山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

楽天「Kobo Aura Edition 2」

~デザインが一新された6型、防水機能なしのエントリーモデル

Kobo Aura Edition 2
発売中 13,824円

 「Kobo Aura Edition 2」は、楽天Koboが販売するE Ink電子ペーパー採用の電子書籍端末だ(楽天、風呂や水辺で読書できる6.8型電子書籍端末「Kobo Aura H2O Edition 2」参照)。

 名前からもわかるように「Kobo Aura」の第2世代に当たるモデルで、6型、防水機能なしと、同社がラインナップする電子書籍端末のなかではエントリーモデルに位置づけられる製品である。

 今回はこの「Kobo Aura Edition 2」について、市販品を用いたレビューをお届けする。なお便宜上、本稿では初代のKobo Auraを「旧Aura」、今回のKobo Aura Edition 2を「新Aura」と呼称する。

旧Auraとほぼ同等のスペック。メモリカードスロットは廃止

 まずは競合製品との比較から。

【表】Koboシリーズの比較
Kobo Aura Edition 2Kobo AuraKobo Aura H2O Edition 2
発売月2017年5月2013年12月2017年5月
サイズ(幅×奥行き×高さ)155.3×111×9mm150×114×8.1mm172×129×8.8mm
重量約180g約174g約207g
画面サイズ/解像度6型/768×1,024ドット(212ppi)6型/758×1,014ドット(211ppi)6.8型/1,080×1,440ドット(265ppi)
ディスプレイモノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Pearl)モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式IEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ約4GB約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB)約8GB
メモリカード-microSDカード-
フロントライト内蔵
防水・防塵機能-あり(IPX8規格準拠)
バッテリ持続時間の目安数週間約8週間数週間
発売時価格(税込)13,824円13,824円19,980円

 本製品はE Ink電子ペーパー端末としてはスタンダードな6型の製品だが、旧Auraと比べて際立って進化したポイントはほぼ皆無だ。E InkがPearlからCartaへと変更になっているくらいで、あとは同等と言って差し支えない。

 本体サイズについては、わずかながら肥大化している。幅こそ3mmとスリムだが、天地は5.3mm増し、さらに厚みは0.9mm増しとなっている。

 厚みが増した要因は、旧Auraにはなかったベゼルと画面の段差が復活したためで、最薄部(画面)で比較するとそう差はないのだが、手で握ったさいに厚みとして認識されるのはあくまでベゼルの部分であること、また旧Auraはベゼルのちょうど裏側が薄く感じるような面構成だったこともあり、両者を持ち比べると新Auraは厚みを感じやすい。

 ちなみに重量も6gプラスとわずかに増えているが、こちらは体感できるほどの差ではない。

 使い方によってはかなりマイナスになると考えられるのが、メモリカードスロットが廃止されたことだ。Koboシリーズのメモリカードスロットは本製品と同時発売の「Kobo Aura H2O Edition 2」や、昨年(2016年)発売の「Kobo Aura ONE」からも省かれており、本製品だけが特別というわけではないのだが、この上位機種2モデルはいずれも内蔵メモリが8GBで、とくに前者は第2世代モデルでメモリカードスロットを廃止するにあたり、わざわざ内蔵メモリを倍増させている。

 その点、本製品は単純にメモリカードスロットがなくなっただけで内蔵メモリの搭載量は変わっておらず、プラス要因がまったくない。外部データの読み込みという、本来の用途とはやや違った使い方が主だったとはいえ、メモリカードスロットがあるがゆえに本製品(や旧H2O)を使っていたユーザーも多いはずであり、残念な路線変更と言えそうだ。

左が本製品、右が旧Aura。天地サイズが大きくなっていることがわかる
背面の比較。従来のデザインの面影はまったくない
同時発売の6.8型モデル「Kobo Aura H2O Edition 2」(右)との比較。画面サイズがひとまわり違うことがわかる
背面の比較。同じ意匠を採用している。写真では左がやや色が薄く見えるが筐体カラーは同一
本体下部。旧AuraではMicro USBポートの隣にメモリカードスロットがあったが、本製品では省かれている

セットアップ手順は一般的だが、挙動はやや不安定な面も

 本体の外観については、同時発売の「Kobo Aura H2O Edition 2」をそっくりそのまま縮小したかのようなデザインで、背面の意匠や電源ボタンの形状、配置、色までそっくりだ。ちなみに旧Auraはベゼルと画面の間に段差のないフラットなデザインだったが、前述のように本製品では段差が復活している。

電源ボタンは本体上面から背面へと移動している。同時発売の「Kobo Aura H2O Edition 2」、および「Kobo Aura ONE」とはボタンの配置、形状、色ともにまったく同一
厚みの比較。左がいずれも本製品で、右上は旧Aura、右下が「Kobo Aura H2O Edition 2」。旧Auraに比べるとベゼルと画面の間に段差があることから厚みが増している
左が本製品、右が旧Aura。完全にフラットだった旧Auraと異なり、本製品はベゼルと画面の間に段差がある

 同梱品およびセットアップ手順は、「Kobo Aura H2O Edition 2」とほぼ同様なのだが、今回試したさいは、セットアップ中のソフトウェアアップデートが適用されず、旧デザインのホーム画面の状態で一旦セットアップが完了し、その後手動で更新を行なってようやく新デザインのホーム画面へのアップデートが完了した。前回の「Kobo Aura H2O Edition 2」は自動更新されたので、今回は何らかのエラーが発生したと見られる。

 このほか、Wi-Fi接続に失敗したと表示されながらも実際には成功しているという誤表示も相変わらずで、表示と挙動のずれに戸惑う。もともとエントリー層向けに位置づけられる製品でもあり、こうした不安定さはやや気になるところだ。

パッケージ。同時発売の「Kobo Aura H2O Edition 2」と同じ路線のデザイン
内箱を開封したところ。「Kobo Aura H2O Edition 2」のパッケージと違って左側に開く構造
同梱品一覧。ケーブルのほか、クイックスタートガイドや保証書が同梱される。とくに従来と違った点はない
パッケージから出した直後の画面。まずは案内に従って電源をオン
まずは言語を選択する
セットアップ方法を選択。前回の「Kobo Aura H2O Edition 2」は、「まずはWi-Fiに接続してください」というメッセージがあったが、本製品にはない。どのような理由によるものかは不明だ
ネットワークの検索が実行されるので、SSIDが表示されたらタップしてパスワードを入力する。接続を実行すると、正しいパスワードを入力していても「接続できません。再度お試しください」のメッセージが表示される
前の画面のままそのまま待っていると問題なく接続される。初心者でなくとも戸惑う挙動だ
楽天会員IDとパスワードを入力してログインするとホーム画面が表示されるが、通常ならばここで行なわれるはずのソフトウェア更新が行なわれず、従来のホーム画面(ソフトウェアバージョンは4.1.7729)のままセットアップが完了した
手動で同期を実行すると、更新可能なソフトウェアがあることが通知される。「今すぐ更新」を選択するとダウンロードとインストールが行なわれ、再起動が実行される
再起動が完了すると新しいホーム画面(ソフトウェアバージョンは4.4.9349)が表示された

画面の品質は旧Auraに比べても大幅に向上、残像も緩和

 さて本製品は旧Auraと比べて画面サイズは同じ、解像度もほぼ同じ(本製品が212ppi、旧Auraは211ppi)なのだが、同じコンテンツを表示して見比べると、品質が格段に向上していることに驚かされる。

 具体的には、旧Auraでは細い線がかすれ気味だったのに対して、新Auraは線が全体的になめらかになっており、グラデーションの段差も目立たない。またモアレも減少しているほか、ページ切り替え時の残像も残りにくくなっているようだ。

 これはおそらくE InkがPearlからCartaへと変更されたことによるものだろうが、解像度が向上したのではと思ってしまうほどだ。写真では実物のイメージがなかなか伝わりにくいが、ひとまず比較画像をご覧いただければと思う。

テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)を比較した画像(濃淡は調整している、以下同じ)。左が本製品、右が旧Aura。解像度はほぼ同じはずだが、右はルビなどの細い線がかすれているのに対して、左は全体的になめらかでくっきりしている
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)の品質を比較した画像。左が本製品、右が旧Aura。こちらも右は斜線にギザギザ感があったり、細い線がかすれ気味なのに対して、左は全体的になめらか

 これはあくまで212ppi前後の本製品と旧Auraとを比較したもので、ここに「Kobo Aura H2O Edition 2」や「Kindle Voyage」など300ppiの端末を評価対象に加えるとさすがに勝負にならないのだが、それでも新Auraをしばらく使ったあとに旧Auraを手に取ると、品質の低さが気になって本を読めたものではないのが現状だ。現実的に旧Auraから新Auraへと乗り換える選択肢はあまりないだろうが、読書端末としての価値は格段に向上しているのは間違いない。

テキストコンテンツの比較。左から順に、本製品(212ppi)、旧Aura(211ppi)、Kobo Aura H2O Edition 2(300ppi)、Kindle Voyage(300ppi)。やはり300ppiクラスの製品との表現力の差は歴然だ
コミックの比較。上段左が本製品(212ppi)、右が旧Aura(211ppi)、下段左がKobo Aura H2O Edition 2(300ppi)、下段右がKindle Voyage(300ppi)。上2つと下2つでは解像度の差が顕著だが、それでも上段右の旧Auraのような線のかすれは、上段左の本製品では大幅に緩和されている

ホーム画面は刷新されるも機能そのものは従来と変わらず

 さて今回は、本製品発売とときを同じくして公開された、新しいホーム画面についてチェックしていこう。フルモデルチェンジと言っていいほどの違いがあるだけに、利用する側としてどのような違いがあるのか興味があるところだ。

 変更点を端的にまとめると、以下の3つになるだろう。

  • (1)タイル状の配置が廃止され、上下左右に4分割したレイアウトへと変更された
  • (2)明るさやWi-Fi、バッテリ残量などをまとめた画面上部のクイック設定パネルが廃止され、これら機能の設定画面は個別にポップアップするようになった
  • (3)上下に別れていたメニューが左上のメインメニューに統合された

 まず(1)について。従来のホーム画面は、最近読んだ本や購入した本、おすすめの本などを配置したタイルが縦3列に並び、ユーザーが何らかの操作を行なうと順序が繰り上がる仕組みだった。

 これに対して新しいホーム画面は画面が上下左右に4分割され、そこに最近読んだ本などが表示されるレイアウトになっている。この4項目は固定ではなく、従来のタイル表示と同じく、ユーザーが何らかの操作を行なうと動的に差し替わる仕組みだ。

 この4分割されたタイルに表示されるのは、最近読んだ本のほか、ライブラリ、(特定の本に基づく)関連書籍、(特定の本の)著者のタイトルなどがあるが、以前に比べ一度に表示できる項目数が減っているため、いざアクセスしようとするとあったはずの項目が見当たらず、結果的に左上のメインメニューから探さざるを得ないことが多い。

 以前も決してわかりやすいとは言えなかったが、サムネイルのサイズを大きくする代償として項目を減らしたことで、機能性も低下してしまったように感じられる。

新旧のホーム画面の比較。以前のホーム画面(右)は3列に渡ってタイルが並んでいたが、新しいホーム画面(左)は2×2に分割されている(この画面のように上段の左右項目が合体し、最近読んだ本を横長のスペースで表示することもある)

 (2)については、従来は画面上部の「クイック設定パネル」を開くことで、明るさやWi-Fi、バッテリ残量、同期などの設定および操作が可能だったが、今回のモデルではクイック設定パネルが廃止され、各機能が個別にポップアップ表示されるようになった。日本での初代モデルに当たる「Kobo Touch」以来変化のなかったデザインをがらりと改める、かなり大掛かりな変化ということになる。

 かつてのクイック設定パネルは、たとえばバッテリ残量を見たいだけであってもWi-Fiのステータスや明るさなどとくに必要ない情報まで一括表示される仕組みで、そのたびに最新のデータを引っ張ってこなくてはいけないことから、おそらくリソース的に負荷がかかっていたはずで、挙動はもっさりとしていた。今回の仕様変更によって負荷は減ったはずで、事実かなりきびきびと動作している。すべての情報をまとめて表示できる手段がなくなったのは残念だが、トータルではプラスと考えてよいように思う。

以前のホーム画面(右)はバッテリ残量やWi-Fiステータス、明るさなどの情報がクイック設定パネルに原則まとめて表示されていたが、新しいホーム画面(左)では個別にポップアップするよう改められた

 (3)については、従来は画面上下に分散していたライブラリやストア、設定画面へのリンクなどを画面左上のメインメニューに集約するというもので、目的の項目にたどり着くまでのタップ数が以前より1回増えるものの、何かしたければひとまずこの3本線のアイコンを押せばよいため、非常にわかりやすくなったと感じる。

 現状では項目がやや雑多で見分けにくく感じるので、並び順も含めて最適化を要望したいところだ。

画面左上にあるメインメニュー(3本線のアイコン)をタップすると、さまざまな項目へのリンクがまとめて表示される。以前のホーム画面(右)では画面の下や右上などに分散していたのが一箇所に集約された格好だ
階層が変わった項目などは、以前に比べてたどり着くまでのタップ数が増えている場合もある
「ヘルプ」、「設定」など、右上のクイック設定パネルからこちらへと移動された項目もある

 といったところで、プラスマイナスで言うとややプラスという評価なのだが、実のところがらりと変わっているのは表から見えるデザインやメニューの配置のみで、たとえば検索でヒットしたさいの表示順序が不明瞭なことや、検索結果に洋書が混じること、また本のカテゴライズが独特である点など、他社に比べて使いにくかったり、あまり一般的でないと考えられる点はほとんど手が入っていない(ソートキーが追加されるなど細かいところでの変更はある)。

 そうした意味では、若干本質からずれたリニューアルという印象が強い。個々の機能の改善も期待したいところだ。

ほかに変化が見られる箇所をスクリーンショットで紹介しておこう。これは並び替えのソートキーで、更新日/追加日を区別して並び替えられるようになっている
こちらはテキストコンテンツの読書画面。全体的には違いはないが、ホーム画面にも見られる左上の3本線のボタンがここでも表示されており、ホーム画面だけでなくライブラリやストアにも直接移動できるようになっている

まったく新規に電子書籍端末を探す場合に候補となる1台

 以上ざっと見てきたが、旧Auraと比べると、スペック的にはE InkのPearlがCartaになったことを除けば進化したポイントはほぼ皆無で、またメモリカードスロットが省かれるなど旧Auraでできていたことが今回のモデルでできなくなっている箇所もあるので、わざわざ買い替える必要はないように思える。反応速度についても試したかぎりでは旧Auraとそれほど相違はなく、高速化を狙っての買い替えという線もなさそうだ。

 もともと本製品自体、E Ink電子ペーパー端末のエントリーモデルという位置づけであり、まったく新規に電子書籍端末を購入する楽天Koboユーザー向けの製品だ。

 Kobo Touchやgloなど初期の端末をいまだに使い続けているならともかく、旧Aura以降のモデルを所有しているユーザーは、積極的に手を出す必要はないだろう。あるとすれば、どうしてもKobo対応の電子書籍端末が必要で、上位モデルでは価格やサイズなどの条件に合わない場合だけ、ということになるだろうか。

 一方、新規にKobo対応の電子書籍端末を探すのであれば、本モデルは候補の最右翼となるはずだ。電子ペーパーを使った経験がなく、自分に合うかどうか不安なのであれば、Kobo Aura ONEをはじめとする上位機種に比べて本製品のほうが、単純に初期投資は少なくて済む。もっともライバルのKindleがエントリーモデルで1万円を切っていることを考えるとやや割高に思えるのも事実で、キャンペーンでの割引などを狙うのも手だろう。

 余談だが、Koboでは最近スマートフォン向けアプリについても大幅なリニューアルが行なわれており、今回の新モデル投入と歩調を合わせている節がある。現時点ではとくに発表はないが、「Kobo Aura ONE」などほかのモデルのアップデートの有無も気になるところで、もし新規購入や買い替えを考えるのであれば、それらの動きが一段落してからでも遅くはなさそうだ。