山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
4,980円から入手可能なAmazonの7型タブレット「Fire 7」
2017年6月16日 06:00
Amazonの「Fire 7」は、KindleストアやAmazonビデオなど、Amazonが提供するデジタルコンテンツを楽しめる7型タブレットだ。7型のIPSディスプレイを搭載しながら実売価格8,980円、Amazonプライム会員なら執筆時点で配布中のクーポンコードを使うことで4,980円で入手できるという衝撃的な価格の製品である。
ほぼ年1回のペースで新製品が発売されているAmazonのタブレット「Fire」シリーズだが、どのサイズも毎年モデルチェンジが行なわれるわけではない。たとえば本製品と同時発売の8型モデル「Fire HD 8」はここ3年間、毎年モデルチェンジを繰り返しているが、7型モデルは昨年(2016年)は新製品の投入は見送られ、2015年に発売された第5世代モデル「Fire」が先日まで継続販売されていた。本製品はその7型モデルにおける、2年ぶりの新製品ということになる。
今回はこの「Fire 7」について、市販品を用いたレビューをお届けする。
バッテリやWi-Fiなど基本性能が強化されたモデル
まずは従来モデルであるFire(第5世代)との比較から。本製品と同時発売の8型モデル「Fire HD 8(第7世代)」も併せて比較する。
Fire 7(第7世代) | Fire(第5世代) | Fire HD 8(第7世代) | |
---|---|---|---|
発売年月 | 2017年6月 | 2015年9月 | 2017年6月 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 115×192×9.6mm | 115×191×10.6mm | 128×214×9.7mm |
重量 | 約295g | 約313g | 約369g |
CPU | クアッドコア1.3GHz×4 | ||
メモリ | 1GB | 1.5GB | |
画面サイズ/解像度 | 7型/1,024×600ドット(171ppi) | 7型/1,024×600ドット(171ppi) | 8型/1,280×800ドット(189ppi) |
通信方式 | IEEE 802.11a/b/g/n | ||
内蔵ストレージ | 8GB(ユーザー領域4.5GB) 16GB (ユーザー領域11.6GB) | 8GB(ユーザー領域5GB) 16GB (ユーザー領域11.6GB) | 16GB (ユーザー領域11.1GB) 32GB (ユーザー領域25.3GB) |
バッテリー持続時間(メーカー公称値) | 8時間 | 7時間 | 12時間 |
スピーカー | モノラル | ステレオ | |
microSDカードスロット | ○(256GBまで) | ○(200GBまで) | ○(256GBまで) |
価格(発売時) | 8,980円(8GB) 10,980円(16GB) | 11,980円(16GB) 13,980円(32GB) | |
カラーバリエーション | ブラック | ||
備考 | - | 16GBモデルは2016年4月に追加 | - |
第5世代以降のFireシリーズは価格重視のエントリー向け路線に一本化されており、本製品はそのなかでもっともローエンドに当たる製品だ。解像度は1,024×600ドット(171ppi)とお世辞にも高くはなく、RAMも1GBとひかえめだ。その代償として実売8,980円、セール時には4,980円というプライスを実現しており、今回のモデルもそれを踏襲している。
従来モデルとの違いとしては、バッテリ持続時間が7時間から8時間に伸びたほか、Wi-Fiがデュアルバンドに対応し5GHz帯が利用可能(IEEE 802.11a/b/g/n)となったことが挙げられる。さらに200GBまでとやや中途半端な容量までしかサポートしなかったmicroSDが256GBまで対応となるなど、地味ながらも基本性能が底上げされている。
これに加えて本体の厚みが1mm薄くなり、10mmの大台を割ったほか、重量も295gと、ついに300gを切った。いまや300gを切る7型タブレットはめずらしくないが、数年前は300gを切ることが軽量か否かの1つの目安だったわけで(かつてのNexus 7などがそうだ)、初代モデルでは400gあった7型のFireがここまで軽くなったことは感慨深い。
薄型化も筐体デザインはほぼ同一。セットアップ手順も同一
本製品は従来モデルよりも薄くなっているので筐体の金型は新造されているが、見た目は従来モデルとそっくりで、デザインはもちろん質感もそっくりだ。細かく見比べるとボタン類の配置が入れ替わっていたり、背面にモールドされたAmazonロゴが小さくなっているなどの違いはあるが、今回の試用中も何度も新旧モデルを取り違えることがあったほどよく似ている。
一般的に、筐体の金型を新しく作るのであればデザインもリニューアルしたほうがユーザーへの訴求力は高くなるわけだが、あえてそれをしないのは、現在のデザインの完成度が高いと考えている証だろう。あるいは、そもそもデザインにこだわりがないか、そのどちらかだ。
セットアップ画面については、従来モデルである第5世代「Fire」とは見た目が大きく異なっているが、これは2016年の第6世代モデルが発売されるタイミングで主に配色が大きく変更されたためで、フロー自体は大きな変化はない。Amazon上で本製品を購入していれば到着時にすでにアカウントが登録されているといった特徴も、従来までと同様だ。
念のため第5世代Fireを最新OS(5.3.3.0)にアップデートしたあと再セットアップを行ない、フローを比較してみたが、Kindle Unlimitedの案内が差し込まれていること、また事前登録のアカウントを利用せずに独自にセットアップした場合に、先日新たにAmazonが対応した2段階認証の画面が表示されることくらいで、流れに大きな変更は見受けられなかった。ホーム画面とともに、以下にスクリーンショットで紹介する。
第5世代Fireと同等のスコア。性能はNexus 7(2012)並み
さて、以前の第5世代Fireに対する筆者の評価は、フルHDのハイエンドスマートフォンなどの利用経験があると低い解像度がどうしても気になりがちなものの、それらの利用経験がない場合や、解像度の低さを割り切った上でサブ端末として導入するならば、決して悪い選択ではないというものだった。
iOSやAndroidと比べるとアプリの品揃えに課題は残るが、Amazonのコンテンツを中心に使うのならばインターフェイスなどが最適化されているぶん、むしろ本製品にアドバンテージがある。
今回の新しいFire 7は従来モデルのマイナーチェンジ版と言っていい内容だけに、この評価もそっくりそのまま当てはまる。Fire OSを最新版にアップデートした第5世代Fireとしばらく使い続けてみたが、体感できる違いは皆無だ。メモリも同じ1GB、CPUも同じMT8127(クアッドコア、1.3GHz)なので、ベンチマークを取っても誤差レベルの違いしかない。
以上のように性能は互角なのだが、ダウンロードやブラウジング時の通信速度は、環境によって違いが出る可能性がある。本製品はWi-FiがIEEE 802.11a/b/g/nに対応しているので(従来モデルは11b/g/nのみ)、2.4GHz帯が混雑している場合、5GHz帯を用いることでダウンロードやブラウジングが安定して速いスピードが維持できる可能性はありそうだ。
もっとも今回、Amazonビデオで約2GBの動画をダウンロードして所要時間を測定したかぎりでは、本製品が2分53秒56、従来モデルが2分54秒39と、1秒以下の違いしかなかった。2.4GHz帯であってもコンディションがよければ5GHz帯と遜色ない速度が出るわけで、あらゆる環境で高速化が望めるわけではないことは、理解しておいたほうがよいだろう。
縦横比率がおかしい不具合が解消
1,024×600ドットという、このクラスの製品ではおそらくもっとも低いであろう解像度については従来と変わっておらず、同時発売のFire HD 8(1,280×800ドット)と比べるとどうしてもドット感が目立つ。細かい文字の読み取りは困難で、300ppiであるiPad mini 4とはひと目でわかるほどの違いがある。
これを許容できるかどうかが、本製品を是とするか否とするかの分かれ目だろう。詳しくは以下の写真で確認してほしい。
比較写真での各製品の並び順は以下のとおり。
- 上段左: 本製品(7型/1,024×600ドット/171ppi)
- 上段右: 第5世代Fire(7型/1,024×600ドット/171ppi)
- 下段左: 第6世代Fire HD 8(8型/1,280×800ドット/189ppi)
- 下段右: iPad mini 4(7.9型/2,048×1,536ドット/326ppi)
ところでじつは第5世代Fireには、画面の縦横比がわずかに狂っている不具合があったのだが、本製品ではこれは改善されている。具体的には表示エリア全体で2mmほど上下方向に伸びて表示されるというもので、一見しただけではまず気づかないが、コミックなどを表示したときにほかの端末と見比べると、その差が顕著にわかる。
筆者がこれに気づいたのは、画質比較で一部のエリアをトリミングしたとき、第5世代Fireだけがほかの端末と範囲がずれるためだ。上のコミックの比較画像を見ても、第5世代Fireだけセリフの左端の行が見えているが、これは撮影ミスではなく、元々の縦横比が狂っているためだ。改めて見ると、キャラの顔が縦長になっているのがおわかりいただけると思う。
この問題はコミックだけでなくテキストを表示した場合も発生しており、行の一番上から下までの長さを測ると、第5世代Fireは12.9mm、本製品は12.7mmといった具合に、画面全体でだいたい1.5~2mmほどずれが生じていた。
実害がないだけで明らかに不具合と言っていい症状だったのだが、本製品ではそれは改善されており、それに伴って潰れがちだった細かい文字の可読性も向上している。むしろこうした変更を行なうために、マイナーチェンジの必要があったのかもしれないと思えるほどだ。
ライバルは同時発売の「Fire HD 8(第7世代)」
以上のように、従来モデルである第5世代のFireから着実に進化しており、同じプライスで提供されるのはお得感が高い。その位置づけ上、従来モデルからの買い替えの対象となるような製品ではないが、入門用として、またAmazonのコンテンツ専用のタブレットとして、おすすめできる製品だ。
なお第5世代Fireの筐体は樹脂製であるため、ほかの硬い物とこすれるなどして、消えない摩擦痕が残りがちだった。本製品の素材は第5世代Fireと同一と考えられるので、同じ傾向があると考えられる。屋外に持ち出して使う機会が多い人や、屋内だけでしか使わないが神経質な人は、背面全体を覆うタイプのケースを合わせて購入したほうがよいだろう。
また本製品は、画面の反射および指紋の付着がかなり顕著で、コーティングのせいか拭ってもなかなか取れないので、予め反射防止シートなどを追加したほうが快適に使えるだろう。こちらは保護ケースと違って重量が増えるわけではないので、合わせて購入しておくことをおすすめしたい。
ところで本製品の購入を検討するさいは、8GBか16GBかの二者択一ではなく、上位であるFire HD 8の存在を念頭に置いておくべきだ。というのも、同じ16GBで比較した場合、本製品は10,980円、Fire HD 8は11,980円と、わずか1,000円の差しかないからだ。
この両製品、重量差はややあるものの、画面サイズの違いはわずか1インチで、かつFire HD 8はRAMが本製品の5割増しとなる1.5GB、かつステレオスピーカーを搭載しているので、動画鑑賞においてはこちらのほうが明らかに有利だ。
上で紹介したベンチマークテストでも、Fire HD 8のスコアは、本製品を圧倒するとまではいかないものの、明らかに高い数値を示している。コンパクトさや軽さを優先するのであれば本製品が候補の最右翼となるが、それ以外はFire HD 8のほうが満足を得られる可能性が高いだろう。