ニュース

「AI PCやvProって大企業向けの話でしょ?」……その認識、間違ってるかも

 インテルは5日、都内でPCメーカーや販売パートナー向けに、販売促進につながるようなプライベートな啓発イベント「Intel Commercial Client内覧会」を開催。そこでCore Ultraシリーズ2搭載“AI PC”の特徴や、企業向け機能である「vPro」、そして企業における導入事例を紹介した。

 イベントの冒頭では、同社執行役員 マーケティング本部長の上野晶子氏が挨拶。2023年以降、NPUを内蔵した“AI PC”の販売台数比率がグローバルで順調に伸びる中、やや遅れている日本においても、2025年は販売比率40%以上を目指したい意向を明らにした。

 というのも、インテルはこれまで「データセントリックトランスフォーメーション」ということを提唱してきており、企業が所有しているデータの利活用がビジネスチャンスを生むとしてきた。

 ただ、クラウドサービスプロバイダーのように巨大なデータが扱える特定の大企業だけが伸びていくということをインテルが望んでいるわけではない。ローカルのPCでAIが活用できるようになったこの時代だからこそ、あらゆる企業が今の大企業のような存在になるチャンスがあると目論んでいる。だからこそAI PCに注力すると上野氏は言う。

上野晶子氏
優れたAI PCの前提は優れたPCであることだとする
PC販売数の中におけるAI PCの販売数推移
多くのAI ISVエコシステム

 また、企業への導入においては、今年(2025年)がちょうどWindows 10サポート終了の時期であるため、買い替えに伴う大規模導入のチャンスがあるとし、バッテリ駆動時間が長いCore Ultra 200Vシリーズや、企業向けの管理機能であるvProを前面に推進していくとした。

 また、「インテルは過去に多くの技術をリリースしてはやめていくことが多かった中で、vProは20年間続いているブランドである」とし、認知度や販売数が伸びていることを背景に、今後は中小企業にも積極的に展開していきたい意向を示した。

ビジネスの現場で生きるローカルで動作するAI機能
ビジネス向けPCの展望
認知度や販売数が増加しているvProプラットフォーム

CrowdStrikeの際もvProが活躍

 続けて同社IA技術本部 部長の太田仁彦氏が、Core Ultraシリーズ2の特徴について解説。「優れたAI PCである前に、優れたPCである必要がある」ということを掲げ、競合より長い駆動時間、高い生産性の性能が特徴であると説明。

太田仁彦氏

 また、サポート終了するWindows 10に合わせて、2025年は更新の好機であるとし、Windows 10時代で主力だった第8世代Coreと比較して大きく性能が向上していることをアピール。さらに、競合のRyzen “7”と冠しているプロセッサ(Ryzen 7 7730U)よりも、Core i“5”(Core i5-1334U)の方が性能が優れていることを例にしつつ、「明瞭なCPU製品型番でエンドユーザーにも性能ランクが分かりやすい」などとした。

ビジネス向けAI PCのラインナップ
他社と比べて優位なバッテリ駆動時間
性能面でも他社より上回るという
第8世代との性能比較デモ。PowerPointのスライドをPDFにする作業だが、Core Ultraシリーズ2は第8世代の半分以下の時間で変換を終えた
他社との性能比較
Core i5-1334UはRyzen 7 7730Uより優れた性能を示すという
性能ランクが明瞭なCPU製品型番が特徴だとする
Wi-Fi 7やThundeborlt 4/5も自社で開発設計し、検証を行なっている
x86の互換性という最大の武器も特徴
過去20年間にわたるvProの進化

 企業において課題となるセキュリティについては、「AMDが自社で発見している脆弱性は全体の57%であり、未解決の脆弱性もある中で、Intelは97%の脆弱性を自社で発見し解決している」とアピール。

 さらに、昨年(2024年)7月話題となった“CrowdStrike事件”では、多くの会社のPCがブルースクリーンになる中で、インテルのセキュリティチームは数時間のうちに解決方法を見出し、解決に向けたドキュメントを企業に配布。vPro導入済みの企業ではリモートで問題のあったファイルを削除し、数時間のうちに障害を排除できた一方で、そうでないPCを導入した企業は、実際に技術者が障害発生した現地まで赴いて解決する必要があったといった事例を挙げ、vPro機能の優位性をアピールした。

セキュリティへの取り組み
CrowdStrikeの不具合により多くのPCがブルースクリーンに。この際もvProプラットフォームでは迅速に解決できた
スムーズな更新を支援するIntel SIPP

スピード感が求められる中小企業でこそvProが生きる

 続いては、Intel製品導入企業や協業パートナーによる講演となった。まず登壇したのはカタオカという食品を取り扱う中小企業だ。これにはカタオカ総務部 情報システム課 大崎一樹氏が実例を紹介した。

 カタオカは食品を生産する工場や倉庫などにPCを導入しているが、これまでPCにトラブルが発生すると実際に大崎氏が現地まで赴いて解決する必要があった。ところが工場や倉庫は本社周辺に点在していて、移動に時間がかかるほか、食品を扱う工場では中に入るまでの手順が煩雑で、かなりのタイムロスになっていた。しかも工場でPCトラブルがいったん発生すると生産ラインが停止するため大きな損失が生まれてしまう。

 ところがvPro導入後、大崎氏はデスクにいながらにしてリモートでトラブル対応が可能となったため、こうしたタイムロス、そして大きな機会損失を回避できるようになった。つまり、特にITで対応できる人員リソースが限られ、なおかつわずかなロスも許されないような中小企業でこそ、vPro導入で大きな効果が得られるとした。

大崎一樹氏
これまで工場でPCがトラブルが発生した際には、工場まで赴く必要があった
こうした煩雑で時間がかかる作業をvProが解決した!という事例
AIも駆使しているという

 続いてはNSWという、vProやインテルEMA(Endpoint Management Assistant)の導入を支援しているソリューション提供企業。同社 サービスソリューション事業本部 クラウドアウトソーシング事業部の神部康幸氏によると、新国立劇場で導入した事例では、壁埋め込み型のPCでvProを活用しているほか、同社が展開しているサービス上またはユーザー側のサーバー両方でニーズに応じてインテルEMAが利用できること、デバイスを含めてサブスクリプションモデルで提供していることを挙げ、企業の導入のしやすさをアピールした。

神部康幸氏
新国立劇場でのvProの活用事例
2パターンのインテルEMA導入方法
DaaSとの連携も

 講演の3番目は日本マイクロソフト デバイスパートナーセールス事業本部 業務思考役員 事業本部長の小澤拓史氏。2025年は、Microsoft創立50周年、そしてCopilotブランド導入2年目という節目にあたり、今後もCopilotブランドのAIを推進していくと語った。その中でもCopilot+ PCは、Intelと協業し、プロセッサ内蔵のNPUを使ってローカルでAIを実行できるだけでなく、Microsoft Plutonによる高度なセキュリティ保護、Windows Hello対応のプライバシー保護、仮想化技術やAIを応用した多層防御により、セキュリティ面でも優れており、法人導入に好適だとした。

小澤拓史氏
Microsoft設立50周年の節目
Copilotはセキュリティを念頭に設計
CopilotによるイノベーションとUX
Copilot+ PCの特徴
NPUによるエッジAI
セキュリティにも優れたCopilot+ PC
vPro対応のCopilot+ PC展開

 4番目はアクセルという、グラフィックスLSIを主力とするLSIおよび応用機器の開発/販売を行なっている会社。同社 事業開発グループの野内氏によれば、同社は画像の圧縮/伸長技術をはじめ、さまざまなアルゴリズムが得意だという。CES 2025においては、Intel Arc GPUにおけるXMXユニットの活用でソフトウェアを高速化できたことをきっかけに、パートナーとして挙げられたという。

 そのアクセルが展開しているのが「ailia DX Insight」というさまざまなAIを1つにしたアプリ。特徴の1つが、ユーザーはChatGPTのような外部のAIだけでなく、ローカルのAIに対しても一元的に処理を投げられる点で、顧客のニーズに合わせて機能をカスタマイズできる。またサポートも国内にあるため迅速に行なえることが特徴だとした。

野内氏
GPUのXMXユニットによるソフトウェアの高速化
ailia DX Insightの機能
ailia DX Insightの特徴
ChatGPTのようなクラウドサービスのみならず、ローカルのLLMも利用できる
ほかのサービスとの比較

 このほか、トレンドマイクロも登壇し、Intel TDT技術によるふるまい検知能力およびメモリスキャン速度の大幅な向上、NPUを活用したフィッシングメールのローカル検出などを紹介。また、映像編集ソフトの「DaVinci Resolve」の開発で有名なBlackmagic Designも、Intelの技術を応用して、最新版でさまざまな新機能を実現しているなどとした。

トレンドマイクロのIntel TDT技術によるふるまい検知能力の強化
Intel TDTによりメモリスキャン速度が大幅に向上
NPUによるフィッシング検知
DaVinci Resolve最新のアップデートによるAI機能の一例。音声文字起こしにより、文字を選択して削除するとタイムラインの編集(カット)が自動で行なわれる
AIにより指定したノイズのレベルを自由に変更したり除去したりできる
オブジェクトトラッキングの精度が向上

 最後に、インテル マーケティング本部 コマーシャル・キャンペーン・マネージャーの安永真理子氏がビジネスPCの販促ツールやマーケティングについて紹介。Core Ultraの販売においては、AI機能や高い性能、エッジAIによる高いセキュリティ性を訴求してもらいたいとし、他社製および5年前のCPUとの比較や企業の採用事例などを活用してほしいと訴えた。

 また、「インテルのビジネスPCフォーラム」という情報集約のWebサイトも公開し、製品情報や事例、媒体の記事やマンガコンテンツを展開。さらに、7月最後の金曜日を「システム管理者の日」として定め、各社共通の訴求メッセージやキャンペーンを展開していくなど、中堅企業向けの施策を強化していくとした。

安永真理子氏
Core Ultraシリーズ2は8割、vProは7割提案済み
提案時に活用してほしいというツール
企業事例なども有効な訴求手段であるとする
インテルのビジネスPCフォーラム
情シス感謝の日キャンペーンを展開
中堅企業のプログラム
今後の取り組み