山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

4,980円から入手可能なAmazonの7型タブレット「Fire 7」

Amazon「Fire 7」。本体色はブラックのみ

 Amazonの「Fire 7」は、KindleストアやAmazonビデオなど、Amazonが提供するデジタルコンテンツを楽しめる7型タブレットだ。7型のIPSディスプレイを搭載しながら実売価格8,980円、Amazonプライム会員なら執筆時点で配布中のクーポンコードを使うことで4,980円で入手できるという衝撃的な価格の製品である。

 ほぼ年1回のペースで新製品が発売されているAmazonのタブレット「Fire」シリーズだが、どのサイズも毎年モデルチェンジが行なわれるわけではない。たとえば本製品と同時発売の8型モデル「Fire HD 8」はここ3年間、毎年モデルチェンジを繰り返しているが、7型モデルは昨年(2016年)は新製品の投入は見送られ、2015年に発売された第5世代モデル「Fire」が先日まで継続販売されていた。本製品はその7型モデルにおける、2年ぶりの新製品ということになる。

 今回はこの「Fire 7」について、市販品を用いたレビューをお届けする。

製品外観。従来モデルに当たる第5世代Fireと同様、縦向きで使うことを想定したデザインで、見た目はほぼ同一
上部には電源ボタン、Micro USBコネクタ、イヤフォンジャック、音量ボタン、さらに側面にはmicroSDスロットが用意される。ちなみにボタン類の配置は第5世代Fireとは異なる(後述)
スピーカーは第5世代Fireと同様、モノラルで1基のみ。本製品と同時発売のFire HD 8との大きな違いだ

バッテリやWi-Fiなど基本性能が強化されたモデル

 まずは従来モデルであるFire(第5世代)との比較から。本製品と同時発売の8型モデル「Fire HD 8(第7世代)」も併せて比較する。

【表】Fireシリーズの比較
Fire 7(第7世代)Fire(第5世代)Fire HD 8(第7世代)
発売年月2017年6月2015年9月2017年6月
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)115×192×9.6mm115×191×10.6mm128×214×9.7mm
重量約295g約313g約369g
CPUクアッドコア1.3GHz×4
メモリ1GB1.5GB
画面サイズ/解像度7型/1,024×600ドット(171ppi)7型/1,024×600ドット(171ppi)8型/1,280×800ドット(189ppi)
通信方式IEEE 802.11a/b/g/n
内蔵ストレージ8GB(ユーザー領域4.5GB)
16GB (ユーザー領域11.6GB)
8GB(ユーザー領域5GB)
16GB (ユーザー領域11.6GB)
16GB (ユーザー領域11.1GB)
32GB (ユーザー領域25.3GB)
バッテリー持続時間(メーカー公称値)8時間7時間12時間
スピーカーモノラルステレオ
microSDカードスロット○(256GBまで)○(200GBまで)○(256GBまで)
価格(発売時)8,980円(8GB)
10,980円(16GB)
11,980円(16GB)
13,980円(32GB)
カラーバリエーションブラック
備考-16GBモデルは2016年4月に追加-

 第5世代以降のFireシリーズは価格重視のエントリー向け路線に一本化されており、本製品はそのなかでもっともローエンドに当たる製品だ。解像度は1,024×600ドット(171ppi)とお世辞にも高くはなく、RAMも1GBとひかえめだ。その代償として実売8,980円、セール時には4,980円というプライスを実現しており、今回のモデルもそれを踏襲している。

 従来モデルとの違いとしては、バッテリ持続時間が7時間から8時間に伸びたほか、Wi-Fiがデュアルバンドに対応し5GHz帯が利用可能(IEEE 802.11a/b/g/n)となったことが挙げられる。さらに200GBまでとやや中途半端な容量までしかサポートしなかったmicroSDが256GBまで対応となるなど、地味ながらも基本性能が底上げされている。

 これに加えて本体の厚みが1mm薄くなり、10mmの大台を割ったほか、重量も295gと、ついに300gを切った。いまや300gを切る7型タブレットはめずらしくないが、数年前は300gを切ることが軽量か否かの1つの目安だったわけで(かつてのNexus 7などがそうだ)、初代モデルでは400gあった7型のFireがここまで軽くなったことは感慨深い。

従来モデルに当たる第5世代Fire(右)との比較。正面から見た外観はまったく同一。ホーム画面は、「キャンペーン」アイコンがなくなっていることを除けば同一だ
同時発売の第7世代Fire HD 8(右)との比較。画面サイズがひとまわり異なる。また本製品はホーム画面のアイコンが1画面に5段まで表示できるが、Fire HD 8は4段までとなる
7.9型のiPad mini 4(右)との比較。天地はもちろん、幅もかなり異なる
厚みの比較。いずれも左が本製品、右は上段が第5世代Fire、中段が第7世代Fire HD 8、下段がiPad mini 4。第5世代Fireに比べると薄くなっていることがわかる。第7世代Fire HD 8とは0.1mm差ということで、ほぼ同一に見える

薄型化も筐体デザインはほぼ同一。セットアップ手順も同一

 本製品は従来モデルよりも薄くなっているので筐体の金型は新造されているが、見た目は従来モデルとそっくりで、デザインはもちろん質感もそっくりだ。細かく見比べるとボタン類の配置が入れ替わっていたり、背面にモールドされたAmazonロゴが小さくなっているなどの違いはあるが、今回の試用中も何度も新旧モデルを取り違えることがあったほどよく似ている。

 一般的に、筐体の金型を新しく作るのであればデザインもリニューアルしたほうがユーザーへの訴求力は高くなるわけだが、あえてそれをしないのは、現在のデザインの完成度が高いと考えている証だろう。あるいは、そもそもデザインにこだわりがないか、そのどちらかだ。

第5世代Fire(右)と背面を比べると、Amazonロゴのサイズ、左下のスピーカー穴の形状やサイズが微妙に異なっていることがわかる
上が本製品、下が従来の第5世代Fire。音量調整ボタンがイヤフォンジャックの外側に移動しており、押すさいにイヤフォンが邪魔になりにくくなっている。厚みは第5世代Fireのほうがわずかに厚く、パーティングラインがあるのが相違点
外箱は従来と同じフラストレーション・フリー・パッケージ仕様
ミシン目に沿って開封する
同梱物一覧。従来と同じく、各国語版の保証書とスタートガイド、USBケーブル、USB-ACアダプタが付属する
従来と同一形状のUSB-ACアダプタが付属する

 セットアップ画面については、従来モデルである第5世代「Fire」とは見た目が大きく異なっているが、これは2016年の第6世代モデルが発売されるタイミングで主に配色が大きく変更されたためで、フロー自体は大きな変化はない。Amazon上で本製品を購入していれば到着時にすでにアカウントが登録されているといった特徴も、従来までと同様だ。

 念のため第5世代Fireを最新OS(5.3.3.0)にアップデートしたあと再セットアップを行ない、フローを比較してみたが、Kindle Unlimitedの案内が差し込まれていること、また事前登録のアカウントを利用せずに独自にセットアップした場合に、先日新たにAmazonが対応した2段階認証の画面が表示されることくらいで、流れに大きな変更は見受けられなかった。ホーム画面とともに、以下にスクリーンショットで紹介する。

電源を入れてセットアップ開始。まずは言語を選択
Wi-Fiが検索される。とくに従来と相違点はないが、5GHz帯に対応したため、より多くの対応アクセスポイントが表示される
SSIDのパスワードを入力する。詳細オプションからはプロキシやDHCPのオン/オフが設定できる
Amazonのサイトから購入した場合は名前がすでに登録されておりそのまま続行できる
クラウド上にバックアップが存在する場合は復元するか否かを尋ねられる
4項目のオプションが表示される。内容を確認し、必要に応じてチェックを外したのち次へ進む
SNSへの接続画面。とくに必要なければそのまま「続行」をクリックして次に進む
今回セットアップを行なったFire OSのバージョン(5.3.3.0)では Kindle Unlimitedの広告が表示される
以上でセットアップ完了。数ページにわたるチュートリアルが表示される
ホーム画面が表示された。なおセットアップ完了後にアップデートの配信があり、ここ以降の画面はソフトウェアバージョン5.4.0.0となっている
左右スワイプで「本」、「ビデオ」、「ゲーム」、「ミュージック」などの画面を切り替える仕組みは従来と同一だ。これは本の画面で、右上のアイコンからKindleストアに移動できる
「ライブラリ」をタップすると入手済みおよびダウンロード済みのコンテンツが表示される
ホーム画面の各カテゴリのうち「お買い物」だけは背景色が白い。背景色が黒=デジタルコンテンツ、白=リアルな商品という区分になっていると見られる
画面の上から下にスワイプすることでクイック設定の画面が表示される。従来からの変更はないようだ。ブルーライトをカットして目の疲れを緩和する「Blue Shade」機能も搭載している
Kindle本のオプションを表示した状態。とくに従来と違いは見られない
本文中の単語を選択してハイライトをつけたり辞書検索を行なえる。こちらもとくに違いはないようだ

第5世代Fireと同等のスコア。性能はNexus 7(2012)並み

 さて、以前の第5世代Fireに対する筆者の評価は、フルHDのハイエンドスマートフォンなどの利用経験があると低い解像度がどうしても気になりがちなものの、それらの利用経験がない場合や、解像度の低さを割り切った上でサブ端末として導入するならば、決して悪い選択ではないというものだった。

 iOSやAndroidと比べるとアプリの品揃えに課題は残るが、Amazonのコンテンツを中心に使うのならばインターフェイスなどが最適化されているぶん、むしろ本製品にアドバンテージがある。

 今回の新しいFire 7は従来モデルのマイナーチェンジ版と言っていい内容だけに、この評価もそっくりそのまま当てはまる。Fire OSを最新版にアップデートした第5世代Fireとしばらく使い続けてみたが、体感できる違いは皆無だ。メモリも同じ1GB、CPUも同じMT8127(クアッドコア、1.3GHz)なので、ベンチマークを取っても誤差レベルの違いしかない。

Ice Storm Extremeによるスコアの比較。ほぼ同等で、むしろわずかに第5世代Fireのほうが高く表示される。この画像には表示されていないが項目ごとのスコアもほぼ互角だ
Geekbench 3で比較しても誤差レベルの違いしかない。ちなみに他製品とスコアを見比べると、Nexus 7(2012)とほぼ同等と言って差し支えないようだ

 以上のように性能は互角なのだが、ダウンロードやブラウジング時の通信速度は、環境によって違いが出る可能性がある。本製品はWi-FiがIEEE 802.11a/b/g/nに対応しているので(従来モデルは11b/g/nのみ)、2.4GHz帯が混雑している場合、5GHz帯を用いることでダウンロードやブラウジングが安定して速いスピードが維持できる可能性はありそうだ。

 もっとも今回、Amazonビデオで約2GBの動画をダウンロードして所要時間を測定したかぎりでは、本製品が2分53秒56、従来モデルが2分54秒39と、1秒以下の違いしかなかった。2.4GHz帯であってもコンディションがよければ5GHz帯と遜色ない速度が出るわけで、あらゆる環境で高速化が望めるわけではないことは、理解しておいたほうがよいだろう。

縦横比率がおかしい不具合が解消

 1,024×600ドットという、このクラスの製品ではおそらくもっとも低いであろう解像度については従来と変わっておらず、同時発売のFire HD 8(1,280×800ドット)と比べるとどうしてもドット感が目立つ。細かい文字の読み取りは困難で、300ppiであるiPad mini 4とはひと目でわかるほどの違いがある。

 これを許容できるかどうかが、本製品を是とするか否とするかの分かれ目だろう。詳しくは以下の写真で確認してほしい。

 比較写真での各製品の並び順は以下のとおり。

  • 上段左: 本製品(7型/1,024×600ドット/171ppi)
  • 上段右: 第5世代Fire(7型/1,024×600ドット/171ppi)
  • 下段左: 第6世代Fire HD 8(8型/1,280×800ドット/189ppi)
  • 下段右: iPad mini 4(7.9型/2,048×1,536ドット/326ppi)
テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)の比較。解像度の差をそのまま反映したディティール。本製品(上段左)と従来モデル(上段右)はほぼ同一だが、漢字の細い線が潰れ気味である点などはほぼ同一だ
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)の比較。こちらもやはり解像度そのままのディティールの違いがある。後述するように、第5世代Fireは若干縦変倍がかかっており、ほかの機種では見えていない左端のセリフの一部が見えている

 ところでじつは第5世代Fireには、画面の縦横比がわずかに狂っている不具合があったのだが、本製品ではこれは改善されている。具体的には表示エリア全体で2mmほど上下方向に伸びて表示されるというもので、一見しただけではまず気づかないが、コミックなどを表示したときにほかの端末と見比べると、その差が顕著にわかる。

 筆者がこれに気づいたのは、画質比較で一部のエリアをトリミングしたとき、第5世代Fireだけがほかの端末と範囲がずれるためだ。上のコミックの比較画像を見ても、第5世代Fireだけセリフの左端の行が見えているが、これは撮影ミスではなく、元々の縦横比が狂っているためだ。改めて見ると、キャラの顔が縦長になっているのがおわかりいただけると思う。

 この問題はコミックだけでなくテキストを表示した場合も発生しており、行の一番上から下までの長さを測ると、第5世代Fireは12.9mm、本製品は12.7mmといった具合に、画面全体でだいたい1.5~2mmほどずれが生じていた。

 実害がないだけで明らかに不具合と言っていい症状だったのだが、本製品ではそれは改善されており、それに伴って潰れがちだった細かい文字の可読性も向上している。むしろこうした変更を行なうために、マイナーチェンジの必要があったのかもしれないと思えるほどだ。

ほんのわずかな字句やアイコンの違いは見受けられるが、これはおそらく本製品うんぬんよりもFire OSのバージョンの違い(従来モデルは5.3.3.0、本製品は5.4.0.0)によるものだろう

ライバルは同時発売の「Fire HD 8(第7世代)」

 以上のように、従来モデルである第5世代のFireから着実に進化しており、同じプライスで提供されるのはお得感が高い。その位置づけ上、従来モデルからの買い替えの対象となるような製品ではないが、入門用として、またAmazonのコンテンツ専用のタブレットとして、おすすめできる製品だ。

 なお第5世代Fireの筐体は樹脂製であるため、ほかの硬い物とこすれるなどして、消えない摩擦痕が残りがちだった。本製品の素材は第5世代Fireと同一と考えられるので、同じ傾向があると考えられる。屋外に持ち出して使う機会が多い人や、屋内だけでしか使わないが神経質な人は、背面全体を覆うタイプのケースを合わせて購入したほうがよいだろう。

 また本製品は、画面の反射および指紋の付着がかなり顕著で、コーティングのせいか拭ってもなかなか取れないので、予め反射防止シートなどを追加したほうが快適に使えるだろう。こちらは保護ケースと違って重量が増えるわけではないので、合わせて購入しておくことをおすすめしたい。

2年前に購入した第5世代Fireの筐体。硬いものとこすれることで、このように摩擦痕が残る
油脂の付着は、同クラスのタブレットのなかではかなり顕著。反射もかなりあるので、反射防止シートを導入するとよい

 ところで本製品の購入を検討するさいは、8GBか16GBかの二者択一ではなく、上位であるFire HD 8の存在を念頭に置いておくべきだ。というのも、同じ16GBで比較した場合、本製品は10,980円、Fire HD 8は11,980円と、わずか1,000円の差しかないからだ。

 この両製品、重量差はややあるものの、画面サイズの違いはわずか1インチで、かつFire HD 8はRAMが本製品の5割増しとなる1.5GB、かつステレオスピーカーを搭載しているので、動画鑑賞においてはこちらのほうが明らかに有利だ。

 上で紹介したベンチマークテストでも、Fire HD 8のスコアは、本製品を圧倒するとまではいかないものの、明らかに高い数値を示している。コンパクトさや軽さを優先するのであれば本製品が候補の最右翼となるが、それ以外はFire HD 8のほうが満足を得られる可能性が高いだろう。

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