山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
待望の高解像度化、重量わずか160gのE Ink採用6型Androidタブレット「BOOX Poke5」
2023年5月23日 06:25
Onyx Internationalの「BOOX Poke5」は、6型のE Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。KindleやKoboなど特定の電子書籍ストアに紐づいた端末と異なり、Google Playストア経由でインストールしたさまざまな電子書籍ストアアプリを利用できることが特徴だ。
最近のE Ink電子ペーパー端末は、6.8型や7型、さらには10型クラスに至るまで大画面化が進んでおり、かつてはメインストリームだった6型は、現在はエントリーモデルとして扱われることが多い。
今回の「BOOX Poke5」は、従来の「BOOX Poke4 Lite」の後継にあたり、6型のコンパクトな画面を採用しつつ、重量わずか160gという、持ち歩きやすさを重視した設計が大きな特徴だ。また従来モデルの弱点だった解像度も、現行のE Ink端末として遜色がない300ppiへとアップしている。
今回は、国内代理店であるSKTから借用した製品を用い、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、同じ6型モデルであるAmazonの「Kindle」などと比較しつつチェックする。
待望の300ppi化。ストレージは32GBに増量、メモリカードも利用可能に
まずは従来の「BOOX Poke4 Lite」およびAmazonの「Kindle」との比較から。
BOOX Poke5 | BOOX Poke4 Lite | Kindle(第11世代) | |
---|---|---|---|
発売月 | 2023年5月 | 2022年6月 | 2022年10月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 148×108×6.8 mm | 153×107×7.1mm | 157.8×108.6×8.0mm |
重量 | 160g | 150g | 158g |
CPU | クアルコム4コア | Snapdragon630 (4コア) | 不明 |
RAM | 2GB | 2GB | 不明 |
内蔵ストレージ | 32GB | 16GB(実利用可能領域は7GB) | 16GB |
画面サイズ/解像度 | 6型/1,448×1,072ドット(300ppi) | 6型/758×1,024ドット(212ppi) | 6型/1,448×1,072ドット(300ppi) |
ディスプレイ | Eink Cartaスクリーン | E Ink Cartaスクリーン | 6インチ反射抑制スクリーン |
通信方式 | IEEE 802.11b/g/n/ac | IEEE 802.11b/g/n/ac | IEEE 802.11b/g/n |
フロントライト | 暖色および寒色 | 暖色および寒色 | 寒色 |
防水・防塵機能 | - | - | - |
メモリカード | 対応(最大512GB) | - | - |
バッテリ持続時間の目安 | 1500mAh | 1500mAh | 最大6週間 |
OS | Android 11.0 | Android 11.0 | 独自 |
ポート | USB-C | USB-C | USB-C |
価格 | 2万5,800円 | 2万2,800円 | 1万980円(広告あり) 1万2,980円(広告なし) |
【5月30日一部修正】初出時にCPUを「クアルコム8コア」と記載していましたが、国内代理店よりスペックの訂正がありましたので「クアルコム4コア」に修正し、関連の記述も修正しています。
本製品は6型という、現行のBOOXシリーズの中ではもっともコンパクトな画面が特徴だ。同じ6型の従来モデル「BOOX Poke4 Lite」と比べた場合の最大の違いは解像度で、従来は212ppiにとどまっていたのが、本製品は300ppiに対応している。
現行のE Ink電子ペーパー搭載の読書端末は、Kindleは全モデルが300ppi、楽天Koboも発売時期が古いKobo Niaを除くとすべて300ppiになっているので、本製品もこの300ppiへの対応は不可避だった。300ppiあれば、テキストはもちろん、コミックの表示にも十分に対応できるからだ。
このほか、ストレージが倍の32GBになったり、筐体が若干コンパクトになったりと、全面的にアップグレードが施されている。なかでもストレージは、従来の16GBでは半分以上がシステムに占有されていて実質8GBにも満たなかったので、愛用していたユーザーにとっては待望と言っていい。さらにメモリカードに対応したのも大きい。
一方で気になるのはメモリ容量で、BOOXシリーズの中ではもっとも少ない2GBのまま据え置きとなっている。フラグシップモデルの「BOOX Tab Ultra」が4GBのメモリを搭載しているのとは対照的で、メモリの容量がレスポンスに大きく影響するE Ink端末では、若干不安な容量だ。従来のPoke4 Liteも決して高速でなかったので、一抹の不安がある。
筐体はコンパクトに。レスポンスは「並」
BOOXは、前回紹介した「BOOX Tab Ultra C」のように、ホーム画面にアプリとウィジェットが並ぶ新UIを採用したモデルが増えているが、本製品は画面サイズがコンパクトでウィジェットなどが配置できないせいか、旧来と同じデザインのままだ。
そのため、Google Playストアを利用するにも、アプリの設定画面から「使用する」にチェックを入れてGSF IDを申請したあと、利用できるようになるのでしばらく(一晩程度)待たなくてはいけない。セットアップが完了してすぐGoogle Playストアを使えるわけではない点は注意が必要だ。
筐体については、上面に電源ボタン、底面に充電用のUSB Type-Cポートとメモリカードスロットがある以外は、ボタンやポート類は一切ない。メモリカードスロットが追加されてはいるものの、これらは従来モデル「BOOX Poke4 Lite」と大きくは変わっていない。
ただし下部のベゼル幅が切り詰められたことで、筐体は全体的に短くなっている。本製品と同等クラスとなる第11世代Kindleと比べても本製品のほうがコンパクト、かつ薄型であり、持ち歩きやすさでは本製品のほうに圧倒的な分がある。
実際にざっと使ってみた限り、同じBOOXシリーズでもメモリが潤沢な「BOOX Tab Ultra」のように画面がスパッと切り替わるのではなく、タップへのレスポンスこそ早いものの画面の切り替わりが完了するまでにやや時間がかかる。これは従来モデルでも見られた症状で、アニメーション効果のカクつきが目立つ。
特にアプリの起動のようにパワーを必要とする操作では、タップしても無反応なのでもう1度タップすると、2回分のタップがまとめて反映されることがある。その一方、ひとたびアプリを起動してしまえば、ページめくりなど読書にまつわる基本操作は、後述するリフレッシュモードさえ適切に選んでおけば、そこそこサクサクと動く。
このあたり、高解像度化で従来モデル「BOOX Poke4 Lite」よりレスポンスが悪くなっていておかしくないところ、実際にはわずかながら改善されているように感じるのは、パネル性能の差などによるものだろうか。欲を言えばもう少し高速ならば……と思わなくはないのだが、一定の評価はするべきだろう。
高解像度化でコミックも高いクオリティで表示可能に
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。
解像度は300ppiということで、6型のE Ink端末としてはじゅうぶんに高い解像度だ。従来の「BOOX Poke4 Lite」は212ppiと、今となってはかなり低い解像度だったので、現行のKindle端末と同じ300ppiと揃えられたのは大きい。
なおBOOXシリーズのどの製品にも言えることだが、見やすさを大きく左右するのが、E Inkのリフレッシュモードの選択だ。Kindleの場合はA2モード、DMMブックスの場合はHDモードといった具合に、最適解を探して切り替えることで、クオリティの高さと残像の少なさのバランスが取れた表示が可能になる。
これらの最適解はアプリごとに異なるほか、表示するコンテンツがテキストか、コミックか、はたまたそれ以外かにもよって変わってくるので、適した値を探すのはやや骨が折れる。前回紹介した「BOOX Tab Ultra C」は「リーガルモード」が最適解であることが多かったが、本製品は必ずしもそうではない。BOOXシリーズならではの癖のある部分だ。
ところで6型というサイズは、テキストの表示には適しているが、コミックの快適な表示にはやや判断が分かれるサイズでもある。かつてのKindleは、あらゆる製品が6型だったわけだが、今はKindle Paperwhiteは6.8型に、Kindle Oasisは7型へと大型化しており、コミックも余裕を持って表示できるようになっている。
本製品も、解像度的にはコミックを問題なく表示できるのだが、多少の窮屈さは感じられる。ごく稀にコミックを読むといった程度ではなく、ほぼコミックしか読まないのであれば、同じBOOXシリーズでも7型の「BOOX Leaf2」などの選択肢もある。こちらであればページめくりボタンも利用できる。
もっとも、いくら小さいといっても、大画面スマホに表示するのと比べると、ページのサイズは本製品のほうがはるかに大きいので、スマホに代わる読書端末として選ぶのは間違っていない。例えばiPhoneの大画面モデル「iPhone 14 Pro Max」でコミックを表示した場合のページサイズは、本製品を横向きにして見開き表示にした場合の1ページのサイズとほとんど変わらない。
ところで本製品は、ページめくりボタンは搭載せず、またアプリのページめくり機能を割り当てられる音量ボタンもないことから、ページめくりは画面のタップ、もしくはスワイプのいずれかで行なうことになる。
ここで問題になるのは、本製品は画面サイズが狭く、ページをめくるためのタップエリアも決して広くないことだ。どの電子書籍アプリを使うかにもよるが、ページをめくろうとタップしたところ、読書オプションが表示されてしまうといったことがたびたびある。
こうした場合、スワイプを使ったほうが誤操作が少ないのだが、指を広い範囲で動かすには筐体をしっかり保持する必要があり、本製品ほどの横幅があると、片手持ちではこれはかなり厳しい。もしこうした片手での持ちづらさがネックになるならば、スマホやタブレットの上下に引っ掛けて使う補助バンドを使うことも検討するとよいだろう。
従来モデルよりおすすめ度は確実に向上
以上のように、これまでの製品になかった画期的な新機能があるわけではなく、解像度の向上を中心としたアップグレード版という印象だが、従来の問題点だった箇所が(メモリ容量を除けば)着実に改善されている。
解像度が向上したことでコミックの表示にも耐えうるクオリティを実現しているが、前述のように画面サイズの問題もあるほか、パフォーマンスが高いわけではないので、どちらかというとコミックよりもテキストを中心に運用したほうが、ストレスのない読書が行える。
このあたりの位置づけは使い方によって判断が変わってくる製品と言えるが、実売価格も25,800円とリーズナブルで、従来モデルよりおすすめ度は確実に上がっている。複数の電子書籍ストアを併用するユーザー、Kindleや楽天Kobo以外のストアのユーザーは注目しておきたい製品だ。