山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

「iPhone 14 Pro Max」で電子書籍を試す。6.7型大画面は従来からどう進化したのか

「iPhone 14 Pro Max」。実売価格は164,800円から

 Appleの「iPhone 14 Pro Max」は、6.7型の大画面を備えたスマートフォンだ。現行のiPhone 14シリーズの中で最大の画面サイズを備えたモデルで、カメラ機能に注力した、同シリーズの中でフラグシップにあたる製品だ。

 従来のiPhone 13シリーズのマイナーアップデートに相当するiPhone 14シリーズだが、それでも細かいところを見ていくと、いろいろと手が加えられている。特にこのProモデルについては、前面カメラ部がベゼルから切り離されたデザインになるなど、見た目にも明確な相違点が存在する。

 今回はProモデルの大画面版である「iPhone 14 Pro Max」について、従来モデル「iPhone 13 Pro Max」との違いを中心に、電子書籍ユースを前提としたレビューをお届けする。

ほぼマイナーチェンジ。前面カメラ部の見た目は大きく変更

 まずは従来モデルとの比較から。

iPhone 14 Pro MaxiPhone 13 Pro MaxiPhone 12 Pro MaxiPhone 11 Pro MaxiPhone XS Max
発売年月2022年9月2021年9月2020年11月2019年9月2018年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ)77.6x160.7x7.85mm78.1x160.8x7.65mm78.1x160.8x7.4mm77.8x158.0x8.1mm77.4x157.5x7.7mm
重量240g238g226g226g208g
CPUA16 Bionicチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した6コアCPU
5コアGPU
16コアNeural Engine
A15 Bionicチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した新しい6コアCPU
新しい5コアGPU
新しい16コアNeural Engine
A14 Bionicチップ
次世代のNeural Engine
A13 BionicチップA12 Bionicチップ
RAM6GB6GB6GB4GB4GB
ストレージ128/256/512GB/1TB128/256/512GB/1TB128/256/512GB64/256/512GB64/256/512GB
画面サイズ/解像度6.7型/2,796×1,290ドット(460ppi)6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi)6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi)6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi)6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi)
Wi-Fi802.11ax(Wi‑Fi6)802.11ax(Wi‑Fi6)802.11ax(Wi‑Fi6)802.11ax(Wi‑Fi6)802.11ac
コネクタLightningLightningLightningLightningLightning
防水防塵IP68IP68IP68IP68IP68
生体認証Face IDFace IDFace IDFace IDFace ID
駆動時間/バッテリ容量ビデオ再生:最大29時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間
オーディオ再生:最大95時間
ビデオ再生:最大28時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大20時間
オーディオ再生:最大95時間
最大20時間のビデオ再生最大20時間のビデオ再生最大15時間のビデオ再生
備考MagSafe対応MagSafe対応MagSafe対応--

 この表からも分かるように、一言で言うと、電子書籍ユースに関する違いはほぼ皆無だ。画面サイズや解像度はわずかに向上しているが、文字通りの誤差レベルで、見た目に分かる違いではない。

 CPUはA15 BionicからA16 Bionicへと進化しているが、パフォーマンスをそれほど要求されない電子書籍ユースでは、両製品を並べて操作を比較したところで、体感できる違いはない。また動作のスムーズさに影響を及ぼすメモリ容量に関しても、このPro Maxモデルについては、従来と同じ6GBのまま。画面をスクロールする場合に影響してくるリフレッシュレートの最大値も同じ120Hzだ。

 デザイン面での大きな相違点としては、画面上の前面カメラ部が挙げられる。この前面カメラはベゼルから切り離されただけでなく、横幅は狭くなり、なおかつ相対的に下へと移動している。これによって電子書籍の表示が何らかの影響を受けるかは、のちほど詳しくチェックする。

 本体サイズは、0.1mm背が低く、0.5mm幅が狭く、0.2mm厚みが増している。あまりに微妙すぎる違いで、使い勝手への影響はまったくないが、これに伴ってかボタン配置も若干移動しているため、市販の保護ケースは従来モデルからの流用は難しい。厚み以外は同じだったiPhone 12 Pro Max→iPhone 13 Pro Maxへのモデルチェンジとは、やや様相が異なる。

 このほか本稿では割愛するが、カメラ周りは、前面カメラがオートフォーカスに対応したり、手ブレを防ぐアクションモードが搭載されるなど、明確な進化の跡が見られる。本製品に関しては、iPhoneの中でもっとも高いカメラ性能を持つ製品ということで、実質カメラ専用機となっている人も多いはずで、そうしたユーザーは要注目だろう。

従来のiPhone 13 Pro Max(右)との比較。正面から見ると、画面上部のノッチがベゼルから分離したことが目を引く
背面。色が異なるのでややわかりにくいが、カメラ部が一回り大型化している
厚みの比較。左が本製品、右が従来のiPhone 13 Pro Max。誤差レベルで違っているのだが(0.2mm増)、体感では全くわからない
底面のデザインはまったく同一。ポートがLightningなのも変わりはない。次期モデルに期待したいところ
左側面。ボタン類の配置がわずかにずれているため、従来の保護ケースの流用は難しそうだ
右側面。こちらもやはり電源ボタンの位置がわずかにずれている

iOS 16を搭載。屋外ではより見やすく進化

 セットアップの手順は従来通りで、とくに奇をてらったフローはない。本製品の発売と前後して新しい「iOS 16」が発表されており、セットアップ完了後にそちらにアップデートすると、その違いのほうがむしろ目立つ。

 全体的な使用感は、iPhone 13 Pro Maxと違いはない。サイズの違いは体感ではまったく判別できず、持ち比べた時の重量も同様だ。両者を並べた時に見分ける方法は、前面カメラ部のデザインを見るのが手っ取り早い。というよりも、それ以外に見分ける手立てはほぼないといってよいかもしれない。

ロック画面のデザインは、従来のiOS 15までとは大きく異なっている。見慣れていない現時点では「あまりiPhoneらしくない」印象
従来モデル(後ろ)と見分けるにはノッチ部を見るのが手っ取り早い。ちなみに前面カメラは新たにオートフォーカスに対応した
背面のカメラ部も両者を見分ける1つのポイントなのだが、単体で見るとどちらも「デカい」ので、横に並べなければ意外に分からない
重量は241g。従来モデルは同じ条件で測定して239gだったので微増といったところ

 細かい違いとして挙げられるのは、ピーク時の輝度がiPhone 13 Pro Maxでは1,200cd/平方mだったのが、1,600cd/平方mへとアップし、さらに屋外では最大2,000cd/平方mまで対応するようになったことだ。要するに画面がより明るくなり、屋外でも見やすくなったことになる。

 実際に屋外で、明るさを最大にした状態で本製品とiPhone 13 Pro Maxを比較すると、確かに本製品のほうが見やすいようだ。屋外で電子書籍を読むニーズがあるかは不明だが、外光がまぶしくて画面が見づらい思いをしたことがある人にとってはプラスだろう。人によっては意外と刺さるポイントかもしれない。

屋外で本製品(左)とiPhone 13 Pro Max(右)をいずれも明るさ最大で比較した状態。本製品のほうが白がより白く表示される

 パフォーマンスについては、各種ベンチマークアプリでは平均して数%程度の伸びで、劇的に伸びているといったことはない。前回iPhone 12 Pro MaxがiPhone 13 Pro Maxへと進化した時は、約20%の伸びが見られたので、やや控えめな印象だ。ただしその一方で、バッテリの持ち時間が伸びているなどの進化も見られる。

Google Octaneでの比較は「72716」。従来モデルの「65992」に対して10%増
3DMark Wild Life Extremeでの比較は「3137」。従来モデルの「3115」に対して0.7%増
Geekbench 5での比較は、シングルコアが「1874」、マルチコアが「5404」。従来モデルの「1720」「4773」に対してそれぞれ9%増、13%増
Geekbench 5(Metal)での比較は「15378」。従来モデルの「14517」に対して6%増

ダイナミックアイランド部で電子書籍のレイアウトは変化した?

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

 解像度は460ppiということで、表示性能についてはスマホやタブレットを含めたあらゆるデバイスの中で最高クラス。また画面サイズもスマホとしては最大級なので、スマホという縛りの中で選ぶのであれば、この上ない選択肢ということになる。後述するが、これら画面サイズや解像度においては、同時発表の「iPhone 14 Plus」がライバルになるだろう。

テキストを表示した状態。縦長の画面を活用したレイアウトだ
コミックを表示した状態。こちらは天地の余白がややもったいない印象

 さて、iPhone 13 Pro Maxとの違いといえば、何と言っても画面上部の前面カメラ部だ。ベゼルから切り離されたノッチ部は、コンテンツによって面積が広がったり縮んだりする挙動が追加されており、新たにダイナミックアイランド(Dynamic Island)という呼び名が与えられている。

 このダイナミックアイランド、現状では電子書籍ユースに特にプラスとなるような特徴的な挙動は見受けられないのだが、ベゼルから切り離されたことで表示上のデッドスペースが下方向に移動したため、余白の扱いが従来と若干変わっている。具体的にどう違うのか、Apple Books、およびKindleで見ていこう。

 まずテキストでは、従来よりも1行あたりの文字数が、わずかに減っている場合がある。天地が圧縮されて、そのぶん文字数が削られた格好だ。ただしアスペクト比でいうと、かなり縦長だったのがわずかに短くなっただけであり、さらに画面が細長くなったわけではないので、実用上は何ら問題はない。文字通りの誤差レベルだ。

 一方のコミックは、もともとページの上下に余白がある状態で表示されていたので、このダイナミックアイランド部の位置が相対的に下がったからといって、ページサイズが縮小されるなどの影響はまったくない。従来モデルとApple Booksで比較する限り、ページの配置が下に移動するといった違いも特にないようだ。

左が本製品、右がiPhone 13 Pro Max。まったく同じに見えるが、右のほうが1行の文字数が1文字多い場合があるなど、本製品のほうがわずかに天地が圧縮されている
左が本製品、右がiPhone 13 Pro Max。コミックについてはまったく違いは見られない

 また読書オプションの画面は、今回検証したApple BooksとKindleは、画面下を基点に表示されるので、画面上部のダイナミックアイランド部によるレイアウトへの影響はない。ほかのアプリは今回未検証だが、画面下を基点にしたデザインのほうが、画面上部のカメラ部の形状や配置が今後どう変わろうが個別対応がいらないので、合理性を考えると今後そうしたレイアウトに統一されていく可能性はありそうだ。

Apple Booksでは読書まわりのオプションは下からポップアップするように表示される。Kindleも(全部ではないが)やはり下を基点にしている
コミックはそれほど画面下メインというわけではないが、デザインの比重はやはり下に置かれている

 最後に、画面サイズが6.1型と一回り小さいiPhone 14およびiPhone 14 Proと比べた場合はどうだろうか。単に「一回り違う」と片付けるのは簡単だが、本製品は画面の横幅が71mmあるのに対して、iPhone 14では64mmと、かなりの差がある。細かい書き文字の見やすさなどは、やはり本製品のほうがはるかに優勢だ。

 一方、本製品が240gというヘビー級であるのに対して、iPhone 14は172g、iPhone 14 Proは206gと、常時手に持って使うことになる電子書籍ユースでは、本製品は不利だ。画面サイズを優先して重量には目をつむるのか、逆に軽さを優先してひとまわり小さい画面サイズを許容するかの判断は、人によって答えが違ってくるだろう。

左が本製品、右がiPhone 14。ほんのわずかの差に見えるが、細かいテキストの可読性は相当な開きがある
本製品の画面幅は71mm。ちなみにこれは従来のiPhone 13 Pro Maxと変わっていない

重量はマイナス。iPhone 14 Plusにも注目したい

 以上のように、電子書籍のビューアとしては、みやすさも十分だ。本製品ならではの特殊な機能があるわけではないが、タブレットや専用端末ではなくスマホであることが大前提であれば、よい選択肢だろう。もしかするといずれ電子書籍アプリでも、ダイナミックアイランドの機能をうまく活用した見せ方ができてくるかもしれず、そうなるとそれがさらなるプラスになるかもしれない。

 ただし明確なウィークポイントと言えるのが前述の重量だ。240gという重量は、従来モデルからは微増レベルだが、このサイズのスマホとしてはとびきりヘビーであることに変わりはない。8.3型のiPad mini(Wi-Fiモデルで293g)と比べて50gちょっとしか変わらない事実からして、いかに重いか分かろうというものだ。

見開きでも本製品より1ページあたりの面積が大きいiPad mini(左)と比べても、本製品(右)は50gちょっとしか重量は変わらない
寝転がったままこのような持ち方で読書を長時間続けるのはさすがにつらい

 そのため本製品は、電子書籍での利用に支障はないかと問われるとYesだが、向いた製品かと問われると、やや答えに窮するところがある。本製品で電子書籍を読む量が多いのであれば、片手で長時間保持していてもなるべく疲れないよう、グリップであったりスマホリングだったりと、アクセサリ選びにより注力すべきだろう。本稿の趣旨から外れるので個別の製品は紹介しないが、使い勝手は劇的に変わるので、いろいろと探してみてほしい。

保護ケースの背面に貼り付けたままMagSafeも使えるシリコンゴム製のグリップ。寝転がって顔の上にかざしての読書も快適だ
こちらはMagSafeに吸着させるグリップ。ケースなしで使え、こちらも安定性は高い

 最後になったが「電子書籍をなるべく大きなサイズで見られるiPhone」という条件であれば、新たに追加されたエントリー向けの大画面モデル「iPhone 14 Plus」にも注目したい。重量が203gと軽い(本製品は240g)ことに加えて、従来のiPhone 13 Pro Maxと比べて価格が上がっている本製品よりも安価に入手できる。こちらは本稿執筆時点ではまだ発売されておらず、あらためて本製品と比較しつつレビューしたい。