山田祥平のRe:config.sys

狭いながらも役立つデスクトップ

 日常的なインターネットの利用環境がスマホのみ利用というパターンが最多という状況が続いているそうだ。個人的に本当にこれでよいのかという思いもある。特にシニア層においてはいろいろな懸念もある。この傾向は当面変わる気配がないのだろうか。

スマホのみのインターネット利用が最多に

 LINEヤフー株式会社がインターネットの利用環境の定点調査結果を発表した。2016年4月以降、半期に一度、スマートフォンなどでのインターネット利用に関する定点調査を実施している同社だが、今回は初回から9年間が経過した2024年下期(10月)の結果だ。調査概要は、

  • 調査地区:全国
  • 標本抽出方法:住宅地図データベースから世帯を抽出し、個人を割り当て
  • 調査方法:調査員による個別訪問留置調査
  • 調査対象者:15~79歳の男女 合計1,186サンプル(人口構成比に沿って抽出)
  • 調査期間:2024年10月

となっている。なお2020年の上期は緊急事態宣言中で調査は実施されず、また、現時点でプレスリリースとして結果が発表されているのは2018年上期以降だが貴重な資料だといえる。

 調査結果を見ると、職場や学校での利用も含む週一回以上のインターネット利用において、その利用環境は15~79歳全体で「スマホのみ」が55%だった。これは過去最多だという。スマホとPCの併用は35%となっている。

 直近3年間の利用者推移を観察すると2022年の10月は50%だったが、今回は5pt上昇している。特に女性においてスマホのみの比率が高い傾向が続いていて今回は67%とこれまた過去最高を更新した。

 年代別では60代以上が2022年10月に80%を超えてスマホでインターネットを利用するようになり、その後も継続的に増加、特に70代についての増加が顕著だという。

 ちなみに、同種の調査としては2024年夏の情報通信白書もある。こちらの調査では端末別のインターネット利用率はスマホが72.9%だ。PCが47.4%なので25%程度がPCのみと考えてよさそうだ。

 LINEヤフーの調査と対象はほぼ同じだが調査時期が1年前ということを考えればLINEヤフー調査の2023年上期調査との比較が妥当だろう。それでも倍以上の違いがあるように見えるが、職場や学校での利用の定義の違いなどの影響もありそうだ。いずれにしても増加傾向にあるのは同じだ。

シニア層のスマホ利用が増加

 PCでのインターネット利用を敬遠し、スマホで何でも済ませようとするのは若年層の特徴だと想像していたのだが、どうも、スマホのみ派が増加しているのに、60歳以上のシニア層が貢献している様子が見てとれる。普通に考えれば、ある程度大きな画面で視認性、一覧性がいいPC画面での情報収集の方が効率がよさそうだし、実際にそうなのだが、彼らが受けている印象はそうでもないらしい。

 だが、この傾向はますます顕著になるだろう。その1つの要因がAIだ。煩雑な操作を繰り返して追求しなくても、知りたいこと、やらせたいことを的確にAIに伝えることができれば、小さなスマホの画面でことがたりる。マルチタスクを駆使するようなスキルがなくても、ほぼ瞬時に求めていた解が見つかることが多くなるだろうからだ。

 確かにPCに接続された大サイズのモニターは、いろんなことを同時にこなすには便利だし、1つのことに注目するにしても、一度に見渡せる情報量が多く、パッと見て全貌を理解し、短時間で内容を把握することができそうだ。

 今はまだAIがウソをつくので、提示された結果が本当に正しいかどうかを疑ってかからなければならず、結果の真偽を調べるために、別途人力での検索や検算などが必要だ。回答を鵜呑みにするわけにはいかないからだ。だから、まるでExcelの表を前に電卓を叩くような作業が求められている。でも、そんなことをしなければならないのも、あとわずかだろう。全幅の信頼を寄せられる情報を結果として出してくるようになるはずだ。

 それなら作業領域はそんなに大きくなくてもいい。というか作業する必要がないからだ。

 かつては、大きな机が膨大な量の参考資料を並べるために便利だった。個人的にもその広さを求めて1×2mの巨大会議室用テーブルをデスクとして何十年も使ってきた。その広さでも足りず、気がつくと机上は書類の山脈が築かれていた。だが、今は、その広さを持て余すようにもなった。

 作業スペースはモニターによって垂直方向に拡張されるようになった。書類の山脈よりはスマートだ。だから今なら奥行き70cm、幅も半分の1m程度のデスクがあれば特に不便はなさそうだ。1mという横幅は、今メインに使っている42.5型の4Kモニターの横幅とほぼ同じだ。アスペクト比16:9で、50型、55型といったサイズのモニター利用ができるかどうかはあやしいが、1m以下の距離で眺めるモニターが大きいと上方への視線移動が大変なので42.5型は適正だとも思う。実際、PC用のモニターとして入手できる製品はこの42.5型が最大級クラスで、それを超えるモニターはワイド化した湾曲モニターになる。あるいはチューナレスTVか。

 デスクの縮小によって新たなスペースも生まれる。もっともハードウェアとしてのデスクそのものは3Dアーキテクチャを支える。目の前にはモニターが立ちはだかり、デスク下にも収納スペースが確保されている。大きなデスクトップPCケースを設置するにもちょうどよく、なかなかデスクを断捨離する決心はつかない。

ITリテラシー再考

 まあ、そのうちAIが出力する長たらしい文章を読むのも面倒になるだろうし、ポイントだけを箇条書きなどで得られればそれで満足というようにもなりそうだ。

 第三者が丁寧に作ったブログを丹念に読むわけでもない。それさえ面倒でYouTube動画を見てあらゆる情報源とする。だからAIもそのうち、ある種のパーソナリティとしてYouTuberのような存在となって知りたいことを教えてくれるようになる。

 そんな未来が十分に予測可能な状況になりつつある今、なぜPCは敬遠されるのだろう、スマホとPCはいったい何が違うのかなんていってはいられない。そんな未来においては、情報機器の出力画面など16:9で7型程度でも大きすぎるくらいと思われるようになるかもしれない。

 そんな状況下で、10型を超えるモニターを持ち、1kg未満とはいえ持ち運びには重さが負担となり、WANが内蔵されていないことでWi-Fi環境がない場所では開いてもインターネットにつながらない、メールやメッセージの着信を待機してくれているわけでもなく、使えばバッテリ残量が気になるようなデバイスが敬遠されるのは、ごくごく自然な流れだともいえる。まして、40型超えのモニターなどを必要とするのは、一部のスペシャリストだけになっても不思議ではない。

 あと10年経てば、世の中のITリテラシーの指標は一変しているだろう。でもシニア層、そしてその予備軍は別だ。認知機能の低下などでの劣化に抗わなければならない。その層がスマホ一辺倒に染まっていくのにはちょっとした危惧を感じざるを得ない。

 そして若年層においても、AIに仕事を奪われるのではなくAIにできない仕事を望むのなら考えを改める必要もありそうだ。