山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

わずか146g、6.4型ながらiPhone 13 mini並に軽いAndroidスマホ「AQUOS zero6」

「AQUOS zero6」。今回は楽天モバイル向けモデル(Rakuten AQUOS zero6)のパープルを試用している

 シャープの「AQUOS zero6」は、5Gに対応したAndroid 11搭載のスマートフォンだ。6.4型という大画面にもかかわらず、重量が146gと、iPhone 13 mini並みの軽さを誇ることが特徴だ。

 「AQUOS zero」シリーズはその圧倒的な軽さから、「モックアップのよう」と形容されることもしばしばだ。その最新モデルである本製品は、かつての「AQUOS zero2」よりもわずかに重くなったものの、200g近くあることも珍しくない同等サイズのスマホに比べて、重量面で圧倒的なアドバンテージを保っている。こうした特徴は、端末を長時間手に持ったままになる電子書籍ユースには、まさに最適だ。

 今回は同社から借用した楽天モバイル向けモデルを用い、今夏に発売されたGoogleの「Pixel 5a(5G)」(以下Pixel 5a)などと比較しつつ、その特徴をチェックしていく。なお電子書籍ユースがメインゆえ、実機の比較時に1つのポイントになるカメラは取り上げないので、その旨ご容赦いただきたい。

Pixel 5aに似たスペックも、ボディの軽さで圧倒

 画面サイズが近いところで本製品のライバルとなりうるのは、Androidであれば「Pixel 5a」、iOSであれば「iPhone 13 Pro Max」あたりだろう。まずはこの両製品とスペックを比較してみよう。OSの相違などで横並びでの比較が難しい項目も、ここでは構わず並べているので、ある程度差し引いて見てほしい。

AQUOS zero6Pixel 5a (5G)iPhone 13 Pro Max
発売年月2021年10月2021年8月2021年9月
OSAndroid 11Android 11iOS 15
サイズ(幅×奥行き×高さ)73×158×7.9mm73.7×154.9×8.8mm78.1×160.8×7.65mm
重量146g183g238g
CPUQualcomm Snapdragon 750G 5GQualcomm Snapdragon 765GA15 Bionicチップ
RAM8GB6GB6GB
ストレージ128GB128GB128/256/512GB/1TB
画面サイズ/解像度6.4型/2,340×1,080ドット(403ppi)6.34型/2,400×1,080ドット(415ppi)6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi)
Wi-Fi802.11ac(Wi‑Fi5)802.11ac(Wi‑Fi5)802.11ax(Wi‑Fi6)
コネクタUSB Type-CUSB Type-CLightning
イヤフォンジャックありあり-
カードスロットmicroSDXC--
防水防塵IPX5/IPX8、IP6XIP67IP68
生体認証顔認証、指紋認証指紋認証顔認証
バッテリ容量4,010mAh4,680mAh4,352mAh

 こうしてみると、今年8月に発売されたPixel 5aとは、スペックが非常に似通っていることがわかる。CPUはSnapdragon 750Gということで、765Gを採用するPixel 5aよりわずかに下だが、メモリ容量は本製品がわずかに多い。画面サイズも、上部カメラの占有エリアの解釈で変わってくる誤差レベルの違いだ。

 筐体サイズは、本製品のほうがやや縦長ではあるものの若干薄く、体積的にはほぼ同等といったところ。しかしながら大差がついているのが重量で、約37gもの違いがある。スマホにおける30gの重量差は、保護ケースがあるかないかの違いに相当するので、かなりの差であることがわかる。

 これがiPhone 13 Pro Maxとの比較ともなると、重量の差は実に92gにも広がる。ボディサイズ自体はiPhone 13 Pro Maxのほうが一回り大きいとはいえ、ここまでの差があるのは驚きだ。実機を知らなければ、なにかの間違いなのではと疑ってしまうレベルだ。

本製品(左)と、Pixel 5a(右)の比較。画面サイズ、ボディサイズともに酷似していることが分かる
背面。指紋認証センサーを背面に搭載するPixel 5aに対し、本製品は画面内に埋め込まれているため、背面はすっきりとしている。ワイヤレス充電は非対応
iPhone 13 Pro Max(右)との比較。本製品のほうがひとまわり小さい
iPhone 13 mini(右)との比較。これだけの画面サイズの差がありながら、重量がほぼ同じ(本製品は146g、iPhone 13 miniは140g)というのは驚きだ
厚みの比較。左がいずれも本製品、右は上からPixel 5a、iPhone 13 Pro Max、iPhone 13 mini。じゅうぶんに薄型の部類に入る
重量の実測は147g。ここに(物理SIMを使う場合)SIMカードの重量が加算されることになる

 また生体認証は、指紋認証に加えて顔認証にも対応しており、さらにメモリカードスロットも搭載する。ストレージ容量が128GB一択なのは本製品もPixel 5aも同様だが、本製品は必要に応じて最大1TBまで容量を増やせる。なにかと心強いことは間違いない。

 その一方で、CPUがSnapdragonの800番台ではなく700番台だったり、またWi-Fiが11ac止まりだったりと、隅から隅までハイエンドというわけではないのは、Pixel 5aと同様だ。ミリ波に対応するなどの他の5Gモデルと比べた場合のアドバンテージはあるにはあるが、フラッグシップモデルのスペックではない点は押さえておきたい。

 バッテリは4,010mAhと、今回比較している2製品に比べるとやや少ないが、それでも4000の大台はクリアしている。最軽量で話題になったかつての「AQUOS zero2」が3,130mAhと控えめで、バッテリの持ちの悪さがユーザの間で物議を醸したことを考えると、気にならないレベルまで戻してきたのは秀逸だ。

 なおPixel 5aは、最低3年間のOSアップデートとセキュリティアップデートが付属するが、本製品についても、発売から2年間OSバージョンアップに対応するとされている。期間自体は1年間短いが、こうした保証がなされているのは、購入するユーザーにとっても安心だろう。

カードトレイには、nanoSIMカードとともにmicroSDカードも挿入できる

スクエアな外観が特徴。指紋認証はやや実用性低し?

 では実際に使ってみよう。本製品はスクエアなデザインを採用しているためか、Pixel 5aと比べると縦長に感じられるのが面白い。実際には、画面サイズがほぼ同等、縦横のサイズともに違いがないのだが、印象としてはPixel 5aよりも、アスペクト比21:9のソニーXperiaシリーズに近いものを感じさせる。

 とはいえ何よりインパクトがあるのはやはり軽さだ。筆者はふだんからPixel 5aを使用しているが、仰向けになって顔の上に浮かせるようにして長時間かざしても、腕への負担がまるで違う。比較対象がiPhone 13 Pro Maxのようなヘビー級の大画面スマホだと、その差は歴然だ。

上下のベゼルはわずかに厚みのあるデザイン。全体的にはスクエアな印象が強い
カメラはティアドロップ型。顔認証にも用いられる
左側面にはカードトレイを備える。爪先で引っ張り出せるよう凹みが設けられている
右側面には音量ボタン、Googleアシスタントボタン、電源ボタンを備える。それぞれ幅および表面の凹凸が異なるため指先だけで違いを判別しやすい
上面にはイヤフォンジャックを搭載する
底面には急速充電対応のUSB Type-Cポートを搭載する。右側の細長いスリットはスピーカーだ
カメラ部は標準/広角/望遠の3眼構成。背面からはやや突出している

 数日間使って気になったのは、画面内に埋め込まれた指紋認証の精度があまり高くないことだ。筆者は右手親指を登録したのだが、実際に認証に成功するのは5~6回やって1回あるかどうかで、四苦八苦している最中に顔認証が通ってしまい、結果そちらでログインしてしまうといった具合だ。

 この指紋認証は、画面上に表示されたマークに合わせて指を置く方式なのだが、物理的な指紋センサーと違って指先で場所を確認できないので、電子書籍を読もうと本体を取り出した時、画面を顔の前に持ってくるまでに指紋でロックを解除するというシームレスな運用は期待できない。基本はあくまで顔認証だと考えておいたほうがよいだろう。

指紋認証は画面内に埋め込まれており、指定の位置に指を乗せることで認証される
このほか顔認証についても設定できる。どちらかというと指紋認証よりもこちらがメインになるだろう

 なお今回借用したモデルは楽天モバイル版ということで、ホーム画面は以下のように、楽天関連のアプリで埋め尽くされている。これらに混じってGoogleのアプリ18個、シャープのアプリ4個がそれぞれフォルダにまとめられており、他のキャリア向けのモデルではこれらはそのまま、楽天関連のアプリが他キャリアのアプリに入れ替わるものとみられる。

ホーム画面。アプリはドロワーに格納されず、すべてのアプリがホーム画面に並ぶタイプ。Googleアプリなどはフォルダにまとめられている(中央)

 ベンチマークはどうだろうか。Sling Shot Extremeによる測定値は「2,425」。Pixel 5aが「3,139」、一つ前のモデルであるPixel 4aが「2,479」なので、おおむねPixelのaシリーズに等しいことになる。日常的に使うには不自由しないが、決してハイエンドというわけではなく、ゲーム用途などはやや厳しいという評価になるだろう。

Sling Shot Extremeによる測定値は「2425」。右はPixel 5aで、本製品よりメモリは少なめ(6GB)だが、CPUはわずかに上位(Snapdragon 765G)ということで、差し引きでは本製品のほうがスコアは下となる

圧倒的な軽さがもたらす快適な読書体験

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。電子書籍ストアは今回プリインストールされていた楽天Koboをメインに使用している。

 解像度は403ppiということで、表示性能については何ら問題がない。画面は縦長、サイズが6.4型ということで、見開き表示ではなく単ページ表示での利用になるが、表示性能が低く困ることはない。もちろんコミックだけではなく、テキストの表示にも適している。ちなみに本製品には楽天マガジンもプリインストールされていたが、こちらはさすがに無理があるだろう。

テキストを表示したところ。上の端がかなりカメラに近接したところまで配置される。これは「コンテンツ表示設定」がオンの状態で楽天Koboアプリを使った場合の仕様(後述)
コミックの余白部分が白になるKindleと異なり、楽天Koboは黒(正確には濃いグレーのテクスチャー柄)になるため、天地方向の圧迫感は多少ある

 他製品とも比べてみよう。Pixel 5aとは画面の横幅がほぼ同じ(本製品は68mm、Pixel 5aは66mm)なので、コミックはほぼ同等サイズで表示できるが、画面上のパンチホール型のカメラを含むエリアが表示領域から除外されるPixel 5aに対し、本製品はティアドロップ型のカメラと近接するギリギリの位置までテキストが配置される。

 これは設定画面にある「コンテンツ表示設定」がオンの場合のみ有効になり、オフだとPixel 5aとほぼ同じ見た目になる。Pixel 5aはこの設定項目はないので、なるべく画面の天地を広く使いたい場合には重宝する。ちなみに試した限り、ほとんどの電子書籍アプリはいくらかの余白が残り、ここまで余白を切り詰められるのは楽天Koboアプリだけだ。

Pixel 5a(右)は、パンチホールカメラのある上部が黒く塗りつぶされて表示エリアから除外されるので、初期状態の本製品のほうが天地がやや広くなる
コミックは画面上のカメラ部が表示エリアに含まれようが省かれようが、配置が多少上下にずれるだけで、表示されるページのサイズは変わらない

 iPhone 13 Pro Maxとの比較ではどうだろうか。画面サイズはもともと縦横ともにiPhone 13 Pro Maxのほうが広いため、表示可能なテキストの行数や1行あたりの文字数、またコミックの表示サイズは、本製品のほうが小さくなる。

 なので読みやすさにフォーカスすればiPhone 13 Pro Maxのほうが上なのだが、前述のように筐体の重量差は100g弱あるので、実用性も込みで考えると、評価は逆転する場合もあるだろう。このあたりは使い方によっても見方は大きく変わってくる。

iPhone 13 Pro Max(右)は本製品よりも画面が一回り大きく、それゆえ表示にも余裕がある
コミックについても、本製品は横幅が68mmなのに対して、iPhone 13 Pro Maxは71mmと広いため、ページ全体が一回り大きく表示される
本製品の画面の横幅は68mm。ちなみにPixel 5aは66mm、iPhone 13 Pro Maxは71mmだ

 ところで本製品は縦スクロールでかなり強めに慣性が働くため、ちょっとスワイプしただけで長距離のスクロールがこなせる。AndroidよりもiPhoneに近い挙動で、縦に長いページを移動する場合に便利なのだが、初期設定のままだとリフレッシュレートが低いせいか、スクロールの最中に文字を目で追うと読み取れず、目が疲れてしまう。

 この場合、設定画面にある「ハイレスポンスモード」で、アプリごとに有効化しておくとよい。そうすれば、ライブラリやストアのラインナップを探す時に、スクロールしながらタイトルなどの文字が読み取れる。電子書籍アプリのほか、縦スクロールの多いブラウザやSNSでは、オンにしておくことをおすすめする。ちなみにリフレッシュレートは最大240Hzということで、iPhone 13 Proシリーズよりも高いことになる。

設定画面の「ディスプレイ」の中にある「ハイレスポンスモード」を開く(左)ここでオンにしたアプリはリフレッシュレートが上がり、スクロール中も流れる文字を読み取りやすくなる(右)。ちなみに前述の「コンテンツ表示設定」も、この「ディスプレイ」から設定する

 また本製品はAndroidということで、音量ボタンを使ってのページめくりが行える。ただし本製品の音量ボタンは電源ボタンおよびGoogleアシスタントボタンよりも上に搭載されているため、Pixel 5aと違ってかなり指が届きにくい。

 ボタン自体はクリック感も軽く、繰り返し押すうちに指が疲れたり、痛くなったりということはないのだが、この配置はややネックだ。他のモデルからの移行にあたっては、音量ボタンでページをめくる場合、通常よりもやや上を握るなど、持ち方を変えざるを得ない場合があることは、織り込んでおいたほうがよいだろう。

音量ボタンによるページめくりに対応するが、ボタンの配置が右側面のかなり上ということで、それに合った握り方をしなくてはいけないのがネックだ

「軽さは正義」と考えるユーザーには格好の製品

 以上のように、本製品は電子書籍でコミックを読める目安となる6型以上でありながら、150gを切る軽さが最大の特徴と言える。

 なにより、筐体が軽いぶん画面が狭かったり、バッテリが極端に少ないといった、何らかの代償があるわけではないのが素晴らしい。筆者はこのAQUOS zeroシリーズは、初代モデル以来の利用となるが、やはりそのインパクトは強烈だ。

 正直なところ、電子書籍ユースに限定すれば、利点と言えるのは前述のリフレッシュレートを固定できる点くらいで、あとはAndroidに共通する、音量ボタンを使ってのページめくりや、電子書籍アプリ内で本を購入できる点がプラスと呼べる程度なのだが、いかんせん軽さのインパクトが強烈すぎて、それらの要素が完全にかすんでしまっている。

軽量なことから、寝転がって頭上に長時間かざしても腕が疲れにくいのはなによりのメリットだ

 「軽さは正義」と考えるユーザーにとっては格好のこの製品、どうせ選ぶなら国内メーカーの製品を……というこだわりがあるユーザーにとっても、よい選択肢と言える。現時点では販路がキャリア限定ということで、今後はSIMフリーの取り扱いについても、選択肢の1つとして期待したいところだ。