山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
「iPhone 14 Pro Max」で電子書籍を試す。6.7型大画面は従来からどう進化したのか
2022年9月28日 06:17
Appleの「iPhone 14 Pro Max」は、6.7型の大画面を備えたスマートフォンだ。現行のiPhone 14シリーズの中で最大の画面サイズを備えたモデルで、カメラ機能に注力した、同シリーズの中でフラグシップにあたる製品だ。
従来のiPhone 13シリーズのマイナーアップデートに相当するiPhone 14シリーズだが、それでも細かいところを見ていくと、いろいろと手が加えられている。特にこのProモデルについては、前面カメラ部がベゼルから切り離されたデザインになるなど、見た目にも明確な相違点が存在する。
今回はProモデルの大画面版である「iPhone 14 Pro Max」について、従来モデル「iPhone 13 Pro Max」との違いを中心に、電子書籍ユースを前提としたレビューをお届けする。
ほぼマイナーチェンジ。前面カメラ部の見た目は大きく変更
まずは従来モデルとの比較から。
iPhone 14 Pro Max | iPhone 13 Pro Max | iPhone 12 Pro Max | iPhone 11 Pro Max | iPhone XS Max | |
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発売年月 | 2022年9月 | 2021年9月 | 2020年11月 | 2019年9月 | 2018年9月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 77.6x160.7x7.85mm | 78.1x160.8x7.65mm | 78.1x160.8x7.4mm | 77.8x158.0x8.1mm | 77.4x157.5x7.7mm |
重量 | 240g | 238g | 226g | 226g | 208g |
CPU | A16 Bionicチップ 2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した6コアCPU 5コアGPU 16コアNeural Engine | A15 Bionicチップ 2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した新しい6コアCPU 新しい5コアGPU 新しい16コアNeural Engine | A14 Bionicチップ 次世代のNeural Engine | A13 Bionicチップ | A12 Bionicチップ |
RAM | 6GB | 6GB | 6GB | 4GB | 4GB |
ストレージ | 128/256/512GB/1TB | 128/256/512GB/1TB | 128/256/512GB | 64/256/512GB | 64/256/512GB |
画面サイズ/解像度 | 6.7型/2,796×1,290ドット(460ppi) | 6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi) | 6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi) | 6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi) | 6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi) |
Wi-Fi | 802.11ax(Wi‑Fi6) | 802.11ax(Wi‑Fi6) | 802.11ax(Wi‑Fi6) | 802.11ax(Wi‑Fi6) | 802.11ac |
コネクタ | Lightning | Lightning | Lightning | Lightning | Lightning |
防水防塵 | IP68 | IP68 | IP68 | IP68 | IP68 |
生体認証 | Face ID | Face ID | Face ID | Face ID | Face ID |
駆動時間/バッテリ容量 | ビデオ再生:最大29時間 ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間 オーディオ再生:最大95時間 | ビデオ再生:最大28時間 ビデオ再生(ストリーミング):最大20時間 オーディオ再生:最大95時間 | 最大20時間のビデオ再生 | 最大20時間のビデオ再生 | 最大15時間のビデオ再生 |
備考 | MagSafe対応 | MagSafe対応 | MagSafe対応 | - | - |
この表からも分かるように、一言で言うと、電子書籍ユースに関する違いはほぼ皆無だ。画面サイズや解像度はわずかに向上しているが、文字通りの誤差レベルで、見た目に分かる違いではない。
CPUはA15 BionicからA16 Bionicへと進化しているが、パフォーマンスをそれほど要求されない電子書籍ユースでは、両製品を並べて操作を比較したところで、体感できる違いはない。また動作のスムーズさに影響を及ぼすメモリ容量に関しても、このPro Maxモデルについては、従来と同じ6GBのまま。画面をスクロールする場合に影響してくるリフレッシュレートの最大値も同じ120Hzだ。
デザイン面での大きな相違点としては、画面上の前面カメラ部が挙げられる。この前面カメラはベゼルから切り離されただけでなく、横幅は狭くなり、なおかつ相対的に下へと移動している。これによって電子書籍の表示が何らかの影響を受けるかは、のちほど詳しくチェックする。
本体サイズは、0.1mm背が低く、0.5mm幅が狭く、0.2mm厚みが増している。あまりに微妙すぎる違いで、使い勝手への影響はまったくないが、これに伴ってかボタン配置も若干移動しているため、市販の保護ケースは従来モデルからの流用は難しい。厚み以外は同じだったiPhone 12 Pro Max→iPhone 13 Pro Maxへのモデルチェンジとは、やや様相が異なる。
このほか本稿では割愛するが、カメラ周りは、前面カメラがオートフォーカスに対応したり、手ブレを防ぐアクションモードが搭載されるなど、明確な進化の跡が見られる。本製品に関しては、iPhoneの中でもっとも高いカメラ性能を持つ製品ということで、実質カメラ専用機となっている人も多いはずで、そうしたユーザーは要注目だろう。
iOS 16を搭載。屋外ではより見やすく進化
セットアップの手順は従来通りで、とくに奇をてらったフローはない。本製品の発売と前後して新しい「iOS 16」が発表されており、セットアップ完了後にそちらにアップデートすると、その違いのほうがむしろ目立つ。
全体的な使用感は、iPhone 13 Pro Maxと違いはない。サイズの違いは体感ではまったく判別できず、持ち比べた時の重量も同様だ。両者を並べた時に見分ける方法は、前面カメラ部のデザインを見るのが手っ取り早い。というよりも、それ以外に見分ける手立てはほぼないといってよいかもしれない。
細かい違いとして挙げられるのは、ピーク時の輝度がiPhone 13 Pro Maxでは1,200cd/平方mだったのが、1,600cd/平方mへとアップし、さらに屋外では最大2,000cd/平方mまで対応するようになったことだ。要するに画面がより明るくなり、屋外でも見やすくなったことになる。
実際に屋外で、明るさを最大にした状態で本製品とiPhone 13 Pro Maxを比較すると、確かに本製品のほうが見やすいようだ。屋外で電子書籍を読むニーズがあるかは不明だが、外光がまぶしくて画面が見づらい思いをしたことがある人にとってはプラスだろう。人によっては意外と刺さるポイントかもしれない。
パフォーマンスについては、各種ベンチマークアプリでは平均して数%程度の伸びで、劇的に伸びているといったことはない。前回iPhone 12 Pro MaxがiPhone 13 Pro Maxへと進化した時は、約20%の伸びが見られたので、やや控えめな印象だ。ただしその一方で、バッテリの持ち時間が伸びているなどの進化も見られる。
ダイナミックアイランド部で電子書籍のレイアウトは変化した?
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。
解像度は460ppiということで、表示性能についてはスマホやタブレットを含めたあらゆるデバイスの中で最高クラス。また画面サイズもスマホとしては最大級なので、スマホという縛りの中で選ぶのであれば、この上ない選択肢ということになる。後述するが、これら画面サイズや解像度においては、同時発表の「iPhone 14 Plus」がライバルになるだろう。
さて、iPhone 13 Pro Maxとの違いといえば、何と言っても画面上部の前面カメラ部だ。ベゼルから切り離されたノッチ部は、コンテンツによって面積が広がったり縮んだりする挙動が追加されており、新たにダイナミックアイランド(Dynamic Island)という呼び名が与えられている。
このダイナミックアイランド、現状では電子書籍ユースに特にプラスとなるような特徴的な挙動は見受けられないのだが、ベゼルから切り離されたことで表示上のデッドスペースが下方向に移動したため、余白の扱いが従来と若干変わっている。具体的にどう違うのか、Apple Books、およびKindleで見ていこう。
まずテキストでは、従来よりも1行あたりの文字数が、わずかに減っている場合がある。天地が圧縮されて、そのぶん文字数が削られた格好だ。ただしアスペクト比でいうと、かなり縦長だったのがわずかに短くなっただけであり、さらに画面が細長くなったわけではないので、実用上は何ら問題はない。文字通りの誤差レベルだ。
一方のコミックは、もともとページの上下に余白がある状態で表示されていたので、このダイナミックアイランド部の位置が相対的に下がったからといって、ページサイズが縮小されるなどの影響はまったくない。従来モデルとApple Booksで比較する限り、ページの配置が下に移動するといった違いも特にないようだ。
また読書オプションの画面は、今回検証したApple BooksとKindleは、画面下を基点に表示されるので、画面上部のダイナミックアイランド部によるレイアウトへの影響はない。ほかのアプリは今回未検証だが、画面下を基点にしたデザインのほうが、画面上部のカメラ部の形状や配置が今後どう変わろうが個別対応がいらないので、合理性を考えると今後そうしたレイアウトに統一されていく可能性はありそうだ。
最後に、画面サイズが6.1型と一回り小さいiPhone 14およびiPhone 14 Proと比べた場合はどうだろうか。単に「一回り違う」と片付けるのは簡単だが、本製品は画面の横幅が71mmあるのに対して、iPhone 14では64mmと、かなりの差がある。細かい書き文字の見やすさなどは、やはり本製品のほうがはるかに優勢だ。
一方、本製品が240gというヘビー級であるのに対して、iPhone 14は172g、iPhone 14 Proは206gと、常時手に持って使うことになる電子書籍ユースでは、本製品は不利だ。画面サイズを優先して重量には目をつむるのか、逆に軽さを優先してひとまわり小さい画面サイズを許容するかの判断は、人によって答えが違ってくるだろう。
重量はマイナス。iPhone 14 Plusにも注目したい
以上のように、電子書籍のビューアとしては、みやすさも十分だ。本製品ならではの特殊な機能があるわけではないが、タブレットや専用端末ではなくスマホであることが大前提であれば、よい選択肢だろう。もしかするといずれ電子書籍アプリでも、ダイナミックアイランドの機能をうまく活用した見せ方ができてくるかもしれず、そうなるとそれがさらなるプラスになるかもしれない。
ただし明確なウィークポイントと言えるのが前述の重量だ。240gという重量は、従来モデルからは微増レベルだが、このサイズのスマホとしてはとびきりヘビーであることに変わりはない。8.3型のiPad mini(Wi-Fiモデルで293g)と比べて50gちょっとしか変わらない事実からして、いかに重いか分かろうというものだ。
そのため本製品は、電子書籍での利用に支障はないかと問われるとYesだが、向いた製品かと問われると、やや答えに窮するところがある。本製品で電子書籍を読む量が多いのであれば、片手で長時間保持していてもなるべく疲れないよう、グリップであったりスマホリングだったりと、アクセサリ選びにより注力すべきだろう。本稿の趣旨から外れるので個別の製品は紹介しないが、使い勝手は劇的に変わるので、いろいろと探してみてほしい。
最後になったが「電子書籍をなるべく大きなサイズで見られるiPhone」という条件であれば、新たに追加されたエントリー向けの大画面モデル「iPhone 14 Plus」にも注目したい。重量が203gと軽い(本製品は240g)ことに加えて、従来のiPhone 13 Pro Maxと比べて価格が上がっている本製品よりも安価に入手できる。こちらは本稿執筆時点ではまだ発売されておらず、あらためて本製品と比較しつつレビューしたい。