山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

スマホでコミックを読むのに最適! 6.9型大画面「Galaxy S20 Ultra 5G」

「Galaxy S20 Ultra 5G」。国内では「SCG03」としてKDDIから販売される。カラーはコスミックブラックのみ

 サムスン電子の「Galaxy S20 Ultra 5G」は、5Gに対応した、Android 10搭載のスマートフォンだ。同社Galaxy S20シリーズのなかでは最上位モデルで、6.9型という大型画面、1億800万画素のカメラなど、フラグシップ機に相当する製品だ。

 なかでも、iPhone 11 Pro Maxの6.5型を上回る6.9型という画面サイズは、スマートフォンとしては最大級であり、電子書籍ユース、とくにコミックを読むには魅力的だ。今回は国内での発売元であるKDDIから機材を借用できたので、iPhone 11 Pro Maxと比較しながら実力をチェックしていく。

筐体は狭額縁デザイン。画面占有率は非常に高い
音量ボタンと電源ボタンは右側面に搭載
カメラは超広角/広角/望遠に加えて深度測位カメラを搭載。光学10倍、デジタル100倍ズームに対応する
上面にはSIMカードスロット(microSDスロット兼用)がある
底面。端子はUSB Type-C。ちなみにイヤフォンジャックはない
前面カメラはパンチホール式で、中央に搭載される
顔認証のほか、画面内での指紋認証にも対応する

6.9型の大画面、500ppiオーバーのハイクオリティ

 まずはiPhone 11 Pro Maxとの比較から。同じく6型クラスのAndroidスマートフォンであるPixel 4 XLについても参考までに並べている。

【表】Galaxy S20 Ultra 5Gと他機種のスペック比較
Galaxy S20 Ultra 5GPixel 4 XLiPhone 11 Pro Max
発売元SamsungGoogleApple
OS(発売時)Android 10Android 10iOS 13
発売年月2020年7月2019年10月2019年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ)76×166.9×8.8mm75.1×160.4×8.2 mm77.8x158.0x8.1mm
重量222g193g226g
CPUSnapdragon 865 5G Mobile PlatformSnapdragon 855
2.84 GHz + 1.78 GHz、64 ビット オクタコア
A13 Bionicチップ
第3世代のNeural Engine
メモリ12GB6GB4GB
ストレージ128GB64/128GB64/256/512GB
外部ストレージmicroSDXC(最大1TB)--
画面サイズ6.9型6.3型6.5型
解像度3,200×1,440ドット(509ppi)3,040×1,440ドット(537ppi)2,688×1,242ドット(458ppi)
Wi-FiIEEE 802.11ax(Wi‑Fi 6)IEEE 802.11acIEEE 802.11ax(Wi‑Fi 6)
コネクタUSB Type-CUSB Type-CLightning
セキュリティ顔認証、指紋認証顔認証顔認証
防水防塵IPX8/IP6XIP68IP68
駆動時間/バッテリ容量5,000mAh3,700mAhビデオ再生 : 最大20時間
ビデオ再生(ストリーミング) : 最大12時間
オーディオ再生 : 最大80時間

 CPUはSnapdragon 865(8コア)、メモリは12GBと、Androidスマートフォンとしてのスペックは現行モデルとしては最強クラス。ストレージは128GBと突出して多いわけではないが、最大1TBのmicroSDXCに対応しているのは心強い。

 ディスプレイは有機ELで、サイズは前述のとおり6.9型、画面サイズは3,200×1,440ドットと、解像度も非常に高い。計算上は509ppiと、大台を超えてしまっている。

 筐体サイズはのちほど詳しく見ていくが、iPhone 11 Pro Maxより縦長ながら、横幅は逆にスリムというのがおもしろい。重量は約222gと、iPhone 11 Pro Maxとほぼ同等だが、厚みは8.8mmとかなりあるためか、手に持つとかなりずっしりと感じられる。また背面カメラ部は厚み11.1mmと、こちらもかなりの存在感がある。

 そのカメラは1億800万画素という常識を超えたスペックで、光学10倍、デジタルはなんと100倍ものズームに対応する。動画もデジタルズームこそ20倍止まりだが、光学ズームは静止画と同じ10倍まで対応というから凄まじい。このカメラ機能目当てで本製品を購入する人も少なくないはずだ。

 また防水防塵に対応するほか、生体認証は顔認証に加え、ディスプレイ内蔵での指紋認証にも対応。さらにWi-Fi 6対応、ワイヤレス充電にも対応するほか、ワイヤレスバッテリシェアなど付加機能もてんこ盛りだ。欠けている要素としては、おサイフケータイくらいだろう。

左が本製品、右がiPhone 11 Pro Max。本製品のほうが縦長だが、横幅は逆に本製品のほうがスリムだ。のちほど詳しくチェックする
背面。カメラは背面との段差が2.3mmと、かなりの存在感がある。余談だが背面はケースなしだとかなり指紋がつきやすい
厚みの比較。本製品が約0.7mm厚い。手で持ち比べても違いがはっきりわかる
Sling Shot Extremeによるベンチマークでは、スコアは「7,249」。以前レビューしたSnapdragon 855搭載のPixel 4 XLが「5,741」だったので、約25%増しということになる

極細ベゼルで「スリム筐体ながら大画面」を実現

 セットアップの手順はいたって一般的。アプリは全体的には数はひかえめで、au製のものがホーム画面に多く配置されている。電子書籍系は、auのおすすめアプリのなかに「ブックパス」の名があるが、プリインストールはされていない。

 なおデフォルトでは画面下部のナビゲーションバーが、「戻る」ボタンが右側、「履歴」ボタンが左側という配置になっている。Androidの伝統的な、左が「戻る」、右が「履歴」という配置に慣れている場合は、設定→ナビゲーションから変更しておくとよい。

プリインストールアプリ。全体的に少なめで、au製のアプリが多くを占めている
初期設定ではアプリはドロアーのなかにまとめられているが、ホーム画面にすべてのアプリを並べることも可能(左)。またナビゲーションバーの配置に馴染めなければ変更しておこう

 さて前述のように、本製品はiPhone 11 Pro Maxよりも縦長である一方、横幅は本製品のほうがスリムだ。それはアスペクト比が20:9と、iPhone 11 Pro Maxに比べて縦長であるためだが、これはあくまでも筐体の話。じつは画面については、iPhone 11 Pro Maxよりも本製品のほうが横幅がわずかに広い。

 この逆転現象が起こる理由は、ベゼルの幅にある。iPhone 11 Pro Maxは画面外側に黒いベゼルがあり、そこからステンレススチールの側面パーツにつながっていくのだが、本製品は画面自体が側面に回り込もうかという位置までせり出しており、ベゼル幅はごくわずかだ。それゆえ画面の横幅において、iPhone 11 Pro Maxを逆転しているのだ。

 実際にこのベゼルの幅を測ると、本製品は2mm以下なのに対し、iPhone 11 Pro Maxは4.5mmと、大きな差がある。これがスリムな筐体の要因になっているわけだ。iPhone 11 Pro Maxは横幅がありすぎて持ちにくいという人でも、本製品ならばフィットする可能性はあるだろう。

画面の横幅は、本製品が実測71.5mm。左右ベゼルのスリムさは際立っている
一方のiPhone 11 Pro Maxは68.5mmと、約3mmの差がある。左右ベゼルは本製品と比べるとかなり広い

 もっともそのベゼルのスリムさゆえか、側面にかけた指が不意に画面端に触れて、タップとみなされてしまうケースは少なからずある。ベゼル幅の狭いスマートフォンによくみられる症状だが、あまりギリギリの部分を握らず済むよう、保護ケースにバンドをつけるなどして、なるべく本体を握らない持ち方を追求したほうがよさそうだ。

 ちなみに本製品には、音量調整ボタン付近を内側にスワイプしてアプリのショートカットなどを表示できる「エッジパネル」という機能がある。ホーム画面に戻らずに任意のアプリを呼び出せるので、後述の電子書籍アプリなどを登録しておけば、すき間時間を見つけてすばやく起動できるので便利だ。

音量ボタンの横の部分を内側に向かってスワイプすると…
アプリのショートカットが表示される
電子書籍アプリなどを登録しておけばすばやく呼び出せる(左)。ほかにタスクや天気予報などを呼び出すことも可能だ(右)

コミックの表示サイズはiPhone 11 Pro Max以上

 電子書籍端末としての使い勝手を見ていこう。表示サンプルは、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」を使用している。

 まずコミックについてだが、スマートフォンでの表示サイズは画面の横幅に依存するので、大画面とは言え上下に長いだけであれば、恩恵を被らないこともしばしばだ。しかし本製品はiPhone 11 Pro Maxに比べて横幅も広いため、コミックはそのぶん大きく表示される。

 実寸ベースではほんのわずかな違いとは言え、スマートフォンのなかで少しでも大きなサイズを求めるのであれば、魅力的な選択肢と言えるだろう。解像度も500ppiオーバーであるため、品質面では何の問題もない。

左が本製品、右がiPhone 11 Pro Max。横幅がわずかに広いことから、コミックなど固定コンテンツの表示サイズは本製品のほうがひとまわり大きくなる
本製品は音量ボタンがかなり上にあるため、音量ボタンによるページめくりを行なう場合はかなり上寄りを持たなくてはならず、やや違和感がある

 一方のテキストについては、あまり縦に長くなりすぎても、1行の文字が増えすぎて目で追うのがつらくなってしまう。とくに本製品は、画面下のナビゲーションバーなどを非表示にして画面を広く使う「全画面」というモードがあるが、これを適用した状態だと、テキストが文字どおり全画面にびっしりと表示されてしまう。

 こうなってしまうと逆に読みづらいので、電子書籍アプリでは、このモードはなるべく使わないほうがよいだろう。また、電子書籍アプリ自体の設定で、上下の余白を広く取れるのであれば極力そうした設定にしておいたほうが、目が疲れずに済みそうだ。

Kindleストアで、テキストコンテンツの余白を3段階で切り替えた状態。左から順に「狭い」、「標準」、「広い」だが、1行あたりの文字数が1~2文字増えるか減るかの違いしかなく、縦に長すぎる印象は変わらない
こちらはBOOK☆WALKERで余白などを調整した状態。左は余白ゼロ、中央は余白上下を最大値(400%)にした状態、右は加えて上下のステータスバーとナビゲーションバーをオンにした状態。むしろこのくらい上下に余裕があるほうが見やすい印象だ
BOOK☆WALKERで余白ゼロにすると、パンチホールカメラや角の丸角の部分もおかまいなしに表示する。このケースでは実用的ではないが、調節範囲が広いのは役に立つこともあるだろう
「全画面」はデフォルトでは「自動」となっており、アプリごとに無効化することはできない(強制的に適用することは可能)

 ところで本製品の6.9型という画面サイズはスマートフォンのなかでは最大級だが、スマートフォン以外の選択肢と比較した場合はどうだろうか。

 「7型前後」という条件ならば、タブレットだとAmazonの「Fire 7」、電子ペーパー端末では同じくAmazonの「Kindle Oasis」が、近いサイズの端末として挙げられる。製品として競合する要素はほぼないが、電子書籍ユースでの見え方の違いは気になるところだ。

 実際に横に並べるとわかるが、これらは同じ7型前後でもアスペクト比が異なるため、コミックなど固定レイアウトのページの表示サイズはまったく異なる。とくに書籍の判型に近いKindle Oasisとの違いは歴然だ。対角サイズが同等でも、アスペクト比によってどれだけ表示サイズが影響を受けるかを思い知らされる。

 もっとも本製品は解像度が500ppiオーバーと高いことから、たとえ本体を横向きにして強引に見開き表示に切り替えても、細かいディティールが潰れることはない。前述の2端末との差は明らかで、表示性能の高さを感じさせられる。

7型のFire 7(右)との比較。6.9型と7型なのでほぼ同じ表示サイズ……にはならず、このようにふたまわり以上は違いがある
こちらも7型のKindle Oasis(左)との比較。上記のFire 7よりもサイズ差はさらに広がる
Kindle Oasisで画面を横向きにして見開きにした状態での1ページのサイズと、本製品で単ページ表示したサイズはほぼ同じ
表示するのがWebページのような可変レイアウトのページだと、逆にそれほど差がつかないのがおもしろい

高いビューア性能でコミックを読むには格好の製品

 以上のように、スマートフォンというカテゴリのなかで、コミックなど固定レイアウトのコンテンツをなるべく大画面で表示するのには、格好の製品と言っていい。テキストコンテンツについてはもう少し上下に余白を持たせる機能があってもいいように思うが、総じてビューア性能は高い。

 本製品は5G対応のフラグシップモデルゆえ、価格は16万5,980円(au Online Shopでの現金販売価格)とそれなりのお値段で、電子書籍ユースのためだけに購入する製品ではまったくないが、5G対応はもちろん本製品の大きな特徴である1億800万画素のカメラなど、総合的な実力を評価して購入するには、よい選択肢と言えるだろう。

 弱点と言えるのは、8.8mmという厚み、さらにグローバルモデルであるがゆえの、おサイフケータイに対応しないことだ。とくに後者については、メイン端末として長く使うことを考えているのであれば、同じGalaxy S20シリーズの6.7型モデル「Galaxy S20+ 5G」という選択肢も候補に入ってきそうだ。

Webページのような縦スクロールのページを表示する場合も、本製品の画面の広さは大きな魅力だ