞬発的に売れるという傾向は見られません。むしろ、Surfaceのコンセプトや特徴が徐々に浸透していったことと並行して価格が下がり、それに伴って購入者が増加しています」とする。
Surfaceの相次ぐ価格改定の背景には、Surfaceの販売が不調であることを指摘する声もあるが、御代川店長はその見方を否定する。「当店での売れ行きをみても決して売れていないわけではありません。日本マイクロソフト自身が、この製品に適した価格帯はどこかということを探っているためのものと判断し、お客様にもそう説明しています」とする。
一方、iPadユーザーを対象にした乗り換えキャンペーンについては、「iPadユーザーはMacを利用しているケースが多く、Surfaceに乗り換えようというユーザーは少ないです。Windows PCを所有しているユーザーの方が、Surfaceに関心を持っています」と語る。iPadユーザーの乗り換え施策よりも、Windows PCユーザーを狙った施策の方が、功を奏しそうだというのが、御代川店長の意見だ。
次期製品に勢いをつなげられるか
すでに米国では、次期Surfaceが発表され、予約もスタートしている。日本での発売は現時点では未定だが、近いうちに発売される公算も高い。
「Surfaceは、マイクロソフトブランドのPCであることが徐々に認知されており、さらにタブレットとしても、PCとしても利用できるデバイスとしても注目を集めています。次の進化にも期待したいです」としながらも、「どんな対抗製品が登場するかによっても、販売状況は異なります。また、ユーザーの利用シーンの変化によっても、製品に対する評価が変わってきます。Surfaceの半年間の成果は、予想以上のものでしたが、それが次期製品において継続するかどうかは分かりません」として、「私たちにとって大切なのは、長いお付き合いをさせていただくお客様にとって、最適の提案をすること。次期Surfaceが、そうした製品であれば、ぜひ積極的に販売していきたいです」とする。
これからのタイミングでは、iPadの新製品や、Androidの新製品の登場も予測される。各社の新製品によって、競合のステージが変わるのは明らかだ。そうした製品に真っ向から対抗できる製品へと、次期Surfaceが進化しているかが販売の現場では推し量られることになる。
Surfaceは思っている以上に売れているというのが実態だと言えよう。そして、量販店でも重要な役割を果たす製品となっているのは間違いなさそうだ。発売半年の成果は、量販店においても合格点の成果だといえるだろう。
だが、日本マイクロソフトの樋口泰行社長自らが語るように、タブレット第2章の戦いは始まったばかり。次の製品にもこの勢いがつなげられるかが次のポイントとなる。