山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

10.3型カラーE Ink搭載でPlayストアも使える「BOOX Tab Ultra C」を試す

「BOOX Tab Ultra C」。実売価格は9万1,800円

 ONYX Internationalの「BOOX Tab Ultra C」は、10.3型のカラーE Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。Google Playストアにも対応しており、電子書籍に限らず、好みのAndroidアプリを自由にインストールして利用できるのが特徴だ。

 近年のBOOXは、既存モデルをカラー化したモデルを追加投入するのが恒例となっている。本製品は2022年に発売されたハイエンドモデル「BOOX Tab Ultra」のカラー版にあたり、最新のカラーE Inkパネル「Kaleido 3」を搭載しているのが売りだ。

 今回は、国内代理店であるSKTから借用した製品をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、ベースにあたるモノクロモデル「BOOX Tab Ultra」と比較しつつチェックする。

モノクロモデルとの違いは実質E Inkパネルだけ

 まずはモノクロモデル「BOOX Tab Ultra」との比較から。参考までに、画面サイズがほぼ同等のKindleの大画面モデル「Kindle Scribe」のスペックもあわせて掲載する。

BOOX Tab Ultra CBOOX Tab UltraKindle Scribe
発売月2023年5月2022年11月2022年11月
OSAndroid 11Android 11独自
サイズ184.5×225×6.7mm184.5×225×6.7mm196×230×5.8mm
重量480g480g433g
解像度モノクロ: 1,860×2,480ドット(300ppi)
カラー: 930×1,240ドット(150ppi)
1,404×1,872ドット(227dpi)1,860×2,480ドット(300ppi)
ディスプレイ10.3型Kaleido 3(4,096色)フラットカバーレンズ付きCarta 1200ガラススクリーン10.3型フラットHD Cartaスクリーン10.2型Amazonディスプレイ、フォント最適化技術、16階調グレースケール
通信方式Wi-Fi 5Wi-Fi 5Wi-Fi 4
CPUQualcomm 8コアQualcomm 8コア不明
メモリ容量4GB4GB不明
ストレージ128GB128GB16GB/32GB/64GB
microSDカードスロットあり(最大512GB)あり-
フロントライトあり(暖色/寒色)あり(暖色/寒色)あり(暖色/寒色)、自動調整あり
ページめくりタップ、スワイプタップ、スワイプタップ、スワイプ
指紋認証ありあり-
端子USB Type-CUSB Type-CUSB Type-C
バッテリ持続時間の目安不明(容量6,300mAh)不明(容量6,300mAh)最大12週間
価格(税込)9万1,800円8万3,800円4万7,980円(16GB、スタンダードペン付き)
5万1,980円(16GB、プレミアムペン付き)
5万4,980円(32GB、プレミアムペン付き)
5万9,980円(64GB、プレミアムペン付き)
備考ワコムスタイラスペン(BOOX Pen2 Pro)が付属ワコムスタイラスペン(BOOX Pen2 Pro)が付属スタンダードペンもしくはプレミアムペンが付属

 この表から分かるように、モノクロモデルとの違いは、Kaleido Plusの後継に当たる4,096色のカラーE Inkパネル「Kaleido 3」を搭載していることを除けば、ごくわずかしかない。

 モノクロモデルの特徴だった、BSR(BOOX Super Refresh)なる独自GPUや、書類のスキャンを行なうための専用カメラ、指紋認証を搭載した電源ボタンなどもしっかり受け継がれている。事実上、E Inkをカラー化しただけのモデルと言って差し支えない。

 実売価格は9万1,800円で、モノクロモデルのBOOX Tab Ultra(8万3,800円)との差は8,000円。もっとも、BOOX Tab Ultraは発売開始時点で9万9,800円だったのが現在では1万6,000円安くなっており、当時の価格のままならば本製品は10万円を超えていてもおかしくなかったはずで、むしろリーズナブルな印象すらある。

 なお製品には4,096段階の筆圧検知に対応するスタイラスが標準添付されるが、これらはモノクロモデルとまったく同一のモデル。さらに別売のカバーやキーボード付カバーも共用となっている。

画面サイズは10.3型。片方のベゼルだけが幅のあるデザイン。ページめくりボタンは非搭載
重力センサーによる画面回転機能を搭載。横向きにした状態でも利用できる
背面。金属製の筐体を採用する。外見上の特徴である背面右の摩訶不思議なパターンは本製品でも健在
背面のカメラは書類をテキスト化するためのもので、一般的な写真の撮影には使えない
ベゼルは幅のある側は20mm、そのほかは8mmとスリム
底面、USB Type-CポートのほかmicroSDカードスロットを搭載する
上面。指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンを搭載する
側面にはポゴピンがあり、オプションのキーボードケースを接続できる
電源ボタンと一体化した指紋認証センサー。反応は高速でストレスもない
microSDスロットを搭載。最大512GBまでサポートする
重量は実測489g。E Ink端末としてはかなり重い部類に入る
モノクロモデルと同じワコムスタイラスペン(BOOX Pen2 Pro)が標準添付される
オプションのカバーは正面と背面を覆うだけのシンプルな構造

外観もモノクロモデルと同様。ベンチマークも誤差レベル

 セットアップは、タイムゾーンや電源まわりを設定し、一旦ホーム画面が表示されたあと、あらためてWi-Fi設定を行なうというBOOXではおなじみのフロー。GSF(Google Service Framework) IDの設定もいらず、ログインさえすればGoogle Playストアがすぐ利用できるのも、従来のモノクロモデルと共通している。

セットアップ開始。まずは言語を選択する
プライバシーポリシーに同意して次に進む
タイムゾーンの設定。デフォルトでは中国標準時になっているので日本標準時に修正する
スリープおよび電源オフまでの時間を設定する。従来モデルは最長10分と短かかったが本製品では最長30分も指定可能になった
操作方法をナビゲーションまたはボタンジェスチャーから選択する。名称がジェスチャーからボタンジェスチャーに変更されているが内容は変わらない。このあとサイドジェスチャーについても指定する
ここで再起動が行なわれる
ホーム画面が表示された。続けてWi-Fi設定を行うので最下段の右端、歯車マークをタップ
Wi-Fiに接続すれば一通りの初期設定は完了だ
Google Playストアにログインする
ログインが完了したらGoogle Playストアもすぐに利用できる

 実機を手に持った印象は、モノクロモデルとまったく同じ。すなわち直線主体のスタイリッシュなデザインで、薄型ながら筐体の密度は非常に高く、手に持つと重みがずしりとくるというものだ。ちなみに本体色はモノクロモデルとわずかに違っているので、両者を並べればそこで見分けがつく。

 やや異なるのはフロントライトで、モノクロモデルは2つのスライダーで寒色と暖色をそれぞれ調節する方式だったのに対し、本製品は明るさを調節するスライダーが上段にあり、そこに下段のスライダーで暖色をプラスする仕組み。それゆえ上段をオフにするとフロントライト自体が消えてしまう。また色味も異なるなど、従来とはまるで別物だ。

 カラーE Ink搭載にともなうメニュー類の変更は、設定画面についてはほぼ皆無。一方のE Inkの最適化画面には、従来はなかった項目がいくつか追加されているが、これも濃淡を調整するための項目が主で、色調全体をダイナミックにコントロールしたり、一時的にモノクロに切り替えるような機能はない。

左が本製品、右がモノクロモデル。スリープ状態の壁紙だけでも印象はずいぶん違う
背面。デザインはまったく同一だが本体色が微妙に違う
フロントライトを最大値にしたところ。色味が微妙に異なる
こちらは暖色を最大値にしたところ。こちらもモノクロモデルとはかなり異なる色味だ
E Ink設定の画面は「鮮やかさの向上」「輝度」という項目が追加されている。ただしそう劇的に変わるわけではない
最適化設定の「表示」タブ。項目に変更はない。DPI設定が違うのは、モノクロモデルとは解像度が異なるためだろう
「カラー」タブ。従来からもあるタブだが意外にも項目に変更はない
「カラー」タブの「その他の色」。ここも項目はまったく同じだ
「その他」タブ。ここも違いはない
リフレッシュモードには「フリッカーに対するクイックブラシ」という項目が追加されているが、今回試した限りでは違いは分からなかった

 ベンチマークも念のためにも行なってみたが、モノクロモデルとの違いは誤差レベル。Google OctaneとGeekBench、どちらも本製品のほうがわずかにスコアが低いが、これはカラー表示に一定のリソースが割かれているという理解でよいだろう。なお後述するがタッチ時のレスポンスなども本製品のほうがわずかに遅く、これらベンチマークの結果と一致している。

Google Octaneの値。左が本製品、右がモノクロモデル。誤差程度の違いしかない
GeekBenchの値。こちらもほぼ誤差レベル。ただし両者ともInvalid(無効)扱いとなっているので参考程度としてほしい

「リーガルモード」の活用で電子書籍を快適に利用可能

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。

 解像度は、モノクロは300dpiと高い一方で、カラーは150ppiと低くなっている。モノクロとカラーで解像度が異なるのは既存のカラーE Ink「Kaleido Plus」と同様だが、後継に当たる今回の「Kaleido 3」では、カラーの解像度は100ppiから150ppiへと向上したほか、彩度が30%向上したとされている。

 またモノクロの解像度も300ppiと、モノクロモデルの解像度(227ppi)を上回る逆転現象が起きている。そのため白黒コンテンツの表示でも、グラデーション表現などの例外を除けば、本製品のほうがモノクロモデルより表現力は上だ。

コミックは原寸以上のサイズで表示できる。天地反転させてベゼルの厚みがある側を右に持ってくることももちろん可能
見開き表示でもサイズには余裕がある
モノクロモデル(右)との比較。フロントライトの色味の違いが目立つが、解像度は本製品のほうが高い
Kindle Scribe(右)との比較。表示サイズはほぼ同等。色の濃さはリフレッシュモードの設定によっても変化する
左から、本製品(モノクロ300ppi)、モノクロモデル(227ppi)、Kindle Scribe(300ppi)。十分な解像度だ
テキストコンテンツでの解像度の比較。左から、本製品(モノクロ300ppi)、モノクロモデル(227ppi)、Kindle Scribe(300ppi)。こちらも十分に高い

 ではカラーのコンテンツはどうだろうか。カラーは、150ppiというやや低い解像度ゆえ、ベタ塗りこそ十分なクオリティだが、カラーだけで表現された文字は多少の読みづらさを感じる。すべてをモノクロ227ppiで表示できるモノクロモデルのほうが、コンテンツによっては見やすいと感じられるケースもある。

 ただしかつての100ppiの頃と比べると可読性は明らかに向上しており、背景がカラーで文字が白抜きという、従来は文字自体の判別が困難だった色の組み合わせでも、きちんと読むことができる。

 もちろんカラーE Inkならではの、モノクロに着彩したような彩度の低さは如何ともし難く、写真などの表示が苦手なことは変わりないが、モノクロでは判別がつかなかったグラフは色分けされている部分が正しく判別できるようになるので、図版の多い技術書などでは十分にメリットがあるだろう。

左が本製品、右がモノクロモデル。本製品はカラー表示に対応している
左が本製品、右がモノクロモデル。彩度こそ高くないものの、カラー背景の白抜き文字も高いクオリティで読み取れる
左が本製品、右がモノクロモデル。色分けされたグラフもきちんと見分けがつく。ただし解像度だけでいうとモノクロモデルのほうがなめらかに感じることもある

 実際には読書に大きく影響するのは、こうした解像度うんぬんよりも、リフレッシュモードの設定に負うところが大きい。カラーE InkはモノクロのE Inkと比べて色数が多いためか、残像がモノクロ以上に目障りで、どれだけ残像を消せるかが、見やすさに直結するからだ。

 そのためにはレスポンスを多少犠牲にしても、ページめくりのたびにまるごとリフレッシュするのが理想なのだが、BOOXシリーズは従来から、リフレッシュの間隔をゼロに設定しても正常に機能しない問題があり、それは本製品でも変わっていない。

 しかしリフレッシュモードを「リーガルモード」に設定すれば、そうした問題も解決する。このモードに設定すれば、リフレッシュモードの設定によらず、ページ遷移ごとにリフレッシュが行なわれるようになり、残像がほぼ気にならなくなる。

Kindleアプリで、手動リフレッシュしない状態でのリフレッシュモードの比較。これは「HDモード」で、前ページのテキストの残像が画像全体に残っており、読めたものではない
「Balancedモード」。残像はほとんどなく読みやすい。ただし(少なくともKindleでは)ページめくりのエフェクトが強制的にスライドになってしまう
「高速モード」。HDモードほどではないが残像があり、文章を読むにはつらい
「超高速モード」。こちらも残像があり、文章を読むには不向きだ
「リーガルモード」。ほかとは色味が若干異なるが残像はなく、また文字と背景がきちんと分離しており読みやすい

 正直なところ、このリーガルモードがなければ、いくらカラーE Inkが最新版でも、実用性はいま一歩という評価になりかねなかったのだが、リーガルモードのおかげで十分に実用的だと評価できる。グラデーションの処理にやや癖があるほか、モノクロの文字が若干ぼやける副作用はあるが、原則としてオンにしておくべきだろう。

 ただし少々ややこしいが、これはKindleアプリをメインに使う場合の話だ。細かい挙動や特性はアプリごとにそれぞれ異なっており、特に電子書籍アプリはページめくり時のエフェクトが影響を及ぼすこともあるので、試行錯誤は避けられない。リーガルモードを基本線に、5つのリフレッシュモードのどれがよいかを切り替えつつ試してみてほしい。

リーガルモード(左)はBalancedモード(右)と比べるとグラデーションの処理にやや癖がある。好みが分かれるとすればここだろう

 なおページめくりなどのレスポンスについては、モノクロモデルよりワンテンポ遅れるものの十分に高速だ。ただしこれはモノクロモデルにも言えることだが、スマホやタブレットのようにサッと触れた程度ではタップとみなされないケースがあるので、そのあたりを意識して操作するとよいだろう。

本製品(左)とモノクロモデル(右)の、ページめくり速度の比較。スワイプおよびタップで比較している。本製品のほうが一拍遅れる傾向があるが、タップしても無反応といったことはなく、十分に実用的だ

カラーE Inkが身近になってきたことを感じさせる製品

 以上のように、BOOXシリーズの中でもスペックが高く完成度が高いフラッグシップモデル「Tab Ultra」をベースとした製品ゆえ、ハードウェアの信頼性は極めて高い。

 その一方でカラーE Inkについては、現在入手できる製品の中では最高峰ではあるものの、オールラウンドで使える汎用性はない。色分けされた図版などを表示するには最適だが(ほかにプレゼン資料などにも向いているだろう)、カラー写真など色鮮やかさを売りにしたコンテンツはどうしても見劣りする。

iPad(右)との比較。発色の差は一目瞭然だ
ブラウザで本サイトのインプレスWebサイト一覧を表示したところ。彩度こそ低いが極端に苦手な色もなく、識別可能なレベルにある

 このあたりの特性の違いがきちんと把握できていればメリットは大だが、液晶や有機ELのような鮮やかさや色の再現性を期待すると、期待外れということになりかねない。最新のカラーE Inkパネル「Kaleido 3」を搭載していても、この根本の部分は変わらないので、それだけはしっかりと把握しておきたいところだ。

 とはいえ、本製品の価格はモノクロモデルと1割程度しか違わず、またモノクロに限ってはモノクロモデルより解像度が高いという利点もある。カラーE Inkがますます身近になってきたことを強く感じさせる製品だけに、現在モノクロモデルの購入を考えている人は、あわせて検討すべき製品と言えそうだ。