イベントレポート
Intel、Core Ultra 200S/HX/H/U vPro版を発表。生産地が分かるプログラムも
2025年3月5日 23:00
Intelは、MWCの会期3日目にあたる3月5日に報道発表を行ない、1月のCESで第1四半期中のリリースを予告していたCore Ultraシリーズ2のうち、Core Ultra 200S/HX/H/U(開発コードネーム:Arrow Lake)の一般法人向けとなる「vPro」バージョンの提供を3月後半から開始すると明らかにした。
2025年10月には、Windows 10のサポート終了(EoS)が予定されているため、多くの企業がWindows 11への乗り換えを計画しており、Core Ultraシリーズ2の一般法人向け版の登場が待ち望まれていた。Intelの発表に先だってLenovoが「ThinkPad X13 Gen 6(13.3型Intel)」などの発表も行なっており、今後より多くの価格帯の一般法人向けPCでvPro版のCore Ultraシリーズ2が採用されることになる。
また、Intelはそうした一般法人向けのCore Ultraシリーズ2を対象に、生産地などを追跡できる「Intel Assured Supply Chain プログラム」(ASCプログラム)を開始する計画であることも明らかにした。
1月のCore Ultra 200Vに続き、Core Ultraシリーズ2のvPro版が登場
今回発表されたのは、Core Ultraシリーズ2のうち、開発コードネームArrow Lakeがベースの以下の製品群における、一般法人向けの「vPro」版となる。
- Core Ultra 200S(デスクトップPC向け)
- Core Ultra 200HX(ハイエンドゲーミングノートPC向け)
- Core Ultra 200H(ゲーミング/クリエイターノートPC向け)
- Core Ultra 200U(普及価格帯の薄型軽量ノートPC向け)
1月に開催されたCESでは、プレミアム価格帯の薄型ノートPC向けとなるCore Ultra 200V(開発コードネーム:Lunar Lake)のvPro版を発表済みだ。しかしその時点では、それ以外の製品は第1四半期中に発表/出荷開始予定とされ、具体的な時期は明らかにされていなかった。それが今回正式に発表されたかたちになる。
Intelによれば、新発表のCore Ultraシリーズ2 vPro版を搭載した商用製品は、3月後半から市場に登場する見通しだという。今回のMWCでは、Lenovoが1kgを切るThinkPad X13 Gen 6(13.3型Intel)など、Classic ThinkPadと呼ばれるTシリーズ、XシリーズのThinkPadをお披露目しており、それらの製品でもvPro版を選択可能になることが既に発表されている。
あわせてIntelは、Core Ultraシリーズ2の新しいベンチマークデータを公開。特にノートPCでは4年前の製品、デスクトップPCでは5年前の製品との比較データを新しく用意している。2025年10月14日に予定されているWindows 10のサポート終了(EoS)に向け、PCをリフレッシュしようと検討している一般法人などにとって、参考になるデータとなっている。
Core Ultra S/HX/H/UのvPro機能は200Vと同じ、EMAに変わるvPro Fleet Servicesは無償で提供される
Intelは1月発表のCore Ultra 200VのvPro版と、今回発表のCore Ultra 200S/HX/H/UのvPro版との機能の違いについて説明した。基本的には、vProのハードウェアの由来する機能(セキュリティやリモート管理など)に関しては両製品でまったく同等だとしている。
セキュリティ機能のMITRE Mappingやサードパーティのセキュリティソフトウェアへの対応など、1月にCore Ultra 200V向けに発表したvProの新機能に関しては、Core Ultra 200S/HX/H/Uなどに関しても同じようにサポートされる。
また、同じく1月に、Intel EMA(Endpoint Management Assistant)に変わる新しい管理ツールとして、「Intel vPro Fleet Services」の提供開始が明らかにされている。このvPro Fleet Servicesは、クラウド経由で提供されるSaaSツールになっていることがEMAとの大きな違いになる。
EMAはオンプレミスのサーバーアプリケーションになっているため、基本的に管理できるのはファイヤウォールの中にあるデバイスだけになる。それに対してIntel vPro Fleet ServicesはSaaSであり、最初からファイヤウォールの外にあるデバイスを管理するツールとして提供されるため、従業員の自宅にある端末も管理者がリモート管理できるようになる。
また、現時点では未対応だが、Intel vPro Fleet ServicesをMicrosoftの標準MDM(Mobile Device Management)であるIntuneと組み合わせて利用することもできるようになる予定で、1デバイスから使い始められるようになる。中小企業にとって、追加コストなくリモート管理がファイヤウォールの外でも行なえるようになるのは福音と言える。
Intelによれば、このIntel vPro Fleet Servicesは、vProマシン(世代を問わない)を所有している企業であれば無償で利用可能で、現在はプライベートプレビュー中。サービスのWebサイトからIntelのIDを作成して申し込むと待機列に追加され、順番が回ってきて承認されるとプライベートプレビューに参加できる。
国家機関など向けに、SoCの生産国などを指定できる「ASCプログラム」
Intelは、Core Ultraシリーズ2のvPro版フルラインナップの発表にあわせて、新しい「Intel Assured Supply Chain プログラム」(以下ASCプログラム)を発表した。ASCプログラムは、OEMメーカーに搭載されている製品がどこの工場で生産されたのかを、顧客が注文する段階で指定できるプログラムになる。
現在、多くの国家で、デジタル機器が安全保障上の脅威と見なされる例が増えている。このため、そのデバイスの生産国だけでなく、内部のチップに関しても、どこの国で製造されたものであるか機器の納入時にチェックされる場合が増えている。
たとえばクラウドの世界では、国家機関のデータを保存するクラウドのロケーションが国内である必要があり、国内のベンダーが製造したハードウェアであるといった要件が課されることがある(クラウド業界ではソブリン要件と呼ばれる)。PCにおいても国家機関などに納入するときに、それと同じような要件が求められる場合が出てきており、PCメーカーがそうした要件に対応するためのソリューションとしてASCプログラムが提供されることになる。
ASCプログラムの開始後には、Core Ultraシリーズ2のいくつかの製品でASCに対応したSKUの提供が開始され、「A」の文字がSKU名の最後に付与される。そうした製品は業界向けの提供されるツールを利用することで、どこの工場で生産されたのかなどの履歴を確認できるようになり、PCメーカーは国家などが求める要件を満たすことが可能になる。
Intelによれば、ASCプログラムは2025年後半に提供開始が予定されている。同社の資料には対応するOEMメーカーとしてHPとLenovoのロゴが出ており、まずは両社からASCプログラムに対応した製品が登場する見通しだ。