西川和久の不定期コラム
Copilot+ PC認証取得のRyzen AI 9 HX 370搭載ミニPC!「MINISFORUM AI X1 Pro」
2025年3月6日 06:18
MINISFORUMの「AI X1 Pro」は、AMDの第3世代Ryzen AIプロセッサ、Ryzen AI 9 HX 370を搭載したミニPCだ。これだけでも魅力的な上に、電源内蔵、USB4、OCuLink対応など、機能が盛りだくさん。発売前に実機を試す機会に恵まれたので、試用レポートをお届けしたい。
Ryzen AI 9 HX 370/32GB/1TB加えて電源内蔵のAIミニPC!
IntelとAMDはNPU内蔵のプロセッサをいくつか出しているが、Ryzen AI 9 HX 370は、CPU、NPU、GPUとすべてにおいてバランスが取れているプロセッサだ。同社や他社からも既に搭載機が出ているものの、本機は“ミニPCとしては初のCopilot+ PC認証を取得”ということらしい。
Copilot+PCの要件で難関は“Microsoftが独自に承認したSoCで、かつ40TOPS以上のNPUを搭載”というものだろう。いくら性能が良くてもNVIDIAやAMDのdGPU搭載機はNGとなる。
現時点で条件を満たすSoCは、QualcommのSnapdragon X Elite/Plus、IntelのCore Ultraシリーズ2(Lunar Lake)、そしてAMDのRyzen AI 9 HX 365/370となり、既にノートPCとしては市場に投入されている。
しかしミニPCとなると、そもそもQualcommは(開発者向けキット的なのはあったが)ないだろう。IntelのLunar Lakeは、SoCにメモリを搭載しているため割高になりそう……と、容易にミニPC化できるのはRyzen AI 9 HXシリーズしか残らない。本機はその隙を突いた製品という感じだ。
加えて、電源内蔵、USB4、OCuLink、2.5GbE x2など、単にミニPCとして見ても魅力満載!主な仕様は以下の通り。
MINISFORUM「AI X1 Pro」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Ryzen AI 9 HX 370(12コア24スレッド、クロック最大 5.1GHz、キャッシュ L2: 12MB/L3: 24MB、TDP 28W、cTDP 15-54W) |
メモリ | 32GB(SO-DIMM DDR5)/2スロット(最大96GB) |
ストレージ | 1TB(M.2 2280)、3スロット(うち2基はPCIe 4.0 x4、1基はPCIe 4.0 x1/2つ空き) |
OS | Windows 11 Pro(24H2) |
グラフィックス | Radeon 890M(16コア)/HDMI 2.1、DisplayPort 2.0、Type-C |
ネットワーク | 2.5GbE 2基、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.3 |
インターフェイス | USB4 2基、USB 3.2 Gen 2 2基、USB 2.0、3.5mmジャック、SDカードスロット、OCuLink、電源内蔵、指紋センサー |
サイズ/重量 | 約195×195×42mm(実測)、1,397g(実測) |
直販価格 | メモリ/SSDなし:11万9,192円 32GB+1TB:14万9,592円 64GB+1TB:16万6,392円 96GB+2TB:18万6,392円 |
プロセッサはRyzen AI 9 HX 370。12コア24スレッドでクロックは最大5.1GHz。キャッシュ L2:12MB/L3:24MB、TDP 28W(cTDP 15~54W)。Ryzen AIプロセッサとしては第3世代に相当する。NPUは最大50TOPS。システム的には最大80TOPS。これはミニPCとしては大きめの数字だ。INT8とBlock FP16に対応する。
コアは12とさらっと書いたものの、実際はZen 5 4コア+Zen 5c 8コアの計12コアとなる。一見、IntelのEコアPコアのそれに似ているが、Intelは異なるアーキテクチャのコアに対して、AMDはZen 5、Zen 5c(3次キャッシュ少なめ)と、同じアーキテクチャになっている。いずれにしてもモバイル用で24スレッドはなかなか強力だ。
メモリはSO-DIMM DDR5の16GB x2で計32GB。最大96GB。ストレージは、M.2スロットが3つあり、うち2基がPCIe 4.0 x4、1基はPCIe 4.0 x1。前者1つに1TB SSDを接続している。
OSはWindows 11 Pro。24H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し評価した。
ネットワークは2.5GbE 2基、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.3(執筆時点でスペック表がないためBluetoothのバージョンは不明だが、Wi-FiモジュールがMediaTek MT7925なので5.3だと思われる)。
そのほかのインターフェイスは、USB4 2基、USB 3.2 Gen 2 2基、USB 2.0、3.5mmジャック、SDカードスロット、OCuLink、電源内蔵、指紋センサー。最近いくつか電源内蔵のミニPCを見かけるが、実際使うとACアダプタがない方が何かと扱いやすい。
サイズは約195×195×42mm、重量1,397g。どちらも実測となる。直販価格(リンク先は11時よりアクセス可能)は、SSD/メモリ/OSなしのベアボーンキットが11万9,192円。メモリ32GB+1TB SSD搭載モデルが14万9,592円、64GB+1TB搭載モデルが16万6,392円、96GB+2TB搭載モデルが18万6,392円だ。ほぼ同じ仕様の「EliteMini AI370」が17万9,980円だったので、割と安めに発表され嬉しい限り。
筐体は少し厚めの旧Mac miniといった感じでサイズも含めよく似ている。また縦置き用のスタンドが付属しており、扉の写真のようにコンパクトに設置することも可能だ。重量は実測で1,397g。ミニPCとしては重いが、電源内蔵なので仕方ないところ。ノートPCと比較して持ち運べない重量ではない。
前面は、電源ボタン、USB 3.2 Gen 2 2基、USB4、3.5mmジャック、Copilotボタン。背面にロックポート、USB 2.0、OCuLink、USB4、DisplayPort、HDMI、2.5GbE 2基、ACプラグを配置。また、天板に指紋センサー、右側面にSDカードスロットがある。なお電源は19V/7.1A(約135W)となる。
この指紋センサーはログイン時に使えるため、本体に手が届く範囲に設置されていれば、ワンタッチでログインできて、なかなか便利だ。ちなみにOCuLinkだが、試しにビデオカードを接続したところ、BitLockerの回復キーが要求された(BitLockerの仕様によるもの)。今回はキー入力がうまくいかなかったのでこれ以上は試していない。
付属品は、HDMIケーブル、ACケーブル、VESAマウンタ、縦置きスタンド、M.2 2280 SSD用放熱版。ACアダプタはない。
BIOSは起動時[DEL]キーで表示されるが、第1階層はシステムメニューで、BIOSは第2階層になっている。
内部へのアクセスは、裏の四隅のネジを外し、後ろ側中央にゴムとその下にネジがあるのでこれも外す(ゴム足はそのままでよい)。これで裏パネルは外れるのだが、内部にもう一枚パネルがあり、▶︎マークのある8つのネジを外せば……。
ところが内2つが硬くてどうにも外れず、ハンズへ行きドライバーを購入、再チャレンジするも撃沈。申し訳ない。ネジ山を潰しそうなので諦めた。SSDの追加などは開けるのが大前提(付属品でM.2 SSDの放熱版もある)。今回は個体差だろうが、同社にはもう少しネジを緩めでお願いしたいところ。
ノイズや発熱は、ベンチマークテストなど、CPUに負荷をかけると、気持ちファンの音、そして裏のスリットから(特に3DMark時)暖かいエアが出る。とは言え、気になるレベルではない。
なお内蔵スピーカーにそれなりのサイズが2基入っていたので試聴したところ、裏パネルがあるため音は篭り、パワーもなく、音質も……と、“ないよりは”といった感じだった。
ミニPCとしては強力なCPUとGPU!
初期起動時、プリインストールのアプリなどは特になし。個人的に今回初めてRyzen AI 9 HX 370を使ったが、これまでご紹介したハイエンドミニPCと比較して、+α動きが良いような気がする。
1TB SSDはKINGSTON「OM8PGP41024Q-A0」。ここによると、シーケンシャルリード:4,678MB/s、シーケンシャルライト:3,717MB/s。CrystalDiskMarkの結果とほぼ一致する。C:ドライブのみの1パーティションで約951GB割り当てられ空き887GB。BitLockerで暗号化されている(Copilot+PCの要件でもある)。
2.5GbEはRealTek Gaming 2.5GbE x2、Wi-FiはMediaTek Wi-Fi 7 MT17925。BluetoothもMediaTek製。先述の通り、Wi-FiモジュールがMT17925なので、Bluetoothのバージョンはおそらく5.3となる。
本機はCopilot+ PC認証を取得ということで、少しだけCopilot関連を試してみた。まず、Copilotボタンを押すとCopilotアプリが起動するところから。ただし、マイクロソフトアカウントでログインしないと使えない機能が多く、非ログイン状態だと画像生成も含め、あまり役に立たない雰囲気だ。そもそもこの機能はクラウド処理で、NPUを使っていないが……。
次はライブキャプションだ。これはYouTubeに限らず、PCから出ている音声を認識し、内容をテキスト化する機能だが、Copilot+ PCに準拠していればリアルタイム翻訳も可能とのこと。Insider Preview版では対応しており、起動は、Windows+Ctrl+Lキーを同時押しとなる。
そして何かと話題のリコールも、現時点ではInsider Previewにする必要があるため試していない。そもそも筆者はそんなことしなくても、構造的にデータをまとめてあるので不要だ(笑)。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMarkを使用した。
ほぼすべてのテストでこれまで試用したミニPCより+α高いスコアが出ている。CPUはちろんだが、GPUはiGPUとしてはかなり速い。初期起動した時、「ん?速いかな!?」と思ったのは勘違いではなかったようだ。
【表】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.2.2704 | |
PCMark 10 Score | 7,827 |
Essentials | 11,135 |
App Start-up Score | 14,800 |
Video Conferencing Score | 8,644 |
Web Browsing Score | 10,794 |
Productivity | 10,404 |
Spreadsheets Score | 13,101 |
Writing Score | 8,263 |
Digital Content Creation | 11,234 |
Photo Editing Score | 16,950 |
Rendering and Visualization Score | 11,481 |
Video Editting Score | 7,286 |
3DMark v2.31.8372 | |
Time Spy | 3,631 |
Fire Strike Ultra | 2,478 |
Fire Strike Extreme | 4,363 |
Fire Strike | 8,109 |
Sky Diver | 28,326 |
Cloud Gate | 38,419 |
Ice Storm Extreme | 160,220 |
Ice Storm | 186,351 |
Cinebench R23 | |
CPU | 22,672 |
CPU(Single Core) | 2,023 |
[Read]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 4799.262 MB/s [ 4576.9 IOPS] < 1746.99 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 2970.659 MB/s [ 2833.0 IOPS] < 352.56 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 502.641 MB/s [ 122715.1 IOPS] < 252.50 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 60.726 MB/s [ 14825.7 IOPS] < 67.36 us>
[Write]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 3913.381 MB/s [ 3732.1 IOPS] < 2139.30 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 3828.604 MB/s [ 3651.2 IOPS] < 273.67 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 444.181 MB/s [ 108442.6 IOPS] < 291.88 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 162.000 MB/s [ 39550.8 IOPS] < 25.21 us>
以上のようにMINISFORUM「AI X1 Pro」は、Ryzen AI 9 HX 370/32GB/1TB搭載のAIミニPCだ。ベンチマークテストも上々!ミニPCとしてはかなり速く、加えて電源内蔵で扱いやすい。
価格はミニPCとしては少し高めだが、特に欠点らしい欠点もなく、高性能なRyzen AI 9 HX 370プロセッサを使ってみたいユーザーにお勧めの1台と言えよう。