大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

唯一の弱点が消えたパーフェクトなモバイルノート「XPS 13」が目指したもの

~米Dell フランク・エイゾール氏インタビュー

New XPS 13を手に持つ米デルのフランク・エイゾール氏

 米Dellが、新たなNew XPS 13を発表した(Dell、幅2.25mmの小型上部カメラで3辺狭額縁を実現した新「XPS 13」参照)。性能、デザイン、薄型化、長時間バッテリ駆動といった相反する要素を、高い次元でバランスを取ったプレミアムPCとして、さらなる進化を遂げたのが今回のNew XPS 13(以下、XPS 13)だと言える。

 米Dell ALIENWARE、Dellゲーミング&XPS担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのフランク・エイゾール氏は、「今回の製品では、XPS 13が持っていた唯一の弱点も克服している。テクノロジの良さを本当に理解している人に使ってほしい」と語る。

 唯一の弱点とはなにか、そして、どんなPCへと進化したのか。米Dellのエイゾール バイスプレジデントに、新たなXPS 13の狙いなどについて聞いた。

初代XPS 13がPC業界に与えた影響

Dellが発売した新たなXPS 13

――2012年に、Dellが最初のXPS 13を投入したときには、大きな衝撃を受けました。これまで、XPS 13は、業界にどんなインバクトを与えてきたと考えていますか。

エイゾール(敬称略、以下同) 振り返ってみますと、XPS 13が登場する以前に、PC業界全体で追求していたのは、ノートPCを薄くすることでした。どうやって薄くするのかというと、縦方向に伸ばしたり、横方向に広げたり(笑)、あるいは、先細りさせるようなデザインによって、実際よりも薄く見せることに苦心していたわけです。

 そのとき、Dellは薄くすることだけでなく、同時に小型化することにも力を注ぎました。ノートPCを小型化するときに最初に考えたのは、液晶ディスプレイのベゼル部分を狭額縁化することです。これによって、かなり小型化することができると考えました。

 それを実現したのがXPS 13です。2012年に米ラスベガスで開催した2012 International CESで、XPS 13を最初に披露したときに、隣に11型ディスプレイを搭載したMacBook Airを展示しました。11型と13型を比べても、外観サイズは、ほぼ同じぐらいになっていました。

 それ以降、業界のなかでも小型化のメリットの大きさに注目が集まるようになったのとは周知のとおりです。狭額縁化で筐体全体を小型化することができますし、持ち運んで利用するというさいにも、軽量化というメリットを生むことができたわけです。

Dell ALIENWARE、Dellゲーミング&XPS担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのフランク・エイゾール氏

 DellがXPS 13で採用した「インフィニティエッジ」によって実現した狭額縁の考え方は、その後の主流とも言えるデザインになり、いまではどのPCメーカーのノートPCも狭額縁のデザインとなっています。

 それは、ゲーミングPCにおいても同様です。さらに、インフィニティエッジの技術は、その後、スマートフォンでもナローベゼルというかたちで利用されているようになっています。まさに、革命的な技術であったと自負しています。

――新しいXPS 13はどんなところにこだわった製品ですか。

エイゾール 改めて革命的な変化を起こすことができる製品だと考えています。狭額縁となり、さらに薄型になり、性能が上がっています。ただ、これまでXPSユーザーから、唯一の不満として挙がっていたのが、狭額縁としたことで、Webカメラの位置が、上部中央の位置に収まらず、どうしてもディスプレイの下の位置に設置せざるを得ないということでした。

 XPS 13では、つねに最小のカメラモジュールを採用してきましたが、それでも、上部に設置すると、ベゼルの幅が広くなってしまいました。そのため、これまでのXPS 13では、左下部分や中央下部分にWebカメラを設置するといったことになっていました。

 XPS 13のユーザーの多くが、このカメラの位置を気にしており、最優先で解決する必要があると考えていました。そこで、Dellでは、これまでにない新たなカメラモジュールを開発したのです。

新開発したカメラモジュール
こうしたかたちで内蔵されているという

 回路をセパレートさせ、これをフレキシブルケーブルでカメラ部分とつなぐ形状としたこと、さらにはレンズそのものも、以前は直径7mmのカメラだったものを、2.25mmにまで小型化することで、従来からの狭額縁化を実現しながら、カメラを搭載できるようになりました。

 カメラを小さくすると性能が落ちるのではないかと心配するユーザーもいると思いますが、新たなカメラは性能面でも向上をさせています。光学レンズを4枚構成としたことで、一般的なWebカメラよりも多くの素子を用いて、フレームのすべての領域でシャープな映像を実現できるようにしたほか、高度なノイズリダクション技術により、薄暗い照明という厳しい条件下でもビデオ品質を大幅に向上し、より鮮明な画像を撮影することができます。

 XPS 13では、すべての領域において、クラス最高のものを達成したいと考えています。今回の製品では、唯一残されていたカメラにおいても、それを達成できたと自負しています。

レンズの小型化、回路の分離によって狭額縁を実現した
左が従来のカメラモジュール、右が新たなカメラモジュール
新たなカメラモジュールを持って説明するエイゾール氏

今世代のXPS 13の改良点

――性能という点ではどんな進化を遂げていますか。

エイゾール CPUには、最新の第8世代Intel Coreのクアッドコアプロセッサを搭載し、さらに強力になりました。WhiskeyLakeをベースにしたこのCPUは、Kaby Lakeに比べて、遙かに高い性能を実現しています。

 性能の向上で、複数のアプリケーションを同時に実行可能できるほか、Dell Power Managerにより、静けさ重視、最大パフォーマンス重視、冷却モード重視といったように、静音性や性能、温度をカスタマイズできます。

 13.3型のノートPCはどうしても性能で妥協しなくてはならない傾向がありますが、XPS 13は、性能では一切妥協をしていません。XPS 13は、業界最速クラスの性能を実現していますし、プロセッサもつねにオーバークロックし、他社にはない高い性能を実現しています。

――放熱構造についてはどうですか。

エイゾール 背面に大きな吸気口と排気口を配置したほか、ゴアテックスのような素材を活用して、断熱するといったことも行なっています。筐体内の基本的なレイアウトには変更はありませんが、従来のXPS 13に比べて、小型化しているので、それだけ基板も小型化しています。

 小型化においては、ファン、ヒートシンク、基板、バッテリという4つのポイントがあります。これら1つ1つを小型化する取り組みを行ないながら、放熱構造を改善し、熱効率を高め、高い性能を維持しています。そして、バッテリ寿命も、最大21時間の使用を可能にするなど、クラス最高の水準を実現しています。

――XPS 13では、ビデオ機能を大幅に強化していますね。この狙いはなんですか。

エイゾール ビデオ機能として、最大の強化ポイントは、DELL CINEMAをパワーアップし、CinemaColor 2.0とした点です。ここでは、Dolby Visionに対応し、HDRをサポート。これにより、明るさとコントラスト、色彩と超鮮明な画像品質を可能にし、臨場感あふれるエンターテイメント体験を実現できるようにしました。

 Dolby Visionは、標準的な画像と比較して最大40倍の明るさを実現。10倍の暗さで黒を表現することができることから、これまでになかったような生き生きとした画像を表示することが可能です。また、CinemaStream 2.0はバッファリングを従来比で最大10分の1に抑え、ビデオ品質を最大6倍向上させています。

 ビジュアルの良さを改善するだけでなく、ネットワーク部分も改善することで、バッファにかかる時間を短縮することで、ゲームをしたり、映画を見ても、ストレスがないすばらしい画質を実現しています。

 さらに、CinemaSound 2.0によってボリュームや重低音、音声の質を高めています。Sound Optimizationでは、最高の体験ができるように自動的にイコライザーを調整しますし、Waves MaxxAudio NXでは、デバイスに搭載したWebカメラを通じて、ユーザーの頭の動きを追跡して、つねにユーザーがいる方向に音の向けることができます。

 こうした強化において、私たちが重視しているのは、実際にユーザーがどういう風に使っているのか、どう使いたいのかというところにフォーカスするということでした。競合他社の場合は、ハードウェア中心で改良をしようと考えていますが、実際のユーザーはハードウェアとしての性能よりも、それをどう使うか、どう見えるかを重要しています。

 たとえば、DELL CINEMAについては、ハードとしても当然優れたものを利用していますが、さまざまなユースケースを考え、それらのニーズに幅広く対応しながら、どうやってイノベーションを達成できるかということを考えています。ニーズにおける課題はなにか、どうすれば、使い勝手の良さを高めることができるか、ユースケースを改良できるかということに取り組んできました。

 DELL CINEMAの開発において、具体的なユースケースとしたのが、映画の視聴でした。プレミアムなPCを利用している人に人気がある使い方の1つです。いままでお話してきたような性能や体験を実現するために、DELL CINEMAでは、かなりの投資を行ないましたし、今後も、この部分には継続的な投資を行ない、機能強化を行なっていく予定です。

 一方で、XPS 13を、ゲームで使用する人もいますから、コマンドセンターまわりの改良も行ない、よりスムーズにゲームを楽しむことができる環境も用意します。さらに、PCとスマートフォンを組み合わせて使うといった用途もありますから、それに対応するためにモバイルコネクト機能も改良しました。

 こうしたユーザーの使い方を考えた機能を強化を、ソフトウェアを中心とした開発によって、新たな機能を利用する上で、ユーザーが余計なコスト負担をしなくても済むようにしているわけです。これもXPS 13のこだわりの1つです。

こだわりのホワイトカラーは日本で人気

――本体カラーにホワイトを採用したモデルでは、パームレストやキーボードまでホワイトにしました。ここまでホワイトにこだわったことにも驚きました。

エイゾール ご指摘のように、本体カラーにホワイトを採用したモデルでは、パームレストやキーボードも徹底してホワイトにこだわりましたし、さらに、周辺機器も、アクセサリも、すべてホワイトで統一し、デザイン性を高めました。これは最先端のファッションからインスピレーションを得たものであり、クールな外観に仕上がったと思っています。

――なぜ、ここまでホワイトにこだわったのですか。

エイゾール ホワイトであることを前面に打ち出した製品はほかにもあります。しかし、よくみると、どこかを妥協しているという場合がほとんどです。ベゼルがブラックだったり、キーボードがブラックだったり、ACアダプタがブラックだったりといったことがあり、これらの色が混ざることで、かえって安っぽさを表現してしまっていたと言えます。

 従来のXPS 13も、パームレストはブラックであり、既存の素材では、納得のいくホワイトにはできませんでした。そこで、今回の製品では、新たな素材を採用したのです。表面の仕上がりにも妥協はしていません。

 XPS 13は、すべてのカテゴリで最高のものを追求することにコミットしています。それは、筐体色も同じであり、ホワイトにするならば、キーボードも、パームレストも、狭額縁も、ACアダプタも、すべてホワイトに統一しようと考えたわけです。

アダプタやアクセサリもすべてホワイトで統一した

 しかも、パームレストに採用しているのは、Dellのためだけに作られたアークティックホワイトのグラスファイバー素材であり、バックライトの配光から、黄ばみや汚れを防ぎ紫外線をカットするコーティングまで行なっています。

 ホワイトというと、使うにしたがい、汚れが目立つのではないかという意見もあると思いますが、この素材は、購入したときに比べても、全体的な質感が劣化しないようにしています。そして、ブラックマーカーで汚れがついてしまっても、しっかりと落ちるように工夫しています。これを実現するには、かなりの投資が必要でした。

 日本におけるDellの製品の売れ行きを見ていると、ホワイトの人気が高いことがわかります。ここまでホワイトで統一したものを出したことで、日本の市場においても、高い人気を博す製品になるのではと思っています。

 このXPS 13は、とても目立つと思いますよ(笑)。使っている人に「これは、どこのPCですか」、「このPCはいいですね」と言われるようなPCを出したいと考え、実際にそれを実現することに成功したと自負しています。空港やオフィス内でも、これを使っていると、きっと周りの人から、「この人は本当にプレミアムなPCを使っているんだ」ということを理解してもらえると思いますよ。

10点満点中10点のモバイルノート

――一番苦労した部分はどこでしょうか。

エイゾール なによりも一番難しかったのは、先にもふれたように、Webカメラを元の位置である上部に戻すということでした。小型化するだけでなく、狭額縁の設計コンセプトを変えないということは一切譲りませんでした。実際には、少し、画面の位置を下げていますが、そこにぴったり入るようにするために、Webカメラは、3年間もの歳月をかけて開発しました。

 ここでは、小型化するだけでなく、画質を落とさないということも大切です。XPS 13はプレミアムプロダクトですから、そこに妥協があってはいけません。ユーザーもそれでは納得しません。だからこそ、カメラのレンズも小型化しても、画質を落とさない新たな技術を搭載したわけです。

 そして、繰り返しになりますが、XPS 13は、性能に関しても妥協していません。他社のノートPC見ると、必ず、どこかを妥協しています。たとえば、価格は安いかもしれないが、バッテリ寿命が短い。世界で一番軽いかもしれないが、性能が低かったり、バッテリ駆動時間が短いといったようなことが見られています。

 いくつかある構成要素のうち、どこかは、一番であると言うが、どこかを妥協しているのです。Dellはそうしたものを出したくはない。性能は業界で最高のものを出したい、バッテリ寿命や重量でもしっかりとバランスを取ったものを出す。

 なかには、クラス最高を達成できない要素があるかもしれませんが、全体を比較したなかで、バランスが取れたベストの製品を出す。それがNew XPS 13ということになります。

――完成度は、10点満点中何点ぐらいですか。

エイゾール これまでのXPS 13において、唯一、妥協していたのが、カメラの位置でした。それ以外のところで考えれば、性能は問題なく、バッテリ寿命も十分、素材についてもクラス最高のものを利用していました(自身が利用しているノートPCのカメラ部分にシールが貼ってあるのを見せながら)。

 私は、もともとカメラを使っていないので、気にはなりませんでしたが(笑)、カメラを使っているユーザーにとっては、唯一の欠点であったと言えます。カメラを使用しない私にとっては従来モデルでも、すでに10点満点だったわけですが、カメラを使っている人にとってはそれが減点要素となり、9点とか、9.5点ということになっていたでしょう。

 しかし、新たなXPS 13では、その課題が解決され、ほかの要素についても申し分ないレベルを維持しています。10点がつかない理由はありません。この製品を発売して以降、ユーザーやアナリストなどの声を聞いても、パーフェクトな13型ノートPCだという評価を得ています。10点中10点という以外には表現できません。

――新たなXPS 13は、どんな人に使ってもらいたいと考えていますか。

エイゾール テクノロジの良さを本当に理解している人に使ってほしいですね。とくに、これまでノートPCを購入したことがあるが、なにかの部分は妥協しなくてはならず、それを不満に思っていた人にこそ使ってもらいたいと思っています。

 具体的には、低価格を求める代わりに品質で妥協しなくてはならなかったとか、軽量化を優先したために、バッテリ寿命が短く、性能が落ちるといった妥協をしていた人たちです。

 XPS 13は、本当の意味でのプレミアムPCになります。もちろん、価格はそれなりにしますから、全世界で数百万台売れるような製品ではありません。かぎられた人に使ってもらう製品ではありますが、使ってもらった人には、ベストのなかのベストということを理解して使っていただけますし、プレミアムなユーザー体験を得られます。これこそが、プレミアムPCであるということを理解してもらえる方には、ぜひ使ってほしいですね。

――ビジネスという観点で見た場合に成功条件はなんですか。

エイゾール 売上げは、成功を推し量る尺度の1つにはなりますが、XPS 13によって、Dellがラインナップしているほかの製品にどんなインパクトを与えることができるのか、といったことも重要な要素になると考えています。

 たとえば、数年前に発売したXPS 13は、Dellが出しているほかの製品にもさまざまな影響をおよぼしています。実際、いま発売しているInspironやLatitudeは、数年前のXPS 13の性能を実現したものになっています。

 今回のXPS 13も、これが、いまもっともプレミアムなPCだと言えますが、3年、4年後には、この水準が、DellのPCのメインストリームになります。そうした将来に向けた牽引役をはたすといったことも、XPS 13の成功を推し量る条件の1つだと思っています。

 実際、これまでに、この戦略は成功しています。それは、DellのPCビジネスが20四半期連続で成長していることからも証明されると思います。

ALIENWAREの新モデルも展開

ALIENWARE AREA-51m

――エイゾールバイスプレジテントは、ALIENWAREの共同創業者の1人であるとともに、現在でも、この製品を担当しています。このほど、ALIENWAREの新製品として、「NEW ALIENWARE AREA-51m」や「NEW ALIENWARE m17」を日本でも発売しました。この狙いを聞かせてください。

エイゾール NEW ALIENWARE AREA-51mは、初めてデスクトップの置き換えを実現したゲーミングノートPCであり、NEW ALIENWARE m17は、ALIENWARE史上、最薄で、最軽量を実現した17型ノートPCです。

 とくに、NEW ALIENWARE AREA-51mは、新たなブランドデザインID「LEGENDデザイン」を採用した製品であり、私自身、この製品にとても興奮しています。ALIENWAREは、これまでに22年の歴史がありますが、新たなデザインに一新したのは、これが4回目のことです。

 つまり、今回の製品は、歴史的に見ても、特別なものになっています。世界でもっともパワフルなゲーミングノートPCにするためにはどうするかということを考えて開発した製品であり、アップグレード可能なオーバークロック対応のデスクトップ向け第9世代Coreプロセッサや、最新のNVIDIA GPUを搭載しました。

 メモリやストレージだけでなく、CPUとGPUの換装も可能とした、これまでにない特別な17型ゲーミングノートPCとなっており、筐体にはマグネシウム合金シャーシを採用しています。

 まさに、デスクトップのゲーム体験を、ノートPCで実現します。また、NEW ALIENWARE m17は、XPS 13が小型化、軽量化したのと同じように、もっとも薄く、もっとも軽い製品を目指しました。

 もちろん性能にも妥協はありません。小型化、軽量化すると、どうしても性能を妥協しなくてはなりませんが、性能を落とさずに、ALIENWAREのブランドに相応しい水準を実現しています。

NEW ALIENWARE m17

 ALIENWAREは、私の子供みたいなものですから、強い思い入れを持っています。とくに、今回は、これまでにはないまったく新たな領域へと製品を進化させました。ぜひ、多くのゲーミングユーザーに体験してほしいですね。